最終更新: 2020年5月21日


10.dip – neue welt
エレキギターの妙技を今年一番味わえたアルバム。轟音でもクリーントーンでもない、冷めていながら徹底してオルタナな音作りと、弾き語りでは絶対に成立し得ないような、バンドが持つグルーヴがそのまま曲になったような凄み。センスとキャリア、あと圧倒的な閃きに裏打ちされた、孤高のロックミュージックでした。


9.きのこ帝国 – フェイクワールドワンダーランド
これまでになくポップに、そしてvo.gt.佐藤の女の子然としたキャラクターが全面に出た作品で、ソングライティングのレベルで大変貌してたりな曲調の幅広さや、超越的な物言いが減り生活感が増した歌詞など、大転機となっている。局地的に「クロノスタシス」の歌詞大喜利が流行ったり、ともかく佐藤が可愛い。


8.柴田聡子 – いじわる全集
弾き語りで成立する/しないでなく、弾き語りじゃないと成立しない、という雰囲気があるのが彼女の楽曲で、これまで以上に楽器数の減った今作はよりそんな絶対的な質感が増したような。日常を危うい角度から切り取り異化する歌詞世界の冴えも、静謐な空気に淡い緊張感を走らせる。そしてこの人もとんでもなく歌が可愛い。


7.曽我部恵一 – まぶしい
近年でもずば抜けて多作だった今年の曽我部だが、去年の『超越的漫画』から僅か数ヶ月でリリースされた今作は、自身に眠るアイディアを掘り返しまくって、ひとりで無理矢理ホワイトアルバムをでっちあげた、といった趣。そのパワーもバリエーションも凄いが、それでもなお保たれるクオリティが一番ハンパない。


6.ART-SCHOOL – YOU
大傑作だったアルバム『BABY ACID BABY』(批判が結構多いのが信じられない)からの鉄壁のメンバーにより引き続き制作された今作は、とりわけこれといった作品全体を貫く音楽的テーマがないことでかえって木下理樹のニュートラルな音楽志向が出ているように思う。ポップでキャッチーな曲の出来が特にいい。


5.Ben Watt – Hendra
現世と薄皮一枚分隔絶したように幻想的で繊細なネオアコの名盤『North Marine Drive』から31年を経てのまさかのリリースだった彼のソロ第二作品集は、当時と同じ系統の美意識・トーンがそのまま歳を重ねた、美しさにいい具合のくすみ・渋みが入った味わい。心の皺を慈しむマイナー調の心地よい薫り。


4.Weezer – Eyerything Will Be Alright In The End
個人的にはブルーアルバム超えたと思ってます。Weezerのエモーショナルなキャッチーさを本人たちがとことん研究して作られたと思われる楽曲の数々の鉄壁っぷり。どの曲もちょっとしたアイディアでポップさにそれぞれの花を添えていて、アルバムとしての緩急もすこぶる良い。勢いがあってホロリとくるのやっぱ爽快。


3.Boyish – Sketch For 8000 Days of Moratorium
どこまでも純度の高い轟音、というギターポップ/シューゲイザー好きの多くが憧れそうなサウンドをがっつり追求して出来た、素晴らしすぎるモラトリアムの箱庭。ふっと湧いた思い出を入り口にどこまでも浮かんで沈んでいく、妄想のような、冒険のような、ずっと眩しくて甘酸っぱくて美しい。感傷にずっと解き放たれていたいよな。


2.Nine Black Alps – Candy for the Clowns
2014年の現代において、彼等の辞書にはドリームポップもチルウェイブもかけらも見当たらない。ずっとニルヴァーナやスマパンやダイナソーやその辺に拘泥し続ける彼ら、本当にどうしようもないのかもしれない。歪んだギターをドライブさせてグランジしたらいい具合にロールしてるだけのバカ。ホント最高としか言いようがない。


1.昆虫キッズ – BLUE GHOST
今年は本当にお世話になりました。あらゆる感情と感傷と情景と憧憬とを乱暴に乱反射させてしまうあなた方の孤高の無敵さに、気づいたのが遅すぎたことが本当に心残りです。この作品はとりわけその輝きも影もひたすらに美しい。最後のライブはワンマンで曲がたくさん聴けて嬉しいのですごく楽しみですくたばれ昆虫キッズ。

【Writer】おかざき よしとも(@YstmOkzk)