最終更新: 2025年11月26日
大学で出会ったニコラス・ジャーとデイヴ・ハリントンが2011年に結成したDARKSIDE(ダークサイド)。
サイケデリアからハウスまでを横断する彼らのサウンドは、ジャンルの枠に収まらない独創性で多くのリスナーを魅了してきた。
2023年にドラマーのトラカエル・エスパルザが正式加入し、バンドは新たなフェーズへ突入し、トリオ初のフルアルバム『Nothing』が2025年2月にリリースされた。
今回紹介する「One Last Nothing」は、控えめでありながら確かな引力を放つナンバーだ。
音の隙間に宿る“呼吸”のような感覚を、ビートメーカーであり、ライターのShinoが紹介する。
DARKSIDE「One Last Nothing」

テキスト:Shino 導入文・構成:BELONG Media / A-indie編集部
DARKSIDEの「One Last Nothing」は、一度聴くと静かに心をつかんで離さない、不思議な引力を持った曲だ。
派手なメロディや分かりやすい盛り上がりがあるわけではない。それでも、気づけば繰り返し聴いてしまう。
まるで、音そのものに”呼吸”があるように、すっと体に馴染んでいく。
曲の始まりからまず印象に残るのは、曲全体を前へ押し出していくようなビートだ。
キックは強く主張しすぎないのに、不思議と推進力があって、聴き手の意識を自然と前に進める。
その下に響くシンセベースが、ミニマルなフレーズを淡々と繰り返してリズムの基礎をがっちり支えている。
この安定した土台の上にDARKSIDEらしい世界観が勢いよく立ち上がっていく。
そこへ、トラカエル・エスパルザのパーカッションが重なる。手数は細かいのに決して騒がしくならず、リズムに独特の”ゆらぎ”を生む。
機械的な反復だけでは出せないその微妙な揺れが、曲全体を柔らかく動かし、気づけば自然と体がついていく。
ギターを担当するデイヴ・ハリントンは、ここで主役になることを選ばない。目立つメロディを弾くわけではなく、背景に淡い色を足すように音を置いている。
シンセや電子音が紡ぐ冷たさに対して、ギターがほのかに温度を与えており、そのバランスがとにかく心地よい。
メインフレーズはあくまでニコラス・ジャーの電子音が担っていて、ギターは控えめだが曲には欠かせない色を添えている。
この曲は、ミニマルで淡々としているようでいて、小さな変化が絶えず起きている。
音の重なりが少しずつ滲んだり、混じり合ったりすることで、聴き手の意識は自然と曲の奥へと引き込まれていく。
無駄のない構成だからこそ、音楽としての”気持ちよさ”が際立っていて、ひとつひとつの音の選び方と、その配置のセンスが抜群に美しいのだ。
DARKSIDEアルバムリリース
3rdアルバム『Nothing』
発売日: 2025年2月28日
収録曲:
1. SLAU
2. S.N.C
3. Are You Tired? (Keep on Singing)
4. Graucha Max
5. American References
6. Heavy is Good for This
7. Hell Suite, Pt. 1
8. Hell Suite, Pt. 2
9. Sin el Sol No Hay Na
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DARKSIDEプロフィール

DARKSIDEは、エレクトロニック・ミュージックの鬼才ニコラス・ジャーと、ギタリストのデイヴ・ハリントンが2011年に結成したプロジェクトである。ブラウン大学在学中に出会った二人は、サイケデリア、アートロック、トロピカリア、ハウスを融合させた独自のサウンドを構築。2013年発表の1stアルバム『Psychic』で高い評価を獲得した。活動休止を経て2021年に『Spiral』で復活し、2023年にはドラマーのトラカエル・エスパルザが正式加入。トリオ編成となった彼らは、即興演奏を軸にした3rdアルバム『Nothing』を2025年2月にリリースした。

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ライター:Shino

北海道在住の音楽ライター。ヒップホップやアンビエント、エレクトロニカを中心にレビューを執筆している。自身も音楽制作を行っており、その視点を生かして作品の魅力を丁寧に伝えることを大切にしている。
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Instagram:@shino404x











