最終更新: 2026年2月2日
2025年の2月にリリースされた2部構成アルバムの前編『合歓る – walls』から年末の12月にリリースされた後編『合歓る – bridges』。
Laura day romanceにとって3枚目のアルバムにあたる作品はそれぞれ10曲ずつの内容で、明確に”進化”と”深化”を打ち出した。
『合歓る – walls』と『合歓る – bridges』

『合歓る – walls』ではこれまでのインディー・フォークゆらいの心地の良いメロディーとハーモニー、そして歌声の調和を根ざしていながらリズムやギターそして細部のアレンジは過去作品と比較しても飛びぬけてアグレッシブで小気味いいテンションで展開される。
対して『合歓る – bridges』のアプローチはこれまでのナチュラルなインディー・フォーク的な手法から一転してDTMを導入したデジタルなサウンドを主軸に展開される。
さらにはハウスやR&B、ヒップホップなど参照する音楽的なジャンルでも幅を魅せた作品でもある。
興味深いのは前編と後編でそれぞれのプロダクションが明確に内省的と外向的な手法で手がけられているのに対して、着地は対照的に”進化”と”深化”に機能していることだ。
『合歓る – walls』は目新しいポップネスなサウンドで、『合歓る – bridges』はこれまでのLaura day romanceの音楽を踏襲して洗練されたサウンドが耳を惹く。
『合歓る – bridges』レビュー

ここではそんな2作品から昨年末にリリースされ、Laura day romanceとしては新機軸な制作で”深化”を図った『合歓る – bridges』についてレビューしていく。
井上花月のボーカルの進化

一聴して明らかなのは、ヴォーカルワーク、プロダクション面での充実だ。第一に声が近いということ。
Laura day romanceの魅力のひとつとして欠かすことができないのが井上花月の歌声であることは言うまでもない。
アンニュイでありながら芯のあるヴォーカルはローもハイもキーが異なる領域でも真っ直ぐで、じんわりと胸を打つ。
1stと2ndではそんな井上のヴォーカルはどちらかというとサウンドと調和する形で機能していた。
今回Laura day romance史上一番近くないしは前面に配置され、耳元で切々と迫りくる。これによって顕著になるのが親密さだ。
ウィスパーな息遣いまでも取りこぼすことなく届けられる場面では空間的な制約が確立され、まるで狭い箱で唄われているかのような錯覚に囚われる。
さらにはそのギャップで歌唱がない場面ではよりサウンドがクリアで解像度の高い状態で届けられ、心象風景の想像を助ける。
サウンドの深化
またサウンド面でいうと、先に記述したDTMを導入したデジタルなサウンドを主軸にしつつ、ハウスやR&B、ヒップホップなど参照点の多いアプローチとバリエーションの充実さもこの作品の魅力である。
しかし、着目したいのはアンビエンスやヒーリングを強調した装飾だ。
それはこの作品があくまでもサウンド面での進化を提示したものではなく、二部構成のコンセプトアルバムのテーマである”名前の付かない感情や関係性”を提示するための没入感を演出する機能としての選択であるのだろう。
それゆえに肉体的な要素であるヴォーカルは近く前面に据えられ、サウンドはそれを強調あるいは彩りとして一歩下がった形でアンビエンスやヒーリングなプロダクションとして据えられる。
しかしサウンド面で控えめということでは決してなく、特にアルバム前半における「ライター|lighter」、「ランニング・イン・ザ・ダーク|running in the dark」などは、
ダイナミックかつ精妙で陰影のあるサウンドは情景描写に豊かで、DTMの導入により演奏面での”深化”を獲得した。
安直に映画にたとえるなら、井上花月の歌声が主役の演技として機能して、サウンドがそれを引き立てる風景描写だ。
Laura day romanceの”深化”と”真価”
そして、今作におけるハイライトとLaura day romance自身の音楽における”深化”と”真価”を見出したのは後半の楽曲たちだ。
「肌と雨|skin and rain」はこれまでのLaura day romanceの集大成ともいえる極上のチェンバーポップを奏で、「orange and white|白と橙」はシンプルなバンド・サウンドでオルタナギターロックを展開したかと思えば後半で転調しラップをお見舞いするあざとさ。
最後には「後味悪いや|sour」だ。余白と遅滞感のあるテンポでヴォーカル、ギター、ベース、ドラムの各パートが遊びに興じているかのようにいきいきとそれぞれの持つ自我をぶつけ合いながら曲をつむいでいく。
混沌とするわけでもなく、あくまでも相乗効果としてルールのなかでフェアプレイを順守しながら思い思いのテクニックをぶつけ合いながら結晶化していく様は、
Laura day romanceというバンドの成長のお披露目と本質的な真価を高めた楽曲といえるだろう。
DTMという外向的な手法での新機軸な制作がバンドに与えた影響は大きい。
しかし、演奏面での成長によって手に入れた新たな表現技法で選択したのは生まれ変わり目新しい新たな音楽をやるのではなく、Laura day romanceとして確立した音楽性の深度を高めるということ。
自分たちが自分たちであることを忘れていない。
そう、抱き合う自分たちの姿を映す『合歓る – bridges』のアルバムジャケットそのものだ。
自分たちを客観視でき、そして本質を見極められるバンドは強い。
常に周りに期待されていることに応えることができるとともに自分たちを更新し続けられるからだ。
時には自分たちを見失って成長することや見えてくるものもあるだろうが、今のところLaura day romanceはまっすぐ進み続けるだろう。
Laura day romanceアルバムリリース
3rdアルバム『合歓る – walls』

発売日: 2025年2月5日(配信)
収録曲:
1. 5-10-15 I swallowed|夢みる手前
2. Sleeping pills|眠り薬
3. Amber blue|アンバーブルー
4. 深呼吸=time machine
5. 転校生|a new life!
6. mr.ambulance driver|ミスターアンビュランスドライバー
7. subtle scent|微香性
8. プラットフォーム|platform
9. smoking room|喫煙室
10. 渚で会いましょう|on the beach
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3rdアルバム『合歓る – bridges』

発売日: 2025年12月24日
規格品番: PCCA-06451
収録曲:
1. 何光年?|how far…?
2. ライター|lighter
3. 分かってる知ってる|yes, I know
4. プラトニック|platonic
5. ランニング・イン・ザ・ダーク|running in the dark
6. 肌と雨|skin and rain
7. 恋人へ|Koibitohe
8. making a bridge|橋を架ける
9. orange and white|白と橙
10. 後味悪いや|sour
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Laura day romanceバンドプロフィール

Laura day romance(ローラデイロマンス)は、2017年に早稲田大学の音楽サークル・早稲田ロッククライミングのメンバーによって結成された3人組バンドである。略称は「ローラズ」。現在のメンバーは井上花月(Vo., タンバリン)、鈴木迅(Gt.)、礒本雄太(Dr.)の3名で構成されている。洋楽からの影響と日本的なポップさを取り入れたギター・ポップやインディー・フォークを基調とした幅広い音楽性が特徴だ。2020年に1stアルバム『farewell your town』、2022年に2ndアルバム『roman candles|憧憬蝋燭』をリリース。2025年3月に配信シングル「heart」でメジャーデビューを果たした。同楽曲はNHK Eテレ アニメ『アン・シャーリー』のエンディングテーマとなり、バンド初のタイアップ楽曲となった。2025年には3rdアルバム『合歓る』を前編・後編の2部作として発表している。
Laura day romance公演詳細
イベント名: Laura day romance hall tour 2026 “Fixing a hall”
日時・会場:
・2026年3月15日(日) 宮城・トークネットホール仙台 大ホール
・2026年3月28日(土) 福岡・福岡国際会議場 メインホール
・2026年4月4日(土) 北海道・札幌教育文化会館 大ホール
・2026年4月10日(金) 大阪・NHK大阪ホール
・2026年4月11日(土) 愛知・岡谷鋼機名古屋公会堂 大ホール
・2026年4月16日(木) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
チケット:
・全席指定 一般 5,800円(税込)
・全席指定 U-22割 5,000円(税込)
・着席指定 一般 5,800円(税込)
・着席指定 U-22割 5,000円(税込)
公式サイト: https://lauradayromance.com/

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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Twitter:@takita_funky










