最終更新: 2025年4月24日
“とにかく続けること”——10年間の活動を経て、7000万のストリーミング、15万のソーシャル・フォロワーを誇るSunflower Bean(サンフラワー・ビーン)。
そして、私たちにとっても彼らへのインタビューは、デビューアルバム『Human Ceremony(人間の儀式)』以来、約10年ぶりとなった。
ジュリアが中心となって紡いだ、“人生賛歌”と言うべき新作『Mortal Primetime』には、これまでにない自信と成熟が宿っている。
ニックのL.A.移住、オリーブのトランスジェンダーとしてのカミングアウトという大きな変化を経ても、音楽への情熱は揺るがない。
“自分の真実を生きていくのに最高のタイミングは今”という強いメッセージとともに、『Mortal Primetime』が包み込む痛みや儚さの先にあるものとは?
Sunflower Beanインタビュー

アーティスト:ジュリア・カミング(Vo./Ba.)、ニック・キヴレン(Gt./Vo.)、オリーブ・フェイバー(Dr.) インタビュアー:桃井かおる子 編集:Tomohiro Yabe
-桃井かおる子:前作をリリースした後、ニックがカリフォルニアへ移住し、オリーブがトランスジェンダーであることを発表するなど、今回のアルバム制作以前にメンバーそれぞれの生活環境に変化が起きています。前作『Headful of Sugar』はバンドが様々な悩みを抱えた状態で作られたアルバムだったのでしょうか?
オリーブ: うん、そうだね。『Headful of Sugar』はちょっと変な時期に作られたんだ。世界中がコロナでストップしちゃって、僕らも初めて一息つく時間があったと思う。水面下では色々なことが起こっていたけど、バンドと一緒にアップステート(ニューヨーク州北部)で暮らしてあのレコードを作ったことは、良い思い出しかないよ。忘れられない時間だったな。
-桃井:メンバーそれぞれの生活環境が変わっていく中、今作ではジュリアが初めて一人で曲を書いていったとのことですが、バンド結成以前など一人で曲を書いた経験がなかったということでしょうか?一人で曲を書くことの難しさや楽しみなども教えてください。
ジュリア: ちょっと補足が必要みたい。ソングライターとして成長していく過程では、一人で曲を書く時間がたくさん必要だと思う。それは私のプロセスの一部としてずっとあった。それに、サンフラワー・ビーンはすごく協力的なプロジェクトで、「全体は部分の総和よりも大きい」っていう考え方を私たちは本当に信じてる。でも、今回のアルバムを作るにあたっては、ここ数年、一人で作業して、以前よりもっとしっかり形になったアイデアをバンドに持ち込む時間がたっぷりあったよ。前よりも自信が持てて、新しい形で自分を信じられるようになってね。そのエネルギーをこのレコードに注ぎ込めて本当に嬉しい。
-桃井:ジュリアが一人で書いていった楽曲を深めるためにメンバーが離れた場所で暮らしている中でアイディアなどはどのようにシェアしていたのでしょうか?セッションなど実際に会って音を出し合うという機会は以前よりも限られていたのでしょうか?
ジュリア: ロングアイランドで数週間、みんなで一緒に過ごして、集めてきた素材を練り上げた。多くの曲は、そうやってじっくり向き合ったことで本当に生き生きとしてきたよ。特に「There’s A Part I Can’t Get Back」は、ニックがあのアグレッシブなストロークパターンを始めたときに、すごく活気づいたと思う。ニックの曲「Please Rewind」は、実はスタジオで形になったの。ハーモニーを全部重ねて、チェロを入れることができた時にね。基本的には、みんなが同じ場所に住んでいなくても、それぞれの曲が私たち3人と一緒に成長する時間を持てたってこと。
オリーブ: そうだよ!ロングアイランドの僕らのスタジオで丸一ヶ月一緒に過ごして、アイデアを全部まとめて、サンフラワー・ビーンのレコードにしたんだ。
Sunflower Beanのルーツ
-桃井:前回のインタビューで聞きたかったことなのですが、Sunflower Beanのバンドのルーツとなったアルバムについて、3枚教えてください。また、それぞれのアルバムについて、印象的なエピソードがあれば教えてください。
オリーブ: 1枚はTotal Slackerの『Thrashin』だと思うな。彼らは地元のバンドで、2012年とか2013年頃、ブルックリンでよくライブを観に行ってたんだ。彼らはキャッチーでメロディックなロックンロールにとって、すごく刺激的で希望の光みたいな存在だった。僕がやりたいことが可能だってことを示してくれた、初めて目にしたものだったかもしれない。
ニック: 僕らが本当に大好きだったもう一つの地元のバンド、DIIVの『Oshin』を挙げるかな。Tame Impalaの『Innerspeaker』と『Lonerism』も僕らにとってすごく大きかったね。ロックでありながら、他とは違ってて、奇妙で、クリエイティブな音楽だった。コナン・モカシンやUnknown Mortal Orchestraも初期の頃は大きなインスピレーションだったよ。King Gizzard & The Lizard Wizardと一緒にやった時も、すごくハマったんだ。Thee Oh Seesもそうだね。
Mortal Primetime
-桃井:今作『Mortal Primetime』は、地方出身で自分に自信のない女性が化粧してみたり、様々な立場の人と会って考えが広がったり、傷ついたりしていく中で自分自身を確立していくような物語が感じられました。このアルバムには、一貫したテーマのようなものがあるのでしょうか?
ジュリア: このアルバムからそういうことを感じてくれて、それにキャラクターも浮かび上がってきているなんて、すごく嬉しい!このアルバムは、人生や愛の儚さ、そしてその尊さについて歌っているよ。私たちがお互いを想う気持ちは、私たちのやることすべて、そして作る音楽すべてに込められていると思う。このレコードでは、お互いの欠点や痛みをより深いレベルで共有することができた。私たちの脆さが、あなたが感じた女性像に命を吹き込んでいるのなら嬉しいし、人々が音楽をどう体験するかを聞くのは、いつもすごく興味深くてパーソナルなことだよね。このレコードで使った音色、自然で部屋鳴りのするドラムやアコースティックギターも、あなたが言ったような田舎の雰囲気を出しているのかもしれないね。
ニック: アルバムのメインテーマは、コミュニティや友情の中に強さを見出すことだと思うよ。タイトル曲「Champagne Taste」は、未発表曲をたくさんやるような小さなシークレットライブで使ってた仮名なんだ。あの曲は、ある意味、一緒にその別人格に変身したいっていう気持ちについて歌ってるんだ。成功して、強く、パワフルになりたいってね。
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