最終更新: 2025年4月22日

バズがもたらしたプレッシャーと“暗黒期”

まりりん:そうですよね。
青山:cinnamonsは基本的にしっとりした曲が好きだったので、そういった曲作りをいつもしていたんですが、楽しくてキャッチーな曲が好きな人たちをどう惹きつけるか、というのはメンバー間でも悩みました。どちらにも振り切れなかった、というか。ガンガンライブをやっていたら、模索しながらすぐに正解を出せたのかもしれないけど。活動自体があまりできていなかったのでメンバーと話し合う数も少なかったし、コロナ禍のマイナスな空気も相まって精神的にも、世界バズを心の底から喜べていたかと言われると、正直そうはなれなかった、という。暗黒期でしたね。

まりりん:バズのピークではあっても。
青山:そうなんです。当時お世話になっていたレーベルと僕がやり取りしても、“今、こんな人が使ってくれましたよ。SNS更新しましょう。”みたいな事務的なことが多く。ライブもできないし、曲も作れないし、と悶々としていました。SNSの恩恵を受けたにも関わらず。

まりりん:なるほど。
青山:僕もスランプ気味で、cinnamonsで曲作りをすることが、プレッシャーになってしまって。「summertime」を好きになってくれた人たちのことが頭から離れなくて。それで、楽しいキャッチーな曲を作ってみようと、ボーカルなしで他のメンバーたちとスタジオに入って曲を作ったりしました。6曲くらいデモを作って、まりこに聴いてもらったら“どれもピンとこない”って言われて。ショックでしたね。2020年頃のことです。

まりりん:その6曲は、方向性としては「summertime」に寄せたのか、それともcinnamonsらしさを出そうとしたのか、どちらだったんでしょうか?
青山:6曲のうち半分は「summertime」に寄せて、半分はcinnamonsらしさを残しながら、楽器数を増やしたり、アレンジを華やかにしたりしました。オンラインが増えたので、打ち込みも増やしたり。それまではスタジオでアレンジしていたんですが、デモを僕がガッツリ作って、スタジオで練り直して、最終的には宅録で、ということが多かったので、楽器数も増えていきました。そういう意味では、全曲「summertime」の影響を受けているかもしれません。それまで僕らは音数が少ないギターポップだったので。鍵盤が主体となったりシンセなどの上物が増えたのは「summertime」以降ですね。

まりりん:なるほど。
青山:まりこ的には、僕との間にギャップがあったみたいで。“曲が若すぎるかも”って言われました。今のマインドでは歌えない、と。そこで、母になるということが一人の女性としての成長に大きく繋がるのだと気がついて。僕は過去の曲にとらわれて無理しようとしていたんだ、とも気づきました。そんな中、事務所の案件でCMの楽曲コンペに参加させてもらったのですが、その曲を偶然まりこが事務所伝いで聴いて“めちゃめちゃ良いじゃん!”って言ってくれたんです。

まりりん:へー!
青山:ローファイポップな感じで、まりこが好きそうな感じでもないし、「summertime」とも違う、音数の少ないしっとりした曲でした。

まりりん:CMに合わせた曲を作ったことがかえって良かったんですね。
青山:CMには合わせたけど自分の好きを詰め込んで作った曲で。CMには採用されなかったんですが、事務所の社長から“まりこがこの曲に歌詞を書いてリリースしたいと言っているよ”って言われて、作曲家冥利に尽きるなと、めちゃめちゃ嬉しくて元気が出て、俺は何を悩んでいたんだ、と。

まりりん:なるほど。
青山:俺が好きな音楽だし、俺たちがやりたいことをやれば良いんだ、と吹っ切れました。「summertime」みたいな曲を期待してくれている人には申し訳ないけど、僕の曲は僕にしか書けないし、僕は原田くんにはなれない、と。そこで出したのが、2021年の「dawn」という曲です。

まりりん:そうだったんですね。
青山:そこからは、バンドも“ああいった曲が欲しい”とか、“明るくて楽しい曲がやりたい”と思う時があったら、提供してもらおう、ということにしました。プロジェクト的な感じで。

まりりん:今っぽいですね。
青山:もちろん本来はバンドで全部作れたら良いけど。できないことはできないが、それでもやりたいこともあるよね、と。フラットに思えるようになって。今はもう、何も迷いがないですね。

まりりん:めっちゃ良い話ですね!
青山:あとは、どんどん曲を世に出していくだけです。

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