一聴すると洋楽ではないかと思うほど、日本人離れした音楽センスを持つthe fin.彼らはどうしてこれほどまでに独自の視点でポップミュージックが作れるのだろうか。アーティストとして音楽を制作していくスタンスについて迫った。

アーティスト:Yuto Uchino(Vo) 、Ryosuke Odagaki(Gt) インタビュアー:yabori

-バンド結成のいきさつについて教えてください。
Yuto Uchino(以下Y):The fin.始める前からバンドをやってたんですけど、前のバンドのベースとドラムはタイプが違ったんですよ。エモとかハードコア系が好きで。僕とギターのRyosukeとで新しい事をやりたいってなって、今のメンバー二人に声をかけたんですよね。今のメンバーになって最初はコピーとかして遊んでたんですけど、まずはシンセサイザーを買ってデモとかやオリジナルをやってみて。その夏に旅行がてらイギリスとフランスに行きましたね。

-海外でPV撮ってましたよね。
Y:そうです、イギリス行く前からバンドの計画はあって。去年の11月に「Faded light」という曲をアップしてて、その曲はもうできてたんですよ。海外でビデオ撮ったら面白いねって言ってて。iphoneのアプリで8mmフィルム風に映像加工できるものがあるんですよ。それを使って交互にカメラ回して、旅路を撮ってたんですよ。帰って音と合わせて編集したら思ったよりも良くて。

-なるほど。ガールズや海外のインディーロックバンドってそういう風合いの動画をアップしていますよね。
Y:多分そういうのは意識的にありましたね。ふわっとしてる感じが見てていいなと思ってたんで。

-そのふわっとした感じってThe fin.の音楽からも感じるんですよね。曲名もあいまいというか、抽象的な雰囲気のものが多いなと思っていて。
Ryosuke Odagaki(以下R):最初はバンドがどう見られるか管理しようと思っていて。
Y:うん。コントロールしようと思ってたよな。
R:前のメンバーでやっている時に、ライブハウスに良く出てて。その時に周りのバンドを見てたらどっか抜けてたりしてたんですよね。こうしか見られないってものを作りたかったから、極力情報も載せなかったし。

-あえて情報を載せなかったんですね。禁断の多数決というバンドも同じこと言ってましたね。
Y:そうなんですね。俺らの好みなのかもしれないですけど、引いていくのが好きなんですよ。アレンジも足していって余計なものを削ってシンプルな方に向かおうという。HPもやれることが限られているので、必要最低限の情報しか載せてないんですよね。

-バンドの見せ方として参考にしているバンドってありますか?
Y:特に参考にしていたというのはないんですけど、海外のバンドの方がクールやなと思っていて。センスが一貫してるんですよね。アルバム一枚を例に挙げても、ほとんど同じ曲じゃないかと思う人もいると思うんですけど、それってめっちゃかっこいい事だと思っていて。日本のバンドって一枚の中でバラバラだったりするじゃないですか、それはあんまりかっこいいと思わなくて。

-なるほど。ジャケットやサウンドから海を思わせるものが多いと感じました。2011年頃の洋楽のインディーロックでもモーニング・ベンダーズやベスト・コーストなど海をテーマにした作品が多かったと思います。そういうアーティストからの影響はあるのでしょうか。
Y:海っていうのは頭の中にずっとあって、単に俺が海好きなだけなんですけど(笑)。タイトルトラックが海辺の曲なんでイメージにあったのがいいなって言ってて。
R:色彩は上と下の色が違うバイカラーみたいにしたくて。
Y:CDショップに並んでても色彩だけで目立ってくるみたいな。

-考え方も海外のバンドっぽいですね。
Y:そこはあんまり意識してないんですけどね。これ(BELONG)を読んでいると、海外のバンドの方が言ってる事、普通やなって思う事は多いですよ。

-例えばどういう事ですか?
Y:テイム・インパラがサウンドの話をしていて、サウンドを聴いた時にギターの音でもこれギターの音かシンセの音か分からんってものが好きなようで。俺らもそういう思考を持ってやっているんですよ。何の音か分からないっていうか、聴き手を混乱させたいところがあって。Washed Outって逃避する事がテーマで、それについて話してたじゃないですか。俺もそれをずっと思ってたんですけど、先に言われたなというか、似た事言ってるなと思っていて。それを踏まえた上で向こうとも違う事をしたいなって思いますね。話は変わりますけど、リアルタイムの洋楽はチル・ウェイブ以降ハマりましたね。それ以前は昔のものを聴いてました。一時はビートルズやレッド・ツェツペリンとかを聴いていて、俺が高3くらいの時にメトロノミーやフレンドリー・ファイヤーズが出て来てから、今のシーンを追いかけるようになりましたね。今の音楽って面白くないと思っていたんで、そういうバンドが出て来て新鮮に感じましたし、自分もやっていいんやって思うようになりましたね。

-ガールズとか音がスカスカやから、これくらいやったらできるなって思いますよね(笑)。
Y:音をスカスカにするっていう憧れもあって、あんまりぐちゃぐちゃさせたくないんですよね。EPを作る時も音の足し引きは意識を置いて考えていて、ここを音を入れすぎたうるさくなるなって思ったり。

-最初作ったものと出来上がったものとではだいぶ違うんじゃないですか?
Y:俺のデモの段階とでは全然違ったものができてますね。俺がソングライティングをやってデモを作ってきて、そこからバンドメンバーに聴かせて。俺とRyosukeがアレンジの中核を担ってるんですけど、ギターは好きにやっていいよっておまかせして。俺が何かを作ってそれをどうアンサーするかっていうのは、昔から楽しんでいますね。
R:こっちから来たら、どう返したらえんやろみたいな。
Y:こういう風に返ってくるかなって予想はしてるんですけど、予想以上のものが返ってきたら嬉しいですね。

-そうなんですね。お二人はとても若いのにどうしてこのような洋楽に近い音楽を作れるのかという事について興味があります。例えばジェイク・バグは今19歳ですが、Youtubeの音楽を聴きまくって音楽を作っているそうなんです。音楽の聴き方について伺いたいんですが、お二人はYoutubeをよく聴かれますか?
Y:Youtubeは新しい音楽を探す時に使いますね。好きなアーティストがいたとしてレーベルが動画も管理しているじゃないですか。だからそのレーベルの動画を順に見ていくとかはしますね。昔の音楽は80’sが一番好きかなって話をしますね。Ryosukeはめっちゃスミスが好きやし、俺も80’sのオムニバスみたいなMDをずっと聴いていて英語をマネして歌ったりしていたし。意外とそういう所にルーツがあるのかなと。ストロークスの4枚目とか露骨じゃないですか。あれって俺らからするとめっちゃいいやんってなるんですよね。

-昔の音楽を聴く時はYoutubeよりもレンタルとかでしょうか。
Y:そうですね。古いやつはレンタルで新しいやつはYoutubeですね。TSUTAYAはけっこう貢献してると思いますよ(笑)。最近のシーンに触れるのは音楽ブロガーの存在も大きいですね。友達が音楽ブログをやっているんですけど、そういう人って追いかけるのがめっちゃ早いじゃないですか。ブロガーの年間ベストなんかも一通り聴いてみたりしてますね。

-音楽ってどれを参考にしていますか?
Y:PSHANDYというブログですね。

-そのブログ知ってます!自分もたまに見ますね。
Y:世間は狭いですね!ああいうブログも面白いですよね。ピッチフォークだとデカすぎるし、個人という規模感でやってるリストも面白かったりするんで。

-話は戻りますが、歌詞は全て英語で歌っていますよね。これはどうしてでしょうか。
Y:高校の時から日本語で歌ってたんですよ。日本人やから日本語でやらないとってこだわりがあって。でも聴いてた量は洋楽の方が圧倒的に多かったので、出てくるのは洋楽のリズムなんですよ。それに日本語を入れようとするんでめっちゃ難しくて。自由度がなかったから歌うのが楽しくなかったんですよ。ギターを弾いている方が好きなくらいで。それではアカンなってずっと思ってて。Mewというバンドが好きなんですけど、彼らは母国語が英語じゃないけど、英語で歌っているし世界でツアーをやっているじゃないですか。日本語でやって日本の中だけでやるのもいいんですけど、英語を使って音楽性も広げて色んな人に拾ってもらいたいっていうか。

-なるほど。
Y:例えばなんですけど、自分が瓶の中に手紙を入れて海に投げるとしたら何書こうかなってなったら、絶対英語書くなって思ったんですよ。その時に日本語を書いて投げないやろうなって。その発想をもとに英語で歌おうと思ったんですよね。細かい事を言うとインフルエンザにかかって高熱でうなされてたんですよ。その時に英語で歌おうって思いましたね(笑)。そしたら歌うのが楽しくで仕方ないんですよ(笑)。それからボーカルって良いなって思うようになりましたね。

-そうなんですね、英詞で歌う方が自然だと。
Y:はい、サウンドクラウドに「Faded light」をマスタリングした後にすぐアップしたんですよ。そしたらめっちゃ色んな反応があって。アメリカやスペイン、メキシコではネットラジオで流してもらったり、向こうのDJの人がイベントで使ってくれたり。そういうのが凄く面白かったんですね。僕らはアメリカとイギリスの音楽をメインに聴いてきたじゃないですか。その国の人たちが俺らの音を聴いて良いって言ったくれた事に凄く感動して。行けるんやったら向こうのフェスにも出たいですね。スターファッカーという海外のバンドとも一緒にライブをやったんですけど、ああいう経験も貴重で。大学の時からずっと聴いた来たアーティストと一緒に演奏や話もして、おまけに向こうも良いって言って。そういうのが良い自信になりましたね。洋楽と邦楽って分けて考えがちじゃないですけど、俺らはそうは考えてなくて。自分がやっている居場所と向こうのシーンと繋がったというか。俺らは他のバンドとは違ったやり方でやりたいと思っていて、ビデオやSoundcloudがそうですね。今のメンバーになってほとんどライブしてなかったんですよ。ビデオと音源で勝手に広がってくれて。
R:今まで見てたバンドはライブを打ちまくって客を付けるって感じだったんですよ、前のライブよりも何人増えたみたいな。それが嫌やって。

-それってサラリーマンの営業っぽいですよね。
Y:ライブに出ても俺ら暇だったんですよ。対バン面白くないから、終わった後に公園で遊んでたりしてて(笑)。サッカーとかしてたよな(笑)。
R:前のメンバーでやってた時にブッキングのライブに出てたんですよね。

-この前HAPPYの企画はどうでした?thattaも出てましたよね。
Y:あの時は楽しかったです。thattaは本当に衝撃でしたね、日本にこんなバンドいるんやって。僕らthattaのファンなんですよ。

-thatttaも良いバンドですよね。
Y:俺らの音楽ってよく洋楽みたいやねって言われますけど、普通にやったらこうなったというだけで。向こうのバンドを聴いてても最近よく分かるんですよ。ああこのバンド、こういう事やりたかったんだなって。今までは憧れで聴いてきたんですけど、作ることが日常になったんですよね。日本のバンドって憧れで音楽を作っている部分があるように思っていて、アジカンが好きやからこういう音を作ろうという感じで。答えがあってそれに近づくように頑張っているというイメージですね。でも自分たちはそうじゃなくて答えはないと思っているし、何がかっこいいかも分からんし。

-思想が違うんですね。
Y:そもそもの考え方が違いますね。俺らも最初は理想があってそれに近づこうと思ってたんですよ。でも今はそうではなくて一番曲が良くなるのはどれやろうとか、一番自分のフィーリングを出すサウンドはどれやろうとか。めっちゃリアルなんですよ。
R:こういう音が良いなっていうんじゃなくて、こういう音の出し方があるんやっていう発想ですね。
Y:俺らは海外アーティストにも会ったりしてるんで、向こうのバンドが新譜で良いものを出したら悔しいし。

-そうなんですね。海の向こうという概念もなく単純にライバルという感じですね。
Y:そうですね、向こうに勝ちたいとも思うし。英語をやるようになってグローバル感が崩れたというか。イギリスやフランスに行った経験も大きかったですね。俺とRyosukeがクラブで踊ってたら、その辺の女の子がダンスバトルを挑んできて踊ってるみたいな(笑)。俺も女の子からチューされたりとか、その辺で考え方が凄く変わりましたね。そこで変な気おくれがなくなりましたし。
R:それが音楽にも還元できましたね。普通にやったらえんちゃうんみたいな。

-海外に行った事とネットで世界との距離が近くなったという事ですね。
Y:それが端から見たら現代的だと思うんですよね。最近めっちゃ思うのは何かを作る時にその人の考え方ってめっちゃ大事やと思うんですよ。そこがライブハウスでやっているバンドとは違うのかなと思っていて。頭の中にあるサウンドをどう出すか、それをどう言葉にしていくかについか取り組もうとしていますね。一枚の絵を書くというイメージで、シンセは背景でギターはここに配置してとか立体感を大事にしています。それが面白い形でハマったら面白くて。サウンド・ボーカル・歌詞ってお互いに強化しあうというか、イメージを共有して全てが貢献しているというような。

-その3つのどれかが欠けてもいけなくて、お互いに補完しあっているという事ですね。
Y:そうです。例えば歌詞があってそれにバックグラウンドミュージックではないんですよ。全部繋がっているのが俺の理想ですね。頭の中にあるサウンドをどう出していくか、その為にはどういう機材がいるのかという考え方ですね。そういう風に考えていくとまぁお金が足りないっていう(笑)。レコーディングもどういう奥行かとか、どういう音場で鳴っているかとかを常に頭に入れていないと全く意味のない音源になるというか。ただの入れ物になってしまうのが一番怖いので。

-どう聴かれるかですよね。これからどうしていきたいっていうのはありますか?
Y:EP出したから次は1stアルバムですね。イギリスとかアメリカでもリリースしたいんですよ。目標としては国内でも海外でも活躍できるバンドになりたいですね。向こうのバンドって母国でも活躍してますけど、ワールドツアーもやってるじゃないですか。必要とされればどこでも行くっていう、それって普通の事じゃないですか。俺が日本のバンドを見てると変やなと思うのは、日本の中で固まっているじゃないですか。そうじゃなくて俺らはもっと色んな所に行きたいし、色んなものを見て還元できるバンドになりたいですね。俺らが海外に出ていくことによって、洋楽・邦楽という偏見もなくせたら良いと思いますね。同年代のHAPPYやfoglandsと一緒にシーンを活性化していけたら面白いと思いますし。

『Glowing Red On The Shore EP』

【BELONG Magazine Vol.6にThe fin.のインタビューを掲載】
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