最終更新: 2025年5月25日

BED(ベッド)は、20221にベルリンで結成され、アルゼンチン人ベーシストのソル・アストルフィ(Sol Astolfi)とチリ人ヴォーカルのニコラス・アストルガ(Nicolás Astorga)、そしてドイツ人ギタリストのエマ・シラー(Ema Schiller)からなる多国籍バンドだ。

My Bloody ValentineやCocteau Twins、Grouper、Holeといったバンドの音楽的要素と、ベルリンのレイブシーンからの影響を反映させた創造表現に挑戦するBEDの音楽は安らかな多幸感。

一貫して耽美で幽玄さを担保しながらも展開自体は劇的で、心は穏やかに体は騒々しく動き出したくなる。

そんな音楽をBEDは演出する。私がBEDに惹かれたのはそういったジレンマだ。

今回はそんなBEDにインタビューを行い、彼らについて話を聞くことでその音楽の源を知りたいと思う。

先日リリースされたアルバム『everything hurts』についてや、音楽ルーツとレイブシーン、そしてクィアについてなどバンドの核心にあるものは多岐にわたるーー。

違法レイブから生まれた多国籍デュオ


アーティスト:ソル・アストルフィ(Sol Astolfi)、ニコ(ニコラス・アストルガ(Nicolás Astorga)) インタビュアー:滝田優樹 翻訳:BELONG Media / A-indie編集部

ベルリンでの運命的な出会い

-滝田優樹:私たちはアーティストのルーツや音楽がうまれた背景、そして影響を受けた音楽・文化・芸術を大切にしているメディアです。今回私たちとははじめてのインタビューなのでバンドの成り立ちから質問させてください。BEDはアルゼンチン人ベーシストのソル・アストルフィとチリ人ボーカリストのニコラス・アストルガによってベルリンで結成されたバンドですよね? 改めて多国籍のあなたたちはどのように出会い、バンドが結成されたのでしょうか。
ソル:ベルリンで出会ったんだ。パンデミックの時、ニコが彼のテクノプロジェクトで違法なレイブで歌っていてね。警察がパーティーを止めに来る中、彼が声を枯らして叫んでいるのを見た。それが“一目惚れだった”ってわけ。次の週末には友達のカミラ家の屋上で会って、Miss Kittenの「Leather Forever」を一緒に聴いて意気投合したんだ。それから、私の家でカラオケパーティーをした時に、即興で一緒に韻を踏んだりメロディーを作ったりして、バンドを始めようって決めたの。最初のミーティングで最初の曲、「everything hurts」ができて、それが結果的に最初のシングルリリースでアルバムのタイトルにもなったんだ。

南米での幼少期と音楽への目覚め

-滝田優樹:メンバーそれぞれどのような幼少期を過ごしてどのように音楽と出会ったのでしょうか。
ソル:私たちは南米の、隣り合った国で育ったんだ。二人とも子供時代はインターネットがなくて、自然の中で遊んでいたけど、同時に一番年下で“変わった子”でもあったかな。ダンスをしたり、体操をしたり、パフォーマンスアートに触れたりね。二人ともカトリック系で保守的な学校に通っていて、そこでは“クィア”であることは祝われるようなことではなかった。音楽はいつも、そういう抑圧的な現実から逃れるために、タブーとされてるような話題を表現できる安全な場所だったと思うな。
ニコ:それに、僕たちは同じ世代だから、違う国で育ったけど同じバンドやミュージシャンを聴いて育ったんだ。オルタナティブで“クィア”な活動をしているプロジェクトにすごく影響を受けて、それが僕たちの音楽の好みを形作ったんだよ。

ベルリンの音楽シーンとBEDの音楽性

8MM bar

ベルリン音楽シーンの今

-滝田優樹:私を含めて日本人の多くはベルリンの音楽というとクラシックやメタルバンド、そしてKraftwerkを代表としたテクノポップの印象が強いです。なので現在のベルリンの音楽事情や流行についてとても興味があるのですが、教えてもらえますか?
ソル:ベルリンの音楽シーンは主にDJやエレクトロニックミュージックが中心だけど、すごくクールなアンダーグラウンドのロックバンドシーンもあるよ。8MMみたいな地元のバーに行って他のベルリンのバンドのライブを見たり、Telematみたいな友達のバンドを見たりするんだ。最近はアンビエントが多くて、リスニングバーも人気だね。
ニコ:でも、時々いいレイブに行くのも楽しんでるよ。僕たちが作る音楽の多くは、使うシンセだったりエレクトロニックドラムだったり、そういうものからも影響を受けてるんだ。僕たちはアコースティック専門の音楽をやっているわけじゃなくて、エレクトロニックなツールと昔ながらのソングライティングが、僕たちのサウンドや作曲方法の中で融合していて、常に新しいサウンドを持つ新しいプロデューサーとコラボしようと心がけてる。なんだか僕たちは、“カムダウンミュージック”を作ってる気がするんだ。パーティーが終わった後とか、きついドラッグの二日酔いの時なんかに聴くようなね。

バンド名“BED”に込められた意味


-滝田優樹:ちなみにですが、バンド名についても教えてください。なぜ“BED”という名前にしたのでしょうか?“BED”というバンド名の意味についても教えてください。
ソル:パンデミックの間、私たちはベッドの上で多くの時間を過ごした。それに私がひどい失恋を経験した時、安全のために私のベッドを解体してニコの家に運んだんだ。BEDはセクシャルで悲しいことからインスピレーションを受けたプロジェクトで、ベッドでするようなこと。ベッドは私たちが自分のアイデンティティを探求して、無意識の奥深くに入っていく場所なんだ。
ニコ:それにベッドは、休んだり、夢を見たり、愛し合ったり、病気になったり、死んだりする場所でもあるからね。

BEDが語る、バンドの本質とは?

-滝田優樹:アンビエントとベルリンのレイブシーンからの影響を受けたバンドという印象があるのですが、自分たちの口からBEDというバンドがどのようなバンドなのか説明することはできますか?
ソル:私たちは一緒に踊ったりレイブに行ったりするのが大好きなんだ。暗い部屋とか、友達と過ごす長い夜が私たちにインスピレーションをくれるの。
ニコ:僕たちは、幸福感に満ちた躁状態から、すごく感情的で落ち込んだウサギの穴みたいな状態まで行ったり来たりできるんだけど、それこそが僕たちが一緒に取り組みたい音の体験の幅広さでもあるんだ。

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