最終更新: 2025年5月1日
ソングライティングと影響について
-滝田優樹:あなたが日本語と英語の両方の歌詞で歌う理由はなんでしょうか。
メイ・シモネス:バイリンガルとして育ったから、いつも両方の言語で話してきたよ。だから、日本語と英語の両方で歌詞を書くのは自然なことだと感じているわ。中学や高校で初めて曲を書き始めたときは英語の歌詞だけだったんだけど、大学に入ってから初めて日本語の歌詞も入った曲「Hfoas」を書いた。これが私が初めてリリースした曲で、自分にとってのターニングポイントだったと思う。自分のサウンドを見つけるための、重要な第一歩だったんじゃないかな。日本語と英語の両方の歌詞があることが、一人の人間としての私自身にとって一番しっくりくるし、それが音楽にも表れていたらいいなと思っているよ。
影響を受けたアルバム3選
-滝田優樹:あなたの音楽に影響を与えたアルバム3枚を挙げるとすれば、どれですか。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードがあれば教えてください。
ジョン・コルトレーン『Coltrane’s Sound』
メイ・シモネス:コルトレーンのアルバムを1枚だけ選ぶのは難しいんだけど、もし選ぶなら『Coltrane’s Sound』かな。彼のプレイが本当に大好きで、最初の音からすぐに彼だとわかるサウンドが素晴らしいと思うの。こういうはっきりとした個性を持つことは、私自身の音楽でも目指していること。彼の演奏の裏にある感情にもすごく共感するし、彼の音楽を聴くと一日がより良くなるのよね。私の音楽も、他の人にとってそういう存在になれたらいいなと思ってる。
スタン・ゲッツ / ジョアン・ジルベルト 『Getz / Gilberto ’76』
メイ・シモネス:ジルベルトのボーカルは、いつも私にとってインスピレーションの源だよ。あまり飾り立てたりドラマチックにしたりせずに歌うスタイルが好きで、彼のボーカルはとてもストレートでソフト。会話で話すように歌っている感じ、って言ったらわかるかな。このストレートなボーカル表現は、私自身のボーカルに取り入れようとしてきたことだし、ボサノバのリズムやコード構成も私の音楽に大きな影響を与えているわ。
Nirvana 『Nevermind』
メイ・シモネス:Nirvanaは幼い頃大好きだったバンドの一つで、今でも好きなバンドの一つと言える。私の音楽が彼らにすごく似ているとは全く思わないけれど、彼らの素晴らしいメロディー、コード進行、歌詞には影響を受けているわ。それに、彼らの音楽はすごく正直だと感じるな。それは、人々が私の音楽の中にも見出してくれたら嬉しいことね。
共感する現代アーティスト
-滝田優樹:現在、あなたがシンパシーを感じるアーティストはいますか? 個人的には日本のアーティストだと青葉市子や君島大空。その他だとLaufeyやSoccer Mommyといったアーティストと共鳴していると思いました。
メイ・シモネス:青葉市子さんと君島大空さん、大好き!それ以外だと、今音楽を作っているアーティストで一番共感するのは、ジョン・ローズボロとリアナ・フローレスかな。
デビュー・アルバム『Animaru』
-滝田優樹:昨年2024年は、EP『Kabutomushi』をリリースし、海外の音楽メディア、Rolling StoneやPasteでも取り上げられました。また、全米で大規模なツアーを行ったりと、激動の1年だったと思います。今、振り返ってみてどんな1年だったか教えてもらえますか?
メイ・シモネス:2024年は本当に楽しい一年だった!大好きなツアーがたくさんあって、それに大好きな曲作りやレコーディングもたくさんできた。2024年の6月に音楽活動をフルタイムに切り替えたんだけど、自分の好きなことで生計を立てられていることに、ものすごく感謝しているし、とても幸せ。これ以上望むことはないって思う。一年を振り返ってみると、忙しい年だったけど、最高な意味でね。大変な努力やツアーとか、全部やる価値があると思っているし、今年も同じような活動をもっとできるのを楽しみにしているよ。
アルバムタイトル『Animaru』に込めた意味
-滝田優樹:それを経て初のフル・アルバム『Animaru』のリリースです。まずは“animal”の日本語での発音“Animaru”というタイトルにした理由や意味を教えてください。どのようなフィーリングが反映されているのでしょうか。
メイ・シモネス:私がプロジェクトの名前を選ぶときはね、収録曲のタイトルの中から一つを選んで、プロジェクト全体のタイトルにするっていうやり方なの。「Animaru」はアルバムのために書いた最後のほうの曲で、お気に入りの一つ。この曲を選んだのは、曲に込められたメッセージがアルバム全体をよく表していると思ったのと、響きがいいなと感じたから。この曲のメインテーマは、アルバム全体のテーマの一つでもあるんだけど・・・。自分の直感を信じて、自分が好きなことや大切にしていることに従う、っていうことね。
レコーディングプロセスについて
-滝田優樹:今作は2024年の夏に友人のCharles Dahlkeが経営するコネチカット州の農場にあるスタジオ、Ashlawn Recording Companyで、5人編成のバンドで、このアルバムをレコーディングしたそうですね。そこではどのようなアイデアや方向性をもって制作されたのでしょうか。
メイ・シモネス:レコーディングのプロセスでは、ライブ演奏から生まれる生々しさをある程度残しつつ、すごく洗練されたレコーディングを作りたかった。バンドメンバーそれぞれのエネルギーと素晴らしい音楽性を捉えたかったんだ。曲のレコーディングは、主に私たちが普段演奏している通りに曲を捉えること、それぞれの核となるパートで可能な限り最高のテイクを録ることに焦点を当てて、そこからさらにハーモニーやレイヤリング、オーバーダブなんかを加えてサウンドを豊かにしていく、という感じだったよ。