Goddess、フェイ・ミルトンが語る音楽プロデュースへの挑戦と日本への愛

最終更新： 2025年5月29日

音楽的影響とインスピレーション

－滝田優樹：あなたの音楽に影響を与えたアルバム3枚をあげるとすれば、どれですか。また1枚ずつ、どのような部分に影響を受けたかやエピソードがあれば教えてください。

Portishead『Third』
このアルバムは私が音楽に求めるもの全てが詰まってる。繊細さとハードさのバランスは、私の音楽でも目指そうとしているものよ。

SOPHIE『OIL OF EVERY PEARL’S UN-INSIDES』
SOPHIEの音楽で特に好きなことの一つは、彼女がフェミニンな強さ、カオス、楽しさ、そして脆さを、それまで誰もやったことのないような形で結びつけることができた点ね。

Nick Cave & The Bad Seeds『Push the Sky Away』
Goddessのレコードを作り始めた頃、このアルバムに夢中だったの。音的にも歌詞的にも大好きで、それが持つ感情とエネルギーは本当に強力よ。

現在共感するアーティスト

－滝田優樹：現在、あなたが共感や親近感を覚えるアーティストはいますか？　個人的にはShygirlやArcaといったアーティストと共鳴していると思いました。
Shygirlの音楽はすごく好きで、彼女は間違いなくこのレコードに影響を与えたし、一緒に曲作りもしたことがあるわ。影響という点では、好きな音楽のクラウドを見つけて、その中のどこかで生きている感じね。まず、このレコードでコラボレートした全てのアーティストにとても影響を受けているわ。それから、今私の音楽クラウドにはThe Comet is Coming、PVA、Kelsey Lu、Underworld、Brian Enoがいるよ。

アルバム『Goddess』について

－滝田優樹：ここからはアルバム作品『Goddess』についてお聞きします。セルフタイトル・デビューアルバムであるこのアルバムは、どのようなあなたのフィーリングが反映されているのでしょうか。またはどのようなアルバムになっているのかあなたの口からお聞かせください。
このアルバムは、多くの信頼の飛躍と脆さをもって作った。それは自分の道を見つけ、アイデアや音楽的な思考をオープンに共有している感じ。まるでプレイリストみたいで、異なるサウンドがありながらも、一本の筋が通っている。Savagesの活動や、フルタイムのミュージシャン・活動家になること、パンデミックを乗り越えながら、ここ数年ずっと私と一緒にあって、ゆっくりと作り上げてきたものだから、これらの曲は世に出る前にたくさんのことを見てきた。私にとってこのアルバムが呼び起こす感情は、脆さ、決意、忍耐、無邪気さ、きらめき、雷鳴、そして稲妻ね。

女性・ノンバイナリーアーティストとのコラボレーション

－滝田優樹：今作はポストパンク、エレクトロニカ、ドリームポップ、インディーロックといったの音楽的な多要素を持っていて、全10曲はすべて異なるヴォーカリストを起用しています。　そして10人のシンガー全員が女性であり、ノンバイナリーということも大きな特徴になっていますが、これについては理由はあるのでしょうか。アルバムの内容はジェンダーについてではないと思いますが、ジェンダーについて自覚的もしくは意識的な考えがあれば教えてください。
なぜか、女性とノンバイナリーのコラボレーターだけでレコードを作るべきだって、すごく当たり前のことに思えたの。アルバムのアイデアは完全に出来上がった形で私のところにやってきて、あとはそれを作るだけだった。女性やノンバイナリーのアーティストに深くインスパイアされていて、これを創造的なパラメータとして扱うのは、私にとっては当然のことだったの！

制作プロセス

－滝田優樹：『Goddess』という作品は非常に多様な音楽と多角的な表現がつまっています。そのため1つのアルバム作品としてまとめあげることも容易ではなかったのではないかと推測するのですが、今作はどのようなアイデアや方向性をもって制作されたのでしょうか。
レコードに収録されなかった曲もかなりたくさんあったわ。例えば、「Big Ben Beat」はKim Dealと一緒にGoddessのレコードのために書いたんだけど、どういうわけか彼女の最近のソロアルバムに入ったの。最終的にレコードに入らなかった曲は、サウンドが何らかの形で”合わなかった”トラックだった。いくつかの曲が自然と抜け落ちていくような、自然な絞り込みのプロセスみたいな感じね。レコード制作の半分くらい進んだところで、自分が作りたいサウンドがわかったと思う。でも、このレコードには無邪気さがあって、音楽プロデュースを始めたばかりの人が、ただ色々なことを試して、何が上手くいくかを見ている感じ。一本の筋はあると思うけど、ちょっとワイルドなところもあって、それがまたすごく楽しいの。”初心者”のエネルギーね。