最終更新: 2023年8月20日
ポストパンクやネオアコ、エレクトロニック・ボディ・ミュージックなどの影響を受けた唯一無二のサウンドを築き上げてきた、Lillies and Remains(リリーズアンドリメインズ)。
前作『ROMANTICISM』から9年ぶりとなる新作アルバム『Superior』をリリースした彼らにインタビューを行った。
前作から9年の時間をかけた理由や変わりつつあるKENTの人生観、PSYSALIA人とのコラボ、「Greatest View」が藤井麻輝のプロデュースで名曲となった理由とは?
また、今回のインタビューは英語版姉妹サイトのA-indieでも掲載しており、英語での回答はKENT自身が行っている。
目次
Lillies and Remains インタビュー
アーティスト:KENT インタビュアー:yabori 翻訳:KENT、BELONG編集部バンド結成のきっかけ
-改めて基本的なところから伺っていきたいと思います。Lillies and Remains(リリーズアンドリメインズ)は京都の同志社大学で結成されたと聞きました。どのようなきっかけでバンド活動を始めようと思ったのでしょうか。
KENT:大学に入る前から曲を作っていてバンドをやりたいと思っていたのですが、大学入学後に同じUS indie, UK indieが好きなメンバーと出会ったので、そこでようやく実現したという形です。
-ギタリストのKAZUYAさんとはどのように出会い、一緒に活動するようになったのでしょうか。
当時myspaceという音楽系のSNSがあって、イギリスのpost punk bandのNeils Childrenが好きという共通項から出会いました。当時私は関西から東京に出てきたところで、新たにメンバーを探していたので、それでギタリストとしてKazuyaを誘いました。
-Lillies and Remainsというバンド名について伺いたいと思います。イギリスのポストパンクバンド、Bauhausの曲名「Of Lillies and Remains」から着想を得たそうですね。どうしてこの曲名をバンド名にしようと思ったのでしょうか。
検索した時に引っかかりやすいからという点と、ファンの方が”リリーズ”と略して呼びやすいかなと、当時思ったからです。
Of Lilies and Remains
英語で歌う理由
-Lillies and Remainsが日本語で歌ったのは唯一、日本のテクノポップバンド、ヒカシューのカバー曲「パイク」だけだったと記憶しています。ほぼ全ての曲を英語で歌っていますが、これにはどんな理由があるのでしょうか。
聞いている曲は英語が多いので、曲を作る際にどうしても日本語にすると違和感があったので、英語で曲を書くことにしました。
9年間について
-最新アルバム『Superior』について伺う前に、前作『ROMANTICISM』をリリースされてからの9年間について伺いたいと思います。『ROMANTICISM』リリース前には、ベーシストのNARA MINORUさんの脱退、コロナの感染拡大という大きなターニングポイントがありました。ライブすらできない期間もありましたが、音楽との向き合い方や心境の変化はありましたか?
アルバムを出していない期間が長いのに、ファンの方が変わらずライブに来てくれたことがとても嬉しかったので、なんだかんだ音楽はずっとやり続けないとなーとずっと思っていました。そしてそれがアルバム制作の原動力にもなりました。なので、活動が少なかったことはファンの方には申し訳ないのですが、心境の変化としてはポジティブなものが多かったです。
PSYSALIA人とのコラボ
-2022年には2012年に解散し、再結成したPSYSALIA人(ex.Psysalia Psysalis Psyche)とのコラボ曲「before the end」のリリースがありました。どのようにしてこの曲が生まれたのか、またコラボレーションの過程でどんなやりとりがあったのか教えてください。
サイサリは盟友であり、復活が単純に嬉しかったので、出来れば一発目に一緒にライブがしたかったことと、何かスペシャルなことをやろう、ということで曲を一緒に作りました。作曲とかメロディ自体はサイサリのToru君が作って、アレンジと作詞だけ私がやりました。私がアレンジするとどうしてもリリーズになるので、なるべくシオン君やToru君のvocalをいれてサイサリっぽさが共存するように、というやりとりをした記憶があります。
before the end
Superior
新作アルバム『Superior』の制作過程
-ここからは新作アルバム『Superior』について伺います。このアルバムの構想はいつからあったのでしょうか。また、曲作りとレコーディングなどの過程において、どこに一番時間をかけたのでしょうか。
3年前ぐらいから「Neon Lights」など数曲は合ったのですが、タイトル曲である「Superior」が2022年末に出来た時にアルバムの構想が固まった形です。今回のアルバムに限らないですが、一番時間がかかっているのはデモを作るまで、だと思います。曲のアレンジを一番重要視しています。
Lillies and Remains – Superior
-『Superior』の先行曲となった「Greatest View」、「Falling」は前作『Romanticism』に参加していた藤井麻輝さんがプロデュースを担当されていますね。どうして再び、藤井さんと一緒にやろうと思ったのでしょうか。また、楽曲に対して具体的にどのような提案があったのでしょうか。
藤井さんは私が作った曲のqualityを更にあげるようなアレンジの提案をしてくれるので、お願いしました。様々な提案が有ったと思いますが、私が覚えているのは、”イントロのインパクトが弱いので、最初のvocal フレーズを逆再生にしよう”と提案いただいたことです。あれは私だと思いつかないですね。
Greatest View
-「Neon Lights」のMVは美しさと同時に切なさを感じます。東京の街頭広告を映し出す演出は、現代社会の矛盾や孤独を映し出しているように感じました。この映像に込めたテーマについて詳しく教えてください。
ただただ東京の綺麗な夜景を綺麗に撮ってほしい、とMusic Videoの監督であるキム・ユンスさんに依頼しました。仰るような美しさや切なさに加え、もう若くないのにNeon Lightsに惹かれてクラブに行ってしまう男、など全てを飲み込んでしまうような東京の夜、というのがテーマです。
Lillies and Remains – Neon Lights
カバー曲の選択基準
-ブライアン・イーノ&ジョン・ケイルの「Spinning Away」をカバーされていますね。オリジナル曲の中に違和感なく溶け込んでいると思うのですが、どうしてこの曲をカバーしようと思ったのでしょうか。また、Lillies and Remainsはカバー曲の選択が毎回絶妙だと思うのですが、どのような基準でカバー曲を選んでいるのでしょうか。
ありがとうございます。テンポの遅い曲がなかなか作れなかったので諦めてカバーにしようと思ったこと、自身のrespectするartistを常に表明したいこと、の2点が理由です。
Spinning Away
-タイトル曲にもなっている「Superior」の歌詞には、“A superior life made us colorless(直訳すると、優れた人生は私たちを無色にした)”というとても印象的なフレーズが出てきます。KENTさんは三島由紀夫や大江健三郎などの文学作家から影響を受けていると聞きましたが、このフレーズには文学作品などの影響があるのでしょうか。
最近はあまり読まなくなってしまったので、文学作品の影響は無いと思います。このフレーズは、大人になってある程度の生活が出来るようになった瞬間に、人生の楽しさが後退していく、ということを表現したかったです。
KENTの人生観と音楽
-今回のアルバムの歌詞には、“Life”という言葉が数えると20回ほど出てきます。今作のキーワードの一つだと思うのですが、この9年の間にご自身の人生を振り返る機会があったのでしょうか。
9年も有れば、人生を振り返る機会もたくさんあります。今人生について思うのは、様々な経験を経て人生の”コツ”のようなものを会得したが、これからそれを使いたくても、もう時代の主役は次の世代だな、と感じることです。
-最終曲「New Life」の歌詞には、“law of causality”という言葉が出てきます。これは仏教でいう因果だと思うのですが、これまでのEPのタイトルには『MERU』というものもありました。仏教と関係のある言葉が出てくるのですが、仏教から影響を受けていることがあれば教えてください。
特に仏教を意識して入れた言葉は有りませんが、仏教は私の生き方において通奏低音のような形でずっと存在しています。
-今作も曲の流れを意識して作ったアルバムだと感じました。曲順や曲のつながりについて工夫したことがあれば教えてください。
ありがとうございます。正直曲順についてはあまり意識していません。とりあえず捨て曲が一曲も無い、良い曲だけが入ったアルバムにしたいと思いました。
-『Superior』のアルバムカバーはイギリスのポストパンクバンド、The Horrorsのアートディレクターを務めるCiaran O’Sheaがアートワークを担当したそうですね。The Horrorsとは音楽性も近しいので、共感する部分も多いと思うのですが、どうして彼にアートワークをお願いしようと思ったのでしょうか。
僕らがどういう音楽を作っているか、どういう事を表現したいかわざわざ説明する必要なく、彼は理解してくれて、最高のものを作ってくれると思ったからです。
Superiorの意味
-“Superior”という言葉を調べてみると、ポジティブな意味だと“(品質が)上質な”という意味があり、ネガティブな意味だと“傲慢な”という意味があるようですね。良い意味も悪い意味も内包し、多様な解釈ができるタイトルだと思うのですが、このタイトルにはどのような意味があるのでしょうか。
最近になってようやく、いい意味でも、悪い意味でも大人になったと感じたので、そういう意味をタイトルには込めたいと思いました。最初Seniorにしようと思ったのですが、こちらは老人という意味が強いので、、
リスナーへのメッセージ
-『Superior』をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
可能な限りたくさんの人に聞いてもらいたいです。僕らが作っているような音楽のジャンルを知らない人にも、曲の良さをエントリーポイントにして聴いてもらいたいです。
-『Superior』は前作から9年ぶりとなりましたので、私たちを含め待ちに待ったリスナーの方にメッセージを頂けますか?
待っていただいていた方、お待たせして申し訳ありませんでした。ようやく自信を持ってリリースできる曲が準備できたので、皆さまのこれからの人生のお供にしていただけたら嬉しいです。
Lillies and Remainsアルバムリリース
4thアルバム『Superior』
発売日: 2023年7月12日(水)
収録曲:
1. Superior
2. Muted
3. Neon Lights
4. Everyone Goes Away In The End
5. Focus On Your Breath
6. Spinning Away
7. Greatest View
8. Falling
9. Pass Me By
10. Passive
11. New Life
フォーマット:Mp3、CD
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Lillies and Remainsライブ情報
2023年9月17日(日)
仙台・enn 2nd
Open 17:00 / Start 17:30
Live: Lillies and Remains/TBA
2023年9月23日(土)
福岡・UTERO
Open 18:00 / Start 18:30
Live: Lillies and Remains/TBA
2023年9月30日(土)
大阪・ CONPASS
Open 18:00 / Start 18:30
Live: Lillies and Remains/Luby Sparks
2023年10月1日(日)
名古屋・ Shangri-La
Open 17:00 / Start 17:30
Live: Lillies and Remains/Luby Sparks
ワンマン公演
2023年10月21日(土)
東京 • WWW X
Open 18:00 / Start 19:00
Live: Lillies and Remains
チケット販売:2023/6/30(金)18:00~
※福岡、大阪公演のチケットは、イープラスでのみ販売
イープラス
https://eplus.jp/sf/word/0000037667
チケットぴあ
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=7A010016
ローソンチケット
https://l-tike.com/artist/000000000389640/
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プロフィール
“2007年、京都府で結成した日本のロック・バンド。メンバーはKENT(vo,g)とKAZUYA(g)の2名。2008年にEP『Moralist S.S.』でデビュー。エッジーで金属的なギターやニヒルな低音ヴォーカルが映える、ニューウェイヴやポスト・パンクを軸にした不敵なサウンドが特徴。当初は4人組でスタートしたが、メンバーチェンジを経て2名体制へ。2010年の英ツアーやフェスティヴァル参戦など、海外を視野に入れた活動も展開。コンスタントに作品を発表するほか、海外バンドのサポートなども積極的。”
Lillies and Remains代表曲(Youtube)
- Lillies and Remains – You’re Blind
- Lillies and Remains – Devaloka
- Lillies and Remains – Wreckage
ライター:yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻
これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。
過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。
それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。
現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。
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Twitter:@boriboriyabori
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