最終更新: 2025年12月13日

メンバーが語る『333』の聴きどころ

各メンバーのお気に入りパート

-まりりん:レコーディングの中で、ご自身の担当パートで一番印象に残ったこと、こだわったところ、聴いてほしいところと、あと自分以外のメンバーのパートで“ここをすごく聴いてほしい”と気に入ってるところはありますか?

安齋草一郎:自分以外で気に入ってるところは、一番最後の曲(「gdby cntct」)の最後に、ギターストロークっぽいところがあるんですよ。おばあちゃんの声みたいなのが入ってきた後に、みんなでバーって上がっていくんですけど、その上がっていくところのギターがめっちゃ好きです。

山田碧:あれもね、入稿する直前に自宅で録ったんですよ。古い70年代ぐらいの YAMAHA のミキサーにライン録りだけで。あれで足りなかったものが入ってきたよね。

安齋草一郎:自分のパートで“できるようになったかも”と思ったのは、「KUSHIco7」のドラムとパーカッションだけになるところがあるんですけど、そこのボンゴがいい感じに、楽しく録れたなっていう。あれは生田緑地で録ったんですよ。

-まりりん:この前、岡本太郎美術館に行くのに通りました。

山田碧:生田緑地にでかいセコイアの木があるじゃないですか。その手前ぐらいで、夜中に録ってた。 最初、ツバメスタジオで録っていた打楽器がアンビエンスというか、ルームアコースティックみたいなものありきで録ってたから、別の部屋の空間の鳴りが入ってくると浮くなと思って。ほぼ跳ね返ってこない場所で録った方がいいかもと思って、外で録りました。

安齋草一郎:キャンピングカートみたいなのを買って、それに機材を色々詰めて、ガラガラ運んでいます。緑地までの坂も慣れました。

山崎健人:鍛えられたね(笑)。俺が気に入ってるのは、「転がる種 pt2」のピアノかな。耳をフォーカスしていったら全員バラバラなことやってるけど、遠くから聴いたらピアノソロみたいに聴こえたり。

山田碧:「転がる種 pt2」は90テイクぐらい録ったよね。

山崎健人:あれは the hatchっぽいと思って。碧がああいうソロを残すのって初めてじゃない?

山田碧:うん、初めて。ソロは基本的に弾けないんで。

山崎健人:自分のフレーズで気に入っているのは、「MIdy」の”不確かな瞳に”って歌うセクションのベースです。なんで気に入ってるかっていうと、最初ギターとドラムが決まってたけど、グルーヴの軸がなくって。“絶対軸を作らないと”って、俺がそこの責任を負おうと思って、ループしたフレーズを作ったんです。その後16分のタンバリンが入るから、そこで俺が弾いてるリフのグルーヴの答えが合わさるような進行になってて。このフレーズを作って良かったなと。

山田碧:あの以降のパートがあるかないかで違うからね。話は変わるけど、今回のアルバムってさ、大体の曲が後半のインストで魅せるみたいな曲が多い。歌い上げて終わりってあまち好きじゃないんだよな。

山崎健人:今回のアルバムで不思議なのが、バンドとしては3枚目だけど、そうちゃんが入ってからは1枚目だから、今の5人として“こういうバンドです”って改めて出せるものでもあるけど、“まだ俺たち自身もここから変わるんだろうな”って思ってる不思議なアルバムです。“これからこういう感じでいきます”とも言えないし、“我々はこういう感じです”とも決して言えないバンドだから。

宮崎良研:自分のギターで気に入ってるところは、「gdby cntct」の後半で、意味わかんないエフェクターの音で色々弾けたところかな。リバースリバーブやPOGとMemory Boyとか。俺はめっちゃギターが上手いわけではないから、普通に弾くんじゃなくて変わった音で変なことするっていうのができつつ、気持ちよく弾けた。他のメンバーで気に入ってるところは、パーカッションが入ってきたことですね。 最近になるまで、パーカッションが入ってる音楽を、意識して聴いてこなかった。ラテンやアフロ、ボサノバとか、そういうジャンルを聴いて、改めて洋楽・邦楽以外も意識して聴けるようになった。そういった意味でも、パーカッションがすごく重要な部分を占めている作品です。あと、コーラスワークはすごく気に入ってる。さっき言ったように、歌い上げるようなバンドでもないと思ってるところを、うまくコーラスワークで補えていて。

山田碧:はっきりとしたコーラスという形では入ってないんだよね。多分聴き流せるぐらいのふわっと雰囲気を出すためだけに入ってる。

宮崎良研:あと、やっぱりミックスがめちゃくちゃいい。最初録った時は、正直不安だったんですよ。ミスりまくってるし、“大丈夫かな”って(笑)。でも最後の最後でミックスが良くて。ミスったところも何かを足してを補うようになってると思います。

山田碧:いろんな楽器をやりすぎて、記憶すらない。自分がどれをやったかすら覚えてないぐらいいろんなことやっていたなあ。うーん……もうミックスの記憶しかないわ(笑)。

宮崎良研:鉄琴と木琴は?

山田碧:あー鉄琴と木琴ね!弾けないんだけど、「転がる種」と「Tohmei」で入ってる鉄琴と木琴は俺が叩いてる。あれはマイキング込みでうまくいったなと。最近すごい思うけど、ギターやパーカッションとメロディー・コード楽器の間にある楽器って、すごい魅力的だと思ってて。実際にバンドのパートには存在しないんだけど、楽曲の中にそういう楽器を入れてもいいかなと。そうちゃんが入ったことをいくらでも言い訳できるなと思って(笑)。いろんな楽器を入れることに対して、凝り固まったイメージから飛躍できたのは、そうちゃんが入ったのと、ツバメスタジオの君島さん(君島結)のレコーディングでアコースティックな要素が入ってきたからだと思ってます。その中でいろんな楽器を試せたのは良かったし、印象的だったのは木琴かな。あと、歌は今までと違う歌い方をしました。“どうやって歌おうか”って話をしたら、今までのイメージもあるから、“強めに、はっきり歌詞が聴こえるように歌った方がいいんじゃない”って、君島さんやザキヤマにも言われてたんだけど。でも、そういうテンションに全くなれなかった。自分の中で好きな歌って、内省的な歌だなと思って。それをうまい感じであの中に乗せられたなと。あと、他の楽器の中で印象的だったのはベース。今回は2曲ぐらいしかラインのベースの音を入れていなくて。今っぽいサウンドって、基本的にベースがラインから取れるローエンドが基本的に重視されてるじゃないですか。でも、そこにこだわらないことで、うまくベースを配置できたと思ってます。だから、ベースの音が今までにない感じになったのは、自分にとっても発見だったし面白かった。

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