最終更新: 2026年3月4日

日本語音楽のルーツを問う


-yabori:ハクブンゴウをやっていた時とはまた違う感覚なんですね。
ハクブンゴウ:そうですね。あの時と、商業的な活動ができなくなったこと、そして僕の音楽性が変わっていったことが同時に起きていて、それが10年の空白にも繋がっています。僕は日本語で歌う時の正しいメロディーをまだ発見・確立できていないと思っているんです。欧米のロックやヒップホップは、どんなに最先端のことをしていても、ブルースやジャズ、ゴスペル、さらに言えばクラシックといったルーツに脈々と繋がっている感覚があります。ケンドリック・ラマーの音楽も明確にルーツと繋がっていますよね。でも日本のJ-POPは、西洋音楽の理論を明治以降に輸入したものなので、ルーツに繋がっている感覚がないと思っています。『蛍の光』もスコットランド民謡のメロディーで、明治の教育で培われた感覚ですよね。日本人の本当のルーツは三味線音楽や民謡のはずなのに、それを聴いて心が洗われるとか、“俺たちのルーツだ”と感じる日本人は少ないと思います。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さん(後藤正文)も昔、“日本の音楽は明治の頃に大きなリセットが入り、三味線や琵琶みたいな邦楽との繋がりはだいぶ切れている”と発言していました。ルーツがないから、海外から輸入してはJ-POPの形を変えていく、というのを繰り返していると思います。ボブ・ディランから日本のフォーク、ビートルズからGS、ダンスミュージックから小室哲哉、R&Bから宇多田ヒカル、ヒップホップからスチャダラパーやRHYMESTER、今はトラップといった具合に。日本語のルーツを掘り下げようとしても、明治くらいで止まってしまう。でも僕は幸い沖縄で育ったので、琉球音楽の方へより深く掘り進めることができたんです。それで、日本語っぽくメロディーを作っても、“これが自分のメロディーだ”とは感じなくなってしまったんですよね。

路上ラップと英語という選択

-yabori:この間、路上で英語でラップをしていると聞きましたが、あれはどうして始めたのですか?
ハクブンゴウ:遊びではあるんですけど、結局すべて繋がっているんです。日本語のメロディーというのは、僕の中で正解がわからないという問題があって。それが英語で歌うとすべて整理されるんですよ。発音の上手い下手は別として。ヒップホップをちゃんとやってみようということで曲を作った時に、日本語を乗せるのは簡単なんですけど、できるだけ英語でやろうと思ったのがきっかけです。

-yabori:ああいう活動はこれからも続けていくのですか?
ハクブンゴウ:単発ですね。またやるかもしれないですけど、何とも言えないです。

10年ぶりの活動再開

-yabori:では、ハクブンゴウの話に戻します。10年前に『交差点EP』を出しましたが、これからの活動予定はありますか?
ハクブンゴウ:商業的な活動はできないんですけど、今年はできれば色々やりたいとは思っています。

-yabori:例えば無料ライブとか、可能であればやろうと思っているということですか?
ハクブンゴウ:そうですね。知り合いのところで歌うだけなんですけど。お世話になっているカフェのオーナーがいて、毎年周年祭をやっていてミュージシャンがたくさん出るんです。10年前もそこで歌わせてもらったんですよ。10年経ったのでまた歌ってみようかなと話をしたら、誘ってくれることになりました。

-yabori:そうなんですね。ハクブンゴウとして新曲を出すことも考えていますか?
ハクブンゴウ:あり得ます。今、ミュージックビデオを撮ろうと思っていて、機材を揃えようとしているところです。ひとまず自分で撮ってみようかなと思っています。

-yabori:未発表曲も何曲かありますか?
ハクブンゴウ:ありますよ。もともとフルアルバムを出すということも考えていたので、4、5曲はあるはずです。作ろうと思えばできますし。

-yabori:その辺もこれから出していこうという感じですか?
ハクブンゴウ:そうですね。出すかもしれないです。

再起動のきっかけ

-yabori:10年という節目はあるにせよ、またやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
ハクブンゴウ:ちょっと難しいんですけど、10年間サラリーマンとして働いてきて。僕がものを作る中で日本語フォークが得意だと思いました。自分が一番得意なものをもう一回やってみようと。僕はこの沖縄文化をみんなにもっと知ってほしかったり、聴いてほしかったりする思いがあります。ただ、そこから前面に出ると難しいんですよ。単純に聴いてもらえないということがあって。ハクブンゴウは日本語のプロジェクトとしてやって、そこから興味を持ってもらって、僕がもう一つやっている沖縄音楽のプロジェクトも聴いてくれるというのが本来の理想だったんです。それが上手くいかなかったんですが、10年経ってもう一回やってみようと思いました。

『交差点EP』再公開の経緯

-yabori:10年経ったということで、『交差点EP』を久しぶりに公開しましたが、なぜこのタイミングだったのでしょうか?
ハクブンゴウ:厳密には11年ですかね、2015年だったので。10年経ってあのEPを改めて聴いた時に、やっぱりいいなと思ったんですよ。ローファイだし、凄まじい音処理だなと。あの時、ものすごい古いパソコンでネットにも繋がっていないような環境で編集して作って。あの音源って今は公開されてないじゃないですか。当時のSoundCloudにアップしていた音源は全部消えているので、宙に浮いているのがもったいないなと思って、yaboriさんに連絡して公開してもらえませんか、と頼みました。Apple MusicやSpotifyには『彼がいうには』があるんですけど、『交差点EP』はできればどこかで出したかったんです。

「ラマーのように」の仕掛け

-yabori:だいぶ前のインタビューでも聞けなかったことを聞きたいのですが、『交差点EP』収録曲の「ラマーのように」の“ラマー”って何ですか?
ハクブンゴウ:ケンドリック・ラマーのことです。

-yabori:そうなんですね!ケンドリック・ラマーが好きなんですか?
ハクブンゴウ:めちゃくちゃ好きってわけではなく、詳しくないんですけど、やっぱり時代のアイコンだと思うんです。当時の2015年だったら特にそうじゃないですか。「ラマーのように」は曲に仕掛けがあるんです。フォークっぽい人なんだなと思わせたところで、突然この曲が入ってくるじゃないですか。“こいつ何者なんだ”みたいな感情を持たせたくて。歌詞もそうですね。“ケンドリック・ラマーのように”って、ちょっと飛び道具的に入れてみたかったんです。

これからのハクブンゴウ

-yabori:これからはハクブンゴウとして、機会があればライブもするし、新曲も出すけれど、商業活動ではなくお金がかからない範囲でやるということでいいですか?
ハクブンゴウ:その通りです。10年経ったんで、また日本語の曲も少しやってみたいと思うようになりました。

-yabori:沖縄音楽をやる時はハクブンゴウとは違う名義でやるということですよね?
ハクブンゴウ:人前で三線を弾くことも今のところないのですが、やるとしたら本名じゃないですかね。ただそれとは別で、沖縄音楽をベースにしたダンスミュージックっぽいビートを作ろうとしていて。それはハクブンゴウとは違う名義でやる予定です。曲はまだできてないですが、いずれやろうと思います。

-yabori:今回の『交差点EP』をどんな人に聴いてほしいと思いますか?
ハクブンゴウ:いいメロディを聴きたい人に聴いてほしいと思います。いい“日本語音楽”を探している人ですね。“日本語音楽”っていうのがポイントかもしれないです。

-yabori:これからハクブンゴウとして、もしくは個人的にどのような活動をしていく予定ですか?
ハクブンゴウ:今年はいろいろやろうと思います。少なくともビデオは作って、ライブは1本は出るので。それと、東京のような都会で歌ってみたいと思います。

東京で歌いたい理由

-yabori:なんで都会でやってみたいんですか?
ハクブンゴウ:僕の歌って、歌詞的にやっぱり東京のような都会で歌う方が合うんですよね。沖縄は基本的にじめっとしているので、東京で歌うと多分合うだろうなと。沖縄では合わないと思っていたから、ライブをしなかったというのもあります。そもそも電車の歌を歌ってますしね。もし誰か探している人がいたら、ぜひ。ノーギャラで出るので。

-yabori:それはどうやって告知していく予定ですか?
ハクブンゴウ:アカウントも作っていないので、告知する予定はないです。作った曲もYouTubeに細々と公開する程度で。そもそも僕が一番興奮するのは、デモを作りまくって世界各国のレーベルに送る時なんですよ。その時に“いいね”って言って返してくれた人がいて、レーベルから出すという流れになれば一番面白いと思っています。

ハクブンゴウ アルバムリリース

『交差点EP』


リリース:2015年9月20日
曲目:
1. 嘘並べ (Uso Narabe)
2. 夜更けにダンス (Yofuke ni Dance)
3. 有能 (Yuunou)
4. ラマーのように(Lamar no yooni)
5. まっさら (Massara)
Youtubeで見る

『彼がいうには』


発売日:2016年6月2日 (Release: June 2, 2016)
品番:PCD-4636 (Catalog: PCD-4636)
曲目 / Tracks:
1. 嘘並べ (Uso Narabe)
2. 寝台列車 (Shindai Ressha)
3. 走り出すのさ (Hashiridasu no sa)
4. あの日 (Ano Hi)
Amazonで見る

デザイン:つでん
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ライター:Tomohiro Yabe(yabori)

BELONG Media/A-indieの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@boriboriyabori