最終更新: 2025年8月28日
Beach HouseやFather John Misty、Fleet Foxesらを擁するロンドンの名門インディーレーベル“Bella Union”。
今回は、同レーベルに所属するオルタナティブバンド、Modern Nature(モダン・ネイチャー)へのインタビューをお届けする。
フロントマンのジャック・クーパーを中心に構成されるModern Natureは、もともとDirty Projectorsのように流動的なメンバー構成で活動してきたバンドだ。
そんな彼らが、2023年リリースのアルバム『No Fixed Point In Space』のツアーを機に、より強固なバンドとしての方向性を見出す。
ジム・ウォリス(Dr.)、ジェフ・トバイアス(Ba.)からなる中心的なトリオに、新たなギタリストとしてタラ・カニンガムを加えて完成したのが、今回リリースされるアルバム『The Heat Warps』である。
音楽全体の雰囲気は前作から引き続きミニマルかつ精巧で、少ない音数ながらも味わい深く、聴くたびに心に染み入る。そして、聴き手一人ひとりの創造性を掻き立てる作品だ。
そんな創造性を刺激するModern Natureの魅力を伝えるべく、今回のインタビューでは、現代音楽から日本の音楽、アメリカのカウンターカルチャー、
そしてサックス奏者のファラオ・サンダースに至るまで、彼らのサウンドを形成する多様な要素を解剖し、その魅力に迫る。
バンドの成り立ちと現在のメンバー構成
-滝田優樹:私たちはアーティストのルーツや音楽が生まれた背景、そして影響を受けた音楽・文化・芸術を大切にしているメディアです。今回私たちとは初めてのインタビューなので、バンドの成り立ちから質問させてください。Modern Natureはもともとはジャックが中心にロンドンで結成されたバンドですよね? バンドが結成された当初はメンバーが固定されていなかったと認識しているのですが、もともとはどのような経緯で結成されて、今はどのようなメンバーで構成されているのか教えてもらえますか?
ジャック・クーパー:最初は前のバンドUltimate Paintingが終わった時にソロプロジェクトとして始まったんだ。でも僕がやりたくなかった最後のことは、ソロアーティストになることだった。バンドを中心にして世界観や美学を構築する方がずっと簡単だと思うんだ。だからそうしたんだよ…時間もたくさんあったし、自分の曲をどうフレーミングしたいかとても明確なアイデアがあったからね。
現在のバンド体制への変化
-滝田優樹:バンドメンバーを固定して現在の体制で活動しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。またそれによって確立されたバンドの方向性もしくはやりたい音楽はどのようなものなのか教えてください。
ジム(Dr.)とジェフ(Ba.)は本当に最初から様々な形で参加してくれている。ジムは『Annual』以来僕たちがやってきた全てに不可欠で、楽曲の感触や構成について多くのインプットをくれるんだ。ジェフもずっとバンドの周りにいて、彼もまた必要不可欠なコラボレーターなんだ。僕の周りを衛星のように回る集団はある時点でかなり固定されて、無意識に僕たちはいつも正方形の四番目の辺を探しているような感じだった。前作は本当にかなり抽象的だったんだけど、ライブで演奏してみると、僕たちは再びリズムに引き寄せられている自分たちに気づいた。だからタラ・カニンガムとギターを弾き始めた時、全てがうまくはまったんだ。
メンバーたちの音楽的ルーツ
-滝田優樹:ジャックや現在在籍されているメンバー、それぞれどのような幼少期を過ごしてどのように音楽と出会ったのでしょうか。
僕はイングランド北西部のブラックプールという町出身で、リバプールの向かい側にあるんだ。観光地なんだけど最近は厳しい状況で、でも巨大なエンターテイメント業界があって、まあ休暇中の人たち向けだけどね…音楽シーンはあまりないんだけど、エンターテイナーやアーティストとして生計を立てることができるという考えは、僕が育った時には非常に身近にあった。母の家族はリバプール出身だから、そこはアーティストを高く評価するコミュニティなんだ。でも音楽に夢中じゃなかった記憶が本当にないんだ。Beatlesが最初の恋で、それからStone Rosesで、そこからByrds、Love、Captain Beefheart、シド・バレットにたどり着いたんだよ。
新メンバー、タラ・カニンガムについて

ミュージシャンやバンドリーダーをやってて、タラのような人に出会ったら、ただ自分のバンドにいてほしくなるんだ。彼女は素晴らしく才能のあるギタリストで、音楽に対してとても独特なアプローチを持っていて、それをとても自然にやってのけるんだ。逆さまの写真は見てないけど、彼女らしいね!
ロンドンの音楽シーンと音楽的影響

申し訳ないんだけど、ロンドンの音楽シーンについてはあまり洞察がないんだ。今まで本当にそうだったことがなくて…僕がやってきたバンドは本当にロンドンのどんなシーンの一部でもなかったし、年を取るにつれて、そこでのシーンとのつながりを感じなくなっているんだ。僕が一番近いと思うシーンや最も一致するコミュニティは、即興音楽の世界だと思う。でもそれでも、僕たちは本当にその周辺にいるだけなんだ。でもね…ロンドンは素晴らしいし、たくさんのショーを見に行くよ、特に娘が少し大きくなった今はね。でもそれらのショーは即興音楽、フリージャズ、それからツアーバンドの方に向かうことが多いんだ。
刺激を受ける現代のアーティストたち
-滝田優樹:2022年にリリースされたアルバム『Island Of Noise』のCDに付属のブックレットにはジャックが親近感を感じる10人のアーティストについて紹介していましたね。なので現在、音楽以外でロンドンで刺激的なカルチャーやアートがあればそれも気になります。そちらもあれば教えてもらえますか? なければロンドンを問わず興味のある、もしくは熱狂しているものやことを教えてください。
僕は悲しいかな自分の世界と自分の音楽に没頭しているんだ(笑)。とても世間から取り残された感じがするよ!現代クラシック音楽や”新しい音楽”が大好きで、ローレンス・クレーン、カサンドラ・ミラー、そしてApartment Houseというグループのような作曲家たちに引かれるんだ。それに隣接する音楽だけど、杉本拓、小川美潮、池田若菜、佐伯南といった日本の音楽家の似たような音楽もよく聴いているよ。いつも僕を刺激してくれる友人たちもいるんだ…アンドリュー・サベージ、ピーター・リヴァーサイッジ、イリス・マルシャンド。Robieというバンドが本当に好きで、できるだけ彼らを見に行くようにしているんだ。
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