最終更新: 2024年3月17日

サンタモニカ出身のベッドルームポップ・アーティスト、Alex Siegel(アレックス・シーゲル)。

マルチ・インストゥルメンタリストとしての顔も持つAlex Siegelは、Lo-Fi Hip Hopやダブ、レゲエそしてJ-POPなどにアクセスしながら、出身である西海岸由来のチルな空気を孕んだベッドルームポップを奏でてきた。

2020年にリリースされた「Beauty Fades」は 、BTSのジョングクのVlogにピックアップされたことでアジア圏でも話題となり、先日リリースされたEP『Marina Blue』には、Fishmansがきっかけで日本在住のSSW、THE CHARM PARKとコラボした「Fireflies」も収録されている。

日本にもルーツを持つ彼が、多角的に日本にアプローチしていることは興味深い。

今回はそんなAlex Siegelにインタビューを行った。まずは彼のルーツを掘り下げることで、『Marina Blue』についてや彼と日本の関係について、解き明かしていく。

インタビュー:Alex Siegel(アレックス・シーゲル)

Alex Siegel

アーティスト:Alex Siegel(アレックス・シーゲル) インタビュアー:滝田 優樹 翻訳:BELONG編集部

-最新作『Marina Blue』 最高でした!作品についてお聞きする前にまずはあなた自身についてより詳しく知りたいです。複数の楽器を演奏するマルチ・インストゥルメンタリストとしても日本では知られています。これまであなたの楽曲で演奏した楽器は何がありますか?その中で特に曲作りに欠かせない楽器はどれでしょうか?また、どのように作曲を行っているのかも気になっていてその過程や理由も知りたいです。
Alex Siegel:ありがとうございます!まず最初に、「Better Left Unsaid」の写真は、2019年の秋に日本を訪れたときに井の頭公園で撮りました。私は日本と深いつながりがあります。母は1970年代に広島で英語教師をしていて、3年間日本に住んでいました。母は日本語がとても上手で、彼女の元生徒の中には親友になった人もいて、私にとっては日本人の両親のような存在です(けいこさん、ひろしさん、こんにちは!)。私は9歳のときに初めて日本を訪れました。
私は普段、全ての楽器を自分の曲で演奏しています。エレキギターやアコースティックギター、ピアノ、シンセ、ベース、ドラムなどです。私の曲はたいていギターかピアノで始まるので、それらの楽器は欠かせません。家にフェンダー・ローズというピアノがあって、それで曲を書くのが大好きです。「Raincloud Man」や「You’re Never Alone」もローズで書き始めました。懐かしい感情やメロディーが浮かんできて、それが曲を書くきっかけになります。時々忘れかけた夢を思い出したような感覚で、消えてしまう前にメモしておくみたいなものですね。

音楽との出会い

-10代の頃から曲作りとプロデュースを行っていたそうですが、あなたが初めて手にした楽器はどれでしょうか。なぜその楽器を手に取ったか教えてください。また、あなたと音楽の出会いがどのようなものだったのかや、その当時どのような音楽をやっていたのかなど詳しく教えてもらえますか?
最初に夢中になった楽器はギターでした。ジミ・ヘンドリックスの「Little Wing」がやっと弾けるようになった日は、それまでの人生で最高の日だったんです!私はギターとすぐに意気投合することができました。口に出せないことや言葉では表せない感情を表現できるような気がしたからです。多分、私は内気で感情が言葉を超えていたりしたのでしょう。ギターは本当に魔法のような世界への入り口になりました。
音楽との最も強い思い出は小学校の頃のものです。2001年だったと思いますが、親友の姉が車で私たちを乗せてくれていて、「Stellar」というIncubusの曲をかけてくれました。“meet me in outer space…”という歌声が魅惑的なギターリフに乗って流れてきて、何故かその音楽が私に衝撃を与えました。まるで鐘が鳴ったかのように。時間が止まりました。その瞬間のすべてを詳細に覚えています。車の匂いや、405号線のどこにいたかも。

影響を受けたアルバム

-あなたはチリー・ゴンザレスやジョアン・ジルベルトなどに影響を受けてジャズバンドなど聞いて育ったと思いますが、Alex Siegelの音楽に影響を与えたアルバム3枚について教えてください。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードについても教えてください。
Sublime『40 Oz. To Freedom』は私にとって大きな影響を与えたアルバムです。おそらく2年か3年間はずっとこれしか聴かなかったからです。ブラッドリー(ブラッドリー・ノーウェル)の声がとてもソウルフルで、音楽に素晴らしい荒さや不完全さがあるのが好きです。プロダクションはコラージュのように重ねられているのが素晴らしいと思います。

Tahiti 80『Wallpaper for the Soul』は14歳の時に郵便でCDをもらって、人生が変わりました。何故か1年間も聴かずに、裏面を読んだりアートワークを見つめたりしていたんです。やっと聴いたときには、私が共感する新しい音楽的言語を発見しました。それは美しい秘密のようなもので、自分だけのものでありながら、世界とつながってくれて、孤独感を和らげてくれました。今でもよく聴きます。

Stan Getz and João Gilberto『Getz/Gilberto』は今まで聴いた中で最も美しくて穏やかな音楽です。とても抑制されていて優雅で、何度も繰り返し聴きました。声はとても柔らかいのに、信じられないほどの力と感情を伝えてくれます。そしてバンドはとてもミニマルに演奏していて、音楽が水のように浮かんだり流れたりするかのようです。

活動拠点のベニスについて

-今はベニスを拠点に活動されていると思います。生まれもベニスですか?また、あなたの音楽はいわゆる西海岸の音楽的な特徴と親和性の高いものなので気になりました。今のベニスで流行っている音楽や現地でおすすめのアーティストがあれば知りたいです。
私は(カリフォルニア州)サンタモニカで生まれました。そこはベニスから遠くありません。海の近くに住むことは音楽に強い影響を与えていると思います。海がLAという巨大な都市の自然の境界線になっているのが好きです。海を見つめると、深淵を覗き込んでいるような感じがします。でも、隠れた命がたくさんあるんですよね。
私の近所には私が知らない人気のアーティストがいるかもしれませんが、私の友達がFoxtrailsという素晴らしいバンドをやっていて、私は時々彼らと一緒にライブでキーボードを弾いたり、曲をプロデュースしたりしています。

BTSとの関わり

-あなたの耳にも入っていると思いますが、2020年にリリースされた「Beauty Fades」はBTSのジョングクのVlog(ブイログ)にピックアップされアジア圏でも話題となりました。BTSのメンバーそれぞれ新旧問わず音楽的な知見も深く、ファンダムも世界規模だと思うのですが、このことについて感想をいただけますか?また、BTSは聞きますか?アジア圏のポップアーティストに対する印象もあれば知りたいです。
とても素敵な瞬間でした!ジョングクが「Beauty Fades」を聴いて気に入ってくれたのか、どういう経緯でそうなったのか気になります。キャンプのVlogで使われていて、私もキャンプが大好きなので嬉しかったです。BTSは素晴らしいファンを持っているようですね。恥ずかしながら言いますと、私はあまり彼らを聴かないのですが、時々K-POPやJ-POPの世界に浸っています。アジアのポップアーティストとしては、実はLAに住んでいるマレーシア出身の歌手Yuna(ユナ)が大好きです。彼女を知ったのは2015年にサンフランシスコの会場で働いていたときで、その時に彼女が出演していたんです。

THE CHARM PARKとのコラボ

-また今回の『Marina Blue』にも収録されている日本を拠点に活動する、アーティストTHE CHARM PARKとのコラボ曲「Fireflies」。こちらに関するコメントとして日本のバンド、Fishmansを聞いていたことがTHE CHARM PARKに繋がったとありました。日本でもFishmansは今も人気のバンドですが、ベニスに住むあなたが聞いていたことに驚きと喜びがありました。なぜあなたがFishmansにリーチできたのでしょうか? 海外の音楽リスナーから人気があるのは知ってはいますが、そのきっかけを教えてください。ちなみにですが、私は「ナイトクルージング」が大好きです!
私も「Night Cruising」が大好きです!Fishmansは私の一番好きなバンドの一つになりました。彼らの音楽には好きなことがたくさんあります。ダブやレゲエの影響も含めてです。私はSpotifyのラジオでFishmansを発見しました。最初に聴いた曲は「Baby Blue」だったと思います。それで彼らの作品にどっぷりと浸かりました。彼らについての素晴らしいドキュメンタリーがYoutubeの奥深くにあります。よく探せば見つけられますよ。私は2021年に『天空の城ラピュタ』のコンサートを録音した頃、Fishmansをよく聴いていました。それは私が初めて自分の曲をバンドで演奏するメンバーを集めたときで、Fishmansの音楽は何でも可能だと感じさせてくれます。

-FishmansがきっかけでTHE CHARM PARKの「ad meliora」を聞いて、コラボのオファーを出したとのことでしたが、どのように連絡を取って、曲作りはどのように進められたのでしょうか? 詳しく教えてもらえるとありがたいです!
それはとても簡単でした。日本にはSilent Tradeという素晴らしいチームがいて、彼らがTHE CHARM PARKのチームに連絡を取ってくれて、メールでつないでくれました。私はすでに「Fireflies」のほとんどを書き上げていて、これはTHE CHARM PARKにぴったりの曲だと思っていました。彼の声が物語にとてもクールな次元を加えてくれると思ったんです。彼は自分のパートを追加して送ってくれて、私は全てをまとめました。私たちはどちらも仕上がりにとても満足することができたので、今ではもう一つのコラボ曲に取り組んでいます。

日本語歌詞への感想

-また、日本語歌詞で歌われる楽曲はあなたにはどう届いていますか?日本人に取って英語の歌詞は馴染みの深いもので楽曲の一部として受け入れられていますが、英語圏の人が聞く日本語歌詞の印象について、とても興味があります。
日本語の歌詞の響きが大好きです。歌われていることを理解しようとするのは楽しいですが、私の日本語は本当に下手です。言葉は聞こえるのですが、ほとんどの意味が分かりません。ちなみに、私は細野晴臣さんのファンで、「僕は一寸(ちょっと)」が大好きです。訳を調べたことはないのですが、それにしても意味深ですね。あと、中学校の日本語の授業で坂本九さんの「上を向いて歩こう」の歌を習ったことがあります。それも楽しかったです。演歌も好きです。

最新作『Marina Blue』について

Alex Siegel『Marina Blue』

-『Marina Blue』について、こちらのタイトルを付けた理由を教えてください。まさにパシフィック・コースト・ハイウェイから見える海にぴったりなタイトルだと思います。
海の色にちなんで 『Marina Blue』と名付けましたが、それだけではなく、私たちは時々悲しくなったり、海に迷い込んだような気分になったりするからです。この音楽は自分を取り戻す方法について表現しています。

セルフリリースとプロダクションについて

-今回もセルフリリースということで『Marina Blue』もご自身で楽曲プロデュースやミックスやマスタリングを行ったと思います。前作『Courage』からさらにミニマムなプロダクションで、メロディやハーモニーが際立って洗練されたBGMないしはプレイリストのような印象も感じました。制作プロセスはどのように進められたのでしょうか? テーマを決めて制作を進めたのか楽曲が集まったのかそれとも今のあなたのモードを象徴する楽曲を集めて作られたのが『Marina Blue』なのか、いかがでしたか? もしテーマがあればそちらも知りたいです。
今年の初めにツアーに行く前に、このEPの一部になると思っていた新しい曲を一生懸命作っていました。帰ってきて、1ヶ月間聞かなかった後に聞いてみると、以前ほど響かなくなっていました。未完成の作品を他のものと一緒にプレイリストに入れて、別の部屋のソファーに横になって、音楽に半分だけ耳を傾けました。そうすると、曲を新しい感覚で感じることができたんです。細かい部分にこだわらないで聞くことができて。この方法で「Dream We Had」や「Raincloud Man」などの曲を再発見して、EPのトラックリストを全く新しいものにしました。曲をあまり手を加えずに、自分の声と音楽で生々しい感情を捉えたかったので、プロダクションはミニマルにしました。だからテーマは“手放す”ということかもしれません。

ブレイクスルーとなった曲

-今回あなたにとってブレイクスルーとなった曲はどれでしょうか?理由も併せて教えてください。
“手放す”というテーマに沿って、「You’re Never Alone」はブレイクスルーとなりました。歌ったり録音したりパーツを合わせたりするのがとても楽しかったからです。頭の中でどういう音にしたいかは聞こえていましたが、自分に余計なプレッシャーをかけて特定の方法で仕上げようとはしませんでした。ただ起こるままに任せて、プロセスを楽しみました。プロダクションにも実験的に新しいことに挑戦しましたし、プロダクションが曲と相乗効果を生んでいると思います。

ヴォーカルについて

-よりシンプルな構成な楽曲が多くなった分、ヴォーカルのメロディや歌詞が際だってシンガー・ソングライターとしての存在感が増した作品だと感じました。歌詞でいうとパーソナルな心情が反映されていると思ったんです。特に「You’re Never Alone」はヴォーカル面で自身を開放をして歌われてると感じましたが、いかがでしょうか? これまでの楽曲と比べてヴォーカル面で意識されたことがあれば教えてください。
私は心の底ではシンガーソングライターだと思っていますが、プロダクションも大好きです。「You’re Never Alone」のボーカルは何故かスタジオではなくリビングルームで録音しましたし、普段使っているマイクとも違うものを使いました。歌っているときにとても自由な気持ちだったことを覚えています。顔に大きな笑顔が浮かんでいましたね。EPの最初の方の曲はもっと内省的で存在論的なものなので、最後まで来ると、カタルシス的な解放感があります。自分を重くしていた何かを手放したような感じです。

リスナーへのメッセージ

-『Marina Blue』をどのような人、もしくはどのようなシチュエーションで聴いて欲しいですか?
『Marina Blue』を聞いてつながりを感じてほしいです。時々感じるように、私たちはそんなに孤独ではないと思い出してほしいです。

-最後に日本のリスナーにメッセージを頂けますか?
早く会えることを願っています!日本で演奏するのが待ちきれません!

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『Marina Blue』リリース詳細

EP『Marina Blue』

Alex Siegel『Marina Blue』
発売日: 2023年6月14日
収録曲:
1.Raincloud Man
2.Dream We Had
3.Fireflies (with THE CHARM PARK)
4.Don’t Wait So Long
5.You’re Never Alone
フォーマット:Mp3
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Alex Siegelバンドプロフィール

Alex Siegel(アレックス・シーゲル)

“カリフォルニア州ベニスを拠点とするマルチ・インストゥルメンタリスト。 10代の頃から曲作りとプロデュースを始め、Abletonを使って電子音楽とヒップホップのビートを制作。しかしMy Morning Jacketの前座を務 めたことでjamesと知り合いシンガーソングライターの才能をのばす事と なる。彼の楽曲は自分が影響を受けたものや自身のアートなど常に前 例のないものをベースにしています。制作のプロセスを壮大で没入感 のあるビジョンをミニチュアで作り上げることを追求しています。イブ』を2021年にリリース。”

引用元:Alex Siegel(アレックス・シーゲル)バンドプロフィール(inpartmaint)

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  • ライター:滝田優樹

    1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

    そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

    その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

    退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

    それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

    猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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    Twitter:@takita_funky

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