最終更新: 2022年1月23日

強いて言うなら今の時代の日本のバンドシーンをもっと面白くしたいっていう考えを持っている人、活動をしてる人、そしてそういう新しい何かが始まるのに期待をしている人達に届いて新しいワクワクすることの一部になれば素晴らしいなと思います。

アーティスト:長野智(Vo.,Gt.)、中村大樹(Ba.)、高藤新吾(Dr.) インタビュアー:yabori、桃井 かおる子

-このアルバムを出すまでかなり時間がかかりましたね。今回、後藤さんのレーベルからリリースできるようになった、今の心境を聞かせてください。
長野:ここからスタートという気分ですね。リリースすることによって、自分たちが挑戦する事の幅が広くなってくると思うので、今から楽しみですね。

-今回のアルバムはその後藤さんと一緒に制作されたんですよね。アルバムのプロデューサーをされたとの事ですが、一緒に制作されていかがでしたか?
長野:ものを作るっていう意識と同じくらい、音を届けるっていう意識が高い人だから、そこの部分のバランス感はとても勉強になりました。人に届けるって事を大切にしているから、そこに対してバンドがどう切り込んでいくっていうアプローチの多さが参考になりましたね。

-作った後にいかに届けるかという事ですよね。
長野:そうですね。第一線でやっている人は本当にレベルが高いなって思いました。

-具体的にどういうアドバイスがありましたか?
高藤:レコーディングで煮詰まった部分があると、自分たちが聴いていて一番気持ちの良いテンポにしたら良いんじゃないかって言ってくれて。テンポを変えただけでスムーズにいった部分も多かったですね。
中村:常に場の空気を和ましてくれましたね。後藤さんがいるだけで空気が違うというか、やってても煮詰まらなかったですね。

-後藤さんがやりたい事を察してくれて、それに応じた環境を作ってくれたという事でしょうか。
長野:自分たちがやりたい方向にもっていけるように引っ張ってくれるんだけど、着地点が決まったら、そこに対しての評価はとても厳しかったですね。こういう風にやりたいのであれば、こういうやり方がいいんじゃないっていう、完成度のジャッジですね。全員が同じ方向を向けるように空気感を作ってくれるんだけど、決まったら伝わるものができるまでやりましょうよっていう。
中村:やりたい事は尊重してくれますね。

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-クオリティには厳しいっていう事ですね。
長野:「Baby Melonade」という曲のギターの刻みだけで、1~2時間ずっと同じ部分を弾いた事もありましたね(笑)。ちょっとよれてるって言われて(笑)。あれはめちゃくちゃ厳しかった(笑)。ギターフレーズを切り貼りして、均一にすることはできるんだけど、それは絶対にやらないんですよね。そういう部分のこだわりが凄いですね。
中村:でも上から言ってくる感じではなく、「俺も苦しんだんだよね」って言ってくれて。やってる間もアコギで弾いてたりして、ずっと一緒にやってる感じでしたね。
長野:できるとめっちゃ褒めてくれるし(笑)。

-学校の先生っぽいですね(笑)。
長野:先生っぽい所はたくさんあると思います(笑)。人柄もあるんでしょうね。ずっと同じ事をやっていると、はまって抜け出せなくなる事があるんですけど、そうならないように空気の調整は常にやってくれますね。

-今までの曲を新たにレコーディングしたと思いますが、新たにやってみていかがでしたか?
長野:もう一回やってみて、自分たちがやっている事を一個一個分解して、録り直した感じなので。自分が思い描いていたものがよりクリアになったというか。
高藤:曖昧な所がなくなりましたね。
長野:以前レコーディングしたものは3人で合わせた時のルーズさみたいなものも味だと思ってたんですけど、今回はより曲にフォーカスしているアルバムだから、やっている事がクリアですね。

-確かに以前の音源と比べて音が明るくなったような印象を受けました。そこに対してアドバイス等はありましたか?
長野:届けるっていうのがまずあって、自分たちがやりたいことっていうもののバランスをとりながら、一つ一つの作業の中で届けるって事を意識しながらやりましたね。

-前やっていた時、そういう発想はなかったという事でしょうか。
長野:うちらのバンドはマニアックだから、届けるっていう意識へのフォーカスが甘いっていうのがあって。後藤さんだと第一線でやっている訳だから、そこの意識のエッジーさに引っ張られてますね。そこが今までと一番違う部分ですね。

-細かい所まで気にされていますよね。例えば「Satellite TV」は歌詞が変わっている部分や、コーラスを重ねている所があるように思います。そこに対してもアドバイスがあったのでしょうか。
長野:あの曲はライブでも最後に演奏していた曲なんですけど、テンション感でもっていく曲だったのが、今回のアルバムでは3曲目に収録していて、引っ張らなくても聴けるようにコーラスだとか、テンポで工夫して上手くまとまりましたね。

-今回のアルバムは何かコンセプトがありますか?
長野:コンセプトは特にはないんですけど、あるとすればアンダーグラウンドに止まらないで、多くの人に届けるという事ですね。
中村:3人だけの世界から広がった感じがしますね。
高藤:後藤さんはNOWEARMANのことを凄く好きでいてくれて、うちらの音をより良いものにして、多くの人に届けたいっていう気持ちがあるんだなと。それが最初の始まりだったんだと思いますね。

-初の全国流通盤ということで、こうした人に聴いてほしいとか、「こんな人に届いたらいいな」という考えがあれば、教えてください。
長野:強いて言うなら今の時代の日本のバンドシーンをもっと面白くしたいっていう考えを持っている人、活動をしてる人、そしてそういう新しい何かが始まるのに期待をしている人達に届いて新しいワクワクすることの一部になれば素晴らしいなと思います。

-アルバムタイトルは『MAN NOWEAR』ですが、これにはどういう意味があるのでしょうか。
長野:アルバムタイトルを考えていた時に写真家のマン・レイの写真集をたまたま見ていて、レイ・マンじゃなくてマン・レイなのかと思って。うちらもNOWEARMANだし、『MAN NOWEAR』っていうのはどうかなと思って、シンゴさん(高藤)に言ってみて。
高藤:聞いた時にめちゃくちゃ感動しましたね。普通は思いつかないと思うんですよ。おふざけなバンドじゃないんだけど、そういう発想が出てくるのが面白いなって思いましたね。

-そのエピソードを聞いていると、長野さんの中では音楽もアートの一部と言うか、好きな音楽や写真とか映像が並列に並んでいるのかなと思いました。
長野:音楽って映像的な部分もあるし、音楽と写真や映像を切り離して考えてはいないんですよね。好きな写真家も好きなミュージシャンも同じライブラリーに入っている感じです。

-なるほど。ライブで演奏している曲を含めるとかなりの曲があったと思いますが、どうしてこの8曲に絞ったのでしょうか?
長野:一番バランスよく聴けるっていうのと、全部通してバンドの空気を聴いてもらえるようにという意味で、聴きやすいものを中心に選びましたね。

-最終曲にどうしてセッションを入れようと思ったのでしょうか。
長野:熊本で限定販売した自主音源にSession1,2が入っていて、その後に作った自主音源(NOWEARMAN EP)にSession3が入っているんですよ。熊本のNANO-MUGEN CIRCUITに出させてもらって、意識的にもバンドの活動的にも新しく始まったというか、再スタートした感じがあるからその新しい流れを汲みたいと思ったので、今回Session Ⅳを入れましたね。

-分りました。後藤さんは以前NOWEARMANの事をロックバンドとして、王道感があると評価してくれていましたが、どういう所が評価されたと思いますか?
長野:3ピースでタイトな演奏をするバンドは最近いないから、今の時代に新鮮味があるなって思ってくれているんだと思います。

-NOWEARMANのロックバンドとしての可能性を評価してくれているという事ですよね。
長野:今のバンドは音数が多いし、ロックバンドっていうとガレージロックやパンクが多い中で、今の時代にリアリティのあるロックを面白くしたいよねって気持ちがあるのかなって思いますね。

-自主企画のNOWEARMAN Floorというイベントをよく企画されてますよね。最近自主企画を行うバンドが少ないと思うのですが、どうしてバンド主催のライブをするのでしょうか。
長野:同じ時代に活動していて、良いと思えるバンドとは一緒に何かやりたいというのがありますね。面白くしたいというのが一番にあって、好きなバンドやDJに出演してもらって自分たちもライブをやるというのが、お客さんに対してもベストな形だと思っていて。自分たちが好きなバンドをお客さんが見て、そこで新しい繋がりができたら素晴らしいと思うし。

-企画ライブではいつも面白いバンドばかり出演していますね。どういう基準で出演者を決めているのでしょうか。
長野:単純に好きなバンドに出てもらっているだけですね。ASIAN KUNG-FU GENERATIONがやっているNANO-MUGEN FES.は自分たちが企画していることの究極バージョンというか。知名度がある人ももちろん出るし、海外のインディーバンドも出るし、自分でリサーチして呼ぶという姿勢も自分たちがやりたいって思っていることと通じる部分がありますね。

-失礼なことを言うようですが、NOWEARMANは世間のバンドに比べてデビューが遅い方だと思います。でもこうやって素晴らしいアーティストのレーベルからリリースできた事は多くのバンドにとって、大きな希望になるのではないかと思います。今、年齢や置かれている環境でバンド活動をあきらめようとしている方々にメッセージを頂けますか?
長野:若いバンド、熟練したバンドはそれぞれに良さがあると思うし、その人たちがその時にやっている音楽が良いものであれば、絶対に人の心を打つものができると思うので。今やっていることを大切に活動するのが、年齢に関係なく重要だなって思います。

-ここからは、BELONGの特集『ロックへの扉』についての質問に移りたいと思います。人生で初めて聴いたロックについて教えて下さい。また、そのアルバムについても教えて下さい。
中村:これがロックだぜって思って聴いたものはないですね。衝撃を受けたものという意味では、ラモーンズでしたね。それがギリギリ未成年の時くらいで。
長野:中学生くらいの時に見た、ボノ(U2)のMCですね。『Rattle and Hum』というDVDがあって、邦題は『魂の叫び』だし、彼のMCは怒りに満ちていたからこれこそロックじゃないかと。面白いのがU2の2000年くらいのライブで、ボノがプラダのブーツを履いているんだけど、曲の途中で靴の裏を見せるんです。そしてその靴の裏にSOULって書いてあるんですけど、それは多分SOLE(靴底)とSOUL(魂)をかけてるんだなと思ったら、すごいバカだなって(笑)。でもそのバカさが笑えるってのが重要なんですよね、ロックって。ローリング・ストーンズもライブでファンがステージに乱入した時に、キースがギターでそいつをぶん殴ったっていう(笑)。演奏している途中で走って来て上がってきた客を殴って、また演奏に戻るっていう(笑)。最近オアシスのノエルが客に突き落とされて、キースは返り討ちにしてたけど、あいつは突き落とされてやんのって言われてたっていう(笑)。そういう笑いの要素があるのが、一番かっこいいんじゃないかと思いますね。
高藤:実はメタリカみたいなメタルからロックを好きになって、早い曲に衝撃を受けたんですよ。一時期は曲が早くないとロックじゃないと思ってましたね。早い曲だけ集めたテープを作ってそれしか聴かないっていう(笑)。今は全然そんなことないですけど(笑)。ああいうバンドの馬鹿っぽい所が好きなのかもしれないですね。

-初めて聴いた洋楽についても教えて下さい。また、そのアルバムについても教えて下さい。
中村:初めて買ったCDはビートルズなんですけど、衝撃的だったのはサトル(長野)からCDを借りたポリスとU2でしたね。
長野:俺もポリスでしたね。中学校くらいからギターを弾き始めたんですけど、友達がギターを弾いているんだったら、これなら簡単だからできるよねってCDもらって、それがポリスのベストアルバムでしたね(笑)。今思うとえ・・・って感じなんですけど、当時はこんな大したこと弾いてないんだったら、俺でもできるって思いましたね、まぁできなかったんだけど(笑)。ポリスはタイトでかっこいいですね。

-これから開けてみたい【音楽の扉】はありますか?
長野:クールジャズですね、レニー・トリスターノとか。最近、佐野元春や大澤誉志幸もよく聴いていますね。
高藤:大澤誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」っていう有名な曲がありますね。歌ってもよいですけど、ここで(笑)。


長野:そういう80年代の日本の音楽が面白いですね。シティポップやビートロックとかあの辺がすごくかっこよくて。あの頃の日本のミュージシャンって全部英語で歌う感覚があんまりないというか、あくまで日本語ベースだから歌詞もすごく良いし、曲もドラムの音が凄いんですよ。これから参考にしていくかもしれないですね。なので音楽への扉としてはクールジャズと佐野元春を掘り下げていきたいですね。

『MAN NOWEAR』

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