最終更新: 2019年7月19日
「ROPE」ってとても柔軟な曲で、間奏が1コードなんですよ。1コードゆえに曲の長さもどこまでも調整できるし、発想さえあればどんなアレンジも形にしやすい曲の構造なんです。ライブでキーになってる曲で、メロディーがどうこうっていうよりも、曲の構造がアレンジしやすいっていう。
インタビュー:出戸学(Vo.,Gt.) インタビュアー:yabori 撮影:nami maruyama
-アルバムタイトルは『workshop』ですが、このタイトルにはどういった意味があるのでしょうか。
出戸:最初は今まで録音したものを出そうってことで、“works”という作品や仕事っていう意味合いのタイトルにしようと思っていて。でもこのタイトルだと堅苦しいから、もう少しラフな方が良いんじゃないかって話をしていた時に『workshop』っていう言葉がでてきました。
-もう少しラフな方が良いというのは?
“works”というと代表的な作品集ってニュアンスがあって、ベスト盤という風に受け止められるかなと思ったんです。「仕事場」とか「研究集会」的な意味合いの“workshop”だとズレてるような当たってるような、微妙な感じがして。今回はコンセプチュアルに作り込んだ作品というより、ライブの熱を重視しようと思いました。当たり前だけど、ライブの雰囲気って来ないと分からないじゃないですか。なので、一種の体験版みたいなニュアンスもある。オリジナルアルバムだけ聴いていたら、僕らのライブの状況って想像できないと思うし。
-そうですね。ちなみにworkshopというドイツのバンドがいるようですね。『STUDIO VOICE』でも坂本慎太郎さんが紹介していましたが、このバンドってご存知でしたか?
はい、もちろんドイツのworkshopというバンドも知ってたんですけど、タイトルとは関係はないですね。前から好きなんですが、この作品を編集してる時にはすっかり忘れてました。Workshopってバンドは90年代から活動していて、CANにも似た質感の音を出してるんですよね。それでフロントマン(Kai Althoff)が現代美術のアーティストでもあるんですよ。僕はまず美術の方で名前を見てて、後になってバンドの人と同一人物なんだって事にびっくりして。当時はドイツで若手作家として注目されているくらい、美術でも有名な人なんです。
-そうなんですね。ドイツと言えば、前回の『ペーパークラフト』ツアーのBGMでKraftwerkが流れてましたね。アレンジされた曲でもテクノ調アレンジもありましたが、影響を受けた部分もありますか?
その時はPAの佐々木(佐々木幸生)さんが選曲したんだと思います。Kraftwerkはまあ、周りの人はみんな知ってますけど、サウンド的にそうなるのはあくまでも機材だと思うんですよね。ライブのアレンジを考える時に、中村(中村宗一郎)さんや佐々木さんにこういう感じでやりたいって言ったら、これが良いんじゃないかって持ってきてくれたのが’70年代の機材ということもあるし、自分たちもその頃の機材が好きなので、曲によっては音の質感が昔のKraftwerkみたいになったことがあるかもしれません。
-似せようとは思ってないけど、機材の音質面でどうしてもサウンドが似てくるってことですか?
そうですね。’70年代の機材をいくつか使い続けてたら、Kraftwerkの頃のバンドって、こんな大変な機材でずっとやってたんだっていう発見もありましたね(笑)。
-今作では「ROPE」は2バージョン収録されていましたけど、どうしてこういうアレンジにしようと思ったんですか?
「ROPE」ってとても柔軟な曲で、間奏が1コードなんですよ。1コードゆえに曲の長さもどこまでも調整できるし、発想さえあればどんなアレンジも形にしやすい曲の構造なんです。ライブでキーになってる曲で、メロディーがどうこうっていうよりも、曲の構造がアレンジしやすいっていう。
-「ROPE meditation ver.」は打ち込みも入ってますが、これはどういう発想でこうなったんですか?
打ち込みではなくてリズムボックスの一種ですね。『ペーパークラフト』のツアーからやってみて、やり始めたら面白かったし、ライブの導入として自分たちの気分もノリやすくて、色々試しました。1曲目に演奏すると、その後の展開が膨らましやすかった。
-前回のインタビューでライブはストーリー仕立てに考えてるとおっしゃってましたね。
ライブは毎回どこで山を作るかっていうのは意識してて、曲順はみんなで練習の時に考えていますね。最近のライブだと「ROPE long ver.」が一番の盛り上がりを作れる曲なので、逆にそれが強烈過ぎて、あの曲を演奏した後、どうしようかって考えないといけないジレンマがある。この3~4年で「ROPE long ver.」を演奏しなかったライブは3,4回くらいしかないですね。まあ、やってて面白いってのもありますし。この曲が今のバンドの持ち味になっている部分もありますけど、それを超えていかないとっていう意味では、新しいことをやろうとは常に思っていますね。
-今回のアルバムでは「ROPE long ver.」の後は「他人の夢(coda)」がきますよね。この(coda)っていうのはどういう意味ですか?
(coda)は「終結部」って意味で。僕の中のイメージでは、ライブが終わった後のお客さんが帰っていくBGMという感じでした。それが『ペーパークラフト』の1曲目と同タイトルっていうのが面白いかなって。熱狂が終わって素に戻るってイメージ。アレンジが何も入ってないスカスカな感じが、BGMっぽくもあります。「ROPE long ver.」で投げっぱなしで終わりたくなかったんですよ。
-そうなんですね。このアルバムの選曲も面白いと思ってて、いわゆる三部作(『homely』、『100年後』、『ペーパークラフト』)以外の曲では「フラッグ」だけ入ってますが、どうしてこの曲だけ入れようと思ったのでしょうか。
単純にアレンジが気に入っているからです。後半部分は原曲と同じなんですけど、前半部分と中盤部分のつなぎが、3パターンくらい入ってて。この流れはライブ盤でしか収録できないし、録音物として残しておきたかったというのがありますね。ライブでよくやってるアレンジは、『confidential』に入っている曲もあるんで、内容が被らないようにしました。『confidential』には「フラッグ」も入っているんですけど、全然違うバージョンなので、今回ライブバージョンとして収録しようと思って。3部作だけでまとめても良かったんですけど、今回は曲のコンセプト的なまとまりよりも、ライブの持つ力を大事にしたかったので、気にせず入れましたね。
-なるほど。アレンジしにくい曲というのもあったりしますか?
アレンジしにくいというか原曲のままの方が良いと思った曲は、あまりアレンジせずに演奏していますね。おいしい部分がギターの絡みだったり、コードやメロディーではなかったりすると、変にいじると曲の良さが崩れるので、手を加えない方が良かったりします。曲のキーになるものが無くなっちゃうと、結局何だったのか分からなくなっちゃうので。
-そうなんですね。だとすると「ROPE」ってものすごく自由度のある曲なんですね。
「ROPE」が出来た時にギターの絡みとは違った形で曲の魅せ方ができるようになったので、そこから広がりが出ました。
-そもそも「ROPE」はどういういきさつでできた曲なんですか?
元々はギターの馬渕が曲の原型を持ってきたんですよ。『homely』に入っているのは元々のバージョンをテンポダウンさせたもので、「ROPE long ver.」の方が馬渕が持ってきたデモバージョンに近くて。原曲の尺は3~4分でアップテンポのものだったんです。それを10~15分でやってみようというのが、ライブアレンジしている「ROPE long ver.」です。『homely』のツアーの時は、ライブ一本を全て『homely』の曲だけでつくって、他のアルバムの曲を一切やらなかったんですよ。なので最後の部分をどうしようって事になって、「ROPE long ver.」を演奏しようかって事でやり始めました。
-『homely』はアルバムとしてもコンセプトの強いものでしたが、ライブでも世界観を徹底的に追及していったんですね。
そうですね、しかも曲順通りに演奏してたんですよ。
-「hypnotic」という曲は『ペーパークラフト』のカセットに収録された曲ですよね。どうしてこの曲も収録しようと思ったのでしょうか。
このアルバムでは「見えないルール」から「hypnotic」をはさんで、「ムダがないって素晴らしい」につながっていく流れを『ペーパークラフト』のツアーでやって。その繋がりが気に入ったので、そのまま入れましたね。
-今回のジャケットも出戸さんが描かれたものなんですか?
今回も描きました。自分たちのライブのプレイバックを聴いてみたら、古い時代の人がイメージした宇宙というのが思い浮かんで。昔の人が宇宙旅行を想像した時に、バックで流れてそうなBGMだなと思って。’60,’70年代くらいに宇宙のイメージって、ああいう縦型のロケットがモチーフじゃないですか。
-前回も言っていたレトロフューチャー感という感じですよね。
そうですね、そういうイメージで描きましたね。
【Live】
活動10周年記念公演『OGRE YOU ASSHOLE LIVE 10th anniversary』
2015.7.2 (thu)@名古屋 club rock’n’roll
2015.7.5 (sun)@心斎橋 Music club JANUS
2015.7.11 (sat)@長野 ネオンホール
2015.7.12 (sun)@赤坂BLITZ
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