最終更新: 2024年4月14日
オルタナティブ・ロックから派生して誕生した音楽ジャンル、ドリームポップ。
“浮遊感”や“恍惚感”のあるサウンドを特徴とし、80年代から2000年代にかけてCocteau TwinsやBeach Houseといったバンドにより拡張され続けてきた。
そこでこの記事では、ドリームポップの未来を担う新世代の女性アーティストを10組紹介していく。
ノスタルジックで幻想的な世界をサウンドで描くドリームポップの今とは。
テキスト:Rio Miyamoto、yabori
目次
ドリームポップとは
ドリームポップとは80年代に誕生した音楽ジャンルである。
リバーブやディレイなどを空間系フェクターを用いて表現される、幻想的で浮遊感のあるサウンドが特徴。
ドリームポップはオルタナティブ・ロックのサブジャンルとして派生し、恍惚的なサウンドを特徴とするシューゲイザーやサイケデリックといったジャンルと類似している。
歴史を辿ると、80年代から90年代にかけてCocteau Twinsなどが所属するレーベル4ADによってドリームポップは日の目を見ることとなる。
そして2000年代にはBeach HouseやThe Radio Dept.といったバンドにより、ドリームポップの歴史は継承され続けてきた。
変容するドリームポップ
2010年代後半になるとドリームポップは以前のものとは表現していることが変わってきている。
これまでのドリーム・ポップは耽美的な世界観を音で作り出していたが、ここ最近では夢を見ているかのような懐かしい感覚を音で生み出している節がある。
特にJay Somの「Tenderness」は子守唄のようにささやくようなボーカルで、過ぎ去った幼少期を聴き手と共有しようとしているように思える。
中には家族の写真や自分の幼少期の写真をジャケットに持ってくるアーティストにすらいるほどで、こういったことをするドリーム・ポップバンドは過去いなかったのではないか。
この懐かしさを創出する表現が以前のものと大きく異なるのだ。
今回はそのような聴き手に懐かしさを与えてくれる新世代のドリーム・ポップアーティストを紹介していきたい。(yabori)
ドリームポップおすすめ曲プレイリスト
ドリームポップの新世代アーティスト10組の紹介と併せて、おすすめ曲のプレイリストを作ったので、彼らの紹介と一緒に音楽も楽しんで欲しい。
Jay Som
先の文章でも紹介したドリームポップ新世代を印象付けたJay Som(ジェイ・ソム)。
フジロックで既に来日しているが、待望の単独公演は2020年2月に東京・大阪で控えている。
子守唄のようなボーカルは2010年代のドリームポップに顕著に見られる子供時代を思わせるような懐かしさがあり、いつまでに聴いていたい音楽である。(yabori)
Men I Trust
Youtubeで「Show Me How」が約400万回再生されたカナダのドリームポップ・トリオ、Men I Trust(メン・アイ・トラスト)。
2019年10月の来日を予定していたが、メンバーのパスポートが盗難に遭うという不運に見舞われたものの、振替公演は2020年2月東京・大阪で行われた。
そんなMen I Trustは2021年8月に4枚目のアルバム『Untourable Album』をリリースした。
Men I Trustの音楽は感傷的なようにも聴こえるが、実はカラっとしているサウンドにエマの少女のようなボーカルが奥行きを与えている。(yabori)
Crumb
「Locket」がなんとYoutubeで1300万回再生された、NY・ブルックリンの新人バンドCrumb(クラム)。
2019年6月にデビューアルバム『Jinx』、2021年4月にセカンドアルバム『Ice Melt』をリリースしている。
Crumbの音楽の特徴として、左右に音を移動させることで吸い込まれるようなサウンドが印象的で、リラのボーカルとサイケデリックなキーボードが白昼夢へと誘ってくれる。(yabori)
Long Beard
ニュージャージーのシンガーソングライター、Leslie Bear (レスリー・ベア)率いるドリーム・ポップ・バンド、Long Beard(ロング・ビアード)。
2019年9月18日にセカンドアルバム『Means To Me』をリリースした。
Long Beardの音楽の特徴はレスリーの透き通ったボーカルと、それを引き立てる飾り気のないサウンドにある。(yabori)
Poolblood
今回紹介するなかで一番の新人がこのPoolblood(プール・ブラッド)。PoolbloodはMaryam率いるカナダ・トロントのドリーム・ポップバンド。
2019年11月8日にAccidental Popstar Recordsからデビュー作『Yummy』はリリースしている。
Poolbloodは手作り感のあるシューゲイザーサウンドと、Maryamのクリアで伸びやかなボーカルが特徴的である。(yabori)
Yumi Zouma
ニュージーランド出身の4人組バンドYumi Zouma(ユミ・ゾウマ)。
2020年のフジロックへの出演も決定していたが、新型コロナウイルスの関係で残念ながら中止となってしまった。
2021年9月7日に最新シングル「Give It Hell」をリリースしている。
透明感と浮遊感溢れるサウンドスケープで表現されるYumi Zouma独自のドリームポップを体感して欲しい。
Japanese Breakfast
Japanese Breakfast(ジャパニーズ・ブレックファスト)はアメリカ人アーティストのミシェル・ザウナーによるソロ・プロジェクト。
2021年6月にサードアルバム『Jubilee』を発売し、ビデオゲーム『Sable』のサウンドトラックとして書き上げた最新シングル「Glider」もリリースしている。
多様性ある楽器隊によって生み出される煌びやかで唯一無二のドリームポップが特徴だ。
Clairo
YouTubeで「Pretty Girl」が7600万回再生された、Clairo(クレイロ)ことクレア・コットリルはアメリカ人シンガーソングライター。
2021年7月にセカンドアルバム『Sling』をリリースしている。
Clairoの囁くような歌声から見え隠れする陰影は、心地よくドリーミーな世界観を演出している。
Alice Phoebe Lou
Alice Phoebe Lou(アリス・フィービー・ルー)は南アフリカ出身のシンガーソングライター。
2021年3月にサードアルバム『Glow』をリリースしている。
レトロかつシネマティックなサウンドと、感情を大胆に表現したAlice Phoebe Louの歌声が秀逸。
Melody’s Echo Chamber
Melody’s Echo Chamber(メロディーズ・エコー・チャンバー)はフランス人ミュージシャンのメロディー・プロシェットによるソロ・プロジェクト。
Tame Impalaのケヴィン・パーカーをプロデューサーに迎えたデビューアルバム『Melody’s Echo Chamber』(2013)、Dungenのメンバーとコラボしたセカンドアルバム『Bon Voyage』(2018)の2作をリリースしている。
曲中で次々と変容する夢心地な音像と情景、そして60年代を影響が垣間見えるソングアレンジが特徴。
ドリームポップ新時代へ
ドリームポップ新時代を体現する女性アーティスト10組(Jay Som、Men I Trust、Crumb、Long Beard、Poolblood、Yumi Zouma、Japanese Breakfast、Clairo、Alice Phoebe Lou、Melody’s Echo Chamber)を紹介してきたが、いかがだっただろうか。
オルタナティブ・ロックの面影を色濃く残していた80年代のドリームポップの形容から、幻想的で甘美な世界観を追求する現代のドリームポップへと、少しずつ姿を変えながら脈々と受け継がれてきた。
とりわけ現代の女性アーティストの奏でるドリームポップは懐古的な一面を持ち、曲やサウンドを通して美しくも儚い情景を脳裏に映し出してくれる。
この約40年間でこれだけドリームポップは発展してきたのだ。
これから先、さらに深い夢の世界へと誘ってくれるであろうドリームポップの未来に期待したい。
ドリームポップ関連記事
ドリームポップの関連記事について、BELONGではこれまでにJay Som、Men I Trust、Crumb、Long Beard、Yumi Zouma、Japanese Breakfast、Clairo、Alice Phoebe Louの記事を取り上げている。
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
BELONG Mediaのライター/翻訳。
高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。
13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。
関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。
2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。
2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。
普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。
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