最終更新: 2025年5月14日

日本と英国の両方にルーツを持つ日系イギリス人のシンガー・プロデューサーのMiso Extra(ミソ・エクストラ)。

K-POPからUKガラージ、R&Bといった折衷的なサウンド、ビートに日本語と英語でのラップを乗せ、耳愉しい音楽を聴かせ、Thundercatやファビアナ・パラディーノといった実力者たちからも評価されている。

また、Miso Extra「POP」はここ日本でも“J-WAVE TOKIO HOT 100”の上位にランクインしており、着実に話題を集めている。

今回リリースされるデビュー・アルバム『Earcandy』は、Ezra Collectiveやジョルジャ・スミス、サンファらとの仕事でも知られるリッキー・ダミアンとともに制作された作品。

まさに彼女の経歴の集合体となるような作品で他要素が絡み合う内容でありながら混沌とすることなく、どの楽曲もまとまりも収まり良く洗練された内容だ。

今回はそんなMiso Extraの魅力とデビュー・アルバム『Earcandy』が表現する”耳のための旨味”を存分に楽しんでもらうべくインタビューを敢行した。

Miso Extraインタビュー


アーティスト:Miso Extra インタビュアー:滝田優樹 翻訳・校正・編集:BELONG Media編集部

-滝田優樹:私たちはアーティストのルーツや音楽がうまれた背景、そして影響を受けた音楽・文化・芸術を大切にしているメディアです。今回私たちとははじめてのインタビューなのでまずはあなた自身のことからお聞きすることで読者にもあなたの魅力を知ってもらいたいです。イギリス人の父と日本人の母の間に香港で生まれたMiso Extraは、幼い頃に日本に移り住み、その後イギリスに移住されたそうですね。日本とイギリスでの暮らしやどのような幼少時代を過ごされたのか教えてください。
Miso Extra:両方の文化を探求できたこと、そしてそれぞれの創造的な表現の違いに触れることができたのは、私にとって楽しかったことかな。この多様な視点があったからこそ、より幅広い発想源からインスピレーションを引き出すことができて、それが私のアーティストとしての表現に影響を与えていると感じているよ。

-滝田優樹:日本とイギリスの両方をルーツに持ち、どちらの国でも暮らしたことがあるので気になるのですがそれぞれ子供の頃は周りにどんな音楽や文化がありましたか。また、あなたが感じた日本とイギリスの文化の違いや似たところを教えてください。
Miso Extra:私の音楽とか文化体験のほとんどは、本、マンガ、テレビ、映画、ゲームを通じて得たものよ。好きな日本の映画はスタジオジブリ作品で、『名探偵コナン』もよく観てた。音楽的な影響は、アニメのオープニングやエンディングテーマから受けることが多くて、それはイギリスのテレビや映画に対しても同じだと思う。

-滝田優樹:「POP」のMVでは日本のガチャポンショップで撮影されていましたが、今あなたが興味がある日本とイギリスそれぞれのポップカルチャーをひとつずつ挙げるとすれば何ですか?できれば理由も知りたいです。
Miso Extra:うーん、これは難しい質問ね。たぶんアニメやマンガだけど、食べ物も同じくらい好きかな。

-滝田優樹:バイオリンを習っていたそうですが、それによって今のあなたの音楽に影響を与えたことがあれば教えてください。
(バイオリンを習ったことは)音に対する愛情を育むきっかけになったと思う。

アーティスト“Miso Extra”について

-滝田優樹:Miso Extraというアーティスト名について教えてください。なぜこの名前にしたのでしょうか。アーティストがイギリスで育ったときに経験した人種差別に由来する駄洒落で”me so horny”と”me so extra”という言葉が由来になっているかと思いますが、そちらのエピソードを改めてあなたの口から教えてもらえます?
Miso Extra:この名前(Miso Extra)は、私が作る音楽の雰囲気を伝えるための、ちょっとしたジョークであり言葉遊びなの。MF DOOMへのさりげないリスペクトも込めているのよね。

-滝田優樹:またご自身から見て、Miso Extraはどのような音楽をやっていて、どのようなアーティストなのか説明することはできますか? 私があなたの音楽や活動を確認した印象では、あなたは音楽を通して多様な文化やMiso Extra:音楽の架け橋になろうという気概も感じたのですが。
私が作っているのは“耳のための旨味”。美味しくてやみつきになるようなサウンド、って感じかな。

Miso Extraのルーツ

-滝田優樹:あなたの音楽に影響を与えたアルバム3枚をあげるとすれば、どれですか。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードがあれば教えてください。
Miso Extra:ハイエイタス・カイヨーテの『Choose Your Weapon』、ジャスティスの『Justice』、ネイオの『For All We Know』ね。これらのアルバムは何度聴いても飽きなくて、それぞれの作品の細部へのこだわりや音作りは、間違いなく私の音楽に影響を与えていると思う。

Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)
撮影:TreKoch
【インタビュー】『Mood Valiant』に包括した、Hiatus Kaiyoteのバンド活動の全てとは?

-滝田優樹:続いて現在、あなたが共鳴していると感じるアーティストはいますか? 個人的にはロレイン・ジェームスやエリカ・デ・カシエールとも共鳴していると感じています。
このアルバムで一緒に制作したアーティストは皆、私が今共感している人たち。だからこそ、彼らをアルバムのジャケットに登場させているの。最近リミックスでコラボレーションしたケリー・リー・オーウェンスの名前も挙げなきゃね。

EARCANDY


-滝田優樹:ここからは最新アルバム『EARCANDY』についてお聞きします。まずは“EARCANDY”というタイトルにした理由や意味を教えてください。どのような感情や雰囲気が反映されているのでしょうか。
Miso Extra:私の音楽を“耳のための旨味”って表現していることの延長線上にある言葉遊びなの。甘くて中毒性のあるポップソングを集めた作品、っていう意味合いかな。

-滝田優樹:今作はEzra Collectiveやジョルジャ・スミス、サンファらとの仕事でも知られるリッキー・ダミアンとともに制作された作品ですが、彼とはどのようなアイデアや方向性をもって制作されたのでしょうか。
Miso Extra:このアルバムは多くのアーティストとの共同制作だったから、リッキーは私自身の音楽的な個性がしっかりと際立つように、そしてそれぞれの曲がうまく繋がり、まとまりのある作品になるように手助けしてくれたよ。

-滝田優樹:今作の印象としては言語でいうと日本語と英語。サウンドでいうとK-POP、UKガラージ、80年代のサウンド、R&Bといったジャンルの融合になっていて、まさにあなたの経歴の結晶体、集合体になっています。他要素が絡み合う内容でありながら混沌とすることなく、どの楽曲もまとまりも収まり良く洗練された印象です。ビート主体に紡がれているからこそなのかなとも思ったのですが、サウンドプロダクションに関しては、どんなことを意識したのか教えてください。
Miso Extra:制作過程をとにかく楽しむこと、それから特定の楽器やサウンドを一貫して使うことを意識したかな。自分の創造的な直感に従うことで、最終的にはリスナーにとっても統一感のあるものが出来上がるんじゃないかと思う。

-滝田優樹:今回のアルバムであなた自身のブレイクスルーとなった楽曲、もしくは最も変化や進化を感じさせる楽曲はどれですか? 個人的なフェイバリットは「Certified」と「Don’t Care」です。
Miso Extra:全ての曲を同じくらい愛しているけど、今は特に「Playboi」をライブで演奏するのが楽しい。あの曲は本当に一つの旅のような構成になっているから。

-滝田優樹:デビュー・アルバムでありながら、メトロノミーやDJボーリング、A.K.ポール、ミシェル、タイソンといった参加アーティストが多いことも特徴です。彼らとはどういった経緯で作品に参加してもらったのでしょうか。また制作時のエピソードもあれば気になります。
Miso Extra:幸運なことに、レーベルを通じて彼らと繋がることができたよ。ただ、DJボーリングだけは共通の友人を通じて知り合った感じね。

Miso Extraからのメッセージ


-滝田優樹:『EARCANDY』をどのような人に聞いてほしいですか? もしくはどのようなシチュエーションで聞いてほしいですか? 歌詞やサウンド面で特に注目して欲しいポイントがあれば教えてください。
Miso Extra:どんな人にでもこのアルバムを聴いてほしい。“Misoverse(ミソヴァース)”では、いつでも誰でも歓迎する“オープンドア・ポリシー”だから。このアルバムは一つの旅のようなものだから、個人的には2つのパートに分けて聴くのが良いかもしれないと思ってる。最初の6曲をどこかへ向かう途中で聴いて、残りの6曲を帰り道で聴く。そんな風に、この音楽の旅を楽しんでほしいな!

-滝田優樹:あなたの音楽について、私のようにMetronomyとのコラボで知ったリスナーや、『EARCANDY』をこれから買おうと思っているリスナーが日本にいます。なので、最後に日本のリスナーにメッセージを頂けますか?
Miso Extra:どんなきっかけで私のアルバムを知ってくれたとしても、“Misoverseへようこそ”って言いたいな。ここに来てくれて嬉しいし、いつか日本の皆さんに直接会える日を楽しみにしているよ (^.^)。

Miso Extraアルバムリリース

デビュー・アルバム『EARCANDY(イアキャンディ)』


発売日: 2025年5月16日
収録曲:
1. Love Train
2. POP
3. Good Kisses
4. Certified
5. Playboi
6. Done.
7. Moshi Moshi (interlude)
8. Slow Down
9. Ghostly
10. Don’t Care
11. Candy Crushin’
12. Earcandy
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Miso Extra アーティストプロフィール


Miso Extra(ミソ・エクストラ)は、香港生まれ、日本育ちで現在はロンドンを拠点に活動する日系イギリス人のラッパー、シンガー、プロデューサーである。イギリス人の父と日本人の母を持ち、その音楽は自身のルーツやアイデンティティ、女性らしさ、エンパワーメントを探求する。KポップやUKガラージ、J Dilla、MF DOOM、Daft Punk、アニメなど多様なカルチャーに影響を受け、英語と日本語を織り交ぜた独自の「ミソヴァース」を展開。その名はアジア人への偏見を逆手に取ったものだ。Fabiana PalladinoやThundercatからも支持され、多くのメディアで「注目のアーティスト」として称賛されている。デビューアルバム『Earcandy』で、その才能はさらなる注目を集めるだろう。

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ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky