最終更新: 2025年1月3日

“孤独な若者”を意味するバンド名を持つIsolated Youth(アイソレイテッド・ユース)。

彼らのデビューアルバム『Miserere Mei』は、パンデミックやメンバー自身の経験を通して生まれた、深く内省的な作品である。

メンバーのウィリアムへのインタビューを通して、彼らの音楽のルーツや制作背景が明らかになった。

The Horrorsのファリス・バドワンによるプロデュース、ニーナ・シモンやロバート・ジョンソンといった黒人音楽からの影響、聖書のテーマ、そして制作環境である森と墓地の存在。

これらの要素が複雑に絡み合い、彼らの音楽を唯一無二のものにしている。

本記事では、彼らの音楽の魅力に迫るとともに、彼らが込めたメッセージを紐解いていく。

また、記事の最後にはインタビューに応じてくれたウィリアムの写真も掲載しているので、こちらも必ずチェックして欲しい!

Isolated Youth インタビュー

Isolated Youth
アーティスト:ウィリアム・マードバーグ インタビュアー:桃井 かおる子 翻訳:BELONG編集部

-初めてのインタビューとなりますので、基本的なところから聞かせてもらいたいと思います。まずはIsolated Youthを結成したきっかけについて教えてください。
ウィリアム・マードバーグ:私(ウィリアム)がエレキギターを買って、弟のアクセルと音楽を作り始めたのがきっかけです。その後、友人のアンドレアスとテオドラを誘い、すぐに自分たちのサウンドを見つけました。計画的ではなく、自然に集まった感じです。

-“Isolated Youth”というバンド名には、“孤独な若者”という意味がありますが、どうしてこのバンド名にしたのでしょうか?
最初は軽い気持ちでした。イアン・カーティスのTシャツを着ていた時に、飲み会の後、グループチャットで“Isolated Youth”と提案したんです。でも、活動を続けるうちに、この名前はより意味深いものに感じられるようになりました。小さく孤立した場所で育った感覚や、それが私たちをどのように形作ったのかを反映しています。今では、孤立とそこから生まれる強さの両方を、自分たちの一部として受け入れています。

-前作『Iris』EPから数えると約4年後にデビューアルバム 『miserere mei』 がリリースされますが、デビューアルバムを発表できるまでに4年という時間が空いた理由を教えてください。
こんなに長い期間になるとは思っていませんでした。でも、振り返ってみると、この時間は必要だったと思います。パンデミックで物事が遅れたし、私たちは孤立した地域出身なので、ロンドンにはたまにしか行けませんでした。その時間があったからこそ、じっくり考え、音楽を自然に進化させることができました。『Miserere Mei』は、私たちにとって適切なタイミングでリリースされました。急いで作ったものではなく、時間的な余裕があったことで、自分たちが何を言いたいのかを深く掘り下げることができました。

-(上記に関して) 前作と比較すると、ボーカルのアクセルの歌声にどっしりとした安定感が出ているように感じました。4年の間に思春期から大人への成長や声変わりなどがあって、活動に影響があったのでしょうか?
バンドは多くの経験をしてきました。トラウマ、入院、逆境への挑戦など、それらが私たちを形作りました。もともと小さな森の出身で、現在はストックホルムに住んでいますが、音楽を通して世界に足を踏み入れたことで、想像もしていなかった困難に直面しました。裏通りから世界を見て、それが私の視点を変えました。自分自身に忠実であることが重要であり、それを決して失わないように願っています。

-今作はニーナ・シモンやロバート・ジョンソンといった黒人ミュージシャンや聖書の内容からインスピレーションを得て作られたとのことですが、メンバーの皆さんは日頃からゴスペルやジャズといった黒人音楽を好んで聴いているのでしょうか?また、黒人音楽や彼らの歴史はIsolated Youthの音楽や世界観にどのような影響を与えていると思いますか?
正直なところ、聖書のテーマは、私自身のルーツや、アルヴォ・ペルトのような作曲家とのつながりから来ています。ブルースやニーナ・シモン、ロバート・ジョンソンのようなアーティストに関しては、彼らの雰囲気は私の演奏スタイルに合っています。楽器を手に取ると、そこに生々しくリアルな何かを感じます。黒人音楽が私の世界観に大きな影響を与えているとは言えませんが、彼らの曲のテーマの中には、私が自分の作品で探求していることと共鳴するものがあります。それは自然に起こることであり、より深い詩的な説明があるかもしれませんが、今の私がそれを語るべきではないと思っています。

Isolated Youthのルーツ

joy division unknown pleasures

-私たちの運営する音楽メディアには、“ルーツ”というコンセプトがありますので、Isolated Youthのルーツに当たるアルバムを3枚教えてください。また、それぞれどのような影響を受けましたか?
Joy Divisionの『Unknown Pleasures』は、私たちの雰囲気を形作ってくれました。Aphex Twinの『Drukqs』は、より実験的な要素を取り入れてくれました。最後に、トム・ヨークの『Suspiria』は、ムードとバイブスに影響を与えてくれました。この3枚はすべて、バンドとしての私たちの異なる部分を形作ってくれたものです。

miserere mei

miserere mei

-ここからは新作『miserere mei』について伺います。聖書の内容から影響を受けた今作は、森に囲まれた墓地の隣にあるスタジオで制作されたとのことですが、なぜそのような環境でアルバムを作ろうと思ったのですか?
意図的ではありませんでした。アルバムのプロデュースをお願いしたファリス(The Horrorsのファリス・バドワン)とマックスが選んだLynchmob Studiosでレコーディングしたのですが、たまたま墓地の隣にあったんです。結果的には、アルバムの雰囲気にぴったりでしたが、偶然でした。

-(上記に関して) 皆さんが生まれ育ったスウェーデンではムーミンなどの森の精霊の物語が親しまれていますが、森に宿る何かの力を得て今作を作り上げたという思いがメンバー間にあったのでしょうか?
森は私の骨の髄まで染み込んでいます。子供の頃からいつも周りにあり、アクセルと私はそこで何時間も散歩したり泳いだりしていました。自然に囲まれていることには、何か力強いものがあります。都会にいると失ってしまう、目的意識を与えてくれるんです。

-「Ghost Town」に顕著に感じられますが、今作は世界がコロナウイルスの影響を強く受けたパンデミック期に制作されたとのことで、アルバムの前半にはノイズ音などの不安定な要素が目立ちます。これは、制作過程でのバンド内の試行錯誤の表れなのでしょうか?
パンデミックは本当にアルバムに影響を与えました。夜、空っぽの道を歩いて帰るうちに、その孤独感が音楽に表れました。前半のノイズや混沌は、私たちが生きていた不安定な時代を反映しています。試行錯誤ですが、当時のムードを捉えていると思います。

-アルバムタイトルでもある楽曲「Miserere Mei」以降、バンドサウンドがより真っ直ぐに耳や心に響いてくるような気がしました。タイトル曲を挟んで前半と後半とで印象を変えているのはなぜですか?
アルバムを旅のように感じさせたかったんです。タイトルトラックが転換点となり、暗く重い始まりから、より明るく開かれたものへと変化します。リスナーが聴くにつれてサウンドが進化するように、段階的に変化をつけることを意図していました。

-『Warfare』EPから「Oath」を新たにレコーディングして収録していますが、この曲をもう一度作り直してみようと思ったのはなぜですか?前作の「Oath」は全体的に荒々しく不安定に感じられるのですが、今回のバージョンは落ち着きがあり、聴いている人としっかり向き合っている印象を受けました。前回のものと今回のものとの間で、バンド内で何か変化があったのでしょうか?
エルマー(エルマー・ホールズビー)がベースとして加入し、メンバーチェンジがありましたが、「Oath」をリメイクした理由はそれではありません。この曲はアルバムに収録されるべきだと感じていたし、新鮮でより洗練されたサウンドにしたかったんです。オリジナルは生々しく、今回はより洗練されています。どちらもそれぞれの良さがあります。

-今作はThe Horrorsのフロントマンであるファリス・バドワンをプロデューサーとして迎えていますが、どのような経緯があって彼と出会ったのでしょうか?また、今作の内容に関することからバンドの在り方まで、ファリスの考えからどのような影響を受けたと思いますか?
ファリスを紹介してもらい、今では私とアクセルにとって、彼はどこか遠い存在でもあり、黒い服を着たカラスのようでもあり、おじさんのような存在です。ファリスと私たちのアイデアが合わさって、このファーストアルバムが形作られました。どちらかが相手をリードするということではなく、お互いが対等の関係で真のコラボレーションでした。彼の存在とインプットは重要でしたが、私たちのビジョンであることに変わりはありません。

The Horrors(ザ・ホラーズ)
【関連記事 | “The Horrorsのイメージを一新する最新アルバム『V』レビュー”】

-(上記に関して) 今作はウィリアムが愛犬の散歩中にイメージが湧いてきて作られたとのことですが、Isolated Youthの音楽はメンバー一人一人の日常のちょっとしたことから生まれてくることが多いですか?バンドセッションで曲を作る時などもあるのでしょうか?
インスピレーションは、犬の散歩のような日常の何気ない瞬間の気分から生まれます。常に大きな出来事から生まれるわけではありません。普段はセッションで集まってアイデアを形にしていきますが、そういったシンプルな瞬間が創造性を開花させることがあります。

-『miserere mei』というアルバムタイトルはラテン語で”神よ、あわれみを”という意味があります。どうして英語ではなく、ラテン語のタイトルにしたのでしょうか?また、このタイトルにはどのような思いが込められているのでしょうか?
私は昔から、陽気というよりは憂鬱な方で、“Miserere Mei”はその部分とつながっています。それは私の一部となった言葉であり、ある意味、難解で落ち着きのない魂です。言葉にするのが難しい自分の一部を理解するのに役立っています。タイトルとそれに関連するテーマは、ここで私が言えることよりも、作品自体、つまり音楽と歌詞の中でより深く探求されています。最終的には、私の人生のある時期、私たちの背景、そして私がいた環境(良いことも悪いことも含めて)の証です。

-深い森や墓地の近くでの制作経験は、バンドの創造性やビジョンにどのような影響を与えましたか?その環境から抜け出した今、新たな創作意欲や方向性が生まれましたか?
その環境は間違いなく私たちに影響を与えましたが、具体的にどのように影響を与えたのかを特定するのは難しいです。プロセス全体が夢のようでした。すでに新しい曲を書いていますが、場所が変わっても、創造意欲は変わらないでしょう。

-最後になりますが、私たちを含めてあなたたちの新作アルバムと来日公演をとても楽しみにしている日本のファンがいます。彼らにメッセージをいただけますか?

日本に行くことを本当に楽しみにしています。それは私たちの長年の夢でした。ライブで皆さんに会えるのが待ちきれないし、一緒にお酒を酌み交わせたら嬉しいです!

【関連記事 | “★記事タイトル★”】

Isolated Youthアルバムリリース

1stアルバム『miserere mei』

miserere mei
発売日: 2025年1月4日
フォーマット:Mp3、アナログ
bandcampで見る

Isolated Youthバンドプロフィール

Isolated Youth
Isolated Youthは、2017年にスウェーデンのストックホルム北部の小さな海岸沿いの都市で結成された5人組のポストパンクバンドである。

結成時のメンバーは、当時15歳であったAxel(ボーカル)とWilliam(ギター)の兄弟を中心に、Egon(ベース)とAndreas(ドラム)を加えたものである。

2019年初頭、彼らはデビューEP『Warfare』をリリースし、国際的なポストパンクシーンにおいて注目を集めた。

2020年4月には2枚目のEP『Iris』を発表し、さらに2025年1月にはFaris BadwanとMax Hayesをプロデューサーに迎えたデビューアルバム『Miserere Mei』のリリースが予定されている。

【New songs playlist | 新曲プレイリスト】
We update our playlist with new songs every week.

We are always happy to accept songs that you would like to add to the playlist, so please send us your information using the contact form: ✉️

BELONGでは毎週新曲プレイリストと更新しています。

プレイリストに追加希望の曲も随時受付ですので、問い合わせフォームから情報をお送りください✉️

ライター:桃井 かおる子

スマホ、SNSはやっておらず、ケータイはガラケーという生粋のアナログ派。

今まで執筆した記事はこちら