最終更新: 2025年3月30日

サハラ・グリムの音楽性について

撮影:Angela Ricciardi
-滝田優樹:ご自身から見て、Sahara Grimはどのような音楽をやっていて、どのようなアーティストなのか説明することはできますか?私があなたの音楽を聞いた印象では音楽アーティストとして自身の音楽を届けると同時にご自身の音楽を通して多様な音楽ジャンルの素晴らしさをレコメンドしている稀有な存在であると思っています。
サハラ・グリム: ありがとうございます。私の音楽は一般的ではないので、これを理解して共鳴してくださる方々に本当に感謝しています!私が作る音楽は誰かの真似をしたいのではなく、私の内側にあるものを正直な形で表現したものです。それは私のお気に入りの音楽すべての独特な融合だと言えるでしょう。ブラジルのジャズからサーフロック、インディーポップ、インド古典音楽、実験的なジャズなど様々です。

これらは私が多くの時間を費やして聴いている音楽なので、これらのジャンルの要素が自然と私の曲の様々な瞬間に現れてくるのです。私はすでに作られたものを作り直すことにはあまり興味がなく、試みたとしても、できないんです(笑)。音楽的な決断をするとき、私は単純に心地よく感じるかどうかを大事にしています。

アーティスト名の由来

クレジット:pexels
-滝田優樹:Sahara Grimというアーティスト名について教えてください。“Sahara”と言われるとまずサハラ砂漠が思い浮かびます。一方で“Grim”という単語には、“厳しい”という意味があるようですが、どうしてこの2つの単語を組み合わせようと思ったのでしょうか。
サハラ・グリム: “サハラ・グリム”は私の本名です。母はヒンドゥー教の名前の本から“サハラ”という名前を見つけました。その意味は“夜明け”また“宇宙のバランスを保証する破壊と再生の神であるシヴァ神”を意味します。強烈ですよね!

時間をかけて、アーティストとしての私にとって“グリム”が何を意味するのかを理解するようになりました。私が書く音楽は、しばしば私の闇や痛みを理解し、それを何かポジティブなものに変容させる方法です。だから、私の名前が私の音楽と同様に、闇と光の両方の要素を含んでいるのはぴったりだと感じています。これもまたシヴァがもたらすバランスに関連しています。

サハラ・グリムのルーツ


-滝田優樹:あなたの音楽に影響を与えたアルバム3枚をあげるとすれば、どれですか?また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードがあれば教えてください。難しければ、メンバーそれぞれ1枚ずつ好きなアーティストのアルバムを教えてください。
サハラ・グリム: 素敵な質問ですね!選ぶのは難しいですが、St Vincentの『Actor』、Milton NascimentoとLo Borgesの『Clube Da Esquina』、そしてBjörkの『Debut』と言いましょう。これらのアルバムはどれも私にとって時代を超越した特別な質を持っています。

St Vincentの『Actor』は13歳の頃からの最初のお気に入りアルバムの一つです。『Fable』を作っているとき、ジャズや音楽を真剣に追求する前の、もっとシンプルに音楽を聴いていた時に立ち返りたいと思いました。このアルバムは、全体的なエネルギーを感じるところに、強く影響を受けました。このアルバムが柔らかく、暖かく、きらめいているのに、同時に暗く、歪んで神秘的であることが大好きです。私の音楽でもこの二重性を捉えたいと思いました。彼女の歌詞も各曲で興味深い視覚的イメージを作り出します。音楽的には、プロダクションとシンセに影響を受けました。私の曲「Looking Glass」ではSt Vincentの「Laughing with a Mouth of Blood」からのメロディを再解釈しています。

Milton NascimentoとLo Borgesの『Clube Da Esquina』は、私自身が1960年代から1980年代のブラジル音楽の大ファンで、私の最も好きなブラジルのアルバムです。このアルバムは精神的で超越的です。カラフルなコード、夢のようなボーカルハーモニー、曲のアレンジメント、オーケストラ要素、繰り返されるソニックテーマが大好きです。すべてが純粋な美しさと至福のように感じられます。私は常にこれほど素晴らしい曲を書くことを目指しています。

そして最後にBjörkの『Debut』については、このアルバムがいかに様々な要素を組み合わせ、結合させているかというところが大好きです。Björkの最初のソロアルバムであり、フレッシュで無邪気な本質が捉えられています。これを聴くと、特別なものの始まりを感じさせられます。彼女の革新的な性質と遊び心のある実験的なサウンドエフェクトに影響を受けました。このアルバムが神秘的で奥深いのに、地下の90年代のパーティーを思い起こさせるところも好きです。

共感するアーティストについて


-滝田優樹:現在、あなたがシンパシーを感じるアーティストはいますか?個人的にはThe Maríasもそうですが、アリス・フィービー・ルーやフェイ・ウェブスターとも共鳴していると感じています。
サハラ・グリム: ありがとうございます、なんて素敵な褒め言葉でしょう!確かに私はアリス・フィービー・ルーと同じ世界で創作していると感じています。また、ケイト・ブッシュとも強く共鳴しています。実は『Fable』を作った後まで彼女の音楽をそれほど聴いていなかったのですが、よく彼女と比較されるので、興味を持ちました。実験的で物語性があり、完全に独自のものを創作しているという点で、私との共通点があるように思います。

最近では、日本のアーティスト、矢野顕子と強く共鳴しています。私たちの声には似た質があり、彼女の音楽の楽しくも奇妙なところが大好きです。

日本での活動と日本の音楽について

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-滝田優樹:日本にも滞在し、ライブを行ったことがあるそうなのでお聞きしたいのですが、その当時日本でどのような活動を行い、日本のどこで演奏されたのでしょうか。その時、共演した日本のアーティストはいましたか?もしあれば、好きな日本アーティストや日本の音楽を教えてください。
サハラ・グリム: 日本にいるとき、私は主に祖母が住み、母が育った神戸で過ごします。神戸では“Alchemy”というローカルバーで演奏したり、家族と時間を過ごしたり、摩耶山を探索したりします。また叔父と従兄弟に会うために東京にも行きます。もちろん滞在中はショッピングも楽しみます。古着は信じられないほど素晴らしいですから!お気に入りのレストラン“Mominoki House”でも食事をします。東京ではToneliteやGyoen Rosso 198のようなライブハウスで演奏しました。

まだ日本のアーティストとはコラボレーションしていませんが、冥丁(Meitei)とのコラボレーションを夢見ています。同じくロサンゼルスを拠点とする日本人アーティストの友人Lionmilkとはコラボレーションしました。ブラジル音楽と同様に、私は日本の音楽の大ファンでもあります。荒井由実、山下達郎、Cibo Matto、清水靖晃、高中正義、カシオペア、細野晴臣、金延幸子、竹村延和、秋元薫など、リストは延々と続きます。より現代的なものだと、きくおも大好きです。最近のお気に入りの発見は小川美潮です。彼女のアルバム『4 to 3』を繰り返し聴いています。

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