最終更新: 2025年4月22日
「summertime」誕生秘話
まりりん:そこで葛藤みたいなものはなかったですか?
青山:最初は、ボーカルを立てたほうがいいって言われた時に少しイラッとしたんですけど(笑)。でも言っていることは正しいし、バンドとしてはボーカルを目立たせていくべきだ、というのは納得できたので。おかげで、普段やらないようなポップスとか、楽曲提供してもらった曲では、僕が弾かないようなフレーズやプレースタイルもあったりするので、そういう意味では勉強になりました。
まりりん:なるほど。ちなみに、ガレージロックから女性ボーカルのポップスをやりたいと思ったきっかけは何だったんですか?
青山:ロックが大好きだったとはいえ、アレンジしていく上で得意なのはJ-ROCKだったり、歌モノ系だな、と気づいたんです。それで、もっと歌を立たせたギターを弾きたいな、と思うようになりました。あと、きのこ帝国とふくろうずにハマっていたこともあって、女性ボーカルでギターもかっこいいバンドをやってみたい、という思いが強かったですね。いやー、ここまで話すインタビューはめちゃめちゃレアかも。
まりりん:本当ですか?やったー!
青山:嬉しい。バンド名のこととか、ラジオでは話したことあるけど、文字に起こされるのは初めてかも。
まりりん:嬉しいです!
青山:多分、ファンの方も喜んでくれると思います。
まりりん:ちょっと話は変わるんですが、バンドって、よくこういうイメージだろうって決めつけられることってあるじゃないですか。それについてどう思いますか?
青山:イメージやカテゴライズとかは周りの方々が好きなように、むしろ周りが作るものと思っています。ずっと変わらない人もいれば、宿命のように変えられない人もいますよね。でも、その瞬間、瞬間で好きなものを取り入れてやっているんじゃないかな。アルバムごとにカラーが変わったり、楽器が増えたり。結局、作る人が変わらなければ根底はそう簡単に変わらないと思うし。
まりりん:なるほど。
青山:スタートはその瞬間にやりたいことをやっている、僕たちもそうでした。
まりりん:有名になっちゃったから方向性を変えられない、という例もある中で、cinnamonsの代表曲とも言える「summertime」についてお伺いしても良いですか?
青山:もちろん!
まりりん:最初にTikTokでバズった「summertime」は、そもそもどういう経緯で生まれた曲なんでしょうか?
青山:「summertime」は、evening cinemaというシティポップバンドとのコラボ曲なんです。evening cinemaとは結成時期が近くて、対バンもよくしていて仲が良かったんです。ある日、僕らの企画の打ち上げで、evening cinemaの原田(原田夏樹)くんが、うちのマネージャーに“cinnamonsとコラボしたい”って話していたらしくて。
まりりん:えー!
青山:それを聞いたうちのスタッフが勝手に“いいじゃん!やろうよ!”って盛り上がって、僕とまりこが“なんか面白そうな話してるな”って聞きに行ったら、もう話が進んでいて(笑)。その飲みの場で、どんな曲をやるか、どんなMVにするか、どんな発信の仕方をするか、みたいなところまで30分くらいで決まって。
まりりん:すごい!
青山:原田くんが“実は、女性歌手に楽曲提供するのが夢なんです”って言ってくれて。1週間後にはデモを送ってきてくれて、“これは跳ねちゃうぞ!”ってみんなで確信しました。
まりりん:すごい爆速ですね!全てが決まっていくのが。
青山:本当にすごかった。飲みニケーションってすごいなって(笑)。ライブの興奮が冷めないうちに話したから、実現できたんだと思います。
まりりん:そんな建設的な打ち上げは初めて聞きました(笑)。MVとかプロモーションの方向まで決まるなんて。
青山:楽曲の話からすると、当時シティポップが流行っていたこともあり、原田くんがシティポップをやりたいと言っていました。ただ、よくある都会感のあるシティポップではなくて、歌謡曲テイストなシティポップをやりたい、と。当時はそういうことをやっている女性ボーカルバンドはいなかったと思うので。
まりりん:なるほど。
青山:それにバンドやアーティストがコラボするのも今ほど多くはなかったですよね。せっかくだからMVも作ろう、という話になって、アニメーションが良いんじゃないか、と。当時、インディーバンドでアニメーションMVを作っている人はあまりいなかったし、ボカロのアニメーションも今ほど多くなかった。そこで、ボーカルまりこの友人のイラストレーターさんにお願いして実現しました。
まりりん:アニメのMV作りたい、ってなってたんですね。制作には時間がかかったんじゃないですか?
青山:めちゃめちゃ大変だったみたいです。アシスタントさんがいないと本当に大変らしくて。
「summertime」バズの裏側と当時の心境
まりりん:リリースを2ヶ月遅らせなきゃいけない、みたいなことになったりしませんでしたか?当時、どういう方向で打ち出そう、という話をしたんですか?
青山:おかげさまで遅らせることなく夏にリリースできました。ただその時はまだ自主制作だったので、できることも限られていて。良い曲を作って、良いMVを作ってYouTubeに出す、というのが限界でした。当時、インディーバンドで数万再生いけばすごい、という時代だったのですが、僕たちの体感としては“これは10万再生はいくだろう”と思っていました。MVの初稿が届いた時には“30万再生いくんじゃない?”って。実際には、予想をはるかに超えるスピードで100万再生突破したので、本当に驚きました。YouTubeにアップすることまでしか考えていなかったので。
まりりん:リリースした当初は、配信サービスが出始めた頃でしたよね?
青山:そうですね。2017年頃が配信黎明期だったと思います。まだサブスクに加入している人が少ない状況でした。
まりりん:その時はまだ配信ではなく、CDを買おうっていう時代でしたよね。リリース当初は、CDと配信とYouTubeのMV、という感じだったんですね。
青山:最初はCDでのリリースは考えていなくて。とりあえず配信とMVで。後々EPとかアルバムに入れたり、レコード化できたらと考えていました。
まりりん:なるほど。「summertime」が100万再生突破し、一気にバズったことで、プレッシャーを感じることはありました?
青山:僕はcinnamonsでコンポーザーとして活動しているんですが、「summertime」はevening cinemaの原田くんが書いてくれた曲なので、この曲を好きになってくれた人たちにどう答えるか、というプレッシャーがありました。僕は原田くんにはなれないし、原田くんのような曲は書けないから。