最終更新: 2025年9月16日
音色が描く、悲劇の先の希望

歌詞が描く陰鬱で自己破壊的な世界とは裏腹に、そのメロディは驚くほど美しく、ドリーミーでさえある。
アコースティック・ギターの柔らかな響きと、淡々としたドラムマシンが織りなすサウンドは、まるで雪が静かに降り積もる景色を想起させる。
この音の美しさは、何を意味するのだろうか。
それはおそらく、この悲劇的な物語の中に確かに存在する、一筋の救いや純粋な愛情の煌めきを表現しているのではないだろうか。
復讐に生きたウルフが最期に見せた安らかな表情、彼女の死を悼むオタコンの涙、そして彼女の誇りを尊重したスネークの静かな敬意。
破滅的な関係性の中にも、確かに“愛”と呼べる何かが存在したのだ。
crushedの「oneshot」は、単なるゲームへのオマージュではない。
それは、一人の女性の壮絶な生き様を音楽へと昇華させ、自己破壊的な愛と悲劇的な運命という普遍的なテーマを私たちの心に突きつける、時代を超えた物語である。
この「oneshot」を聴き終えたとき、私たちは雪原に散った孤高の狼に、そして自らの心に潜むどうしようもない矛盾に、想いを馳せるだろう。
crushed アルバムリリース

デビュー・アルバム『no scope』
発売日: 2025年9月26日
収録曲:
01. exo
02. starburn
03. cwtch
04. heartcontainer
05. oneshot
06. airgap1
07. meghan
08. licorice
09. silene
10. weaponx
11. celadon
12. airgap2
Bonus Tracks (extra life)
13. waterlily
14. coil
15. milksugar
16. bedside
17. respawn
18. lorica
crushed プロフィール
crushedはTemple Of Angelsのブレ・モレルとWeekendのショーン・ダンカンによるインディー・ポップ・デュオである。2023年に発表したEP『extra life』が国内外で注目を集め、Ghostly Internationalとの契約を実現。2025年9月にデビュー・アルバム『no scope』をリリースする。テキサス出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動するブレとポートランド在住のショーンは、リモート環境でトリップホップやブリットポップ、エレクトロニカの要素を自在に融合。ドリーミーなメロディとビート感に、鋭い感情表現と温かなキャッチーさを織り交ぜる音世界を展開している。
ライター:Tomohiro Yabe(yabori)
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻
これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。
過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。
それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行。
現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。
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Twitter:@boriboriyabori