最終更新: 2025年3月23日

韓国で2020年に結成されたorange flavored cigarettes(通称ofc)は、無名の新人ながらデビュー曲がSpotifyで180万回再生した注目のバンドである。

dani(Vo.)、gurl(Gt.)、hotch(Ba.)、chan(Dr.)の4人組は、“オレンジ🍊”の爽やかさと“タバコ🚬”の相反するイメージを組み合わせたバンド名のように、独自の世界観を持つ音楽性で国境を超えた人気を獲得している。

英語の歌詞とミニマルなサウンドで普遍的な感情を引き出す彼らの音楽は、2024年末に日本でも初のCDリリースとなり、2025年3月にはアナログ盤も発売。

また、特筆すべきは彼らの楽曲の完成度はもちろん、アートワークや写真にいたるまで、見せ方を工夫している点である。

彼らはどのようにしてこの完成度の高さを維持し、Spotifyで180万回再生されるにいたったのだろうか?

orange flavored cigarettesインタビュー

orange flavored cigarettes
アーティスト:dani(Vo.)、gurl(Gt.)、hotch(Ba.)、chan(Dr.) インタビュアー:Tomohiro Yabe 翻訳:BELONG編集部

バンド名の由来

ーorange flavored cigarettesというバンド名にはどのような意味が込められていますか?また、この名前を選んだ理由を教えてください。
結成当時、私たちが一番好きだった色が“orange”でした。そこから出発して、“orange”の爽やかな印象と相反する“cigarette”を組み合わせると、面白い組み合わせ(mix and match)になりそうだと思って、名付けてみました。
dani:でも、もしかしたらミスマッチかもしれないというのが、より面白いと思いました(笑)。

ー韓国のどの地域のご出身ですか?また、orange flavored cigarettes以前にバンド活動をされていましたか?
daniだけがソウルで、残りは全員が京畿道(キョンギド)ですね。何人かはofc以前の活動歴がありますが、ノーコメントでお願いします。恥ずかしいので(笑)。

結成のいきさつ

クレジット:pexels
ーどのようなきっかけでorange flavored cigarettesを結成することになったのですか?結成に至るまでの経緯を教えてください。
2020年に、最初のドラムメンバーだったgokooooを含めた4人が同じ地域に住んでいました。歩いて5分もかからない距離でしたね。そのため頻繁に会うようになり、最初は音楽よりも日常を共に過ごしていた感じです。そんな中、daniが偶然見つけた地域の音楽コンテストに一緒に参加してみることにしました。ちょうど皆それぞれ違う楽器を扱っていたこともあり、楽曲制作はスムーズに進んだと思います。

チーム名の提出が必須だったので、その時から“orange flavored cigarettes”となり、その時に作った曲をその年の8月に発売してデビューすることになりました。

gurl:あ、ちなみにその時参加したコンテストは落選しましたよ。今の私たちを作ってくれたのにね。人生って面白いですよね(笑)。

英語で歌う理由

ーなぜ韓国語ではなく英語で歌うのですか?その理由を教えてください。
実は母国語である韓国語でコミュニケーションを取る方が楽なんです。でも私たち4人とも内向的な性格なので、韓国語でメッセージを伝えると、かえって少し恥ずかしい気持ちになるんです。英語で作詞する過程で、強すぎた感情が和らぐことがあります。また、ありがたいことに様々な国で私たちの音楽を聴いていただいているので、英語でコミュニケーションを取る方が自然に感じることが多いです。そのため、SNSや日常でも英語を頻繁に使うようにしています。

ー(上記に関連して)また、日本では国内だけで音楽活動をしても生計を立てられると聞いています。一方、韓国では自国内だけでの音楽活動は難しいという話がありますが、orange flavored cigarettesも韓国だけでの活動は難しいとお考えですか?
少し鋭い質問ですね(笑)。韓国だけでの活動が難しいという質問については、まだ私たちが韓国での活動を本格的に始めていない段階だと思うので、正確な答えを出すのは難しいのですが、韓国市場が狭いと不平を言うだけには、良いアーティストとチャンスが多くあると思います。また、様々な方面でそういった点を克服するために努力されている方々がいることを感じているので、これからもっと多くの可能性を期待してもいいのではないでしょうか?

ー活動初期にはほとんど公演をされなかったと聞いていますが、その理由は何ですか?また、私が知る限りだと、初公演は日本の福岡で行ったようなのですが、なぜ初公演を日本で行ったのですか?
初期は公演よりも音源制作により力を入れていました。わざとそうしようとしたというよりは、当時、表現したいことが多かったんですね。内向的な性格の影響というべきでしょうか(笑)?
実は福岡の前にもソウルで何回か公演はありました。親しいアーティストたちのゲスト出演依頼で何度かステージに立ちました。福岡を拠点とするYOHLUというバンドのツアー中のソウル公演でゲスト出演することになり、そこで結ばれた縁でYOHLUツアーの最終公演である福岡公演に招待され、初の海外公演を行うことになりました。あ、YOHLUの音楽は本当に良いので、皆さん聴いてみてください!

orange flavored cigarettesのルーツ


ー私たちが運営している音楽メディアは「ルーツ(roots)」というコンセプトを持っています。orange flavored cigarettesのルーツとなるアルバム3枚を推薦していただき、それぞれどのような影響を受けたのか教えてください。
hotch:私に最も多くの影響を与えたアルバムは、Arctic Monkeysの『AM』です。ロックサウンドでセクシーな雰囲気を作り出すArctic Monkeysに憧れるようになり、人生自体に大きな変化をもたらしました。アレックス・ターナー(Alex turner)がParliament(タバコ)を吸うと聞いて、吸っていたタバコを変えたほどでした(笑)。今はガレージロックとは距離がある音楽をしていますが、彼らのアティチュードやアウトフィットなどは、人間hotchにとって今でも大きな部分を占めています。

chan:私は多くの影響を与えたアルバムの一つとして、スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)の『Songs in the Key of Life』を挙げたいと思います。ドラムが際立つアルバムではありませんが、スティービー・ワンダーの音楽を聴く時だけ感じられる感情は、いつも私を気持ちよくさせてくれます。その中でも「Knocks Me Off My Feet」は、落ち込んでいる時は慰めを、幸せな時は胸の高鳴りを与えてくれる不思議なトラックなので、おすすめしたいです。

dani:スフィアン・スティーブンス(Sufjan Stevens)の『Carrie & Lowell』は、個人的な物語を紡いでいく極めて自伝的なアルバムにもかかわらず、普遍的な感情を引き出すアルバムだと思います。ミニマルなサウンドで歌詞と声にさらに集中させ、感情の深みを増す方法が私に大きな影響を与えました。私たちの音楽を聴く誰かも、音楽を通じて感情を共有し、少しでも心の慰めを得られることを願っています。

gurl:私まで話すと4枚になっちゃうので、私は話すのはやめておきます(笑)。

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