最終更新: 2025年8月11日
レコーディングとアルバムのテーマ性

詰まることのなかった制作過程
-まりりん:レコーディングや制作方法が今までと違う中で、制作作業で詰まってしまった部分や、逆にすごく波に乗れたと感じた部分はありましたか?
下中:意外と詰まるということはなかったですね。何度か”上手くいかないな”ということはありましたけど、それならそれで、デモはたくさんあったので、”じゃあ今度はこっちの曲をやってみよう”と切り替えて。そこで得た経験が、また前の曲に活かされて上手くいく、みたいなことがありました。
加地:どちらかというと曲がありすぎて、”この曲はこういう系統だよね”みたいに曲ごとの振り分けをした方が、アルバムとしてまとまるということに途中で気付きました。それまではアルバム収録候補の曲の中にも方向性がいくつかありましたが、途中でまとめる作業の重要性に改めて気付かされましたね。
-まりりん:先ほどお話に出ていた、このアルバムには入っていない「All Tomorrow」は、今年2月のFontaines D.C.の来日公演の時には演奏されていましたよね。
下中:ライブでは毎回やっているんですけど、アルバムにはまだ入れていないという状況です。本当は、レコーディングもほぼ終わっているんですけどね。
-まりりん:アルバム以外の曲も、同時にレコーディング作業が進んでいたという感じですか?
秋山:最終的に今回アルバムに収録されなかった幾つかの曲も、当初は収録するつもりでレコーディングしていましたね。
加地:最初はむしろ、りんご音楽祭でやった曲を中心にアルバムを作ろうと進めていました。
下中:そう、それでアルバムを作ろうとしていたんですけど、さっき加地君が言った通り、楽曲の方向性がそれぞれ違っていたので、それだったらいっそ音楽性をしっかりまとめてから出そう、ということになったんです。
加地:レコーディングを2回に分けて、少し期間を空けているんですよね。それぞれいつだったかは覚えていないんですけど。
鈴木:10月だよ。2024年10月22日から24日。
下中:日付まで覚えてるの怖いよ(笑)。
鈴木:2024年の10月に8曲録って、その音源を聴いてアルバムの方向性をどうしようか、という話になって。さっき話していたように、もうちょっと方向性を絞ろうということで、もう1回レコーディングを追加したんです。
下中:一発録りなので、1日でたくさん録れちゃうんですよ。歌だけは別録りなんですけど、演奏のテイクも基本的に2、3テイクぐらいで終わるんで。そうすると1日に3、4曲は録れるから、3日間スタジオに入ればアルバム1枚分は録れてしまう。レコーディングも2回入っているので、それなりの曲数が録れた中から、”アルバムにどれを入れる?”というのを考えました。
4つの箱に分けられた楽曲群

秋山:曲の方向性が、4つぐらいの箱に分かれたんですよね。全部で40曲近くあったと思うんですけど、今回のアルバムは9曲で。他の曲も聴いてみて、例えば”この曲は激しい曲の箱””、この曲はもっとポストパンク的で、リズムはハキハキしていてメロディーは少なめな箱”。”もう一個が、オーストラリアのインディーロックみたいに、ゆったりと隙間があってメロディーは比較的ポップな曲の箱”みたいに分類して。今回収録したのは、その中でも比較的ガレージロックに寄った感じの楽曲群です。ポストパンクのような雰囲気もあるけど、もう少し歌に余裕があるというか、語りのような曲もあるけどそれだけでは終わらないという。この中では一番スタンダードな感じですね。
下中:曲がたくさんあって、そこから系統を選んでいったんですけど、その基準になったのが、「Who’s In My House」と「Just Another Day」というシングルで出ている2曲なんです。その2つを最初の基本軸にしよう、という話をしたのは覚えています。その雰囲気に合いそうな、前からあった曲を入れたり、またその2曲を参考にして新しくセッションをまとめたり。言葉にして説明するのは、かなり難しいかもしれないですね。もともと「Who’s In My House」はもっとポストパンクのようなギターのリフが入っていたんですが、そこまでポストパンクに寄りすぎるのもどうなんだろう、という話になって、あえて雰囲気を変えたりもしました。DYGLって、アルバムを言葉で説明するのがいつも難しい(笑)。
鈴木:最初は1回目のレコーディングで録った曲を、まるっとアルバムにしようとしていたんです。でも録った後に聴き直したら、みんなの中で「Just Another Day」と「Who’s In My House」が一番しっくりきた。他の曲はそこから少し離れている印象があったんです。下中が言ったみたいに、DYGLを言葉で説明するのは難しいんですけど、僕が参加する前のアルバムも、ジャンルでうまく括れないというか、いろんな曲がありすぎた、という話をみんながしているのを聴いていました。今回は、もっと自分たちのサウンドを”ギュッと”させたアルバムを作りたい、とみんなで話していて。それで、その2曲に合う曲をもう一度セッションで作ろう、となった時に、さっき秋山が言っていた”箱”が生まれてきたんです。
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