最終更新: 2024年4月13日

“ポストパンク(Post Punk)”

その概要説明や代表するバンドを列挙した時におおよその一致が合っても、サウンドの認識についてはそれぞれ異なるのではないだろうか?

あるいは、上手く説明できない人も少なくはないはずだ。

Public Image Ltd(PIL)やSiouxsie And The Banshees、Joy Division。

同時代のポストパンク・バンドを並べてみても、それぞれ文脈や音像に違いがある。

そう、内包するジャンルが幅広いのである。

また、同時多発的に出てきたニューウェイヴや2000年初頭に起きたポストパンク・リバイバルとガレージロック・リバイバルとの混同など、

“ポストパンク”を取り巻く環境もややこしくしている原因のひとつであろう。

ニューウェイヴやガレージロック・リバイバルについてはまたの機会に書かせていただくとして、

まずは、“ポストパンク”のはじまりから語ることで“ポストパンク”というジャンルについて整理していこう。

そして最後には、新世代のポストパンク・バンドを紹介させていただく。

ポストパンクとは

Fontaines D.C.
ポストパンクはSex PistolsやThe Clashらが1970年代中ごろに登場し、発生したロンドン・パンク・ムーブメントが原点。

その後、Sex Pistolsを脱退したジョン・ライドンが1978年に結成したPublic Image Ltdが起点とされている。

結論から言えば、あくまでもカウンター的ではなく、そのムーブメントに影響を受けて、パンク・ロックを自由に拡張させたのがポストパンクということになる。

各自実験的に様々なジャンルを配合したり、表現や音の鳴らし方も変えたりしながら発展させてきたのである。

具体的に取り入れられたジャンルとしては、ファンクやレゲエ、ダブ、民族音楽、クラウトロックなど。

そこから派生していったのが、ダンス・パンクやゴシック・ロックなどである。

ポストパンクは、パンク・ロックの可能性や裾野を広げただけでなく、他ジャンルとの結合を強める役目を担ったとも言えるだろう。

自戒も込めて言わせてもらうならば、サウンドを表す言葉として“ポストパンク”のみの記述は言葉足らず、ないしは思考停止に近いものであるのかもしれない。

ポストパンクに該当するバンドの決定的な共通項を述べるのであれば、サウンドではなくパンク・ロックを基に新しい音楽を鳴らそうとする姿勢そのものであろう。

ポストパンクの特徴

squid

幅広い音楽性

重複になってしまうが、ポストパンクは多様な音楽ジャンルを孕み、結びつき、派生してきた。

Public Image Ltdであるなら、レゲエやダブ。siouxsie and the bansheesやJoy Divisionは、ゴシック・ロック。Echo & the Bunnymenはネオサイケといった具合だ。

実験的にパンクを他のジャンルと掛け合わせて、枝分かれ式に発展していった。

とても懐が深くて、友好的である反面、付随する情報が多くて、捉えにくい音楽ジャンルとも言えるだろう。

ローファイなサウンド

上記のバンド達を聴いていただくとわかる通り、ローファイなサウンドというところも特徴のひとつ。

ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム…どこを取っても荒い音質でざらっとしている。

パンクの前身であるガレージロックの流れを強く引き継いだ形であろう。

多くの属性を持つにも関わらず、ローファイな音質であることで無機質、シュールな印象を与える。

バンドによっては技術を求めず、飄々とした調子で演奏を披露している。

こういったギャップもポストパンクを語る上での形容しにくさに直結するのではないだろうか?

ポストパンクの代表的なバンド

ここまでポストパンクにはそれぞれの文脈があって、異なる音像を描くことを書かせていただいた。そのことを象徴するPublic Image LtdとJoy Division。

代表的なバンドでありながらそれぞれ違うアプローチでポストパンクを拡張していった2組を取り上げることでポストパンクとは何かを突きつめていきたい。

Public Image Ltd

上記でも説明させていただいたが、Public Image Ltd(パブリック・イメージ・リミテッド)は、Sex Pistolsのジョン・ライドンが結成したポストパンクバンドである。

Public Image Ltdの大きな特徴はダブを大胆に取り入れた音楽性。
レゲエのビートを強調しつつエコーを効かせた硬質なサウンドは、陽気さと不気味さの両方を呼びこむこととなる。

その他、クラウトロックやディスコへの接近を図りながらユニークかつ画期的にポストパンクを発展させてきた功労者である。

作品毎にスタイルチェンジを繰り返してきたPublic Image Ltdはまさにカメレオン。

未だ活動を続ける彼らは2018年に40年のキャリアを映し出したドキュメンタリー映画『The Public Image Is Rotten』も公開されている。

ポストパンクとは何か、Public Image Ltdとは何なのか知りたい人はこちらもチェックするといいだろう。

Joy Division

Public Image Ltd とともにポストパンクの代名詞的バンド、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)。

フロントマンであるイアン・カーティスの死とともに4年という歳月で幕を閉じ、発表されたアルバム作品は僅か2枚。

それでもJoy Divisionが後世に与えた影響力は計り知れない。
決して上手いとは言えない演奏だけど、そこには確かな狂気と美しさが潜んでいた。

水彩画のように透明感のある色彩を演出するシンセサイザーやドラムマシンを取り入れた酩酊なリズムパターン、ギターが6本の鋼で成り立っていることを再認識させる無作法なリフ。

異物同士が渦巻いているカオスに、イアンの紡ぐ内省的な歌詞が乗っかる。
救いようがない状態であるのに、何故だかそれが美しく響いていたのだ。

インスピレーションの向くままに音を鳴らす無邪気さがそれを呼びこんだのだろう。

Siouxsie And The Banshees

まだロンドン・パンク・ムーブメントで賑わう1976年に結成されたSiouxsie And The Banshees(スージー・アンド・ザ・バンシーズ)は、スージー・スーを中心とするポストパンク・バンドである。

ロンドンを拠点としたSiouxsie And The BansheesがSex Pistolsの熱狂的なファンであるのは有名な話だが、

その音楽性をポストパンク中心として同時期に勃興したニューウェイヴやゴシックロックといったジャンルも絡めたものであった。

不躾な音質ながら弦1本1本の音色を感じ取れるような繊細なギタープレイが導く濃密な彩りを加えた陶酔的なサウンド。

上記の2バンドたちとローファイなサウンドという共通点を持ちながらSiouxsie And The Bansheesは実験的にエレクトロニックの領域へと踏み込み、幻影的な音像を確立させる。

Siouxsie And The Bansheesの音楽は、The Cureをはじめとする数々のバンド、ギタリスト達に影響を与え、ニューウェイヴやドリームポップなどへの発展へも一役買ったバンドだといえるだろう。(2020年10月22日追加)

ポストパンクの新人バンド10組

ポストパンク(post-punk)
ポストパンクの新人バンドとして、FONTAINES D.C.、Squid、TAWINGS、The Murder Capital、NEHANN、IDLES、STRAM、Shame、Isolated Youth、Bambaraの10組を紹介する。(2020年10月22日追加)

FONTAINES D.C.

FONTAINES D.C.
ダブリン(アイルランド)出身のポストパンク・バンド、FONTAINES D.C.(フォンテインズD.C.)。

2019年にデビュー・アルバム『Dogrel』をリリースし、2020年のフジロックへの出演も決定している。

FONTAINES D.C.の魅力は何と言っても、男前で貫禄のあるギターと気まま無頓着なヴォーカル。

かちっとスーツを着こなした上で、それを鼻にかけることなく立ち振る舞う。その姿がなんともダンディである。

7月にリリース予定の『A HERO’S DEATH』も楽しみだ。

Squid

Squid
ブライトンとロンドンで活躍する5人組ロックバンドSquid (スクウィッド)は、先ほど述べたポストパンクの特徴をそのまま凝縮したようなバンドだ。

シュールで、捉えにくく、おまけに捻くれまくっている…。

テクノの名門レーベル“WARP”がSquidと契約したのも納得がいく。

サイケやテクノ、ディスコなどを回遊しながらパンキッシュに調理されたスリリングなサウンドはまさにジェットコースター。

TAWINGS

TAWINGS
彼女らも自由奔放、チャーミングな3人組ガールズバンド、TAWINGS(トーイングス)。

Siouxsie And The Banshees、Dum Dum Girls、Warpaintなどの女性ヴォーカル、ガールズバンドに影響を受けながらミニマルかつ茶目っけのあるサウンドを聴かせてくれる。

ガレージやニューウェイヴ、サイケといった異なった色を見せつつ着地点はシンプルで収まりがいい。

その上でユニークだと称したくなる、そのメロディ・センス。

堂々、日本を代表するポストパンク・バンドである。

The Murder Capital

The Murder Capital
こちらもダブリンに拠点を置くポストパンク・バンド、The Murder Capital (ザ・マーダー・キャピタル)。

惜しくも延長されたコーチェラへの出演も決定している。

系譜で言うならば、New OrderやEcho & the Bunnymenなどの甘美なムードを継いでいる。

ロートーンで癖のあるヴォーカリゼーションを特徴とし、艶めかしさのあるサンドと溶けあうことで暖かに響き合う。

NEHANN

NEHANN
NEHANN(ネハン)を初めて聴いた時に思ったことは、久しぶりに高飛車で高圧的なバンドが出てきた。

もちろん、褒めことばだ。それほど、説得力があるということ。

東京を拠点とする5人組バンドNEHANNは、グランジやゴシック・ロック、ダークウェイヴの息づかいが感じられるポストパンクを鳴らしている。

他を寄せ付けない強気な佇まいも込みで惹かれてしまう、新人バンドである。

IDLES

IDLES
ポストパンクの発信地のひとつである英・ブリストルからの新世代バンド、IDLES(アイドルズ)。

2012年に結成されたIDLESは、『Brutalism』と『Joy As An Act Of Resistance』の2枚のアルバムで、数々のチャート上位に名を連ねるポストパンクバンドである。

床に一斗缶を叩きつけたように大胆不敵、骨ばった演奏スタイルはかつてのロンドンパンクそのもの。

しかし、唄はどこかキャッチーな響きであったりする。そんな愛らしさも兼ね備えたバンドがIDLESである。

そんなIDLESの新作アルバム『Ultra Mono』についての記事はこちらから。

STRAM

STRAM
暗雲が垂れ込めるノイジーなギターサウンドを炸裂させるSTRAMは、東京を拠点とする4人組ポストパンクバンドである。

2020年に6月に1stアルバム『All Happy』をリリースしたばかりのSTRAM。

ゴシックロックやサイケからの影響を感じるサウンドは、禍々しさと神秘的な潤いをもって聴くものを魅了する。

NEHANNやBarbican Estateといった同志のバンドとともに今後国内のポストパンク・シーンを盛り上げてくれるであろう期待のニューカマーだ。

そんなSTRAMについての詳しい記事はこちらから。

Shame

Shame(シェイム)
サウスロンドンにおける若手インディーロックシーンの代表格であるポストパンク・バンド、Shame(シェイム)。

MitskiやKhruangbinらが所属のDead Oceans(デッド・オーシャンズ)に在籍するShameは2018年に初来日を果たし、2019年にはフジロックへも出演した。

ここ日本においても支持されるShameの音楽性は、2000年代ガレージロックリバイバルを彷彿させる流麗なギターサウンドとハードコアにも接近した爆発力のある演奏とヴォーカルのせめぎ合いが肝となっている。

教養を備えつつも悪童っぽさ滲ませるスリリングなアプローチはまさにポストパンク、ド真ん中である。

先日リリースされたニューシングル『Alphabet』においてもその魅力は増幅されており、益々信頼感のおけるバンドだということを再認識した。

Isolated Youth

Isolated Youth
スウェーデンはストックホルムで結成された4人組ポストパンク・バンドIsolated Youth(アイソレイテッド・ユース)は、北欧に根付いた美的感覚を継承した音楽性が魅力の若き才能。

Sigur RósやMy Bloody Valentine、The Radio Dept.といった北欧勢に通ずる美意識をもとに鳴らさせる流麗なサウンドを持ち合わせながら、

Siouxsie And The Bansheesが築いた退廃的なムードを孕んだポストパンクとのクロスオーバーを成したバンドがこのIsolated Youthだ。

2019年にデビューEP『Warfare』をリリースし、2020年のレコードストアデイにて2枚目のEP『Iris』をリリースしたばかりの若手バンドはすでに主要海外メディアからも注目の的である。

そんなIsolated Youthについての記事はこちらから。

Bambara

bambara
ブルックリン出身の3ピースポストパンク・バンドBambara(バンバラ)。

グランジやサーフロックを周遊しながらノイジーな音像が見え隠れするBambaraもまたゴシックなポストパンクが魅力なバンドである。

荒々しく衝動的なプレイにすかっとした感覚を覚えつつも、洗練された音響処理を持って、煌びやかなシンセや冷ややかなドローンのアプローチを入れて聴き手を揺さぶる強かさ。

出身はブルックリンだが、どちらかと言えばWolf AliceやFoalsといったUKオルタナギターロックのバンドたちと共振するBambaraはここまで紹介した若手ポストパンク・バンドたちと比べると知名度こそ及ばないが実力は充分肩を並べている。ぜひ、ご一聴いただきたい。

ポストパンクの精神性

ポストパンク(Post Punk)
パンク・ロックを基に新しい音楽を鳴らそうと生まれたポストパンク。

捉えどころのない側面を持つが、その精神性こそがポストパンクの真髄であることをこの記事で述べさせていただいた。

私自身もこれを執筆するにあたって、再認識したことがいくつかあった。

このような精神性はパンク・ロックと多くの他ジャンルと結び付けただけでなく、近年のラップやR&B、ソウル、ダンスミュージックの発展に影響を与えたのではないかとも推測する。

パンクもロックも死んだと言われた何年経っただろうか。

それでもポストパンクはこれからも捉えにくく、形容しにくいサウンドを生み続けるだろう。

今回、ここで紹介させていただいたバンドがその証拠だ。

ポストパンクのプレイリスト


その他のジャンル記事同様、ポストパンクのプレイリストでも入門編として代表曲から最新曲まで幅広い楽曲を選出している。

ポストパンクというジャンルの性質上、そのサウンドの幅広さも含めて楽しんでもらえたら嬉しい。

Youtube

  • Fontaines D.C. – Sha Sha Sha
  • Squid – Sludge (Isolation Video)
  • TAWINGS | 水仙 (Official Music Video)
  • The Murder Capital – Green & Blue (Official Video)
  • NEHANN – Under the Sun
  • IDLES – MR.MOTIVATOR (Official Video)
  • STRAM – Sinister Gallery(Official Music Video)
  • shame – Alphabet (Official Video)
  • Isolated Youth – Oath
  • Bambara – “Serafina” (Lyrics Video)

ポストパンク関連記事

ライター:滝田優樹

北海道苫小牧市出身のフリーライター。音楽メディアでの編集・営業を経て、現在はレコードショップで働きながら執筆活動中。猫と映画観賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@takita_funky