“ポストパンク”

その概要説明や代表するバンドを列挙した時におおよその一致が合っても、サウンドの認識についてはそれぞれ異なるのではないだろうか?

あるいは、上手く説明できない人も少なくはないはずだ。

Public Image Ltd(PIL)やSiouxsie And The Banshees、Joy Division。

同時代のポストパンク・バンドを並べてみても、それぞれ文脈や音像に違いがある。

そう、内包するジャンルが幅広いのである。

また、同時多発的に出てきたニューウェイヴや2000年初頭に起きたポストパンク・リバイバルとガレージロック・リバイバルとの混同など、

“ポストパンク”を取り巻く環境もややこしくしている原因のひとつであろう。

ニューウェイヴやガレージロック・リバイバルについてはまたの機会に書かせていただくとして、

まずは、“ポストパンク”のはじまりから語ることで“ポストパンク”というジャンルについて整理していこう。

そして最後には、新世代のポストパンク・バンドを紹介させていただく。

ポストパンクとは

Fontaines D.C.
Fontaines D.C.

ポストパンクはSex PistolsやThe Clashらが1970年代中ごろに登場し、発生したロンドン・パンク・ムーブメントが原点。

その後、Sex Pistolsを脱退したジョン・ライドンが1978年に結成したPublic Image Ltdが起点とされている。

結論から言えば、あくまでもカウンター的ではなく、そのムーブメントに影響を受けて、パンク・ロックを自由に拡張させたのがポストパンクということになる。

各自実験的に様々なジャンルを配合したり、表現や音の鳴らし方も変えたりしながら発展させてきたのである。

具体的に取り入れられたジャンルとしては、ファンクやレゲエ、ダブ、民族音楽、クラウトロックなど。

そこから派生していったのが、ダンス・パンクやゴシック・ロックなどである。

ポストパンクは、パンク・ロックの可能性や裾野を広げただけでなく、他ジャンルとの結合を強める役目を担ったとも言えるだろう。

自戒も込めて言わせてもらうならば、サウンドを表す言葉として“ポストパンク”のみの記述は言葉足らず、ないしは思考停止に近いものであるのかもしれない。

ポストパンクに該当するバンドの決定的な共通項を述べるのであれば、サウンドではなくパンク・ロックを基に新しい音楽を鳴らそうとする姿勢そのものであろう。

ポストパンクの特徴

squid
squid

幅広い音楽性

重複になってしまうが、ポストパンクは多様な音楽ジャンルを孕み、結びつき、派生してきた。

Public Image Ltdであるなら、レゲエやダブ。siouxsie and the bansheesやJoy Divisionは、ゴシック・ロック。Echo & the Bunnymenはネオサイケといった具合だ。

実験的にパンクを他のジャンルと掛け合わせて、枝分かれ式に発展していった。

とても懐が深くて、友好的である反面、付随する情報が多くて、捉えにくい音楽ジャンルとも言えるだろう。

ローファイなサウンド

上記のバンド達を聴いていただくとわかる通り、ローファイなサウンドというところも特徴のひとつ。

ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム…どこを取っても荒い音質でざらっとしている。

パンクの前身であるガレージロックの流れを強く引き継いだ形であろう。

多くの属性を持つにも関わらず、ローファイな音質であることで無機質、シュールな印象を与える。

バンドによっては技術を求めず、飄々とした調子で演奏を披露している。

こういったギャップもポストパンクを語る上での形容しにくさに直結するのではないだろうか?

ポストパンクの新人バンド5組

FONTAINES D.C.

FONTAINES D.C.
ダブリン(アイルランド)出身のポストパンク・バンド、FONTAINES D.C.(フォンテインズD.C.)。

2019年にデビュー・アルバム『Dogrel』をリリースし、2020年のフジロックへの出演も決定している。

FONTAINES D.C.の魅力は何と言っても、男前で貫禄のあるギターと気まま無頓着なヴォーカル。

かちっとスーツを着こなした上で、それを鼻にかけることなく立ち振る舞う。その姿がなんともダンディである。

7月にリリース予定の『A HERO’S DEATH』も楽しみだ。

Squid

Squid
ブライトンとロンドンで活躍する5人組ロックバンドSquid (スクウィッド)は、先ほど述べたポストパンクの特徴をそのまま凝縮したようなバンドだ。

シュールで、捉えにくく、おまけに捻くれまくっている…。

テクノの名門レーベル“WARP”がSquidと契約したのも納得がいく。

サイケやテクノ、ディスコなどを回遊しながらパンキッシュに調理されたスリリングなサウンドはまさにジェットコースター。

TAWINGS

TAWINGS
彼女らも自由奔放、チャーミングな3人組ガールズバンド、TAWINGS(トーイングス)。

Siouxsie And The Banshees、Dum Dum Girls、Warpaintなどの女性ヴォーカル、ガールズバンドに影響を受けながらミニマルかつ茶目っけのあるサウンドを聴かせてくれる。

ガレージやニューウェイヴ、サイケといった異なった色を見せつつ着地点はシンプルで収まりがいい。

その上でユニークだと称したくなる、そのメロディ・センス。

堂々、日本を代表するポストパンク・バンドである。

The Murder Capital

The Murder Capital
こちらもダブリンに拠点を置くポストパンク・バンド、The Murder Capital (ザ・マーダー・キャピタル)。

惜しくも延長されたコーチェラへの出演も決定している。

系譜で言うならば、New OrderやEcho & the Bunnymenなどの甘美なムードを継いでいる。

ロートーンで癖のあるヴォーカリゼーションを特徴とし、艶めかしさのあるサンドと溶けあうことで暖かに響き合う。

NEHANN

NEHANN
NEHANN(ネハン)を初めて聴いた時に思ったことは、久しぶりに高飛車で高圧的なバンドが出てきた。

もちろん、褒めことばだ。それほど、説得力があるということ。

東京を拠点とする5人組バンドNEHANNは、グランジやゴシック・ロック、ダークウェイヴの息づかいが感じられるポストパンクを鳴らしている。

他を寄せ付けない強気な佇まいも込みで惹かれてしまう、新人バンドである。

ポストパンクの精神性

ポストパンク(post-punk)
パンク・ロックを基に新しい音楽を鳴らそうと生まれたポストパンク。

捉えどころのない側面を持つが、その精神性こそがポストパンクの真髄であることをこの記事で述べさせていただいた。

私自身もこれを執筆するにあたって、再認識したことがいくつかあった。

このような精神性はパンク・ロックと多くの他ジャンルと結び付けただけでなく、近年のラップやR&B、ソウル、ダンスミュージックの発展に影響を与えたのではないかとも推測する。

パンクもロックも死んだと言われた何年経っただろうか。

それでもポストパンクはこれからも捉えにくく、形容しにくいサウンドを生み続けるだろう。

今回、ここで紹介させていただいたバンドがその証拠だ。

リリース

FONTAINES D.C.

発売日: 2019/4/12
レーベル: Partisan Records

Squid

発売日: 2019/9/6
レーベル: Speedy Wunderground / [PIAS]

TAWINGS

発売日: 2019/12/18
レーベル: AWDR/LR2

The Murder Capital

発売日: 2019/8/16
レーベル: Human Season Records

NEHANN

発売日: 2019/9/18
レーベル: NEHANN

Youtube

  • Fontaines D.C. – Sha Sha Sha
  • Squid – Sludge (Isolation Video)
  • TAWINGS | 水仙 (Official Music Video)
  • The Murder Capital – Green & Blue (Official Video)
  • NEHANN – Under the Sun

ライター:滝田優樹

北海道苫小牧市出身のフリーライター。音楽メディアでの編集・営業を経て、現在はレコードショップで働きながら執筆活動中。猫と映画観賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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Twitter:@takita_funky