最終更新: 2020年12月6日
目次
『MAGDALENE』
マグダラのマリアという女性をあなたは知っているだろうか?
聖母マリアがイエスキリストの産みの母親であることは誰もが知っているが、マグダラのマリアの存在は日本では周知されていない。
しかし彼女は、キリストの最後を看取り、復活する瞬間を見守ったという重要な役割を担った女性である。
彼女の名前がタイトルになっているのが、FKAツイッグス(FKA Twigs)の最新アルバム『MAGDALENE』である。
FKAツイッグスとは
FKAツイッグスは英国のグラミー賞・マーキュリープライズにノミネートされるなど、デビューアルバムである前作『LP 1』が高く評価された。
“未来から来たR&B”と評される彼女はファッションも注目されており、特徴的なくるりんっとした後れ毛ヘアをモデルの梨花もファッション誌の表紙で真似ていた程である。
ストイックにダンススキルを磨いていることから、スポーツブランド最大手のNikeのイメージモデルに抜擢されるなど、彼女の魅力は各界に大きな影響を与えている。
圧倒的なパフォーマンスと高いファッションセンス、日本で言う安室ちゃん(安室奈美恵)のような存在である。
大きな喪失に立ち向かった作品
前作『LP 1』からおよそ5年、その間に配信限定のミニアルバム『M3LL155X』のリリースなどもあったが、セカンドアルバムの今作を発表するのになぜこれ程までに時間がかかったのか?
それは、彼女が経験した深い悲しみと喪失が関係している。婚約者との別れ、そして子宮に見つかった腫瘍の摘出手術。
前作から今作に至るまでの5年間に、彼女は女性にしか経験できないようなあまりに大きな“痛み”を経験している。
この“痛み”から彼女が得たものが今作に深く影響している。
FKAの歌声が幾重にも重なってまるで讃美歌のような「thousand eyes」で始まる今作は、次曲「home with you」の冒頭部分で歌声が機械的に操作されていたり、
米国で人気のラッパー・Futureをゲストに迎えたイスラム音楽のような先行シングル「holy terrain」など、前作以上に無駄な音を感じさせないが、とにかく混沌としている。
一つ一つの曲が訴えかけてくることや曲が持つ意志のようなものがあまりに強くて、今作を聴いている間、他のことが手につかないくらいである。
それもそのはず、今作についてFKA twigsは、自身が経験した痛みの中で混濁とした自らの姿を映し出したものだと語っている。
それ程にパーソナルな内容になっているということである。
混沌を極めて行き着く最終曲「cellophane」で、ピアノの音とFKAの歌声だけが美しく重なり合う。
もがき苦しんだ先にようやく見えた一筋の光のような神々しさを携えて。
マグダラのマリアが福音書の中で与えられた役割と同じように、FKAもまた5年間で経験した“痛み”から女性として、自らの役割を深く考えたのだそうだ。
真の女性像とは何か?その問いへの彼女の答えが「mary magdalene」に集約されている。
“女性の手 とても暗くて挑発的 育む息吹があなたを撫でる 神から授かった自信”
1人の女性としての在り方を問うFKA twigsのセカンドアルバム『MAGDALENE』、このアルバムを通してあなたはどんな自分を見つけられるだろう?
グラミーノミネート
今作収録の「Cellophane」が第62回グラミー賞で、最優秀短編ミュージックビデオ賞にノミネート。
第62回グラミー賞の結果発表は日本時間2020年1月27日を予定している。
リリース
BEAT RECORDS / YOUNG TURKS (2019-10-25)
売り上げランキング: 24,856
収録曲:
01. thousand eyes
02. home with you
03. sad day
04. holy terrain ft. Future
05. mary magdalene
06. fallen alien
07. mirrored heart
08. daybed
09. cellophane
10. cellophane, Live at The Wallace Collection *Bonus Track for Japan
BEAT RECORDS / YOUNG TURKS (2019-11-08)
売り上げランキング: 68,061
仕様:国内盤CD+Tシャツセット
プロフィール
“英国グロスタシャー出身でジャマイカとスペインにルーツを持つシンガー・ソングライターのFKAツイッグス。FKAツイッグスは、ファッションアイコンとしても頭角を表し、音楽とファッション、アート、テクノロジーを繋いで”未来から来たR&B”とも表現される。彼女は2012年、セルフリリースEP『EP1』を発表。2013年にはザ・エックス・エックスやカマシ・ワシントンらを擁するロンドンの先鋭レーベル〈Young Turks〉から『EP2』をリリースし、米音楽メディアPitchforkなどのメディアから絶賛されたほか、英BBCのSound of 2014にも選出された。その後デビューアルバム『LP1』を2014年に発表し、同年の英マーキュリー賞やブリット・アワードにもノミネートされた。2015年には初来日を果たしフジロックにも出演している。自身が制作/プロデュースを手掛け最新作『MAGDALENE』は、FKAツイッグスの心が張り裂けるような辛い体験や子宮の腫瘍を取り除く手術をするという経験によって彼女が自信を喪失していた時期に生み出されたという。。また、エレクトロニック・ミュージック界を代表するプロデューサーのニコラス・ジャーら多数の著名アーティストが、コラボレーターとして名を連ねている”
YouTube
FKA twigs – cellophane
FKA twigs – holy terrain feat. Future
FKA twigs – home with you
FKA twigs – sad day
Live Video(11/26追記)
FKA twigs – Cellophane (Later… With Jools Holland) accompanied by Sampha
FKA twigs – Mary Magdalene (Later… With Jools Holland)
FKA Twigs – Live at Maida Vale
ライター:桃井 かおる子
スマホ、SNSはやっておらず、ケータイはガラケーという生粋のアナログ派。