最終更新: 2015年7月10日
BELONGをご覧の皆さんこんにちは。国内の気になるインディバンドをご紹介する本コーナー、今回ご紹介するのは「ちょっと後ろの方」と呼ぶにはかなりフロントライン寄りではありますが、名門インディレーベルであるUK.PROJECTのオーディション、”Evolution!Generation!Situation!”の最優秀アーティストに選出されたことも記憶に新しい、千葉県発の新進4人組ロックンロールバンド、”Helsinki Lambda Club”です。
“2013年夏、西千葉のガザルにてバンド結成”という彼らのプロフィール冒頭を読むだけで、西荻窪のハンサム食堂でバンドを結成し、昨年の秋の武道館で最後のコンサートを行った3ピースバンドを想起したのは、恐らくわたしだけではないでしょう。
彼らの代表曲、「ユアンと踊れ」の最初4行を引用しても、”ぼろフラットからスーパーまで 道行く奴らBMWとシトロエン/ゲロにまみれたCCTV 映し出す食物連鎖のムービー/ケルアックゆずりのジャック・パーセルと光化学スモッグとエロい妄想/そんな顔してやることやってんの?って 誰にも内緒でさ”とある通り、衒学趣味のやや手前で踏みとどまりつつ、趣味の良さを匂わせる固有名詞をインスタグラム的に羅列することで、益々音感にポップ付与させる手腕や、「NIGHT MARKET」に見られる東南アジア圏への憧憬を感じさせるエキゾチカ、「シンセミア」というタイトルから匂い立つマリファナの雰囲気など、いずれも日本のインディロックを子供の玩具ではない文学的な領域へ押し上げつつ、同時にひそまれる眉から逃げるように隠れる子供たちの秘密基地でもある、ポップゆえの危うさが彼らの魅力です。
同時に台頭しつつあるNever Young Beachとの同時代性を思わせる、西海岸的な陽性の単音リフと、はっぴいえんど的に練り込まれた日本語詞という組み合わせは、非常に”革命”的ではあるものの、所謂レヴォレイターという雰囲気は彼らになく、他の火に乗じてコッソリ忍び込む隠者に近いものを感じます。そうして彼らは血なまぐさい喧噪を避け、飄々と無血開城に向かえる新しい風だと思っています。とは言え、その眼の奥底の光は恐らく相当に鋭いです。彼らの音楽に寝首を掻かれることはまずないでしょうが、皆さんの琴線の近くに、気付く間もなく入り込んでいくと警告します。
【Writer】
加藤マニ(manifilms)
1985年東京生まれ。インディーズ、メジャーを問わずミュージックビデオ等の映像制作、広告デザインやウェブデザインによって口を糊する他、ロックバンドPILLS EMPIREおよびLowtideのキーボード兼にぎやかし担当、及びDJやVJ、レビューやエッセイ執筆等のオファーは来るもの拒まず、インディ精神を忘れない、立派な大人を目指して自活中。
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