サイケデリックはザ・ビートルズやJimi Hendrix、そしてGrateful Deadを始めとする60~70年代の音楽とカルチャーの黄金期を代表するジャンルである。

現代ではTame ImpalaやMGMT、The Flaming Lipsが著名なサイケデリック・バンドとして認知されているが、

今回はよく耳にする”サイケデリックとは何か?”について掘り下げる。

ドラッグやヒッピー・カルチャーだけでなく、現代のサイケデリック音楽に対する新たな見方を知るきっかけになれば嬉しい限りだ。

また、6月1日にサイケデリックの代表的なバンド3組と、新たに現代のサイケデリックバンドを5組を追加した。

以前にサイケデリック・ミュージックの新世代バンドの記事を読んだ方も是非、チェックして新しいバンドと出会って欲しい。

サイケデリックとは

King Gizzard & Lizard Wizard
King Gizzard & Lizard Wizard

そもそもサイケデリックとは一体何なのだろうか。

サイケデリックはLSDなど幻覚剤によって心理的、そして視覚的にもたらされる感覚の象徴である。

60年代頃からアメリカ西海岸でヒッピーのカルチャーが浸透し始め、愛と平和を尊重する動き、”フラワー・ムーヴメント”がアメリカ全土、そしてイギリスなど世界へ広がっていった。

その頃からウッドストックなどの野外フェスでヒッピーの若者たち(通称フラワー・チルドレン)がLSDや大麻を嗜みながら音楽を楽しんだり、ベルボトム(フレアパンツ)やペイズリー柄やタイダイ染の服で身を包むなど、音楽だけでなくファッションにも大きな影響を与えてきた。

サイケデリック・ミュージックと一口に言っても、サイケデリック・ロック/ポップ、プログレシブ・ロック、アシッド・フォーク、トランス、ネオ・サイケデリックなど、これ以外にもジャンルは多岐にわたる。

既存するほぼ全てのジャンルにサイケデリックな要素が加味されて派生しているイメージを持ってもらえると分かりやすいと思う。

サイケデリックの特徴

実験精神

サイケデリックは保守的な枠組みから抜け出し、新しいものに挑戦する特徴がある。

分かりやすくザ・ビートルズを例にすると、動物の鳴き声やドラムのシンバルの逆再生音など、今まで誰も使用したことのないサウンドを楽曲に盛り込むことで彼らはサイケデリックの世界感を追求してきた。

他には音楽理論をわざと崩して新鮮な音の響きや曲展開を演出する方法や、シタールなどのエキゾチックな民族楽器の使用、オルガンやメロトロンなどのアナログ楽器もサウンドとしての特徴である。

聴覚や視覚

サイケデリックはサウンド、そしてビジュアルから超現実的な体験を味わうことができるアート性がある。

最近ではシンセが使用されているとサイケデリックと言われる傾向にあるが、シンセはサウンドの空間演出においてとても優れており、簡単にアンビエントから宇宙まで幅広く表現できる。

音を立体的に表現したり、左右に流れるようなサウンドもサイケデリック・ミュージックの要素の一つだろう。

デジタルだと音圧があって鼓膜に響くサウンドも作れ、アナログだと空気を含んだ温かみのある優しいサウンドを作ることができる。

その両方の利点を組み合わせて現代のネオ・サイケデリックはより幅を広げながら進化し続けている。

サイケデリックの代表的なバンド

サイケデリックと言えばまず聴いて欲しいバンドを3組選出した。

前提として、サイケデリックは多種多様なので、今回選出したバンドだけでは到底語りきれない。

紹介するバンドはそれぞれサイケデリックという点では共通しているが、異なるジャンルが交わっているのでその多様性を実感していただければと思う。(2020年6月1日追記)

The Beatles

The Beatles
世界で最も名の通ったバンドと言っても過言ではない、イギリスはリヴァプール発の4人組バンド、The Beatles(ザ・ビートルズ)。

The Beatlesと言えば初期の頃のロックンロールやポップスのイメージが強いかと思う。

7作目『Revolver』の発売からサイケデリックへ大きく舵を切ると同時に、ライブをしないレコーディング・バンドへと変化した。

ジョージがインドで学んだシタール、そしてドラッグの影響を受け生み出された名曲たちはポップスだけでなく、

サイケデリック音楽としても今なお指標となっている。

Pink Floyd

Pink Floyd
サイケデリックの中でも長尺で知られるプログレッシヴ・ロックを代表するイングランド出身のPink Floyd(ピンク・フロイド)。

初期はシド・バレットによるアシッド・フォークが秀逸だったが、過度のLSD摂取によりバンドを脱退。

その後加入したデヴィッド・ギルモアによって、精巧に構築されたプログレッシヴ・ロックへ移行した。

コンセプト・アルバム(アルバム全体を一つの作品として考える)の定義もここから始まり、

彼らの哲学的な歌詞や効果音などの実験精神は今でさえ新しいと感じさせる。

Grateful Dead

Grateful Dead
アメリカはカリフォルニア発のGrateful Dead(グレイトフル・デッド)。

”デッドヘッズ”と呼ばれるファンはヒッピー文化と根強く関わりがあり、音楽だけでなくロゴの施されたファッションは、今だにサイケデリックを象徴する一つの文化となっている。

カントリーやブルース、そしてレゲエやロックなど、一つのジャンルに固定されない自由性の高さが特徴で、

ネオ・サイケデリックのようなサウンドに重きを置いた音楽とは一線を画す。

サイケデリックの新人バンド10組

現代のサイケデリック、通称ネオ・サイケデリックバンドを10組紹介したい。

Temples

Temples 2019
イギリスのTemples(テンプルズ)は60年代のサイケ・ロック/ポップのエッセンスが魅力のバンド。

The ZombiesやThe Beach Boysのようなキャッチーなメロディーも受け継ぎながらも、音楽理論をとても巧みに崩してくる。

予定調和を崩すことにより、リスナーに常に心地よい違和感と新鮮さを提供するのが彼らのサイケデリックなポイントの一つだ。

King Gizzard & Lizard Wizard

King Gizzard & The Lizard Wizard
オーストラリアの7人組サイケデリック・バンド、King Gizzard & Lizard Wizard(キングギザード・アンド・ザ・リザード・ウィザード)の特徴としては実験性の高さだろう。

まずはピアノをイメージしてほしい。
白鍵と黒鍵があるが、実はその間にも追究すればより細かい音程がある。

ギターとベースに新たにフレットを打ち込むことによってその”間の音”を使用し、今まで聴いたことのない音程の楽曲を生み出している。

他にもフルートや、見たこともないような民族笛をバンド・サウンドに馴染ませている。

Blossoms

Blossoms
イギリスのBlossoms(ブロッサムズ)は特に馴染みやすいサイケデリック・ポップバンドではないだろうか。

キャッチーなポップ・ミュージックをシンセサイザーで色付けしているためサイケデリック・ポップと称されることが多い。

サイケデリックと聞くとどこか危険なドラッグの香りがするのだが、そのイメージからかけ離れたとてもクリーンなサイケデリックなので、老若男女問わず耳に馴染むはずだ。

Babe Rainbow

Babe Rainbow
オーストラリアのBabe Rainbow(ベイブ・レインボー)はサーフ感を基調としたサイケデリック・バンドで、フォークやディスコの要素も含む”現代のヒッピー・バンド”だ。

ファッションや生き方も自由で愛にあふれており、彼らを取り巻く全ての色彩はまるでヒッピーそのもの。

オーストラリアの大自然でサーフィンを楽しみ、ロン毛にビビッドな色調の服装で身を包み、その自由なライフスタイルが楽曲にピュアに昇華されている。

Drugdealer

Drugdealer
Drugdealer(ドラッグディーラー)は名前がいかにもサイケデリックだが、ビートルズやThe Beach Boysのようなハーモニーが美しいクラシックなサイケデリック・ポップバンドだ。

アナログでナチュラルなサウンド・メイキングにより聴いていても耳が疲れにくく、本当に現代の楽曲か区別がつかないほど60年代の音楽カルチャーを現代に再現している。

GLIM SPANKY

グリムスパンキー(GLIM SPANKY)
今や日本を代表するサイケデリック・バンドの一つである男女ロック・ユニット、GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)。

海外のロックやブルース、そして60年代のサイケデリックを踏襲しながらも、日本人としてのアイデンティティーをフィルターにして独自の音楽を奏でる。

シタールやフルートなどの古典的なサイケデリック・サウンドを現代の音楽に違和感なく溶け合わせることにより、

ただの焼き直しでなくサイケデリックの新しい形を提示している。

Tame Impala

Tame Impala
オーストラリアはパース出身のTame Impala(テーム・インパラ)。

2000年代を代表するサイケデリック・バンドと言えばTame Impalaの名前が一番に思い浮かぶ。

常識を覆す独自のレコーディングから生み出されるサウンドは鼓膜に響き中毒性さえある。

これまでにビートルズが築き上げてきた常識を現代の我々が今なお学ぶように、

未来のミュージシャンたちがTame Impalaが現在積み重ねている常識を受け継ぎ語り継ぐだろう。

最高峰のサイケデリック・バンド。

POND

POND

元Tame Impalaのギタリスト/ベーシストとして活動していたNick Allbrook(ニック・アルブルック)によるプロジェクト、POND(ポンド)。

Tame Impalaと共に活動してきただけに、基礎となるサイケデリックのエッセンスはお墨付き。

宇宙規模のスペーシーな音像はネオ・サイケデリックを見事に象徴しており、ニック・アルブルック自身から滲み出るグラム・ロック感がダークなエッセンスとなり、

Tame Impalaとは全く別のサイケデリック音楽を生み出している。

The Growlers

The Growlers
アメリカはカリフォルニアの5人組バンド、The Growlers(ザ・グラウラーズ)。

The Growlersはサイケデリックの中でもガレージ・サイケデリックをメインに、60年代のサーフ・ロックやカントリー、そしてレゲエの要素までをも包括した楽曲が魅力のバンドだ。

カラフルな音色とドライな音質、そしてナチュラルなグルーヴ感が西海岸のバンドならでは。

土地によってもサイケデリックの彩りが変化することを感じられるだろう。

MGMT

MGMT 2020
ニューヨークのブルックリンを拠点に活動中のデュオ、MGMT(エムジーエムティー)。

シンセサイザーなどのエレクトロをベースに展開されるサイケデリック・ポップはシンセ・ポップとも称されることも多く、MGMTはその代表格と言っても過言ではない。

全世代を虜にするポップなダンス・サイケソングから、陰鬱とポップが交差するような幅広い感情の振り幅のある楽曲もあり、MGMTの多彩な表現力にはリミットがない。

サイケデリックのこだわり

サイケデリック(psychedelic) (1) (1)
ここまでサイケデリックについて述べてきたが、ドラッグ・カルチャーやヒッピーとの関連は歴史的にこのジャンルとは切り離せない。

しかしそのイメージだけでなく、現代のサイケデリック・アーティストたちは音楽(どのジャンルのアートにおいても)を真摯に追求した先にサイケデリックというジャンルにたどり着いていることが多いということを知っていただきたい。

決して下品なジャンルではなく、一般的なポップやロックにこだわり抜かれたサウンドや細やかな”アーティストの挑戦”がスパイスとして加わったものだと認識すれば、サイケデリックに対する見解や音楽の聴き方が変わると思う。

リリース

Temples

発売日: 2019/9/27
レーベル: ATO Records
ジャンル: サイケデリック・ロック
収録曲:
01. Hot Motion
02. You’re Either On Something
03. Holy Horses
04. The Howl
05. Context
06. The Beam
07. Not Quite The Same
08. Atomise
09. It’s All Coming Out
10. Step Down
11. Monuments

King Gizzard & Lizard Wizard

発売日: 2019/8/16
レーベル: FLIGHTLESS
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. PLANET B
02. MARS FOR THE RICH
03. ORGAN FARMER
04. SUPERBUG
05. VENUSIAN 1
06. PERIHELION
07. VENUSIAN 2
08. SELF-IMMOLATE
09. HELL

Blossoms

発売日: 2020/1/31
レーベル: Virgin EMI
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. If You Think This Is Real Life
02. Your Girlfriend
03. The Keeper
04. My Swimming Brain
05. Sunday Was A Friend Of Mine
06. Oh No (I Think I’m In Love)
07. Romance, Eh?
08. My Vacant Days
09. Falling For Someone
10. Like Gravity

Babe Rainbow

発売日: 2019/9/20
レーベル: 30th Century Records
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. Butter
02. Morning Song
03. Something New
04. Us and the Rainbow
05. The Faraway Nearer
06. Funky I Like it
07. Electrocuted
08. The Wedge
09. Beasty
10. Many Moons of Love
11. For Your Eyes Only

Drugdealer

発売日: 2019/11/8
レーベル: Mexican Summer, LLC
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. You’ve Got to be Kidding
02. Honey
03. Lonely
04. Lost In My Dream
05. Fools
06. If You Don’t Know Now, You Never Will
07. Wild Motion
08. London Nightmare
09. Ending on a Hi Note

GLIM SPANKY

発売日: 2018/11/20
レーベル: UNIVERSAL MUSIC LLC
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. 4 Dimensional Desert
02. Love Is There
03. TV Show
04. ハートが冷める前に (アサヒ飲料「WILKINSON」コラボレーション曲)
05. The Flowers (三越伊勢丹グループ『2018花々祭 WILD FLOWERS~花を愛する人々~キャンペーンオリジナルソング』)
06. In the air (モバイルのために生まれたオーディオブランド『GLIDiC』タイアップ曲)
07. 愚か者たち (映画『不能犯』主題歌 / AbemaTV『格闘代理戦争2ndシーズン』主題歌)
08. Hello Sunshine (メ~テレ『デルサタ』『デルサタ11』番組テーマ曲)
09. All Of Us (テレビ朝日系列ドラマ『警視庁・捜査一課長 season3』主題歌)
10. To The Music (NHKワールドJAPAN・BSプレミアム『J-MELO』エンディングテーマ)
11. Looking For The Magic

Tame Impala

発売日: 2020/2/14
レーベル: Universal Music Australia Pty. Ltd.
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. One More Year
02. Instant Destiny
03. Borderline
04. Posthumous Forgiveness
05. Breathe Deeper
06. Tomorrow’s Dust
07. On Track
08. Lost In Yesterday
09. Is It True
10. It Might Be Time
11. Glimmer
12. One More Hour

POND

発売日: 2017/5/3
レーベル: Marathon Artists
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. 30000 Megatons
02. Sweep Me Off My Feet
03. Paint Me Silver
04. Colder Than Ice
05. Edge of the World Pt. 1
06. A/B
07. Zen Automaton
08. All I Want for Xmas (Is a Tascam 388)
09. Edge of the World Pt. 2
10. The Weather

The Growlers

発売日: 2019/10/25
レーベル: Beach Goth Records
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
1. Natural Affair
2. Long Hot Night (Halfway to Certain)
3. Pulp of Youth
4. Social Man
5. Foghorn Town
6. Shadow Woman
7. Truly
8. Tune Out
9. Coinstar
10. Stupid Things
11. Try Hard Fool
12. Die and Live Forever

MGMT

発売日: 2018/2/9
レーベル: Columbia
ジャンル:サイケデリック・ロック
収録曲:
01. She Works Out Too Much
02. Little Dark Age
03. When You Die
04. Me and Michael
05. TSLAMP
06. James
07. Days That Got Away
08. One Thing Left to Try
09. When You’re Small
10. Hand It Over

Youtube

  • Temples – Hot Motion (Official Music Video)
  • King Gizzard & The Lizard Wizard – Cyboogie (Official Video)
  • Blossoms – If You Think This Is Real Life
  • Babe Rainbow – Morning Song
  • Drugdealer – Fools (Official Video)
  •  

  • GLIM SPANKY – 「All Of Us」

  •  
     

  • Tame Impala – Lost in Yesterday (Official Video)
  •  

  • Pond – The Weather (Official Video)
  •  

  • The Growlers – “Try Hard Fool” (Official Video)
  •  

  • MGMT – When You Die (Official Video)

ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)

兵庫県出身のサイケデリック・ロックバンド、Daisy JaineのVo./Gt.。アメリカ・ボストンに留学経験があり、BELONGでは翻訳を担当。サイケデリック、オルタナ、60s、ロカビリーやR&Bと幅広く聴きます。趣味はファッション、写真、映画観賞。
今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@rio_daisyjaine