シューゲイザーとは80年代にThe Jesus and Mary Chain『Psychocandy』の発表でその姿を現し、

90年代初期にMy Bloody ValentineやRide、Slowdiveといったバンドの登場により確立されたジャンル、サウンド、プレイスタイルだ。

90年代初期の盛り上がりから、すぐに衰退を迎えることとなるシューゲイザーだが、

時を超えて00年代にはRingo Deathstarr やThe Pains of Being Pure at Heartら新世代バンドにより、ニューゲイザーという派生ジャンルが誕生。

ニューゲイザーのように他ジャンルとの交配やエッセンスとしてサウンドにシューゲイザーを取り入れるバンドやアーティストは数多く、

ブームが鎮静した後でも国を問わず各地でシューゲイザーの遺伝子は脈々と引き継がれている。

そして、10年代以降にはMy Bloody Valentine、Ride、Slowdiveが揃って再始動した。

残念ながら上記3バンドの再始動によって期待された復興は、いまだ兆しのまま。

ただ、復活を待ち望んでいる音楽リスナーも多いのではないだろうか。

そのため、今回はリバイバルを期待しつつシューゲイザーファンに向け、国内外問わずシューゲイザーの新人バンド5組を紹介させていただく。

まずは、シューゲイザーについて一度整理しておこう。藪から棒で申し訳ないが、先に筆者の見解を述べることからはじめさせていただく。

シューゲイザーとは

Luby Sparks_Birthday
Luby Sparks

シューゲイザーとは、新しい価値観の提唱である。

そもそもシューゲイザーについての定義自体ははっきりとしていなく、ドリーム・ポップやノイズ・ポップといったジャンルとの境目が曖昧である。ジャンルではなくプレイスタイルだと異を唱えるものもいる。

通説とされているのは、エフェクターを多用し、そこに発生したフィードバックノイズを重ねることで浮遊感や陶酔状態を演出するサウンドだということ。

構造原理を説明すると想像しやすくなるが、一聴して形容しにくいほど複雑で壮麗な音像を描くシューゲイザーサウンドを形成する一部がノイズであることに私は、深く感動するとともにカルチャーショックを受けた。

一般的に雑音とされるノイズをかき集めることで、誰が聴いても美しいと思えるサウンドを生みだす。

“ドブネズミみたいに美しくなりたい”ではないが、美に対する価値観が崩壊した瞬間であった。

そういった体験を踏まえて、私はシューゲイザーを新しい価値観の提唱だと定義する。

サウンドやプレイスタイルで括ってしまうと狭義となってしまうが、この説をもって私はART-SCHOOLやTHE NOVEMBERSといったバンドもシューゲイザーだと認識している。

シューゲイザーの特徴

プレイスタイル

シューゲイザー(Shoegazer)の語源は、“Shoe+Gazer”つまり“靴を凝視する人”から由来する。

ロンドンのロック・バンドMooseのヴォーカル、ラッセル・イェイツが床に張った歌詞カードを見ながら演奏する姿を揶揄した言葉として生まれたのが、シューゲイザー。

その姿は、足元に多くのエフェクターを並べて、それを操作しながら演奏されるシューゲイザーと重なることからこの名前が付けられたとされている。

重複になってしまうが、先述にも記したとおり“エフェクターを多用し、そこに発生したフィードバックノイズを重ねることで浮遊感や陶酔状態を演出するサウンド”。

シューゲイザーサウンドをあらわす言葉として“浮遊感”はよく用いられている。それゆえ、なるべく避けたい言葉なのだが、一般的な特徴を述べるにあたりあえて使用させていただいた。

他にもリヴァーブやディレイといったエフェクターを用いる場合もある。

ヴォーカル

そして、90年代のシューゲイザーにとって欠かせなかったのがウィスパーヴォイスである。

光によって様々な色彩を浮かべ、ふわふわと空中を漂うシャボン玉のように儚い歌唱。

サウンドに彩りを加えるとともに、サウンドの一部として機能し、一層の多幸感をもたらした。

総じてドリーム・ポップの手法を踏襲したものであるが、攻撃的なシューゲイズサウンドを包み込み、より趣深いものへと昇華させたのはウィスパーヴォイスあってこそ、なのではないだろうか。

シューゲイザーの新人バンド5組

Luby Sparks

Luby Sparks
何度かレビュー記事を書かせていただいた5人組オルタナティヴ・ロックバンド、Luby Sparks(ルビー・スパークス)。

ドリーム・ポップやギター・ポップを軸にするLuby Sparksにとって、シューゲイザーはエッセンスとして取り入れられている。

シューゲイザーを時にスパイスとして、時にハーブとして機能させ、巧みに使い分けている。

最近ではヴォーカルErikaの進化も著しく、サウンド面においてもバンドのさらなる飛躍が期待される。

For Tracy Hyde

For Tracy Hyde
こちらもレビューにて紹介させていただいた5ピース・バンド、For Tracy Hyde(フォー・トレイシー・ハイド)。

トリプルギター編成となり、さらに厚みを増したサウンドがいきついたのはシューゲイザーとJ-Popの調和だ。

J-Pop的な歌メロと90年代王道シューゲイザーサウンドをクロスオーバーさせることで、アイデンティティを獲得。

バンドにとっても、シューゲイズにとっても新たな可能性を見出したと言っていいだろう。

bdrmm

bdrmm
UKはハル出身の5人組シューゲイズ・バンド、bdrmm。

2018年デビューの若手バンドbdrmmは、SlowdiveやDIIVらを思わせる柔らかみのあるメロディが特徴であるが、

曲によってはフィードバックノイズで空間を覆い尽くすアグレッシブな一面も併せ持っている。

待望のデビューアルバム『Bedroom』は、7月3日リリース。

シューゲイザーを柱にして、柔にも硬にも振り切ることのできるbdrmmをぜひチェクしてみてほしい。

I Mean Us

I Mean Us
台湾インディー・シーンを代表するドリーム・ポップバンドといえばI Mean Usだ。

2015年に台北市で結成されたI Mean Usも5人組である。Luby Sparksとの共演経験もあるバンドは台湾のみならず日本でも着々と人気を獲得している。

I Mean Usも音楽性を構成する一部として、シューゲイザーが存在している。

とりわけツイン・ギター放つ扇動的なサウンドと煌びやかなシンセ、そして静謐なヴォーカルとの調和が圧巻である。

Rev Magnetic

Rev Magnetic
Mogwaiの盟友であり、Bowsとして活動するLuke Sutherlandによるソロ・ユニット、Rev Magnetic。

まず、耳を引くのは無調なノイズ、シューゲイズ。

そこに介在するは、チルウェイブやフューチャー・ソウルを通過したサウンドとリズム、そしてヴォーカルである。

天然由来なシューゲイザーサウンドを多角的なアプローチで更新しながらも、シューゲイザー本来の耽美さや退廃的なムードはそのままに仕上げる芸当に思わずのけぞった。

シューゲイザーの現在

シューゲイザー(shoegazer)
このようにシューゲイザーは国や年代を越えて、引き継がれてきた。

そして、不思議なことにシューゲイザーはいつ聴いても新鮮に聴こえる。

ファーストインパクトで新しい価値観を提唱し、それに感銘を受け、魅了されたアーティストたちが自分たちの表現方法をもってシューゲイザーを鳴らし続けてきたからだろう。

それほどまでにシューゲイザーというジャンル、サウンド、プレイスタイルは強烈な音楽体験であったのだ。

90年代のムーブメントから約30年が経過した。

決してリバイバルを待ち望んでいるわけではないが、10年先も20年先もこうしてシューゲイザーの特集記事があがってくることを切に願う。

リリース

Luby Sparks

発売日: 2018/1/24
レーベル: AWDR/LR2

For Tracy Hyde

発売日: 2019/9/4
レーベル: P-VINE RECORDS

bdrmm

発売日: 2019/10/11
レーベル: Sonic Cathedral

I Mean Us

発売日: 2018/8/24
レーベル: I Mean Us

Rev Magnetic

発売日: 2019/5/10
レーベル: Rock Action Records

Youtube

  • Luby Sparks | Somewhere (Official Music Video)
  • For Tracy Hyde – 櫻の園 (Official MV)
  • bdrmm – Is That What You Wanted To Hear? (Official Video)
  • I Mean Us – You So (Youth Soul) [Official Music Video]
  • Rev Magnetic – Gloaming

ライター:滝田優樹

北海道苫小牧市出身のフリーライター。音楽メディアでの編集・営業を経て、現在はレコードショップで働きながら執筆活動中。猫と映画観賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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Twitter:@takita_funky