最終更新: 2022年3月19日
AURORA(オーロラ)がサードアルバム『The Gods We Can Touch』をリリースした。
この記事では、先行シングル曲の一つである「Heathens」の歌詞を和訳し、BELONG Media独自の解釈で内容を考察している。
アダムとイヴの神話で禁断の果実を口にしたイヴが死と引き換えに手にした自由。
神話をもとに描かれる、AURORAが送る女性へのメッセージとは。
目次
AURORAとは
AURORA(オーロラ)ことオーロラ・アクスネスはノルウェーを拠点に活動している女性シンガーソングライター兼プロデューサー。
ビリー・アイリッシュが影響を受けたアーティストの一人としても知られている。
2016年にファーストアルバム『All My Demons Greeting Me as a Friend』をリリースし、ノルウェーのグラミー賞と呼ばれるSpellemann(スペッレマン)でポップ・ソロ・アーティスト賞を受賞。
2019年にセカンドアルバム『A Different Kind of Human (Step 2)』、2022年にサードアルバム『The Gods We Can Touch』をリリースした。
Heathens
AURORA(オーロラ)の新曲「Heathens」は、サードアルバム『The Gods We Can Touch』の先行シングル。
AURORAは「Heathens」について以下のようにコメントしている。
“遠い昔、イヴは悪と善の木に吊るされた禁断のリンゴをかじった。その行為によって、彼女は人間に自由意志を与えた。私はそれをとても美しいと思うし、彼女や彼女のような女性に敬意を表したいと思ったの。彼女や彼女のような女性たちは、この世界で少しずつ私たちに自由を与えてくれた。好きなように生き、探求し、味わう自由。私は、人生はあらゆる色で生きるべきだと思う。だからこそ、私たちは異教徒(heathens)のように生きるの。”
Heathens歌詞和訳
AURORA(オーロラ)の新曲「Heathens」について。
アダムとイヴの神話、そして女性の自由がテーマの歌詞を和訳して内容を掘り下げていく。
彼女は世界と契約を結んだ
望むもの全てが手に入るの
だが決して貪欲に望むことはない
彼女は何が自分に相応しいか分かっている
みんな空から優雅に降ってきた
そして彼女の柔らかい抱擁に包まれて地上に降り立った
彼女は愛と人生を全て捧げたわ
みんな彼女と共に生きていくのよ
“She bargains with the world
So everything she wants will come to her
With no greed inside her mind
She knows what she deserves
We fell from sky with grace
And landed in her soft and warm embrace
She gave her love, her gift of life
So we could live with her”
私たちは異教徒のように生きているの
エデンの園にある知恵の樹から盗み出して
自由を掲げて生きている
触れるものは全て毒なの
だから私たちは異教徒のように生きているのよ
“That is why we live like heathens
Stealing from the trees of Eden
Living in the arms of freedom
And everything we touch is evil
That is why we live like heathens”
石や土、そして塵
私たちが交わしたのは許されない契約だった
あなたが抱く希望や信仰、そして感触も全てに価値はないの
私たちはただ欲望に導かれるだけ
もう呼ばれることのない名前を叫んで
火刑で亡くなっていった人々へ涙を流す
私たちは善良で勇敢な人々の上に成り立っている
そして奴隷となって亡くなっていった人々の上にも
“The stone, the dirt, the dust
The unforgiving promise made to us
Unworthy of your light, your god, your touch
We’re guided by the lust
We cry the fallen names
We cry for those who burn beneath the flame
We stand beside the good and brave
The broken and enslaved”
私たちは異教徒のように生きているの
エデンの園にある知恵の樹から盗み出して
自由を掲げて生きている
触れるものは全て毒なの
だから私たちは異教徒のように生きているのよ
“That is why we live like heathens
Stealing from the trees of Eden
Living in the arms of freedom
And everything we touch is evil
That is why we live like heathens”
あなたが触れる物は全て彼女の物
私たちに愛を授けてくれるのは感情を持たない母親
あなたが思いを寄せれば、母親の愛はあなたに届くわ
“Everything you touch will be hers
A mother with no heart will give love
Her love is yours, but only if you give your heart to her”
私たちは異教徒のように生きているの
エデンの園にある知恵の樹から盗み出して
自由を掲げて生きている
触れるものは全て毒なの
だから私たちは異教徒のように生きているのよ
“That is why we live like heathens
Stealing from the trees of Eden
Living in the arms of freedom
And everything we touch is evil
That is why we live like heathens
That is why we live like heathens
That is why we live like heathens”
Heathensのテーマについて
AURORA(オーロラ)の新曲「Heathens」は、アダムとイヴの神話をもとに描かれる女性の自由をテーマにした楽曲である。冒頭の歌詞では、イヴが禁断の果実を食べたことにより人間としての人生が始まり、自由を得たことを表している。
“彼女は世界と契約を結んだ
望むもの全てが手に入るの
だが決して貪欲に望むことはない
(中略)
彼女は愛と人生を全て捧げたわ
みんな彼女と共に生きていくのよ”
Heathens(異教徒)とは
ここでタイトル「Heathens(異教徒)」が登場する。“Heathens”という単語は、キリスト教徒やユダヤ教徒が他宗教の人々を指して使われることが多い言葉であり、AURORA自身が特定の宗教に縛られない人生を歩んでいる、と読み解ける。
そしてイヴが禁断の果実を食べたことにより、罪を背負う代わりに自由を手に入れたことが次の歌詞で示唆されている。
“私たちは異教徒のように生きているの
エデンの園にある知恵の樹から盗み出して
自由を掲げて生きている
触れるものは全て毒なの
だから私たちは異教徒のように生きているのよ”
キリスト教の創世記との関係
次の歌詞に登場する石や塵といった言葉はキリスト教の『創世記』に載っている、神が土の塵で人(アダム)を形作りそこへ息を吹きかけると人間になった、という言い伝えに由来している。
そして続く“許されない契約”とは、禁断の果実を食べたことによって人間は死(寿命)を与えられたことを指している。
“石や土、そして塵
私たちが交わしたのは許されない契約だった”
異教徒として生きるAURORAは神の存在や宗教のしきたりを信じていない、ということが次の歌詞で表現されている。
“あなたが抱く希望や神、そして感触も全てに価値はないの
私たちはただ欲望に導かれるだけ”
自分の人生を犠牲にしてでも間違ったことを正そうとしてきた人々や、より良い世界のために立ち上がる現代の人々の上に我々の豊かな生活がある、ということが次の歌詞で描かれている。
“私たちは善良で勇敢な人々の上に成り立っている
そして奴隷となって亡くなっていった人々の上にも”
AURORAのコメント
AURORAは「Heathens」に関してこのようにコメントしている。
“この歌に登場する母親は、どこにも居場所がない人々へ愛と居場所を提供してくれる存在なの。それこそがこの曲の主旨でもある。ただ女性であるが故に罰を与えられたり、火刑で亡くなっていった女性たちからインスパイアされた。そんな女性たちへ贈る歌なの。”
アダムとイヴの神話では、イヴが禁断の果実を食べて死を受け入れる代わりに人間は自由を得た。
神話をもとに、現代社会における女性の社会的地位や権利の自由を訴えて立ち上がる人々へ贈る讃歌こそが「Heathens」である。
AURORAアルバムリリース
3rdアルバム『The Gods We Can Touch』
発売日: 2022/1/21
収録曲:
1. Forbidden Fruits of Eden
2. Everything Matters
3. Giving in to the Love
4. Cure for Me
5. You Keep Me Crawling
6. Exist for Love
7. Heathens
8. The Innocent
9. Exhale, Inhale
10. Temporary High
11. A Dangerous Thing
12. Artemis
13. The Blood in the Wine
14. This Could Be a Dream
15. A Little Place Called the Moon
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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2ndアルバム『A Different Kind Of Human – Step 2』
発売日: 2019/6/7
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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1stアルバム『All My Demons Greeting Me as a Friend』
発売日: 2016/3/11
フォーマット:Mp3、CD
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AURORAプロフィール
“オーロラ・アクスネス(Aurora Aksnes、1996年6月15日生まれ)は、ノルウェー出身のシンガー、ソングライター、ダンサー、レコードプロデューサーである。スタバンゲルで生まれ、ホーレとオスの町で育った彼女は、6歳の時に初めて曲を作り、ダンスを習い始めた。彼女の曲のいくつかはオンラインでアップロードされ、ノルウェーで人気を博した後、彼女は2014年にペトロリアムレコード、デッカ、グラスノートレコードとレコーディング契約を締結した。オーロラは、ヒット曲「ランナウェイ」を含むデビューEP『Running with the Wolves』(2015)で知名度を高めた。同年末、彼女はジョン・ルイスのクリスマス広告にバックトラックを提供し、オアシスの曲「Half the World Away」のカバーを歌った。オーロラのデビュー・アルバム『All My Demons Greeting Me as a Friend』(2016)は、ヨーロッパ各国でチャートインし、ノルウェーでは2度プラチナ認定を受けた。2枚目のEP『Infections of a Different Kind (Step 1)』(2018)は2部構成のアルバムの第1部で、第2部は2枚目のスタジオ・アルバム『A Different Kind of Human (Step 2)』(2019)であった。2022年1月21日に3枚目のスタジオ・アルバム『The Gods We Can Touch』がリリースされた。彼女の音楽は主にエレクトロポップ、フォーク、アートポップで、ヴォーカルは「エーテル的」と称される。彼女はピアノ演奏のみでキャリアをスタートさせたが、後にパーカッションなどにも携わり、音楽制作を行った。ソロ活動に加え、Icarus、Askjell、Lena、Travis、The Chemical Brothersなどのアーティストとのコラボレーションや共同作曲も行っている。また、「Girls」、「Frozen II」、「Wolfwalkers」などの映画やドラマのサウンドトラックにも参加している。”
AURORAの評価
“私の心をワクワクさせる新しい音楽を遂に見つけたわ” – ケイティ・ペリー
“まさにインスピレーション” – ケミカル・ブラザーズ
“『こういう音楽を作りたい』 と感じたの” – ビリー・アイリッシュ
“オーロラのライヴは本当に素晴らしい創造の一つ。まさに魔法” – ショーン・メンデス
“大大大大好き” – トロイ・シヴァン
“本当にオーロラが好きでたまらないの” – ロード”
AURORA代表曲(Youtube)
- AURORA(オーロラ) – Cure For Me (Official Video)
- AURORA(オーロラ) – Runaway
- AURORA(オーロラ) – The Seed
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
BELONG Mediaのライター/翻訳。
高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。
13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。
関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。
2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。
2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。
普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。
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