最終更新: 2025年11月12日

「Fb Morning」とEPタイトルの意味


-まりりん:4曲目もピアノは入ってるんですか?

Tatsuro Aoyama:入ってますね。

-まりりん:この4曲目の曲のタイトル、読み方はなんと読むんですか?

Tatsuro Aoyama:”エフビーモーニング”と読みます。略してて、本当は”For the Better Morning”という曲なんです。タイトル自体はいいんですけど、文字にしたら少し意味深だなと思って。好きなアーティストにSaya Grayというミュージシャンがいて、本人からしたら適当じゃないかもしれないですけど、すごく適当にタイトルつけてるような気がしてて。頭文字並べただけというタイトルがあるし。それぐらいのゆるさが欲しいと思って、「Fb Morning」というタイトルにしました。

歌詞に込められた意思表示

-まりりん:この4曲の中で一番柔らかい曲だと思ったんですけど、歌詞を見てみると”イスラエル”といった、そういうところの”影”についてお伺いできればと思ったんですけど、これにはどういう意図がありますか?

Tatsuro Aoyama:歌詞を書いてる時は最初に何かをテーマに書くことはなくて。コード進行や演奏のベーシックができた時に、歌詞が湧き出てくるんですけど、そこに意味が通ってる部分があって。”これはこういう曲なんだろうな”というテーマがそこで自然とできる感じなんです。あの曲に関しても、最終的には戦争が連想される曲になったんですけど、最初はそういった意図はなくて。”For the Better Morning”が正式なタイトルなんですけど、この曲を書いてた時、自分的にメンタルが落ち込んでいる時期で。起きた瞬間から、絶望で一日が始まるみたいな。昔だったら、そういう絶望的なムードを絶望的なものとして曲にしていたけど、今回のEPを書いてる途中で、自分が文句しか言わないやつみたいに思えてきて。だから、最終的に前を向いてるものを書きたいと思って、”より良い朝のために”というタイトルになったんです。でもいざ歌詞をちゃんと書き始めると、偶発的に”イスラエルの兵士”という歌詞とそれに付随するようなストーリーラインが出来上がっていって。これは、俺が”より良い朝を迎えたい”と願う主観的な曲じゃなくて、”より良い朝を迎えよう”という気概を持ってないと本当に絶望に向かってしまうような人々の視点に立った曲なんじゃないかと思って。それに気づいてから歌詞もそちらにシフトチェンジしていきました。

音楽ができること

-まりりん:大きな質問になっちゃうんですけど、SNSを活用して聴く音楽の選択肢が増えたことによって、一つの音楽が社会に影響を与えるということが以前ほどなくなってきたと思うんです。その中で、音楽ができることは何だと思いますか?もしくはご自身の音楽はどうありたいと思いますか?

Tatsuro Aoyama:質問にちゃんと返せているかわからないんですけど、例えばTwitter (X) やInstagramで反戦的な意思を表示する投稿は、平和に向けてのアプローチとして、真っ当だと思うんです。でも、自分が反戦の意思表示をするのであれば、ちゃんと重みがある状態でしたい。自分として最も重さのある表現、かつ自分らしく表現できるものとなった時に、一番なのは自分で書いた”曲”であり、「Fb Morning」はまさにそれを実現できた曲だなと。俺の表現は”今ある現状”を写実的に突きつけるようなものだと思います。メッセージ性云々よりも。これを聴いた人がどう感じるかは人それぞれですけど、この曲は俺なりの意思表示ですね。

EPタイトル『Mother’s Octave』

-まりりん:突然の質問に答えてくれてありがとうございました。少し前の曲に戻っちゃうんですけど、「Turquoise」について。これはもしかしたら母親についての歌詞なのかなと思って。そうなると、EPのタイトルも『Mother’s Octave』なので、ここがもしかして繋がっているのかなと思ったんですけど。

Tatsuro Aoyama:そうですね。家族関連は開示しないでおくんですけど、今回のEPのインスピレーションとして、僕の家族や育ち方が影響していると思います。家族というより、”愛する”ということの価値や、そこに代償はあるのかといった、そういうテーマから様々なアレンジや歌詞が出来上がっていきましたね。

-まりりん:EPタイトルの”オクターブ”は、音階のオクターブですよね。”母親の音階”。

Tatsuro Aoyama:オクターブは、例えばある高さのドからその次の高さのドまでが1オクターブじゃないですか。とても比喩的なんですけど、僕には僕の音階というか世界があって、誰かには誰かの世界があって。そこでほとんどのものは共通しているけど、ただオクターブが違うだけみたいなニュアンスを表現したくて。”僕とあなたは違う”という単純な話ではなくて、”同じなんだけど違う”というニュアンスを、タイトルにしたくて。個人的な記憶や、様々なものも踏まえつつ、”Mother’s Octave”というタイトルになりました。

12月17日、渋谷WWWでのライブ


-まりりん:12月17日に渋谷WWWでライブがあると思うんですけど、このライブは、EP自体がライブを意識して作ったというのがあったんですけど、本番ではどういうアプローチでのぞむ予定ですか。

Tatsuro Aoyama:今回は、まずピアノで安田さんにも一部参加してもらうことが決まってて。今回のEPで、話した通り意識が変わった部分があり、バンドでWWWに向けてスタジオに入っています。前よりも音楽ができてるという手応えがあって、そもそものクオリティが比べ物にならないくらい良くなる確信もある。当日は逆にどうなるかわからないくらいに”楽しむ”ということを一番に仕上げています。

リスナーへのメッセージ

-まりりん:この作品はWWWの天井の高さと構造にとても合うと思っていました。前回のアルバムの時にも同じ質問をしたと思うんですけど、この作品をどういう方に聴いてもらいたいですか?

Tatsuro Aoyama:自分たちは、ポップなものを書いてるつもりなんで、”本当に音楽が好きな人に届けばいい”という感じでもなくて。聴いてもらえれば聴いてもらえるだけ嬉しいですね。最近はアンダーグラウンド思考でもないんで。最終的に自分たちの音楽がどうカテゴライズされてしまうのか、どう見られるのかはわからないけど、自分たちとしてはたくさん聴いてくれればそれだけ嬉しいです。

-まりりん:今作についてのインタビューは以上となります。最後に聴いてるんですけど、これまでに何か作品と呼ばれるもので、音楽でも映画でも小説でも、心に残ったり何か印象深かったものはありますか?

Tatsuro Aoyama:ジェフ・バックリィですね。ライブの映像を観た時に、扉がまた1枚開いた感じがあって。それこそ”身体性の塊”のような人で。彼の音源やライブからの影響は、今回のEPのコンセプトにも絶対に繋がっていると思います。

Sisters In The Velvetリリース

2ndEP『Mother’s Octave』

発売日: 2025年11月
レーベル: SITV
配信: デジタルリリース
収録曲:
1. Red Strobe
2. To Be a Child
3. Turquoise
4. Fb Morning
配信で聴く

Sisters In The Velvet公演詳細


イベント名:Sisters In The Velvet “Mother’s Octave” EP Release Show
日時:2025年12月17日(水)
開場・開演:18:30 / 19:30
会場:東京・渋谷 WWW
チケット:
前売り:¥3,500
当日:¥4,000
U-20:¥2,000(別途ドリンク代¥600)
※U-20チケットは入場時に年齢証明が必要
チケット購入:https://t.livepocket.jp/e/783fg

Sisters In The Velvetバンドプロフィール


2019年に東京で結成されたオルタナティブロックバンドである。青山達郎(ボーカル・ギター)、小西(ギター)、元ベース奏者の3人で始まり、当初はクラシカルなオルタナティブロックサウンドを特徴としていた。2024年に初のアルバム『Leaves』をリリースし、多様な音楽的探求を統合した作品として話題を呼んだ。「音の隙間」を重視し、必要最小限の要素で最大の効果を生み出すアプローチが特徴的で、真摯に音楽の本質を追求する姿勢で知られる。2025年11月リリース予定の2ndEP『Mother’s Octave』では「バンドアンサンブルの身体性」をパッケージした最もインパクトのある作品として注目されている。

まりりん(@Igor_Bilic)
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音楽イベントの企画運営やメディアでの取材を手掛ける音楽好き。

DaisyBarでのスタッフ経験を経て、個人企画“SECOND SUMMER OF LOVE”を主催。

ライターとしてはBELONG MediaでSuchmosやYkiki Beat、Never Young Beachなどのインタビューを刊行。

さらに、レコード会社での新人発掘、メジャーレーベルでの経験を背景に、多角的な視点で音楽シーンを追い続ける。

BELONGで書いた記事はこちら

デザイン:つでん
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