最終更新: 2026年4月2日
サウンドのアプローチ
-滝田優樹:サウンド面をさらに掘り下げていくと、シューゲイズギターとアコースティックギターないしはクリーントーンのギターサウンドとの共存が、個人的には一番心打たれるポイントだったのですが、サウンド面で意識されたところはどういったところだったのでしょうか。
ベン:そこは本当に意識していたよ。以前は気に入ったものを見つけて録音して、全体像まで考えていなかった。でも『Birding』では、デモとずっと一緒に生きていたから、各トラックに何が必要で、アルバム全体に何が必要かをわかっていた。全部を霧がかったサウンドにしたら混乱するだけだから、アルバム全体にたくさんのアコースティックレイヤーを入れて、世界観に奥行きを加えながら焦点を絞るようにしたんだ。
ドッティ:私はいつもエレクトリックで弾く前にアコースティックで曲を弾くの。ずっとアコースティックが身近にあって、耳がそう働くようになっているから。今回の曲ではそれをとても意図的に配置しました。ベンがかつて“アコースティックは音楽にリズムやビートをたくさん与えてくれる”と言っていて、ずっとそれを覚えているんです。ミックスの低い位置に置くだけでも、すごく効果があるんですよ。
ブレイクスルーとなった曲
-滝田優樹:今回のアルバムであなた自身のブレイクスルーとなった楽曲、もしくは最も変化や進化を感じさせる楽曲はどれですか? 個人的には「Alfie」がヴォーカルとギター、ベース、ドラムがこれまでで1番開放感のある演奏を披露していながら、約7分の中で緩急と展開を上手くコントロールしていて変化を感じました。
ベン:オープニングの「Smile」がブレイクスルーだと感じたね。リスナーを僕たちの世界に引き込む”世界構築”についてよく話し合っていたんだけど、「Smile」はアルバムへの導入として最もうまく機能していると思う。ドッティのヴォーカルはとても近くて個人的で、ギターは常に動き続けていて、所々でアトーナルに聴こえる部分もある。いくつかの面で、これまでのパターンからの脱却だよ。
ドッティ:「No Sweeter Feeling」を仕上げた時、ブレイクスルーを感じました。最後まで残った曲で、曲の中に何があるのか本当に見えなくて、アルバムに入れないことも考えていたくらいだった。ベンが遊園地の音声サンプルを使ったラフなヴォーカルメロディを送ってきて、それで一気に曲が開けたの。時々、ちょっとしたきっかけが必要なだけってことがあるんですよね。
dearyとしての自己確立

-滝田優樹:ベンは今作について、“前作まではdearyになろうとしていたが、このアルバムこそが今の自分たちそのものだ”と発言していました。それについては先ほどもお伝えしたように、規律的で調和がとれていて格調高いサウンドになったというところに直結するかと思いますが、”今の自分たちそのものだ”というところで、”今の自分たちそのものだ”とはどのようなものなのか説明できますか?
ベン:これはたぶん不安から来ているんだと思うけど、以前は自分たちがどんなアーティストかを模索していた。でも今は、その声を見つけて自分たちの芸術性に自信を持てるようになった気がするんだ。それって、僕たちが作る音楽が個人としても集団としても自分たちとより深くつながっていて、リスナーとも共鳴してくれればいいということでもある。
ヴォーカルの配置とプロダクション
-滝田優樹:ヴォーカル面で注目すると、デビュー当時から一貫してサウンドの下にヴォーカルが位置していて、靄がかかっていながらその下からネオン照明のような光が照らす暖かな印象でした。このプロダクションはドリームポップ由来のものだと思うのですが、それが今作のテーマや雰囲気と相まって祈りのニュアンスが強調されていると感じました。ヴォーカル面での意識としてはどういったことが挙げられるでしょうか。
ベン:実は、意識的にエフェクトを抑えてヴォーカルの配置を考えるようにしたんだ。それも新しく見つけた自信に繋がっている。リバーブにたっぷり沈めることも同じくらいやりたいし、必要な時はフロントに出すことも同じくらい平気でできる。歌詞の内容がそれを必要としている場合はね。
ドッティ:今回のアルバムでは、ヴォーカルの配置についてかなり意識していました。私は歌詞をとても大切に聴く人間で、シューゲイズの中でそれが埋もれてしまうことがある。だから、この曲の中でヴォーカルを戦略的に配置することが大切だった。メロディーもとても重要で、ギターの霞の向こうまで届くものだから。
どんな人に、どう聴いてほしいか

-滝田優樹:『Birding』をどのような人に聴いてほしいですか? もしくはどのようなシチュエーションで聴いてほしいですか? 歌詞やサウンド面で特に注目してほしいポイントがあれば教えてください。
ベン:僕のお気に入りのアルバムはヘッドフォンで聴くレコードで、『Birding』もそうだと思う。踊ったり、体を揺らしたり、泣いたりするかもしれないけど、一番いいのは暗い部屋でヘッドフォンを全開にして聴くことだと思う。
ドッティ:「Smile」の歌詞に注目してほしいです。ミソジニーについて個人的なつながりを探りながら、時間をかけて書いた歌詞なので。女性への暴力についての歌だけれど、男性こそ聴いて、女性が日々感じている恐怖や不安の重さを感じてほしいと思っています。
日本のリスナーへのメッセージ
-滝田優樹:あなたたちの音楽が大好きな日本の音楽ファンも多いです。特に「Seabird」が発表されてからの日本のリスナーの反応も多く、アルバムを楽しみに待っているファンもたくさんいるので、最後に日本のリスナーにメッセージをいただけますか?
ベン:僕たちの音楽へのサポートは、バンドとして一緒に経験してきた中で最も魔法のようなことのひとつだよ。とても特別なことで、みんなが僕たちの音楽を聴いてくれること、そこに何か心地よさを見つけてくれることが本当に嬉しい。いつか日本に行ってライブができたら、それは本当に夢が叶うことだよ!
ドッティ:聴いてくれてありがとうございます!この曲たちを作るのが本当に楽しくて、みなさんにとって素敵な瞬間がたくさん生まれることを願っています x
dearyアルバムリリース
1stアルバム『Birding』
発売日: 2025年4月3日
レーベル: Bella Union
収録曲:
1. Smile
2. Seabird
3. Baby’s Breath
4. Gypsophila
5. Blue Ribbon
6. Garden Of Eden
7. Alma
8. No Sweeter Feeling
9. Terra Fable
10. Alfie
11. Birding
Amazonで見る
dearyバンドプロフィール

dearyは、ロンドンを拠点とするドリームポップトリオである。ベン・イーストン(Gt.)、ドッティ・コックラム(Vo., Gt.)、ハリー・キャッチポール(Dr.)の3人で構成される。COVID-19ロックダウン中の2021年にベンとドッティが出会い、Cocteau Twins、Slowdive、MBVへの共通の愛から結成された。2023年にデビューEP『Fairground』をセルフプロデュースでリリースし、天使のようなヴォーカル、リバーブに包まれた多層的なギターメロディ、巨大なドラミングスタイルで注目を集めた。デビューアルバム『Birding』は、長年のコラボレーターIggy Bとともにバンド自身がプロデュースを手がけ、幅広い影響源を持ちながらも完全に独自のスタイルを確立した作品である。
deary UK・EU公演詳細
イベント名: Rough Trade Outstore
日時: 2025年4月3日(木)
会場: ロンドン・The Lower Third
日時: 2025年5月12日(月)
会場: バーミンガム・Hare & Hounds 2
日時: 2025年5月13日(火)
会場: マンチェスター・YES Pink Room
日時: 2025年5月14日(水)
会場: エディンバラ・VooDoo Room Speakeasy
日時: 2025年5月15日(木)
会場: シェフィールド・Sidney & Matilda Basement
日時: 2025年5月20日(火)
会場: フランス・パリ・Hasard Ludique
日時: 2025年5月21日(水)
会場: オランダ・ロッテルダム・V11
日時: 2025年5月22日(木)
会場: オランダ・アムステルダム・Cinetol
ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
今まで執筆した記事はこちら
他メディアで執筆した記事はこちら
Twitter:@takita_funky











