最終更新: 2022年6月18日
フランスのバンド、Phoenix(フェニックス) が新曲「Alpha Zulu」を発表した。
本記事ではPhoenixの最新曲「Alpha Zulu」を和訳し、BELONG独自の解釈で内容を考察している。
キリスト教の宗教観と死を予感したことで生まれた「Alpha Zulu」とはどのような曲なのだろうか?
目次
Phoenixとは
フェニックス (Phoenix) はフランスで結成されたバンドである。2000年にアルバム『United』でデビューし、2017年にはサマー・ソニックに出演している。
音楽性としては、ロックやポップスなど様々なジャンルからの影響をエレクトロでダンサブルに仕上げた楽曲が多い。
そのためバンドは個々人の楽器パートに縛られずシンセサイザーなども多用し楽曲制作を行う。
メンバーは以下の4人である。
・トーマス・マーズ(Vo.)
・デック・ダーシー(Ba.)
・ローラン・ブランコウィッツ(Gt.)
・クリスチャン・マザライ(Gt.)
Alpha Zulu
2022年6月にPhoenix(フェニックス) は新曲「Alpha Zulu」を発表した。
本作は2017年リリースのアルバム『Ti Amo』以来、5年ぶりとなる新作リリースであり、近いうち「Alpha Zulu」を収録した最新アルバムのリリースも予告されている。
MVは中世の絵画が楽曲「Alpha Zulu」を歌うという内容で宗教的なテーマの歌詞とマッチした世界観を醸し出している。
Phoenix – Alpha Zulu (Official Video)
Alpha Zulu和訳
Phoenix(フェニックス)の最新曲「Alpha Zulu」について和訳し、解説していく。
妥協するかどうか、時間をかけて考えてごらん
今じゃなくて、また後日教えてくれたらいいから
君は最後の日が来る前に私を迎えに来ようとしている
お辞儀をして、空に誓いを立てるよ、君が待ってくれるなら
“Take a moment to decide to compromise
You let me know some other time, some other day
You’re now closer to the start than to the limit
Take a bow, vow to the sky, if you want to wait, great”
ハレルヤを歌う
君の信じる神に祈り、嘘を隠してもらう
神もしくは導師か
ハレルヤを歌う
命がけで逃げろ、そして目を覆うんだ
アルファ・ズル
“Woo ha, singin’ hallelujah
Pray to your God, cover your lies
God or guru, hey, hey, hey
Woo ha, singin’ hallelujah
Run for your life, cover your eyes
Alpha Zulu, hey, hey, hey”
理由を教えて、だけどタイミングや方法は言わなくていいから
私は1953年には既に51歳で死んでいたに違いない
“星々を数えていたから”というのが私に許された唯一の言い訳だ
コンソメスープには紫の雲が浮いている
“Tell me why, don’t tell me when, don’t tell me how
I must have died at fifty-one in 1953
Just accountin’ to the stars, the only reason I’m allowed
There’s a purple cloud in the consommé, ouais”
ハレルヤを歌う
君の信じる神に祈り、嘘を隠してもらう
神もしくは導師か
ハレルヤを歌う
命がけで逃げろ、そして目を覆うんだ
アルファ・ズル
“Woo ha, singin’ hallelujah
Pray to your God, cover your lies
God or guru, hey, hey, hey
Woo ha, singin’ hallelujah
Run for your life, cover your eyes
Alpha Zulu”
なぜ、その体で生きることを選んだのか
どうして、その体で私と共に生き続けられないのか
なぜ、その体で生きることを選んだのか
どうして、その体で私と共に生き続けられないのか
“Why choose your body over time?
Why choose your body over time with me?
Why choose your body over time?
Why choose your body over time with me?
Hey, hey, hey”
アリバイを成立させるために黙秘するのか
君にとっての永遠のモナリザは斬首される
変えようともしないし、もう二度と挑戦しないだろう
私の体に魂が戻るまで、ホログラムとしてタイブレークの時を待ち続ける
“I get your close up to sublime the alibi
Your Mona Lisa immortalized, décapitée
I wouldn’t change, I wouldn’t try another second
‘Til I rise, a hologram waiting for the tiebreak”
ハレルヤを歌う
君の信じる神に祈り、嘘を隠してもらう
神もしくは導師か
ハレルヤを歌う
命がけで逃げろ、そして目を覆うんだ
アルファ・ズル
“Woo ha, singin’ hallelujah
Pray to your God, cover your lies
God or guru, hey, hey, hey
Woo ha, singin’ hallelujah
Run for your life, cover your eyes
Alpha Zulu”
なぜ、その体で生きることを選んだのか
どうして、その体で私と共に生き続けられないのか
なぜ、その体で生きることを選んだのか
どうして、その体で私と共に生き続けられないのか
“Why choose your body over time?
Why choose your body over time with me?
Why choose your body over time?
Why choose your body over time with me?
Hey, hey, hey”
なぜ、その体を選んだのか
どうして、その体を選んだのか
“(Why choose your body over time?
Why choose your body over time?)
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey”
Alpha Zulu和訳まとめ
Phoenix(フェニックス) の新曲「Alpha Zulu」はキリスト教的宗教観における死がテーマの楽曲である。まずAlpha Zuluという言葉の意味を見てみる。Alpha Zuluの意味
Alpha Zuluという言葉には“全知全能の神”という意味がある。語源は“アルファベットA〜Z”から派生し“全て”という意味から。
そして作詞者のトーマスは嵐の中の機内でパイロットの“Alpha Zulu”という神に祈るような言葉を聞いて、直感的に飛行機の墜落と死を予感し、その出来事が楽曲「Alpha Zulu」の誕生に繋がった。
トーマスのインタビュー
Phoenixのメンバーであるトーマスは「Alpha Zulu」について、下記のようにインタビューで答えている。
“僕にとって飛行機は怖くて、それを初めて聞いたとき、メーデー(遭難信号)に聞こえたんだ。「アルファ・ズール、アルファ・ズール、墜落する」みたいに。
それが心に引っかかって、スタジオで不思議な形で出てきたんだ。僕らの音楽制作はとても協力的で、まるでセラピーのようなものなんだ。
そして、何をしたのかわからないけど、時間の感覚もすごく変な感じだった。パンデミック中に長い間、この作品に取り組んだから。
最近出たアルバムはすべて、多かれ少なかれパンデミックの(影響を受けた)レコードだと思う。どれも人生の奇妙な瞬間とリンクしているはずなんだ。いつ始まって、いつ止まったのか、どれくらいの期間止まっていたのか、よくわからない。
でも、パンデミックだけでなく、トンネルの終わりが見えてきたある時点で少なくとも、「ああ、ツアーがあるんだ」と思うことができた。
そしてそれは、このレコードが出る可能性が生まれたということだったんだ。そうしたら、望んでいた楽しいピースが全部集まって、このアルバムができた。
そして、その自己反省の時間を使い、それを使うことで音楽になるんだ。だから、何もしないで過ごした時間が、このレコードに現れているんだと思う。そしてそれは聴く人にとっての何かでもあると思う。”
Alpha Zuluの歌詞について
楽曲「Alpha Zulu」の歌詞では“肉体から魂が離れ、そして神に迎えられる”という価値観の中で、その前提を疑問視している。
例えば次のフレーズだ。
“どうして、その体で私と共に生き続けられないのか
Why choose your body over time with me?”
このフレーズは神からの視点と取ることが出来る。これには“死後の天国であれば永遠の安らぎを得られるにも関わらず、人間はなぜ肉体という限りあるものに執着するのか”というニュアンスが込められており、一見、天国への憧れを意味するように見える。
だが実は反対の“死後の世界を気にし過ぎるあまり、現世における愛する人、時間などを無下にすべきでは無い”というメッセージが込められているとも取れる。
なぜ逆説的に取るのかというとサビのフレーズで以下のように言及されているからである。
“君の信じる神に祈り、嘘を隠してもらう
Pray to your God, cover your lies”
“命がけで逃げろ、そして目を覆うんだ
Run for your life, cover your eyes”
このように宗教観を盲信するあまり、嘘をつく事もあり、本当に大切なものを見失わないようにというメッセージが込められている。
死の間際、人間が思う事は宗教的な話よりも、もっと普段の生活の中に溢れる大切なものを思う気持ちなのかもしれない。
実際に死を予感したトーマスが書いた詩であるからこそ説得力がある。
Alpha Zulu作品クレジット
Phoenix(フェニックス)の新曲「Alpha Zulu」のクレジットは下記となっている。
プロデューサー:Ian Kirkpatrick & Phoenix
作詞・作曲:Thomas Mars, Laurent Brancowitz, Deck d’Arcy & Christian Mazzalai
レーベル:Glassnote Records & Loyauté
リリース日:2022年6月1日
Phoenixアルバムリリース
Phoenix(フェニックス)はこれまでに6枚のアルバム(『United』、『Alphabetical』、『It’s Never Been Like That』、『Wolfgang Amadeus Phoenix』、『Bankrupt!』、『Ti Amo』)をリリースしている。
シングル『Alpha Zulu』
発売日: 2022年6月1日
フォーマット:Mp3
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6thアルバム『Ti Amo』
発売日: 2017年6月9日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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5thアルバム『Bankrupt!』
発売日: 2013年4月22日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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4thアルバム『Wolfgang Amadeus Phoenix』
発売日: 2009年5月25日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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3rdアルバム『It’s Never Been Like That』
発売日: 2006年5月15日
フォーマット:CD
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2ndアルバム『Alphabetical』
発売日: 2004年3月29日
フォーマット:CD
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1stアルバム『United』
発売日: 2000年6月12日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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Phoenixバンドプロフィール
“フランスのバンドPhoenixは、ボーカルのトーマス・マーズ、ベースのデック・ダーシー、ギターのクリスチャン・マザライがパリ郊外で演奏していたガレージ・バンドから発展した。クリスチャンの兄であるローランは、1995年にDaft Punkの前身となったバンドDarlin’が解散した際に、ギターでバンドに参加していた。
2年後、バンドはPhoenixと名乗り、自分たちのレーベルGhettoblasterから500枚のシングルをプレスした。A面はパンクロック、B面はクラウトロックで、彼らの多彩な嗜好をうかがわせるものだった。その後まもなく、彼らはパリを拠点とするSource Recordsと契約することになる。レーベルメイトであるAirのバックバンドとしてイギリスのテレビに出演した際、PhoenixはAirと知り合いになる。その影響もあり、70年代のディスコに非常に近いアプローチの「Heatwave」というシングルを発表した。
2000年にAstralwerksからリリースされたデビューアルバム『United』は、2ヶ月かけてレコーディングされた。このアルバムには、トーマ・バンガルテル(Daft Punk)、フィリップ・ズダール(Cassius)などの友人や家族がゲスト出演している。
その後、Phoenixは『Alphabetical(2004年)』、『It’s Never Been Like That(2006年)』を発表し、メインストリームでブレイクした『Wolfgang Amadeus Phoenix(2009年)』で絶賛を浴びた。3rdアルバムと4thアルバムの間の長い休みは、トーマスが父親(パートナーは映画監督のソフィア・コッポラ)になったことが一因であった。
『Wolfgang Amadeus Phoenix』のツアーを終えた直後、バンドは2010年後半にOscilloscope Laboratoriesに再集結し、いくつかの実験的なレコーディングセッションに乗り出した。翌年もパリでレコーディングを続け、2012年には共同プロデューサーであるフィリップ・ズダールの協力を得てレコーディングを完了し、マイケル・ジャクソンの『Thriller』をミックスしたコンソールで楽曲をミックスした。その成果として、2013年4月に『Bankrupt!』がリリースされた。
Phoenixは2014年に6枚目のアルバムの制作に着手し、ソフィア・コッポラ監督によるNetflixのホリデー・スペシャル『A Very Murray Christmas』に出演するために休養を取った。博物館、コンサート・ホール、テック・インキュベーターに改装された古いオペラハウスで大部分を録音した『Ti Amo』を2017年にリリース。
2019年秋、Phoenixはバンド結成30周年と同時に、デビュー・アルバムから約20年、グラミー賞を受賞した『Wolfgang Amadeus Phoenix』のLPリリースから10年を記念して、『Liberte, Egalite, Phoenix!』という回顧録を出版している。”
Phoenixの評価
“1999年にシングルを数枚リリースして注目を集めると、翌年2000年デビュー・アルバム『UNITED』を発表。ロックやソウルをエレクトロニクスと絶妙に融合させたその洗練されたポップ・サウンドが話題となり、スマッシュ・ヒットを記録、エールやダフト・パンクと並び新世代パリ・シーンを代表するバンドとして、その名を世界的なものとする。その後04年にはセカンド・アルバム『ALPHABETICAL』を、06年にサード『IT’S NEVER BEEN LIKE THAT』を発表、06年にはSUMMER SONIC 06への出演、そして07年には初の単独来日公演を大成功に収め、ここ日本でも熱烈なファンを獲得していく。
2009年、4作目となる『WOLFGANG AMADEUS PHOENIX』を発表、バンドが共同プロデューサーを迎えて制作した初の作品であると同時に、自らのレーベル“Loyaute”からの初リリースとなった今作で世界的にさらに大きな人気を博すこととなり、第52回グラミー賞では「最優秀オルタナティヴ・ロック・アルバム」を受賞、1991年に同賞が設立された以来、初のフレンチ・アーティストによる受賞となり、大きな話題を呼んだ。翌年にはSUMMER SONIC 09に出演(メンバーの体調不良により、大阪公演は残念ながらキャンセルに)、そして2010年には2度目のヘッドライン・ツアーを行う。
2013年春、待望の最新作『BANKRUPT!』を発表、全米チャート4位、ここ日本でも総合チャート18位と最高のチャート・アクションを記録、その洗練されたポップ・センスで世界中のファンを魅了した。”
Phoenix代表曲(Youtube)
- Phoenix(フェニックス) – If I Ever Feel Better
- Phoenix(フェニックス) – Trying To Be Cool (Official Video)
- Phoenix(フェニックス) – 1901(Official Video)
Seiya
ジャンルは幅広く音楽について研究するのが好きです。
楽器、レコード、ファッションも好きでその文脈からも音楽を楽しんでいきたいです。
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- Noel-Marble(音楽ブログ)フランスのバンド、Phoenix(フェニックス) が新曲「Alpha Zulu」を発表した。
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