最終更新: 2022年5月1日

Orville Peck(オーヴィル・ペック)が新作アルバム『Bronco』をリリースした。

この記事では、シングル曲「The Curse of the Blackened Eye」の歌詞を和訳し、BELONG Media独自の解釈で内容を掘り下げている。

虐待やトラウマによる心の傷を抱えた人々。

Orville Peckが「The Curse of the Blackened Eye」で描いた、自身の辛い経験を通して伝えたかったメッセージとは?

Orville Peckについて

Orville Peck(オーヴィル・ペック)2-min (1)
撮影:Julia Johnson
Orville Peck(オーヴィル・ペック)はカナダ出身のシンガーソングライター。

フリンジの付いたマスクを常に身につけており、公に顔を晒したことはない。

Lady Gagaのアルバム『Born This Way』の10周年を記念して発売された『BORN THIS WAY THE TENTH ANNIVERSARY』では、「Born This Way」をカバーし作品に参加している。

2019年にファーストアルバム『Pony』をSub Popからリリース。

そして2022年にセカンドアルバム『Bronco』をColumbia、 Sub Popからリリースした。

The Curse of the Blackened Eye

Orville Peck(オーヴィル・ペック)の「The Curse of the Blackened Eye」は、セカンドアルバム『Bronco』の先行シングル。

ミュージックビデオには、ドラマ『ウォーキング・デッド』のダリル役でも知られるノーマン・リーダスが出演している。

Orville Peck(オーヴィル・ペック) – The Curse of the Blackened Eye (Official Video)

The Curse of the Blackened Eye歌詞和訳

Orville Peck(オーヴィル・ペック)の「The Curse of the Blackened Eye」について。

虐待によるトラウマがテーマの歌詞を和訳し、内容を考察していく。

俺はずっと隠れてた、目のあざの呪いから逃げてきたのさ
ダーリン、常に追いかけられてるように感じるんだ
去年は何もせずに過ごしながら何度も死にたいと思った
全てを後にした今、ようやく夜が訪れた

“I’ve been hiding out, running from the curse of the blackened eye
Darlin’ I can feel it comin’ everytime
I sat around last year wishing so many times that I would die
Left it all and now I can see the night”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)「The Curse of the Blackened Eye」歌詞(Genius Lyrics)

本当なんだ
本当さ、それは常に付きまとってくる
俺にはもう失う物はない
それを見逃すこともないさ

“It’s true
True, it follows me around
Nothing to lose
Wouldn’t miss it anyhow”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)「The Curse of the Blackened Eye」歌詞(Genius Lyrics)

これは諦めることではない、何を持っていくかだ
キスを重ねる度にそれが近づいてくるように感じる
克服するか認めるか、ただ驚いたフリをしていればいい
さぁコインを弾け、もう嘘をつくのはうんざりだ

“It ain’t the letting go it’s more about the things that you take with
And I can feel it getting closer with every kiss
You gotta beat or join ‘em, try to act surprised
Just flip a coin, ‘cause I’m too bored to lie”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)「The Curse of the Blackened Eye」歌詞(Genius Lyrics)

本当なんだ
本当さ、それは常に付きまとってくる
俺にはもう失う物はない
それを見逃すこともないさ

“It’s true
True, it follows me around
Nothing to lose
Wouldn’t miss it anyhow”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)「The Curse of the Blackened Eye」歌詞(Genius Lyrics)

逃げ道を作るべきだとずっと言われてきた
俺は優しすぎたのか、今にも心が折れそうだ
君が負った一生消えない傷を作品として表現してくれ
少年よ、お願いだから歌を歌ってくれないか

“Always said I should work on my escape
Have a heart too long, it’s bound to break
Acting out the opus of your last eternal ache
Boy, just sing the song for heaven’s sake”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)「The Curse of the Blackened Eye」歌詞(Genius Lyrics)

本当なんだ
本当さ、それは常に付きまとってくる
俺にはもう失う物はない
それを見逃すこともないさ
本当なんだ
本当さ、それは常に付きまとってくる
俺にはもう失う物はない
もうすでに全てを失ったんだから

“It’s true
True, it follows me around
Nothing to lose
Wouldn’t miss it anyhow
It’s true
True, it follows me around
Nothing to lose
Lost it all anyhow”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)「The Curse of the Blackened Eye」歌詞(Genius Lyrics)

北東の太陽
北東の太陽
あぁ、北東に輝く太陽よ

“Northeast sun
Northeast sun
Yeah, Northeast sun”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)「The Curse of the Blackened Eye」歌詞(Genius Lyrics)

The Curse of the Blackened Eye歌詞和訳まとめ

虐待によるトラウマ(The Curse of the Blackened Eye歌詞和訳まとめ)
クレジット:pexels
Orville Peck(オーヴィル・ペック)の「The Curse of the Blackened Eye」は、虐待によるトラウマがテーマの楽曲である。

Blackened Eyeの意味

冒頭に登場するタイトル「The Curse of the Blackened Eye(目のあざの呪い)」とは、虐待によるあざのことを指しており、主人公は虐待のトラウマに今も苦しめられていることが表現されている。

そして続く、“何度も死にたいと思った”という歌詞は、Orville Peckがアルバムの制作期間中にうつ病に苦しんだこととリンクしており、それに関してインタビューで以下のように答えている。

“個人的に周りの環境がとても悪かったんだ。人生で初めて命を絶とうと思ったし、ここにいたくないという気持ちが強かったんだ。”

引用元:He shields his identity with a mask, but country music lets Orville Peck be himself(npr/wvtf.org)

“俺はずっと隠れてた、目のあざの呪いから逃げてきたのさ
ダーリン、常に追いかけられてるように感じるんだ
去年は何もせずに過ごしながら何度も死にたいと思った”

Orville Peckのトラウマ

サビの歌詞では、主人公が虐待のトラウマを抱えていることを示しているが、Orville Peck本人もトラウマを抱えていることがインタビューで語られている。

“トラウマを長年抱えていて、それが今もつきまとっていると気付いたんだ。例え自分がホテルに一人でいる時も、グラミー賞の会場でも、トラウマに常に見張られている感覚がある。それがこの曲のコンセプトでもあるんだ。”

引用元:I really love being this source of [queer] visibility for people within the country landscape(diy)

“本当なんだ
本当さ、それは常に付きまとってくる
俺にはもう失う物はない
それを見逃すこともないさ”

次の歌詞、“キスを重ねる度にそれが近づいてくるように感じる”とは、以前の恋人との虐待関係がトラウマとなり、新たな恋を始める際にも当時のトラウマを思い出してしまうという“呪い”に苦しめられた主人公の心情を映し出している。

“これは諦めることではない、何を持っていくかだ
キスを重ねる度にそれが近づいてくるように感じる”

次の歌詞に登場する“作品”は「The Curse of the Blackened Eye」を示唆しており、Orville Peck本人も心の傷が癒えずにいることが表現されている。

“君が負った一生消えない傷を作品として表現してくれ
少年よ、お願いだから歌を歌ってくれないか”

Orville Peckからのコメント

Orville Peckは「The Curse of the Blackened Eye」のテーマに関してインタビューでこうコメントしている。

“「The Curse of the Blackened Eye」は虐待とその余韻がテーマなんだ。虐待を受けた後でもその影響から抜け出せない。うつ病や薬物乱用についても同じことが言えるかもしれない。だからこそ、このテーマが重くなりすぎないように、遊び心のある表現で描きたかったんだ。”

引用元:He shields his identity with a mask, but country music lets Orville Peck be himself(npr/wvtf.org)

苦痛な経験によって生まれたトラウマという一種の“呪い”によって、長年心に苦しみを抱えている人々。

心の傷が完全に癒えることはないかもしれないが、“トラウマで苦しんでいるのはあなただけはない”、と自身の経験を共有した歌こそが「The Curse of the Blackened Eye」である。

Orville Peckアルバム作品

Orville Peck(オーヴィル・ペック)はこれまでに2枚のアルバム(『Pony』、『Bronco』)をリリースしている。

2ndアルバム『Bronco』

発売日: 2022/4/8
収録曲:
01.Daytona Sand
02.The Curse of the Blackened Eye
03.Outta Time
04.Lafayette
05.C’mon Baby, Cry
06.Iris Rose
07.Kalahari Down
08.Bronco
09.Trample Out the Days
10.Blush
11.Hexie Mountains
12.Let Me Drown
13.Any Turn
14.City of Gold
15.All I Can Say
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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1stアルバム『Pony』

発売日: 2019/3/27
フォーマット:Mp3、CD、カセット
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Orville Peckプロフィール

Orville Peck(オーヴィル・ペック)

“Orville Peck(オーヴィル・ペック)は、カントリーミュージック界で最も新しいアウトローです。手作りのフリンジ付きマスクは、アイスブルーの目以外の特徴を隠すためのものです。華麗なヌーディ・スーツはカントリーの黄金期を思い起こさせます。2019年3月にSub Pop Recordsからデビュー・アルバム『Pony』をリリースして以来、この謎めいたシンガーソングライターはNPRやBillboard、The New Yorker、Rolling Stone、The Los Angeles Times、Uncut、The Fader、The Bluegrass Situation、Vogueで取り上げられています。”

引用元:Orville Peck(オーヴィル・ペック)プロフィール(Sub Pop)

Orville Peck代表曲(Youtube)

  • Orville Peck(オーヴィル・ペック) – C’mon Baby, Cry (Official Video)
  • Orville Peck(オーヴィル・ペック) – Dead of Night [OFFICIAL VIDEO]
  • Orville Peck(オーヴィル・ペック) – Born This Way (The Country Road Version) [Official Audio]

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Orville Peck(オーヴィル・ペック)の関連記事について、BELONGではこれまでにデビューアルバム『Pony』リリース記事、LGBTアーティストの新世代5組でOrville Peckを取り上げている。

  • Orville Peck、デビューアルバム『Pony』リリース
  • LGBTアーティストの新世代5組
  • ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
    Rio Miyamoto
    BELONG Mediaのライター/翻訳。

    高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。

    13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。

    関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。

    2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。

    2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。

    普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。

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