最終更新: 2025年5月7日

新作『Ready For Heaven』を語る

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タイトルに込めた想い

-滝田優樹(Yuuki Takita):ここからは、最新アルバム『Ready For Heaven』についてお伺いします。まず、『Ready For Heaven』というタイトルに込められた理由や意味、どのような感情が反映されているのか教えていただけますか?
エンジェル: 『Ready for Heaven』が何を意味するかは、人それぞれに解釈してほしいな。いろいろな読み方ができると思う 🙂

反資本主義と人類の衰退について

-滝田優樹(Yuuki Takita):アルバムの資料で、“このアルバムは、人類の衰退を見つめることの一部でもある。スピリチュアルな葛藤についてであり、明確に反資本主義的だ。私たちが持つアイデンティティのレッテルは、資本主義の世界に生きていなければ存在しなかっただろう”と述べられていますね。これについて詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
エンジェル: これらの曲を書き始めたのは2022年頃、私たちが世界的なコミュニティとしてパンデミックを経験した後だった。世界は社会の綻びが目に見えてきて、私たち、人間が歩んできた真実が明らかになるのを目の当たりにし始めた。私たちは現実の幻想とか、この地球での時代遅れの生き方にしがみついてきたけど、それらは今急速に崩れ落ちている。すごく想像力豊かで、創造的で、目的意識を持った存在であるはずの人間が、ひどい教育や、競争的で暴力的な行動、成功っていう偽りの夢にさらされて、いかにバラバラになってしまったかを見るのは辛かった。それは、関係性を大切にする私たちのあり方にとって有害な、大規模な孤立と孤独を生み出したのよね。私たちは、分断されているっていう幻想の中に生きている。

ダブとポストパンクへの接近

-滝田優樹(Yuuki Takita):今作はダブを軸にしたポストパンクな楽曲が収録されていますね。70年代、80年代のトーキング・ヘッズやジョイ・ディヴィジョンが現代的な感覚で演奏したらこうなるのではないか、と感じさせるサウンドに感動しました。どのようなアイデアや方向性を持って制作されたのでしょうか?
エンジェル: 私はいつも、自分をインスパイアするもので遊ぶことに興味があってね。このアルバムでは、楽器の編曲の仕方で、音楽がもっと遊び心があって、コミュニケーション豊かな感じにしたかった。リズムとメロディにはいつも興味があるんだけど、このアルバムでは新しい領域に進みたかったのよね。前のトラックを作っていた時ほど安全だって感じられなかったから、リスクがあるなとは感じてたけど。

-滝田優樹(Yuuki Takita):サウンドプロダクションに関して意識した点はありますか?
エンジェル: その時々に現れたものを、そのまま形にしたって感じかな。

歌詞とボーカル表現

-滝田優樹(Yuuki Takita):次に、歌詞とボーカルについて教えてください。歌詞の多くは、現代における人間であることの葛藤や、それでも前進し続けようとする決意を歌っている印象を受けます。対照的に、ボーカルは意図して機械的に聴こえる部分もあるように感じました。この点についてどうお考えですか?歌詞やボーカルに関して意識したことがあれば教えてください。
エンジェル: 歌詞はあんまり得意じゃないのよね。作曲のプロセスではたいてい最後になるし。どちらかというと意図的にベーシックで、少し抽象的にしてる。リスナーが自分のやり方で解釈できるように、いつも余地を残しておきたいと思ってね。“意図して機械的”っていうのがどういう意味かよくわからないけど、このアルバムでの私のボーカルは、前のアルバムよりも表現豊かだったと感じてる。色々な歌い方を試してみたかったしね。

アルバムにおけるブレイクスルー

-滝田優樹(Yuuki Takita):このアルバムの中で、あなたにとってブレイクスルーとなった曲、あるいは最も変化や進化を感じる曲はどれですか?
エンジェル: 一番好きなトラックは「Any Other World」かな。ソングライター、プロデューサーとしての私の中で、まだ完全には形にできていない部分を捉えられている気がするから。ボーカルのメロディは私にとって楽しくて新しいし、プロダクションにはたくさんの小さな魔法みたいなことが起こってるの。もっと遊び心のあるエネルギーもあって、それは私の性格の一部なんだけど、他の人にはすぐにはわからないかもしれない。この曲が、将来、作曲や編曲について違った考え方をするきっかけになると思うのよね。

日本のリスナーへ

-滝田優樹(Yuuki Takita):『Ready For Heaven』は、どんな人に聴いてほしいですか?また、どんなシチュエーションで聴いてほしいですか?
エンジェル: 全ての人に聴いてほしいな。音楽が完成してリリースされたら、それは誰でも聴けるものだから。この音楽に込めた意図は、私が学んだ情報を共有して、それが他の人たちにとって、愛情とか思いやりのある意味で役に立つってことなの。

-滝田優樹(Yuuki Takita):最後に、この記事は来日ツアーであなたのライブを見たリスナー、過去のアルバムを買ってくれたリスナー、そして最新アルバム『Ready For Heaven』を聴こうと思っている日本のリスナーが読みます。彼らにメッセージをお願いします。
エンジェル: 音楽を楽しんでくれるといいな。そして、応援ありがとう!

Deradoorianアルバムリリース

アルバム『Ready For Heaven』

Deradoorian2
発売日: 2025年5月9日
収録曲:
1.Storm In My Brain
2.Any Other World
3.No No Yes Yes
4.Digital Gravestone
5.Set Me Free
6.Golden Teachers
7.Purgatory Of Consciousness
8.Reigning Down
9.Hell Island
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Deradoorian(デラドゥーリアン)プロフィール

Deradoorian
Deradoorian(クレジット:Colin Smith)
インディーロック、ワールドミュージック、クールなダンスリズムの要素を融合させたAngel Deradoorianは、Dirty Projectors、Avey Tare、Flying Lotusなどの著名なアーティストとのコラボレーションで名を上げた後、ソロキャリアをスタートさせた。2015年のThe Expanding Flower Planetや2020年のFind the Sunを含む彼女のアルバムは、彼女のスピリチュアルな旅に影響された宇宙的な楽曲サイクルとなっている。

Deradoorianは1986年7月18日に生まれ、サクラメント近郊のカリフォルニアで育った。Deradoorianの両親は彼女がわずか5歳の時にバイオリンのレッスンに通わせたが、その若さではその楽器に馴染めなかった。10代の頃、DeradoorianはRadioheadやElliott Smithに関心を持ち、運転できるようになるとバークレーの音楽シーンを探索し始めた。16歳の時、彼女は音楽をキャリアにしたいと決意。ニューヨークのブルックリンに移住後、Deradoorianは初めての大きな仕事を得た。2007年のアルバムRise Aboveのリリース後にツアーに出たDirty Projectorsのツアーベーシストとして雇われた。DeradoorianはDirty Projectorsの次のアルバム、2009年のBitte Orcaに参加し、同年、彼女はDeradoorianの名前で初のソロEP、Dirty ProjectorsのリーダーDavid Longstrethがプロデュースした5曲入りのEPMind Raftをリリース。Deradoorianはまた、Vampire WeekendのRostam BatmanglijとRa Ra RiotのWesley Milesが立ち上げたプロジェクト、Discoveryの2009年デビューアルバムLPにゲストボーカルとして招かれた。the Roots、Flying Lotus、Matmos、Brandon Flowersなどのアルバムにゲスト出演するほか、DeradoorianはAnimal Collectiveのメンバーの一人によるソロプロジェクト、Avey Tare’s Slasher Flicksにも参加。

2015年、Deradoorianは待望のソロアルバム『The Expanding Flower Planet』をKenny Gilmoreとの共同プロデュースでリリース。Deradoorianはその後、Boots、Hamilton Leithauser + Rostam、Avey Tareのアルバムにゲスト参加。Anticonからの2作目となる『Eternal Recurrence』を2017年にリリース。以前の作品とは異なり、このアルバムはアンビエントなドローン・フォークの流れるような組曲となった。2020年の『The Cosmic Garden EP』を含むいくつかのデジタルリリースの後、DeradoorianはAnti-レコードから3作目のフルアルバム『Find the Sun』をリリース。彼女の作品の中で最もコラボレーション色の強いこのアルバムは、パーカッショニストのSamer Ghadryとマルチ楽器奏者のDave Harringtonとニューヨークで制作され、その後カリフォルニア州マリン郡のビーチにある家で録音された。(Allmusicより)

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky