最終更新: 2025年6月24日
多彩な参加アーティスト
-Tomohiro Yabe:今作には、ウルスラ・ラッカーやティム・スミス、サラミ・ローズ・ジョー・ルイスをはじめ、性別や年代を問わない形で国内外の多彩なアーティストがフィーチャリングされています。これらのヴォーカリストやミュージシャンは、どのような基準で選ばれたのでしょうか?
下田法晴:以前から個人的な思い入れがある人や、今回、始めて出会った人もいるので、様々ですが、簡単に言えば、曲のイメージに合っているかどうか、こちらの意図に共感してくれるかどうか、プラスアルファ、良い化学反応を起こしてくれそうかなど、あとは直感的なものもあるかもしれません。なるべく世代やジェンダーも偏らないようにというのも考えました。
希望の象徴としての鳥のさえずり
-Tomohiro Yabe:「Hope」や他の楽曲で聴かれる鳥のさえずりが印象的です。テキストには“憎悪や暴虐なノイズの対極にあるもの”という下田さんのコメントがありましたが、この鳥のさえずりを楽曲に取り入れた意図について、詳しく教えてください。
下田法晴:この数年、囀りの美しさに魅了され、鳥に興味を持って、バードウオッチングをするようになり、そこで様々な事を学びました。街の中でも多くの野鳥がいる事、それぞれの囀り、性質、それと共に、それまで気にしていなかった季節による植物の変化にも敏感になりました。そして、それがこの混沌とした世の中で正気でいる為に、日々なくてはならないものとなったんです。今は、爆撃や銃声や怒号や悲鳴がSNSを通じてリアルタイムで見聞きできてしまいます。そこでこれまで見ることができなかった事実を目撃する一方で、メンタルにダメージを受け続けていることも事実です。でも、そこから目を背けてはいけないと思っています。だからこそ、その対極にある美しいものが癒しとして、救いとして必要だと思います。そんな鳥や自然に対する気持ちを曲にしたいと思ったんです。美しい囀り、自由に飛び回る鳥は“希望”の象徴だと思っています。
デニス・シャーウッドとの共鳴
-Tomohiro Yabe:デニス・シャーウッドが参加したタイトル曲「Hope」について、下田さんの中で決まっていたタイトルを伝えていなかったにも関わらず、デニスから偶然にも同タイトルの歌詞が上がってきたそうですね。とても印象的なエピソードだと思いますので、詳しく教えてください。
下田法晴:これは、少し誤解があり、この曲のタイトルではなく、アルバムのタイトルを最初から『HOPE』と決めていたんです。それは伝えていませんでした。ですが、この曲のタイトルを「Hope」としてくれたのは偶然か必然か、仮のタイトルは「Birdsong」だったので、本当に驚いて嬉しかったです。タイトル通りこのアルバムを象徴する曲になったと思います。デニスさんは、シンガーの活動と並行して、メンタル・ヘルスのセラピストとしても活動しているのも後から知り、いろんなものが共鳴してるのを感じました。
●SILENT POETS – Hope feat. Denise Sherwood (Official Visualizer: Animated by Gaia Alari)
明確なメッセージを込めた作詞
-Tomohiro Yabe:今作では、参加アーティストに作詞をオファーする際、それぞれイメージを伝えられたとのことですが、これは過去の作品とは異なるアプローチだそうですね。今回、このような方法を取られた意図は何だったのでしょうか?
下田法晴:これまでの作品は、具体的なメッセージみたいなものを明確に設けていませんでした。参加アーティストにトラックを聴いてもらった印象で作詞をしてもらった方が、自分にはない発想が引き出せたりして、面白いものができるという考え方でやってきました。ただ、前段で説明したように、様々な経験、経緯があり、今回は最初から具体的なメッセージや思いがたくさんあったんです。曲がそこから湧き上がってきたようなところがありました。なので参加アーティストに、これはこんな気持ちを込めて作ったから、こんな事を歌詞にして欲しいと伝えました。同時に、それを踏まえての自分なりの解釈、アプローチがあればして欲しいとも伝えました。