4ADの40周年の歴史を1枚にまとめたカバーアルバム『Bills & Aches & Blues』が発売された。

現在の4ADの顔とも言えるDeerhunterやThe Lemon Twigsなど錚々たるアーティストと契約した社長のサイモン・ハリデー。

彼はどのような基準で新人アーティストと契約するのか?また4ADの伝統ともいえる神秘的なアルバムジャケット、

40年続いたレーベル運営の極意について話を聞いた。

※サイモン・ハリデーのインタビュー内容はBELONG Magazine Vol.26に掲載した内容を再掲。

アーティスト:サイモン・ハリデー インタビュアー:yabori 通訳:原口美穂 ポートレート撮影:古渓一道

サイモン・ハリデーについて

4AD社長 サイモン・ハリデー
-4ADの社長の前はWarp Recordで働いていたそうですね。
サイモン・ハリデー:そうだね。まず始めにWarpを辞めたんだけど、その後1日経ってすぐ4ADに就いたんだ。Warpでもとても良い仕事をもらっていたけれど、自分自身も自信を持って辞めることができたから、とても気持ち良かった。だから辞めたことがとても良い決断だったと思うし、自分自身に強さを感じることができる瞬間だったね。そしてすぐに、ベガーズ・グループのCEOのマーティン・ミルズから連絡がきて、「Warpを辞めたって聞いたけど、4ADで働かないか?」っていうことでこうなったんだ。

4ADというレーベル

-そうだったんですか!もともと4ADは好きなレーベルでしたか?
TV on the Radio、Blonde Redhead、ハイディ・ベリーの3組はもともと好きだったんだ。でも同時に、その3組だけだったから、他のバンドを加えるスペースがあったんだ。そして自分が4ADに就いた時に、すでに5〜6バンド加えたいバンドがいた。例えば、Deerhunter、Ariel Pink、LCD Soundsystemとかね。僕はフットボールがとても好きなんだけど、例えばたまに自分がチームマネージャーのようにプレーヤーをちょっと新しくしたり、戦略を考えてみたりしていてね。プレーヤーに関してもベテランと若手の両方が必要だし、ディフェンダーやアタッカーも必要だし、そんな感じでチームにどんなバンドを持ってくれば良いかということを考えていたね。

Warpと4AD違い

-Warpから見て4ADのレーベルカラーの違いはどう見えましたか?
あまり考えてなかったね。でも自分が契約したいバンドがレーベルにとって良いものをもたらすかどうかということだけを考えていて。例えば今Warpにいるケレラってアーティストがいるけど、15年前だったらWarpに彼女のようなサウンドはなかったんだ。Warpも4ADも同じところからスタートして、自分たちなりにサウンドを広げていってると思うから、それをどう広げるかって言うのを自分が考えるだけ。それは同じだったね。

新人契約

The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)
-最近だと4ADがThe Lemon Twigsのようなバンドと契約したことが驚きだったし、同時にとても嬉しかったんですが、新人アーティストと契約の決め手があれば教えてください。
The Lemon Twigsの場合は、デモを聴いたときにとてもセンセーショナルで良かったし、彼らのライブを観た人もみんな良かったと言っていたんだ。でも同時に、彼らに関しては少し心配な部分もあったんだ。それはThe Lemon Twigsの音楽がとてもレトロだったからで、僕らは普段、オールドファッションな音楽をあまり好んでいなくて、どちらかというとオリジナリティのあるバンドが好きなんだ。オリジナリティがあるといっても、もちろん誰かに似ているということは必ずあるし、誰かから影響を受けているもので、完璧なオリジナルは存在しないんだけど、そこを求めているんだ。でもよく考えてみると、彼らの音楽はレトロなんだけど、じゃあ100%The Beatlesかというとそうではない。他にバンドのようにも聴こえるけど、それも全て含めてレトロだということに気付いたんだ。それが彼らと契約をしようと決めた理由だね。

-なるほど。The Lemon Twigsとの契約は特別だったんですね。では今までに契約してきたアーティストに共通点はありますか?
例えばWarpの時にBattlesと契約したんだけど、彼らとThe Lemon Twigsはもちろん違うタイプのバンドだけど、共通点がいくつかあるんだ。両方とも素晴らしいドラマーがいるとかね。Battlesに関して言えば、当時はマスロックをやっているバンドはたくさんいたけど、彼らの音楽はオリジナリティがあったんだ。そして初めて彼らの演奏を観た時に、ワオ!って思ったんだ。やっぱりそう思わせてくれると言うことが契約を決めるバンドの共通点だね。

レーベル運営の極意

レコードレーベル
-それでは具体的なレーベル運営について聞きたいのですが、例えばアルバムジャケットはバンド自身が持ってくると思うんですが、自分が思っていたものとバンドが持ってくるものが違う場合もありますか?またそうなった場合はどういうアドバイスを行っているのでしょうか。
バンドが希望する物を持ってくるケースの方がほとんどだね。ゲフィン・レコードを設立したデヴィッド・ゲフィンの引用なんだけど、その人は「なんでバンドはアルバムカバーに時間を費やしているんだ。最初が赤で次が青でもいいじゃないか」って言ってたんだけど、自分もちょっとそう思えるところがあって。僕はデザインをあまり気にしないんだけど、でもアーティストが良いカバーを持ってきた時に、やっぱりいいなと思うし、自分の考えていることと、見せられて思うことが違うこともあるね。音楽やレコードの成功っていうのは、アルバムカバーだけのおかげではないし、名前も関係ないと思うんだ。多くのバンドは名前が良くないと思うし、例えばThe Beatlesは好きなんだけど、バンド名はとんでもないと思うけど、それでも成功しているしね。僕は冗談で一週間以内に決められないなら、全て黒一色のカバーでアーティスト名とアルバムタイトルは白文字で書くよって言っているんだけどね(笑)。それと、もし自分の意見とバンド意見がぶつかった時はバンドの意見を常に優先させるよ。そして常にアートとビジネスでは、アートのほうを優先しているんだ。たとえそれが間違った決断であったとしてもね。それはジャケットだけじゃなくて全てに対してそうだよ、それが本当に酷いものじゃないかぎりね。バンド自身で考えて持ってきた意見に対して、レーベルがそれは好きじゃないって言うと、そこでバンドとレーベルの関係は終わってしまうんだ。大抵の場合はアーティストのことを信頼しているし、やっぱり音楽はアーティストの方が作っているし。もちろん自分の知識を基本として決断するんだけど、やっぱり自分はミュージシャンじゃないし、音楽を聴いて知っているだけだから、限界があるんだ。すごく興味深い関係なんだけど、アーティストとレーベルのオーナーというのは。僕はファンとミュージシャンの間にいるからこそ、バンドが何かを持ってきたものに対して、ファンの立場で一般の人は好きかなっていう考え方ができるんだよ。よくある話がアーティストが持ってきた作品に対して、これはシングルっぽくないね、とか、これはちょっと長過ぎると思うって意見を言うことが多いかな。それは逆にミュージシャンが分からないことでもあると思うよ。

-リスナー目線でのリリースとビジネスを両立させる為に工夫していることがあれば教えてください。
アーティストと自分に対して正直であること。そして自分に経験があって、正しいことをしたら、アーティストも自分がやっていることを信じてくれると思うんだ。時には、自分が「えっ!?」って思うこともあるんだけど、絶対にこれが良いっていっても失敗することもある。それが成長することでもあるし。それはそれでみんなにとって良いことなんだよね。だから自分も知識が十分じゃないし、相手も知識が十分じゃない。だからやってみるんだ。それで様子を見て、経験を積んで、それでお互いの信頼を築いていっていくのが1番だと思うんだ。

Bills & Aches & Blues

発売日: 2021/7/23
収録曲:
CD 1:
01. Tkay Maidza – Where Is My Mind? ( Pixies )
02. U.S. Girls – Junkyard ( The Birthday Party )
03. Aldous Harding – Revival ( Deerhunter )
04. The Breeders – Dirt Eaters ( His Name Is Alive )
05. Maria Somerville – Seabird ( Air Miami )
06. Tune-Yards – Cannonball ( The Breeders )
07. Spencer. – Genesis ( Grimes )
08. Helado Negro – Futurism ( Deerhunter )
09. Efterklang – Postal ( Piano Magic )
10. Bing and Ruth – Gigantic ( Pixies )

CD 2:
01. Future Islands – The Moon Is Blue ( Colourbox )
02. Jenny Hval – Sunbathing ( Lush )
03. Dry Cleaning – Oblivion ( Grimes )
04. Bradford Cox – Mountain Battles ( Breeders )
05. SOHN – Song To The Siren ( Tim Buckley )
06. Becky and The Birds – The Wolves Act I and II ( Bon Iver )
07. Ex:Re – Misery Is a Butterfly ( Blonde Redhead )
08. Big Thief – Off You ( The Breeders )
09. Maria Somerville – Kinky Love ( Pale Saints )*Bonus Track for Japan
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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Bills & Aches & Blues収録曲(Youtube)

  • Aldous Harding – Revival (Deerhunter)
  • Dry Cleaning – Oblivion (Grimes)
  • Ex:Re – Misery Is a Butterfly (Blonde Redhead)

ライター:yabori
yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@boriboriyabori

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