最終更新: 2025年9月28日

CDを買って、歌詞カードやライナーノートを隅々まで読みふけったあの頃。一曲に込められた物語を、自分なりに想像する時間が好きだった。

最近、そんな音楽との“対話”が減ってはいないだろうか?

アルゴリズムが次々と差し出す無限のプレイリストは便利な一方、時として音楽を“消費”しているような感覚に陥ることもある。

もっと深く、もっと個人的に、音楽と関わりたい。

そんな渇望を抱える音楽ファンにとって、一つの希望となるような場所が生まれつつある。

自主運営のインディー・ロックメディア“BELONG/A-indie”の公式Discordコミュニティだ。

ここでは、リスナー同士での音楽にまつわるエピソードの共有だけでなく、新たにリリース前の新曲をメンバー限定で先行試聴を開催。

コミュニティーメンバーから感想が続々と集まってきている。

Discordとは?

クレジット:Discord
Discordは、もともとゲーマー向けに開発されたコミュニケーションツールだが、現在では音楽、アート、学習など様々な分野のコミュニティで活用されている。

LINEグループやTwitterとは異なり、テキストチャット、音声通話、画面共有機能が一体となった多機能プラットフォームである。

特に音楽コミュニティにとって魅力的なのは、リアルタイムでの感想共有、投票機能を使った参加型企画の実施が可能な点。

まさに“音楽を一緒に楽しむ”ための理想的な環境であり、私たちはここで参加メンバーと音楽にまつわるエピソードの共有を行っていた。

BELONGコミュニティが始めた新たな実験


このコミュニティは、単に好きな音楽を語り合うだけの場所ではない。

国境や言語の壁を越え、リスナーとアーティスト、そしてメディアが三位一体となって新しい音楽体験を創造する“実験室”へと進化を遂げている。

その象徴となるのが、最近本格的に始動した新企画“新曲限定先行試聴”だ。

リリース前の貴重な音源を、コミュニティ内の限られたメンバーだけに共有し、そのリアルな感想をアーティスト本人にフィードバックする。

これは、音楽の届け方と聴き方をアップデートする、画期的な試みだ。

なぜ今、リリース前の楽曲を共有するのか

ストリーミング全盛の現代において、楽曲はリリース日に世界中で一斉に解禁されるのが当たり前になった。

しかしこの企画は、その流れにあえて逆行する。

完成された製品としてではなく、まだ世に出ていない“生まれたての楽曲”を共有することに、一体どのような意味があるのだろうか。

アルゴリズムを超えた“体温”のある繋がり

クレジット:Pexels
一つは、アルゴリズムでは決して代替できない“体温”のある繋がりを生むことだ。

“自分の作った音楽は、一体どのように聴き手の心に響いているのか”。

これは、すべてのアーティストが抱える根源的な問いであるし、事実、アーティストも私たちによく聞かれることだ。

この企画は、その貴重な“最初の声”を、純粋な形でアーティストに届けるための架け橋となる。

それは、作り手にとって何よりの創作の糧となり、リスナーにとっては自分の言葉がアーティストにも大きな刺激になるという、かけがえのない体験をもたらす。

また、私たちはそれを実現するために純粋な“音楽愛”をベースにした緩やかな共同体を形成し、その中で新しい才能を見出していく。

この先行試聴企画は、メディアがアーティストを一方的に紹介するのではなく、共にシーンを育てていくという、新しい関係性の始まりを告げている。

国境を越えて届いた“最初の声”

クレジット:pexels
この記念すべき企画の第一弾アーティストとして白羽の矢が立ったのは、北海道と東京を拠点に活動するツーピースバンド。

彼らとは以前インタビューを行っており、二拠点かつリモートで創作するというユニークな活動を行っているのが興味深い。

彼らの新曲がコミュニティに投下されると、すぐさま多様なバックグラウンドを持つメンバーから、熱のこもった感想が寄せられ始めた。

第一弾アーティストへの反響

ここで実際にコミュニティに寄せられた感想の一部を紹介したい。

Pon🇯🇵
MVの夕焼けや駆けていくメンバーの映像とサウンドがマッチしていてgoodでした👍️
RAM🇦🇷
新曲は誰もが共感できるような雰囲気を醸し出している。特にノスタルジックな夏の午後のようだ。

これらの感想は、アーティスト自身も気づいていなかった楽曲の新たな側面を照らし出してくれる。

プロのレビューにはない、一リスナーの視点から紡がれる言葉の数々は、何よりも雄弁に楽曲の魅力を物語っていた。

あなたの声が、次の才能を育てる

クレジット:pexels
この試みは、もちろん一度きりで終わるものではない。10月1日には、第二弾としてタイの新人女性アーティストの先行試聴も予定されている。

このムーブメントは、始まったばかりなのだ。

今後の展望と参加方法

“好きな音楽について語りたいけど、周りに話せる人がいない”

“自分の感想をアーティストに届けたい”

もしあなたがそう感じているなら、このコミュニティの扉を叩いてみてほしい。

BELONG/A-indieの公式Discordサーバーは、誰にでも開かれている。

あなたの何気ない一言が、まだ見ぬ名曲を生み出すきっかけになるかもしれない。

音楽をただ“聴く”だけでなく、その未来に“参加する”喜びが、ここにはある。

デザイン:つでん
BELONGの“Discordサーバーをリニューアル✨
このサーバーは邦楽・洋楽の垣根を越えて、互いの“好きな音楽”を交換し合う場所です!
あなたの“好き”が、誰かの“扉”になるかも🎶参加はこちら⏩ https://discord.gg/fjzp9Hjt
【New songs playlist | 新曲プレイリスト】
We update our playlist with new songs every week.

We are always happy to accept songs that you would like to add to the playlist, so please send us your information using the contact form: ✉️

BELONGでは毎週新曲プレイリストと更新しています。

プレイリストに追加希望の曲も随時受付ですので、問い合わせフォームから情報をお送りください✉️

ライター:Tomohiro Yabe(yabori)

イラスト:フリダシ太郎
BELONG Media/A-indieの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@boriboriyabori