最終更新: 2022年6月24日
Radiohead(レディオヘッド)『Amnesiac』のリリース21周年を記念して、収録曲「I Might Be Wrong」の新しいMVが公開された。
「I Might Be Wrong」には2バージョンのMVが存在し、以前までの実写のものに加えてアニメーションの映像が公開されている。
本記事ではこのタイミングで改めて「I Might Be Wrong」を和訳し、BELONG独自の解釈で楽曲の世界観を深掘りしていく。
「I Might Be Wrong」から見えてくる、トム・ヨークが書く歌詞の本質とは?
目次
Radioheadとは
Radiohead(レディオヘッド)はイギリスで結成されたバンドである。
メンバーは以下の通りである。
・トム・ヨーク(Vo.)
・ジョニー・グリーンウッド(Gt.)
・エド・オブライエン(Gt.)
・コリン・グリーンウッド(Ba.)
・フィル・セルウェイ(Dr.)
Radiohead(レディオヘッド)は1992年にメジャーデビュー以降から2022年の現在に至るまで様々な音楽性の変遷を辿りながら9枚のアルバムをリリースしている。
初期のアルバム『Pablo Honey』を始めとしたオルタナ路線からギターなどのバンドサウンドから距離を置いた『OK Computer』、
21世紀の問題作とまで言われる難解アルバム『Kid A』そして、その兄弟アルバムと言われる『Amnesiac』に収録されているのが「I Might Be Wrong」という曲である。
I Might Be Wrong
「I Might Be Wrong」はRadiohead(レディオヘッド)の5枚目のアルバム『Amnesiac』に収録されている楽曲。
先にも述べたようにこの度、新バージョンのMVが公開されたが内容は“少し不気味なアニメーション”である。(Chris Bran監督)
頭を抱えているメインキャラクターと歌うトム・ヨークの姿が交互に映し出される。
そしてこの世界観が“自分は正しいのか?”と自問自答する「I Might Be Wrong」の歌詞、そしてミニマルテクノ的なサウンドにとてもマッチしているように思える。
Radiohead – I Might Be Wrong(2008年7月19日公開)
Radiohead – I Might Be Wrong(2022年5月31日公開)
I Might Be Wrong 和訳
Radiohead(レディオヘッド)の楽曲「I Might Be Wrong」について和訳し、解説していく。
間違えたかもしれない、誤ったかもしれない
光が一瞬見えたような気がしたんだ
かつてはそう考えていた、以前までは
全てにおいて未来が見えていなかった
前までそう思っていた
“I might be wrong, I might be wrong
I could have sworn I saw a light coming on
I used to think, I used to think
There was no future left at all
I used to think”
心を開いて、再び始めよう
“Open up, begin again”
滝の流れに身を任せよう
幸せだった頃を思い出し、過去を振り返るな
絶対にだ
“Let’s go down the waterfall
Think about the good times and never look back
Never look back”
自分はどうしたいのか?これからどうしたいのか?
それを考えるのは君がもう側にいないからか?
“What would I do? What would I do?
If I did not have you?”
どうか心を開いてくれ
“Open up and let me in”
滝の流れに身を任せよう
それで私達は良い時を過ごせるから、何も問題ない
全てにおいて問題ない、何も問題ないんだ
“Let’s go down the waterfall
Have ourselves a good time, it’s nothing at all
It’s nothing at all, nothing at all”
行動し続けろ
行動を続けろ
“Keep it moving
Keep it moving”
I Might Be Wrong 和訳まとめ
Radiohead(レディオヘッド)の「I Might Be Wrong」の歌詞は“自分自身を見つめ直そうとする自問自答”の内容であった。それは曲名にもなっており、曲中で繰り返される“I Might Be Wrong”というフレーズが一番表している。
また、その自問自答ながらも答えに辿り着けていないように見える。
歌詞に見られる自己矛盾
「I Might Be Wrong」の歌詞の中で自己矛盾しているフレーズが多々あるからだ。以下に一部をリストアップする。
・間違えたかもしれない↔︎全てにおいて問題ない
・滝の流れに身を任せよう↔︎自分はどうしたいのか?
・滝の流れに身を任せよう↔︎行動し続けろ
要するに自身を振り返ったが、迷走してしまい、その結果“間違えたかもしれない”=I Might Be Wrongという内容なのである。
Radioheadの既存曲とのリンク
「I Might Be Wrong」の歌詞が持つ世界観は同時期にトムが書いたRadioheadの既存曲と共通していたりもする。
「I Might Be Wrong」には以下のフレーズが存在する。
“I used to think, I used to think
There was no future left at all
I used to think
かつてはそう考えていた、以前までは
全てにおいて未来が見えていなかった
前までそう思っていた”
これに対して例えば「Packt Like Sardines In A Crushd Tin Box」という曲では以下のようなフレーズが登場する。
何年も待ち続けたが
何も起こらなかった
“After years of waiting
Nothing came”引用元:Radiohead「Packt Like Sardines In A Crushd Tin Box」歌詞(Genius Lyrics)
また「Trans-Atlantic Drawl」(シングル「Pyramid Song」のB面収録)という曲では次のようなフレーズがある。
トンネルの先に見える光が見えるか?
“Do you see light at the end of the tunnel?”
上記3曲に共通するのは“見えない未来に対する不安”というテーマだ。
Radioheadの歌詞は作詞者のトム・ヨークの内面的な不安や苦しみを表現していると言われており、同時期のこれらの楽曲には共通の感情があるように見える。
また「I Might Be Wrong」の歌詞に出てくる“no future”というフレーズは70年代のパンクバンド、Sex Pistolsの楽曲から引用しているのではと推察されている。
これらの事からトムが“不確定な未来への不安”を強く感じていたと考察できる。
トム・ヨークらしさ溢れる歌詞
先にも述べた様にRadioheadはサウンド面で目まぐるしい音楽性の変遷を辿っている。その一方でRadioheadのトム・ヨークが書く歌詞はネガティブな人間の内面を表現したものが多く、その世界観はキャリア全体を通して一貫しており、それがRadioheadの楽曲らしさであるとも言える。
「I Might Be Wrong」にはこの独自の世界観が色濃く表れており、そういった意味で「I Might Be Wrong」の歌詞はRadioheadがどの様なバンドかを理解する為の“代表曲”と言えるのではないだろうか。
I Might Be Wrong作品クレジット
Radiohead( レディオヘッド)の新曲「I Might Be Wrong」のクレジットは下記となっている。
プロデューサー:Radiohead & Nigel Godrich
作詞・作曲:Thom Yorke, Jonny Greenwood, Ed O’Brien, Colin Greenwood & Philip Selway
レーベル:Parlophone Records & Capitol Records
リリース日:2001年6月4日
Radioheadアルバムリリース
Radiohead(レディオヘッド)はこれまでに9枚のアルバム(『Pablo Honey』、『The Bends』、『OK Computer』、『Kid A』、『Amnesiac』、『Hail To the Thief』、『In Rainbows』、『The King Of Limbs』、『A Moon Shaped Pool』)をリリースしている。
9thアルバム『A Moon Shaped Pool』
発売日: 2016/5/8
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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8thアルバム『The King Of Limbs』
発売日: 2011/2/18
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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7thアルバム『In Rainbows』
発売日: 2007/10/10
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6thアルバム『Hail To the Thief』
発売日: 2003/6/9
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5thアルバム『Amnesiac』
発売日: 2001/6/5
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4thアルバム『Kid A』
発売日: 2000/8/3
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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3rdアルバム『OK Computer』
発売日: 1997/5/21
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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2ndアルバム『The Bends』
発売日: 1995/3/13
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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1stアルバム『Pablo Honey』
発売日: 1993/2/22
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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Radioheadバンドプロフィール
“21世紀初頭のある時点で、レディオヘッドはバンド以上の存在となった。彼らは、デヴィッド・ボウイ、ピンク・フロイド、そしてトーキング・ヘッズから王座を受け継ぎ、ロックにおける大胆不敵さと冒険心すべてを示す試金石となったのだ。後者のグループはバンド名の由来となったが(1986年の『トゥルー・ストーリーズ』のアルバム・トラック)、レディオヘッドは決してヘッズのようなサウンドではなく、ボウイから多くを学んだわけでもなく、実験に対する意欲を除けば、そのようなことはなかった。その代わりに、彼らはフロイドのスペーシーさとU2のメシアニックなアリーナロックの重厚さを、80年代のアメリカのアンダーグラウンドから借りたギターのスクロンクで繋ぎ合わせているのである。1993年にブレイクした「Creep」では、ジョニー・グリーンウッドがギザギザとした残忍な音を発し、ピクシーズやニルヴァーナの醜いノイズを思い起こさせた。アメリカでは自国のバンドに夢中だったため、『Creep』は一発屋扱いされ、イギリスでは、ネオ・グラムのスウェードのような華やかさはなく、オアシスのようなベアリー・シングラングを意図的に避けた気難しいアートロック学生として見なされていたのだ。1995年のブリット・ポップのピーク時に、レディオヘッドは1993年のデビュー作『パブロ・ハニー』から大きく飛躍した『ザ・ベンズ』を発表し、ある程度の人気を得たが、1997年の『OKコンピューター』がバンドのすべての扉を壊し、その過程でオルタナティブ・ロックを変えてしまったのである。エレクトロニカとプログレッシブ・ロック・スイートでサウンドを拡張したレディオヘッドは、OK Computerで別のバンドに変身し、世界もそれに倣った。やがて、ロックバンドがエレクトロニクスに手を出すと、それはタイトなシーケンスのリズムではなく、ガラスのようなテクスチャーと内省的なもので、この感性は5人組が開拓したものだった。2000年の『Kid A』では、この美学にさらに磨きをかけ、簡潔なフックをミニマルなアレンジとジャズに置き換えることで、かつてギターのためにこのグループを愛していたリスナーと、バンドの志に惹かれたリスナーとの間に分断線を引くことになりました。この頃からレディオヘッドは、時折、簡潔な曲の構成に浮気しながらも、音楽とビジネスの両方で変わった道を歩むようになった。EMIとの契約が切れた後も、彼らはインディペンデント・バンドとして、デジタル・リリースのさまざまな道を開拓していった。2007年に発表された『In Rainbows』では、リスナーが好きな金額を支払うことをほとんど予告せず、レディオヘッドが後ろを向かず、前を向かざるを得ないバンドであるという評判を確固たるものにした。”
Radioheadの評価
“シングル「Creep」がきっかけとなり世界的なブレークを果たし、2ndアルバム『ザ・ベンズ』でその人気と評価を不動のものとする。その後は『OKコンピューター』や『キッドA』『アムニージアック』などポップミュージック史に燦然と輝き続けるであろう傑作を作り続け、先進性と高いポピュラリティを兼ね備えた唯一無二の存在となる。2007年には7thアルバム『イン・レインボウズ』のダウンロード発売を自身のオフィシャルHPから突然発表。レコード会社を介さない直接販売のうえ、値段さえも買い手の自由で決められるという形での流通手法は世界中の注目を集め、大きな話題となった。”
Radiohead代表曲(Youtube)
- Radiohead(レディオヘッド) – Pyramid Song
- Radiohead(レディオヘッド) – Knives Out
- Radiohead(レディオヘッド) – You And Whose Army?
Radiohead関連記事
Radiohead(レディオヘッド)の関連記事について、BELONGではこれまでにライブ映像、トム・ヨークとジョニー・グリーンウッドの新たなバンドであるThe Smileを取り上げている。
Seiya
ジャンルは幅広く音楽について研究するのが好きです。
楽器、レコード、ファッションも好きでその文脈からも音楽を楽しんでいきたいです。
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