最終更新: 2024年3月31日
昨年2023年10月に3年ぶりの新作アルバム『My Big Day』をリリースし、それから間もなく今年の2月には4組のイギリス出身のシンガーソングライターがゲスト参加した新作EP『Fantasies』のリリースを控える、Bombay Bicycle Club(ボンベイ・バイシクル・クラブ)。
どちらの作品にも共通するのは多彩なゲストが参加した作品であるということだ。
また、先行シングル「Fantasneeze (feat. Matilda Mann)」のサウンド面からも察するに2作品の共通項や関連性などからも両作品を楽しむことはできそうだ。
今回のインタビューは、Bombay Bicycle Clubにとって6枚目となるアルバム『My Big Day』リリースすることを踏まえてメンバー全員に話を伺ったーー。
といった背景があるが、アルバム以外にもBombay Bicycle Clubの今のモードや今後についても回答してくれた内容となっている。
そのため『My Big Day』と『Fantasies』の2作品の架け橋となるインタビューとして機能してくれたならば嬉しく思う。
目次
Bombay Bicycle Club インタビュー
アーティスト:ジャック・ステッドマン(Vo./Gt.)、ジェイミー・マッコール(Gt.)、エド・ナッシュ(Ba.)、スレン・デ・サラーム (Dr.) インタビュアー:滝田 優樹 翻訳:BELONG編集部バンドの現状について
-今作が6枚目のアルバムとなりまして、前作『Everything Else Has Gone Wrong』からは3年ぶりのアルバムですね。2016年に1度活動休止をされていたということも踏まえて、今のBombay Bicycle Clubについて確認するところから始めさせてください。今、バンドのバイブスやモチベーションはどういう状況ですか? 活動休止をされた理由としては「10年続けた今、新しいことに挑戦する時が来たと思う」という言葉もありましたが、キャリアとしては20年目に近づいていますが、活動を始められた当初と今の違いなどありましたら教えてください。
ジャック・ステッドマン:バンドを始めた頃と今との大きな違いは、当時(10代の頃)は何もかもが新鮮で刺激的だったけど、今はこうした経験に慣れているということだと思う。2016年に活動休止を決めたのは、まさにそれが理由だった。数年間離れて、この経験を当たり前と思わず、また憧れるようになりたかったんだ。
Deftonesとの関係
-ここ最近はインスタグラムでジャック・ステッドマンがご自身の楽曲やDeftones、ジョン・マーティンらのカバーを弾き語りを投稿されていますが、これらについて何か理由があれば教えてください。個人的にはDeftonesが活動当初のあなたたちの絆を深めたということに驚きがありました。
ジャック:僕たちはみんな、音楽の趣味がとても多彩なんだ。Deftonesはどんなスタイルにもアレンジできる、時代を超越した音楽を書いてきたしね。自分たちの曲のアコースティック・ヴァージョンだけでなく、アコースティック・カバーを演奏するのもいつも楽しんでいる。曲を基本的な要素に分解すると、本当の感情が見えてくるんだ。
影響を受けた音楽アルバム3選
-続いてBombay Bicycle Clubの音楽に影響を与えた音楽アルバムを3枚挙げるとしたら何ですか? また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかについても教えてください。
ジェイミー・マッコール:このアルバムを作るときに、スタジオで特に参考にしたアルバムをピックアップするよ。
The Beatles『Abbey Road』
特にオリジナルというわけではないんだけど、僕らはビートルズが大好きで、年をとったせいか、ビートルズをよく参考にしているんだ。このアルバムに収録されているサイケデリックな曲(「I Want to Be Your Only Pet」、「Sleepless」、「Heaven」)のいくつかは、後期ビートルズから多大な影響を受けている。彼らは今でも史上最高のミュージシャンだよ!
アレックス・G『House of Sugar』
ここ10年で最も好きなアーティストの一人。彼のプロダクション、特にアコースティック・ギターのスタイルは、「My Big Day」のギター・パートのレコーディング方法に大きな影響を与えてくれた。
Queens Of The Stone Age『Rated R』
このアルバムがとてもバラエティに富んでいて、幅広い影響を受けているところが気に入っている。
My Big Day
-それではここからは新作『My Big Day』について、お聞きします。
新作のタイトルの由来
-まずはタイトルから。“My Big Day”という言葉には“結婚式”や“記念日”という意味もありますね。“My Big Day”と冠した理由を教えてください。デーモン・アルバーンやジェイ・ソム、ニルファー・ヤンヤ、ホリー・ハンバーストーンなど昔からの友人から新たに関わりをもったゲストがたくさん参加した作品であることを踏まえるとぴったりなタイトルだとも思ったのですが。
ジェイミー:このアルバムは陽気で楽しい作品だと思うから、アルバムタイトルにもそれを反映させたかったんだ。あなたが言うように、このフレーズはお祝いのアイデアを思い起こさせてくれるよね。
新作のサウンド面での挑戦
-あなたたちが思う今作の立ち位置についても教えてください。新しいことに挑戦するために2016年に活動休止をされて、そのあとから数えると2枚目のアルバムです。そうするとBombay Bicycle Clubとして『My Big Day』はこれまでとは特異点となるアルバムになりましたか? それともあくまでもBombay Bicycle Clubとして継続性のあるものでしたか? 私は個人的には『My Big Day』は意欲的に挑戦を試みた傑作で、特異点となるアルバムだと思っています。
ジェイミー:ありがとう。気に入ってくれてうれしいよ!音楽的には、まったく新しいというよりは、ほとんどが前作からの進化という感じだね。ただ、「Just a Little More Time」と「Rural Radio Predicts the Rapture」の2曲は例外で、音楽的にバンドを新しい方向に導いている。このアルバムでの大きな違いは、さまざまな人が歌い、演奏しているという意味でも、さまざまなソングライターを迎えているという意味でも、フィーチャリングだと思う。バンド外部の人間が曲作りに大きく貢献したのは、このアルバムが初めてだ。これは大きな変化で、私たちは自分たちの赤ちゃん(アルバム)をある程度手放し、変化を受け入れなければならないからね。
-特にサウンド面でいうと全体的に生のドラムサウンドが際だっていて、肉体的な印象が強かったです。リズムパターンもこれまでのBombay Bicycle Clubにはなかったもので、MR. JUKESの『The Locket』も思い出されて、A Tribe Called Questのような90年代ヒップホップ要素もふんだんに感じました。ビートプロダクションについてはどのようなアイデアがあって制作を勧められたのでしょうか?
ジャック:僕の曲作りのやり方に起因していると思う。本当にインスピレーションを感じているときは)素早く作業することが多いから、生ドラムキットのマイクをつなぐ時間さえないことがよくあるんだ。だからほとんどの場合、ドラム・セクションにはブレイクビーツやサンプルを使っている。ヒップホップやそういったスタイルの音楽を作った経験もたくさんある。だから自然とバンドのサウンドに反映されるんだ。
ブレイクスルーとなった楽曲
-対して、ソングライティングの部分についてお聞きします。今作はジャック・ステッドマンがノース・ロンドンのチャーチ・スタジオで制作し、その後バンド自身のスタジオで制作されたそうですね。ビートプロダクションとしての今作の大きな特徴がありましたが、サウンドとしての帰着点はあなたたちのシグネイチャーであるインディー・ロックや耳心地のよいポップミュージックであると思っています。新しいことに挑戦しながら、統一感のある作品に纏め上げたそこに驚きもあったのですが、ソングライティングからレコーディングにむけてどのような話し合いもて、方向性を決めて向かって制作をされたのでしょうか。もし具体的にこういう作品を作ろうと思ったなどあればそちらも知りたいです。
ジャック:バンドの他の3人のメンバーもヒップホップ(と僕のソロ・プロジェクトMr.Jukes)のファンだからうまくいっているだけだと思う。だから、そういう要素をたくさん取り入れることができるんだ。最初は短いヒップホップのループから始まり、徐々にギターやボーカルを加えて本物の曲にしようとすることで、ユニークなものができたと思う。さっきも言ったように、この曲の本当のテストは、アコースティック・ギターで演奏して、それでもいい音がするかどうかということなんだ。そうすることで、(面白いプロダクションを維持したまま)アルバムに入れるに十分な出来だとわかるんだ。
-『My Big Day』は活動休止を経て、メンバーそれぞれソロプロジェクトやBombay Bicycle Club以外の活動があったからこそ完成された作品だと思っています。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムそれぞれのパートから見た時に今作においてブレイクスルーとなった、もしくは最大の変化となった楽曲を上げるとしたらどれですか?
エド・ナッシュ:そうだね、4枚目のアルバムの後にバンド活動から離れたことで、個々がミュージシャンとして、人間として成長してから再び集まってバンドをやることができた。僕にとって一番変わったのは、楽器の演奏やパートの書き方よりも、バンドとしてのコミュニケーションの取り方や、自分たちの心地よさの範囲外のことに挑戦する姿勢なんだ。『My Big Day』の実験性と折衷的な性質は、バンド以外の他のプロジェクトを追求していた時間があったからこそ可能になったんだと思う。「Just A Little More Time」や「Heaven」のような曲は、昔のボンベイのレコードにはなかっただろう。
デーモン・アルバーンとのコラボ
-デーモン・アルバーン、ジェイ・ソム、ニルファー・ヤンヤ、ホリー・ハンバーストーンの4人のゲストについてお聞きします。それぞれ、ヴォーカルを頼もうと思ったタイミングはいつですか? 曲が出来上がってからですか? ヴォーカルを頼もうと思った理由も知りたいです。
エド:すべてのフィーチャリングには、彼らがトラックに参加する目的が必要で、僕たち4人だけでは見つけられない方法で曲を高める必要があった。例えば、ホリーのボーカルは、事前に見つけるのに苦労していたポップな輝きを加えてくれた。
質問の答えとしては、曲作りやレコーディングの過程で、何か特別なことが必要だと明らかになったときに、さまざまなタイミングでフィーチャリングに参加してもらったんだ。デイモンのように初期の段階から作曲に参加することもあれば、ホリーのように仕上げに参加することもあった。どのように貢献したかにかかわらず、彼らのパートはどれも互いに同じくらい重要なものなんだ。
-またこの4人のアーティストのうち3名は若手の女性シンガーソングライターです。そこにデーモン・アルバーンというレジェンドが1名参加していることでまた面白いラインナップになっています。これについては何か意図はありますか? この豪華なゲストは、デーモン・アルバーンのGorillazとしての活動にも重なる部分もあってBombay Bicycle Clubを介してインディー・ロックアーティトの新たな架け橋となるのではないかとも考えていて、とても興味深いです。
エド:これは僕らの計画ではまったくなくて、こうなっただけなんだ。音楽にとって正しいことをやっていたら、このようなアーティストのラインナップになったんだ!
僕たちは常にお気に入りのアーティストをプロモートすることに関心があるんだ。長年にわたって、実にさまざまな人たちと仕事をする機会に恵まれてきた。まだGorillazのレベルには達していないと思うけど……いつかはね。
「Tekken 2 (feat. Chaka Khan)」には、正真正銘の音楽的アイコンであるチャカ・カーンが参加していて、このアルバムに参加しているミュージシャンたちにさらなる深みを与えていることも伝えしておきたいね。
新作のメッセージと聴いて欲しい人
-日本のインディーロックファンにとっても期待の作品となっています。『My Big Day』をどのような人に聴いて欲しいと思いますか? もしこの作品が聴き手に何かメッセージを孕んだ作品であったなら、どのようなメッセージやコンセプトをもった作品であるかも教えてください。
スレン・デ・サラーム:自分たちを“単なる”インディー・ロック・バンドと定義しないことを常に心がけてきたつもりだし、自分たちのこれまでの作品がそれを裏付けてくれることを願っている。だから、インディー・ロック・ファンだけでなく、一般の音楽ファンがこのアルバムを評価してくれたら素晴らしいことだと思う!
「Tekken 2 (feat. Chaka Khan)」や「Turn The World On」など、このアルバムで僕たちが伝えたかったメッセージは、喜びと前向きさだったと思う。「My Big Day」のような曲がそれを象徴している。アルバムのアートワークも、この軽快さを表現するためのもので、間違いなくこれまでとはまったく違うものだと思う。
また、このアルバムでは、新しいことに挑戦することを恐れていないことを示したかったんだ。「Rural Radio」のような曲は、おそらくこれまでのボンベイのアルバムには入れなかったと思う。
バンドの今後の展望と目標
-今作をもってBombay Bicycle Clubの活動において、今後どのような作品を作りたい、もしくは今後どのように活動していきたいかなど展望はありますか?
スレン:今のところ、バンドの何人かは、今作の「Meditate」や「I Want to be Your Only Pet」といった曲に続いて、次のアルバムではもっとヘヴィでロックなサウンドを追求していきたいという気持ち(あるいは希望!)があると思う。新しいスタジオに引っ越したばかりで、そこで初めてみんなで簡単にセットアップして演奏できるようになったんだ。
このアルバムの制作では、そういう面をとても楽しむことができたから。
でも、まだ始まったばかりだから、これからだね。今のところは、『My Big Day』でできるだけたくさんツアーして、できるだけ多くの場所に行きたいと思っている。
日本のリスナーへのメッセージ
-最後に日本のリスナーにメッセージを頂けますか? オランダのフェス Lowlands 2023のライブ映像も目にしましたが、日本でのライブも心待ちにしています。
スレン:2014年のフジロックでの最後の来日公演は、正直なところ、これまでのボンベイのライブの中でも最も印象深いものだった・・・。僕らはとても日本が好きになったんだ。また日本に来れるように頑張ると約束するよ!久しぶりすぎるよ。日本は僕たちにとって大好きな国のひとつなんだ。
Bombay Bicycle Clubアルバムリリース
EP『Fantasies』
発売日: 2024年2月23日
収録曲:
1. Fantasneeze (feat. Matilda Mann)
2. Blindfold (feat. Liz Lawrence)
3. Willow (feat. Lucy Rose)
4. Better Now (feat. Rae Morris)
フォーマット:Mp3
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6thアルバム『My Big Day』
発売日: 発売中
収録曲:
1. Just A Little More Time
2. I Want To Be Your Only Pet
3. Sleepless (feat. Jay Som)
4. My Big Day
5. Turn The World On
6. Meditate (feat. Nilufer Yanya)
7. Rural Radio Predicts The Rapture
8. Heaven (feat. Damon Albarn)
9. Tekken 2 (feat. Chaka Khan)
10. Diving (feat. Holly Humberstone)
11. Onward
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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Bombay Bicycle Clubバンドプロフィール
“ロンドン北部出身の 4 人組インディー・ロック・バンド。2009 年、アークティック・モンキーズやビョーク等を 手掛ける敏腕=ジム・アビスのプロデュースによるデビュー・アルバム『IHadTheBluesButIShookThemLoose』 をリリース。NME アワードにて<最優秀新人賞>を獲得するなど、高い評価を受ける。2010 年、2 作目となる『Flaws』 をリリースし、全英チャート TOP10 にランクインするスマッシュヒットに。2011 年に 3 作目『ア・ディファレン ト・カインド・オブ・フィックス』を発表し、全英チャート 6 位 / ゴールドディスクを獲得。1 万人キャパの英 アレクサンドラ・パレスを完売させる程の人気バンドへと成長を遂げた。2014 年、4 作目『So Long, See You Tomorrow』が全英チャート初登場 1 位を獲得。3 年間活動休止を経て、2020 年 1 月に 5 枚目となるアルバム 『Everything Else Has Gone Wrong』をリリースする。
メンバーは、ジャック・ステッドマン(Vo, G)、 ジェイミー・マッコール(G)、スレン・デ・サラーム(Dr)、 エド・ナッシュ(B)。”引用元:Bombay Bicycle Club(ボンベイ・バイシクル・クラブ)バンドプロフィール(Virgin Music)
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ライター:滝田優樹
1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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