最終更新: 2024年4月14日
エレクトロポップは1970年代末に生まれ、ニュー・ウェイヴから派生した音楽である。
New OrderやDepeche Modeがシーンの中心となり、イギリスから全世界へと広まっていった。
この記事ではエレクトロポップの真髄である、電子音楽を中心に据えたロックを現代に継承した新世代バンドを紹介していく。(2021年9月4日追記)
目次
エレクトロポップとは
エレクトロポップとは電子音楽を使用したポップミュージックやロックのことである。
エレクトロポップの起源を辿ると1980年代の初めのイギリスまで遡ることになり、ニュー・ウェイヴというジャンルと密接な関係がある。
1970年代にパンクの人気が陰りを見せつつあったころ、イギリスの雑誌・“メロディーメーカー”がニュー・ウェイヴという括りで新しいバンドを紹介し、
エレクトロポップはこのニュー・ウェイヴのサブジャンルと位置づけられている。
ニュー・ウェイヴの中でも電子音楽を中心に据えたNew OrderやDepeche Modeがエレクトロポップの代表的なバンドである。
エレクトロポップとシンセポップの違い
エレクトロポップと言えば近いジャンルでシンセポップがあるが、結論から言うと両者に大きな違いはなく、どちらも同じ意味である。
調べたところシンセポップをより機械的な音楽にしたものがエレクトロポップという意見もある。
“シンセポップとは、1970年後半に登場したニューウェーブの1ジャンルである。電子音を大々的に取り入れたクラフトワークなどのアーティストの影響を受けつつ、より大衆的な歌やメロディを持った音楽である。
エレキギターなどのロックバンドの楽器が使われる事もあるが、シンセサイザーやシーケンサーなどで曲が作られる場合が多い。80年代の英米のヒットチャートを席捲したが、ロックの文脈では語られない商業的なポップユニットも多い。
また、シンセポップをより無機質・機械的にしたものはエレクトロポップと呼ばれる。エレクトロポップは後のテクノやハウスなど、ダンスミュージックに影響を与えた。”
一方でWikipediaではエレクトロポップとエレクトロの違いについての記載があり、エレクトロのほうが機械的な音楽と言っており、
エレクトロポップとシンセポップは大きな違いがないことがわかる。
“エレクトロ・ポップとエレクトロの違いは、エレクトロが無機的で、電子音を強調するのが特徴であるのに対して、エレクトロ・ポップはポップなセンスも加味している。”
エレクトロポップおすすめ曲プレイリスト
この記事ではエレクトポップが生まれたイギリスのバンドだけでなく、日本のバンドも含め10組をピックアップしている。
そんな彼らのおすすめ曲のプレイリストを作成しており、バンド紹介を読みながら音楽も一緒に楽しんで欲しいと思う。
Chvrches
Chvrches(チャーチズ)はローレン・メイベリー率いるスコットランド・グラスゴーの3人組エレクトロポップバンドである。
これまでに3枚のアルバムをリリースしており、2021年8月27日に4枚目のアルバム『Screen Violence』をリリースする。
Chvrchesの新作アルバム『Screen Violence』はニュー・ウェイヴ界のレジェンド、The Cureのロバート・スミスが参加した快進作となっている。
エレクトロポップといえば、Chvrchesと言われる日もそう遠くはないに違いない。
PLASTICZOOMS
PLASTICZOOMS(プラスティックズームス)は東京を拠点に活動するエレクトロポップバンドである。
SHO ASAKAWA(Vo.)とJUN YOKOE(Ba.)の二人を中心に活動しており、ライブではサポートメンバーを含む4人編成で演奏している。
PLASTICZOOMSは2015年に活動拠点をベルリンに移し、電子音楽の本場で洗礼を受け、自身の音楽性を確立させている。
これまでに4枚のアルバムをリリースしており、5枚目のアルバム『Wave Elevation』を2021年1月にリリースした。
PLASTICZOOMSの音楽性はポストパンクとニュー・ウェイヴ由来のエレクトロポップが特徴で、The Horrorsが好きなリスナーにおすすめしたい。
Working Men’s Club
Working Men’s Club(ワーキング・メンズ・クラブ)はイギリス、ウェスト・ヨークシャー出身のエレクトロポップバンドである。
バンドのリーダーSydney Minsky-Sargeantは18歳の若さで完成度の高い電子音楽を作り上げている俊英として注目を集めている。
デビューアルバム『Working Men’s Club』を2020年にリリースしており、昨年の年間ベストに多数選出。
本国イギリスではFat White Family、Mac De Marcoらとツアーを行っており、チケットをソールドさせるほどの人気を誇っている。
Working Men’s Clubの音楽性はテクノがベースにある硬質なロックサウンドであり、New Orderが好きなリスナーに刺さること間違いなしだ。
W.H.Lung
W.H.Lung(W.H.ラング)はイギリス・マンチェスター出身のエレクトロポップバンドである。これまでにデビューアルバム『Incidental Music』をリリースしており、2021年9月3日にセカンドアルバム『Vanities』をリリースする。
デビューアルバムリリース時はトリオ編成であったが、新作をリリースするにあたり5人編成に進化している。
W.H.Lungの音楽はあのNew Orderを生んだエレクトロポップの本場、マンチェスター出身ということもあり、反復するごとに中毒性が増していくように設計された音楽を作っている。
Lillies and Remains
Lillies and Remains(リリーズ・アンド・リメインズ)はKENTとKAZUYAによる二人組のロックバンドである。これまでに3枚のアルバムをリリースしており、2021年には2曲のシングル「Greatest View」、「Falling」を連続リリースした。
寡作なアーティストではあるものの、どの作品もクオリティが高いことから元BLANKEY JET CITYの浅井健一やメタルギアシリーズを手掛けた小島秀夫など、愛好しているアーティストやクリエイターは多い。
Lillies and Remainsの音楽性はニュー・ウェイヴ、エレクトロポップはもちろん、EBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)まで多岐に渡る。
彼らはこれまでThe SmithやEcho & the Bunnymenなどをカバーしており、80年代のUKロックロックが好きなリスナーは必聴である。
Stats
Stats(スタッツ)はイギリス・ロンドンを拠点に活動するエレクトロポップバンドである。
フロントマンのエド・シードはDua LipaやLa Rouxで演奏しており、実力派プレイヤーである。
Memphis Industriesからデビューアルバム『Other People’s Lives』をリリースしており、最新アルバム『POWYS 1999』は2020年11月にリリースされた。
Statsの音楽はアーティスト写真のごとく、一度制作した音楽をリミックスして再編集するかのように作り込まれており、その上にオタッキー(オタクっぽい)なダンスビートがサウンドを引き立たせている。
ちなみにLillies and RemainsのKENTが最近、Spotifyのプレイリストを公開していたのだが、Statsの曲も入っていたので、エレクトロポップのリスナーだけでなく、Lillies and Remainsのファンにも是非、聴いて欲しい。(2021年9月4日追記)
Shura
Shura(シャウラ)はイギリスを拠点に活動するアレクサンドラ・リラデントンによるプロジェクトである。
これまでに2枚のアルバムをリリースしており、最新アルバム『forevher』はアメリカのインディーレーベルでオノ・ヨーコやFaye Websterを輩出したSecretly Canadianから2019年8月にリリースされた。
Shura(シャウラ)の音楽の特徴はエレクトロ・ポップを基本としているが、初期はドリームポップにも括られるサウンドであった。
しかし最新アルバム『forevher』はPrinceから影響を受けたミネアポリスサウンドを取り込むことで新たな音像を作り出すことに成功している。
ちなみにShuraこと、アレクサンドラ・リラデントンはレズビアンであることを公言しており、その生き方こそが彼女の表現したい音楽の本質である。
エレクトロポップに限らず、ドリームポップのリスナーにも聴いて欲しい。(2021年9月4日追記)
Roosevelt
Roosevelt(ルーズヴェルト)はドイツを拠点に活動するプロデューサーであり、マルチプレイヤーのマリウス・ラウバーによるプロジェクトである。
これまでに3枚のアルバムをリリースしており、2021年2月26日に最新アルバム『Polydans』をリリースしている。
Rooseveltの音楽はチル・ウェイブをカラフルにし、ダンスミュージックであることに焦点を当てたサウンドが特徴である。
一節によるとチル・ウェイブはエレクトロポップから派生した音楽と言われており、Roosevelt自身がWashed Outともコラボしていることからもその関連性がよく分かる。
是非、チル・ウェイブのリスナーにも聴いて欲しい音楽である。(2021年9月4日追記)
The fin.
The fin.(ザ・フィン)は兵庫県出身のエレクトロポップバンドである。
もともとは4人組のバンドであったが、現在はYuto Uchino(Vo./Syn./Gt.)、Kaoru Nakazawa(Ba.)の二人組となっている。
活動初期は関西を中心に活動していたが、2016年からイギリスを拠点に活動している。
これまでに2枚のアルバムをリリースしており、最新曲「Old Canvas」は2021年7月9日にリリースされた。
The fin.の特徴は奥行きのあるシンセと跳ねるようなリズムとのコンビネーション、そして一聴するとギターらしくないギターサウンドにある。
BELONGで行った以前のインタビューでは自身の音楽を説明する際、Tame ImpalaとWashed Outを引き合いに出していたが、そういったリスナーにも届く音楽である。(2021年9月4日追記)
THE SPELLBOUND
THE SPELLBOUND(ザ・スペルバウンド)はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之とTHE NOVEMBERSの小林祐介によるデュオである。ライブではサポートメンバーによるツインドラム編成(Boom Boom Satellitesのサポートドラマーであった福田洋子、yahyelのメンバーである大井一彌が参加)で行われる。
彼らは2020年12月に結成したばかりで、これまでに5枚のシングルをリリースしている。
THE SPELLBOUNDの特徴は言うまでもなく、BOOM BOOM SATELLITESとTHE NOVEMBERSの良いとこ取りである。
中野による複雑かつ精緻なエレクトロサウンドとフェミニンな小林の歌唱がマッチしており、出会うべくして出会ったコラボレーションであると確信させられる。
BOOM BOOM SATELLITESとTHE NOVEMBERSのファンだけでなく、より多くのリスナーに届いて欲しい音楽である。(2021年9月4日追記)
エレクトロポップ新世代まとめ
この記事ではエレクトロポップの新世代アーティストとして、10組(Chvrches、PLASTICZOOMS、Working Men’s Club、W.H.Lung、Lillies and Remains、Stats、Shura、Roosevelt、The fin.、THE SPELLBOUND)を取り上げた。
いずれのバンドもニュー・ウェイヴ黎明期のバンドに影響を受けており、先達の良さを踏襲しながらも自分たちならではのルーツと組み合わせて新しい音楽を作っている。
そんなエレクトロポップを刷新していく彼らが下の世代に影響を与えていくものと確信している。
エレクトロポップ関連記事
エレクトロポップの関連記事について、BELONGではこれまでにChvrches、PLASTICZOOMS、Working Men’s Club、Lillies and Remains、Stats、Shura、Roosevelt、The fin.、THE SPELLBOUNDの記事を取り上げている。
ライター:yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻
これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。
過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。
それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。
現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。
今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@boriboriyabori