最終更新: 2025年11月25日
楽曲について
先行配信曲「Car」と「Wonder」
-まりりん: 先行配信ですが、第1弾の「Car」に続き、第2弾の「Wonder」が先日リリースされました。このアルバムにはゲストボーカルが参加されているんですか。女性のような声が聴こえましたが、クレジットに記載がなかったので。
Kohei Kamoto: ゲストボーカルはいません。女性の声のように聴こえる部分も僕が歌っています。あれは僕が歌ったもののピッチを編集したものですね。スズケンが少しだけパーカッションを入れた以外は、僕と香田くんの二人だけです。
-まりりん: そうだったんですね。先行配信された「Car」と「Wonder」ですが、「Car」の方がバンドサウンド寄りで、「Wonder」はもっと静かなベッドルーム・ミュージックという印象です。それぞれリリースしてみて、反響はいかがでしたか。
Kohei Kamoto: 皆“聴いたよ”と言ってくれて嬉しいです。もっと静かに始まっていくかと思いましたけど、周りの友人や、DYGLのお客さんとかも聴いてくれたという話を聞けてよかった。
全てを自分で演奏することへのこだわり
-まりりん: ほとんど全ての楽器をご自身で演奏されていますが、3曲目は、管楽器も入っていましたよね。
Kohei Kamoto: 「Wonder」ですね。管楽器も、本当に一人で、スタジオもほとんど使わずに制作したので、“本当はこうしたかった”という部分はたくさんあります。でも、終わってみれば、むしろそうしなくて良かったと思うことも多くて。先ほどの女性の声も、本当は誰かに歌ってもらった方がいいのではないかと話していましたけど、結果的に“これはこれでいいか”となりました。管楽器も、元々はサンプリングだったものをパソコンで打ち込み直して編集したんですけど、これも“わざわざ誰かに吹いてもらうよりは、これでいいか”となり、自分で打ち込んだものです。実際に吹いたりはしていません。
一人での制作、その苦悩と喜び
-まりりん: アートワークも含め、全てをご自身で手掛けることにおいてのこだわりや、逆に難しかった点はありますか。
Kohei Kamoto: 特別なこだわりはないんですけど、自分一人でやった方がスムーズに進むというのはあります。ゼロから作ったものに対して、途中で誰かに何か言われると、そっちに傾いてしまうタイプなので。誰にも何も言われずに作り続けられるのは順調に作れはしますが、逆に大変なこともあります。誰も何も言ってくれないし、時間も無限にあるので、細部にどこまでこだわるか、あるいは“大雑把に終わらせるのもいいんじゃない”と言ってくれる人もいません。もちろん香田くんはいましたけど、基本的には自分だけなので、そこは“自分との戦い”でした。でも、DYGLなど他のバンドをやっている中で、自分一人だけで家で制作できるというのは、すごく良かったと思います。
-まりりん: 制作の中で、一番印象に残った作業はありますか。
Kohei Kamoto: 一人でデモを作っている時はしんどくて、“この曲、嫌だな”と思うこともありました。でも、基本的にできたデモを持って香田くんの家に行っていて、最近はどこかに“通う”ということがあまりないので、香田くんの家に通っていた感じがして、それがすごく良い思い出になっています。
-まりりん: レコーディングも香田さんのご自宅で?
Kohei Kamoto: いえ、香田くんの家では、彼が弾くキーボードを録音しましたけど、ドラムだけはマスタリングをお願いしたhmcのスタジオで録りました。ギター、ベース、歌などは、全部自分の家で録っています。
アルバムの構成とコンセプト
インストゥルメンタル曲の存在
-まりりん: アルバム全10曲中、歌詞のないインストゥルメンタルの曲が3曲ありますね。こういった点は、香田さんが映画音楽などを手掛けていることと繋がっているのでしょうか。
Kohei Kamoto: 香田くんは逆に“歌え”というタイプで、最初の頃は“歌う曲がいっぱいあった方がいい”と言っていました。歌が入っていなかったデモにも“ドラムと歌を入れてみて”と言われたりもしました。なので、歌が入っていない曲の方が、自分が元々やろうと思っていた音楽に近いかもしれません。あ、でもウエスタンっぽい曲(「Space Cowboy」)は、香田くんに“ウエスタン”みたいな曲が一曲欲しい”と言われて作った曲です。僕は考えていなかったんですけど、彼はアルバムという一つの作品としての視点で見て、リクエストしてくれたんだと思います。
「Space Cowboy」と宇宙というテーマ
-まりりん: 「Space Cowboy」というタイトルから、クリント・イーストウッドの映画(※『スペース カウボーイ』)かなと思いました。
Kohei Kamoto: 特定の映画や曲からの引用、というのは特にないです。最初は“ウエスタン”という曲名にしていたんですけど、あまりにそのまますぎると思って。どうしようかと思いましたけど、アルバムのコンセプトに“宇宙”というのがあったので、「Space Cowboy」でいいかなと。タイトルの意味は、聴いた人が解釈してくれればいいと思っています。
-まりりん: 「Space Cowboy」は、曲目を見た時に一番聴くのを楽しみにしていました。アルバムのコンセプトである“宇宙”というのは、どういったところから着想を得たんですか。
Kohei Kamoto: 最初に香田くんと話していた時、彼が参考に映画を見つけてきてくれて、その中に『マック』(原題:Mac and Me)というB級映画がありました。デモを作る時、これが全体のイメージに合うと二人で話していました。映画も二人で通して観たんですけど、完全に『E.T.』のパクリみたいな内容で(笑)。
-まりりん: 『E.T.』に便乗した作品なんですね(笑)。
Kohei Kamoto: 今だったら絶対に許されないような(笑)。でも、そのサンプリングというかオマージュが面白くて。宇宙人が出てくるスペイシーな感じが良かったんです。僕は元々ゴリゴリのロックも好きですけど、シンセサイザーも好きなので。シンセサイザーのスペイシーな感じがあるので、そこから“宇宙”というテーマを持ってきました。もう一つ、『空飛ぶ絵本』(※正確なタイトル不明)のような、旅する絵本も参考になっていて、そういったファンタジーなところからもスペイシーな音のイメージが来ています。
「Piano」という実験的な間奏曲
-まりりん: 宇宙とベッドルーム・ミュージックというのは、しっくりきますね。「Piano」は、アルバムの中で一番予想がつかない曲でした。
Kohei Kamoto: あれは間奏曲ですね。アルバム全体で考えていたんで、途中でかき回すような曲を入れたかったんです。元々は普通にピアノが弾かれている曲でした。アルバム全体を最後にテープに通したいという話をしていて、それがなかなかうまくいかなかったんですけど、その時に偶然、テープマシンを使いながら作業していた音(※録音スピードなどをいじったもの)がすごく良かったんです。普通に録音したものをテープマシンにかけたら、グワーッとなったのが面白くて、そのアイデアを使いました。
-まりりん: 元々は全く違う感じだったんですね。
Kohei Kamoto: 元は、今も微かに聴こえるピアノのフレーズがずっと続く感じの曲でした。それをテープマシンでグラグラにしたんです。
アルバムを通して聴くということ
一つの作品としての完成度
-まりりん: 今は先行配信で数曲聴けますが、このアルバムは1曲目から最後まで通して聴くことを想定して作られていますよね。
Kohei Kamoto: そうですね。僕自身が、配信で良い曲を1曲聴いたり、シャッフルで聴いたりすることが増えて、通しで聴くことができなくなってしまった、というのもあります。もちろんそういう聴き方をしてもらうのも良いのですけど、アルバムを作るなら、やはり1作品として完結したものをやりたいと思っていました。
-まりりん: 話がずれるのですが、ずっとSpotifyのプレミアムだったのが、この間更新するのを忘れて、ノーマルに戻ってしばらく聴いていたんです。ノーマルだと曲順を選べないんですよね。それって音楽を提供する側としてすごく困りませんか。
Kohei Kamoto: そうなんですね。しばらくApple Musicにしてしまっていて、Spotifyの仕様を知らないんですけど、曲順を選べないというのは不便ですね。










