最終更新: 2025年3月23日
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創造のパラドックスを解くカードゲーム

“オブリーク・ストラテジーズ”が生まれた背景には、創造における根本的なパラドックスがある。
それは、“新しいものを生み出すためには、今までの考え方から脱却する必要があるが、その脱却自体が新たな思考方法になってしまう”というジレンマだ。
イーノとシュミットは、このパラドックスを解決する方法として、偶然性を体系化するという逆説的なアプローチを選んだ。
1970年、シュミットは自身のアトリエにあった版画の裏に55の短い文言を印刷した『The Thoughts Behind the Thoughts』を制作。
一方イーノは1974年、竹製カードに“オブリーク・ストラテジーズ”と名付けたプロジェクトを開始していた。
二人が1974年にアイデアを交換した際、驚くべき類似性を発見し、113枚のカードセットに統合した。
この協働は、美術と音楽の境界を越えた創造的な編集プロセスの産物と言える。
音楽史を変えた編集手法の実例

“オブリーク・ストラテジーズ”が音楽史に与えた影響は計り知れない。
特に、イーノがプロデュースしたデヴィッド・ボウイの『ベルリン三部作』では、このカードが決定的な役割を果たした。
ボウイは当時、コカイン中毒からの回復期にあり、創作的にも新たな方向性を模索していた時期であった。
そこでイーノは、“オブリーク・ストラテジーズ”を導入し、従来の作曲プロセスを根本から覆す実験を提案した。
三部作最後の作品となる1979年の『Lodger』では、“オブリーク・ストラテジーズ”が最も活用された作品となった。
「Boys Keep Swinging」ではバンドメンバーが互いの楽器を交換するという実験が行われ、「Move On」では、ボウイが1972年に作曲した「All the Young Dudes」のコード進行を逆から演奏するという斬新な手法を採用。
さらに「Red Money」では、イギー・ポップの『The Idiot』から「Sister Midnight」のバッキングトラックを流用するという大胆な試みも行われた。
これらの実例は、“偶然性”と“制約”という一見矛盾する要素が、創造性を刺激する可能性を明確に示している。
ボウイとイーノは、“オブリーク・ストラテジーズ”という予測不可能な要素を積極的に取り入れることで、既存の音楽的枠組みを超越した作品を生み出すことに成功したのだ。
カードからアプリへ

“Allow an easement (an easement is the abandonment of a stricture)”
これは筆者が実際に“オブリーク・ストラテジーズ”のアプリをダウンロードし、一番最初に引いたカードに書かれていたことである。
これだけではわからないので、わかりやすく和訳すると、“イーズメント(イーズメントとは、制約の放棄のこと)を許可する”という意味だ。
現在、“オブリーク・ストラテジーズ”のカードは、もちろん存在するが、アプリとしても形を変えて活用されている。
まずはこの機会にアプリを導入して“創作の新しい扉”を開いて欲しい。しかも無料でダウンロードできるのだから、これを使わない手はない。
しかしながら、前述した内容を見て分かる通り、英語で哲学的な内容が記載されているだけである。
日本人からすれば、まず“難解な英語をどう解釈するか?”というところでつまずく人が多いかと思う。
そこで、これより下の有料部分では、“オブリーク・ストラテジーズ”の難解な指示をどう読み解くかを含めた、実際の音楽制作に活かすための具体的な方法論と、実践的なヒントをこれまでに私たちがインタビューを行ってきた著名なバンドの事例とともに紹介する。
私たちがインタビューしたアーティストが実際に“オブリーク・ストラテジーズ”を使用したかどうかは不明だが、明らかにカードに書かれていることを実行すると“創作の新しい扉”が開かれることは間違いない。
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