最終更新: 2021年10月3日
起用された曲はいつも話題を生むApple(アップル)のCM。
Apple製品を使っていない人も、一つは記憶に残っているCMがあるのではないだろうか。
そこで今回はGorillazやAnderson .Paakを始めとした、Appleの歴代CM曲で起用されたアーティストを紹介したい。
CMとしてだけでなく、一つのアート作品としても視聴者を引き込む一曲をぜひ味わって欲しい。
目次
Appleの歴代CM曲
AppleのCM曲では数々の有名アーティストたちが起用されてきた。
今や世界的に名の通ったColdplay「Viva la Vida」やU2「Vertigo」、そしてJet「Are You Gonna Be My Girl」。
さらにはThe Rolling Stones「She’s a Rainbow」やThe Beatles「I Want to Hold Your Hand」など、歴史に名を連ねるバンドまでが幅広くAppleのCM曲に起用されてきた。
その中でもGorillaz「Feel Good Inc.」は記憶に残っている方も多いかと思うのでここで一度紹介したい。
iPodのCM曲「Feel Good Inc.」
- アーティスト・曲:Gorillaz「Feel Good Inc.」
- 起用CM:“iPod+iTunes”「Rollerskating編」
今までに数々の大物アーティストたちがAppleのCM曲に起用されてきたが、特にインパクトが強かったのがGorillaz(ゴリラズ)ではないだろうか。
GorillazはUKで最も売れたバーチャル覆面音楽プロジェクト。
“iPod+iTunes”のCM曲で使用された「Feel Good Inc.」はセカンド・アルバム『Damon Days』に収録されている。
アメリカはニューヨークのヒップホップ・グループであるDe La Soulによるラップと、一度聴くと頭から離れない”Feel good”という囁きが退廃的な世界感を構築した一曲だ。
カラフルな背景をバックに、黒いシルエットの人々がローラースケートでダンスしているというシンプルなコンセプトは、「Feel Good Inc.」を信じ切った上に成り立っているCMなのではないだろうか。
ちなみに最近、Gorillazは”Song Machine”というプロジェクトを始めており、イギリス人ラッパーのslowthaiを始め、UKエレクトロ・ポップの新鋭であるGeorgia、さらにはNew Orderのベーシストであるピーター・フックなどとコラボしているのでそちらもチェックしていただきたい。
発売日: 2005/5/23
AppleのCM曲で起用!注目のアーティスト7組
ではここで、AppleのCM曲で起用された数々のアーティストの中から、特に素晴らしいと感じたAnderson .Paak、Vulfpeck、Childish Gambino、Alabama Shakes、The Shacks、Anna of the NorthそしてJames Blakeの7組について、CMの内容と共に掘り下げてみたい。
Apple“HomePod”のCM曲で起用された、Anderson .Paak
- アーティスト・曲:Anderson .Paak「Til It’s Over」
- 起用CM:Apple“HomePod”
Appleの“HomePod”のCM曲で起用されたのは、カリフォルニア出身のドラマー兼ボーカリストのAnderson .Paak(アンダーソン・パーク)の「Til It’s Over」。
Anderson .Paakは第62回グラミー賞で“最優秀R&Bアルバム”を獲得している世界的アーティスト。
今回のCMでは、イギリスのSSWであるFKA TWIGSが務める主人公の女性が、社会の雑踏に疲れて自宅に帰り「Til It’s Over」が流れる。
「Til It’s Over」とダンスに合わせて、家具や壁がレインボーの帯と共に変幻自在に引き伸ばされる魔法を手に入れダンスする。
この部屋が引き伸びる”魔法”はCGではなくセットを動かしているというのも驚きで、曲のリズムや多種多様なサウンドに合わせてライティングも合わせているのが素晴らしい。
今はグラミーも受賞し、世界的にも有名となったAnderson .Paakだが、この地位に上り詰めるのは一筋縄では行かなかった。
その軌跡や彼のルーツについてはこちらの記事で確認していただきたい。
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CM曲収録作品
発売日: 2018/4/6
“iPhone X / Apple Pay”のCM曲で起用された、Vulfpeck
- アーティスト・曲: Vulfpeck「Back Pocket」
- 起用CM:“iPhone X / Apple Pay”
https://youtu.be/_8VX2QNn7bU
“iPhone X / Apple Pay”のCM曲で起用されたのはVulfpeck(ヴルフペック)の「Back Pocket」。
VulfpeckはLA出身の4人組ミニマル・ファンクバンドで、一度聞いたら忘れられないキャッチーさが魅力。
CMはスウェーデン生まれのアーティスト/ダンサーのブルーイ・ロビンソンが踊りながら、視線に入った欲しいものをスマートに購入していくというもの。
「Back Pocket」の軽快なポップさが、スマートに買い物をする楽しさを見事に表現しており、CMと曲がお互いに引き立てあう関係性が素晴らしい。
Vulfpeckの聴く人全てを瞬時に引き込むキャッチーな魅力については、こちらの記事を併せて読んでいただきたい。
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CM曲収録作品
発売日: 2015/10/9
“iPhone X”のCM曲で起用された、Childish Gambino
- アーティスト・曲: Childish Gambino「Redbone」
- 起用CM: “iPhone X”
グラミー賞ノミネートの経験もあるドナルド・グローヴァーによるミュージック・プロジェクト、Childish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)。
サードアルバム『Awaken, My Love!』に収録されている「Redbone」が “iPhone X”のCM曲に起用されている。
「Redbone」はレイドバックしたグルーヴィーなR&Bなのだが、印象深いのは何よりも彼の歌声だろう。
これは女性の声なのか、男性の声を機械のようにサウンド加工したのか、はたまたエイリアンの声なのか・・・。
そこでAppleのCMでは、エイリアンの”アニ文字”が「Redbone」を歌うという内容なのだが、歌うエイリアンの背後には水色に光る無数の線が。
これは『Awaken, My Love!』のアートワークに対するリスペクトも忘れてはいない、Appleの心意気を感じるCMだ。
ちなみにChildish Gambinoは新作『3.15.20』をリリースしており、タイトルを始め、曲名まで難解なパズルのように構築されたアルバムだが、
こちらの記事で詳しく解説しているのでぜひ合わせて読んでいただけたらと思う。
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CM曲収録作品
発売日: 2019/2/1
“iPad Pro”のCM曲で起用された、Alabama Shakes
- アーティスト・曲: Alabama Shakes「Sound & Color」
- 起用CM:“iPad Pro”
Appleのクリエイティビティーはまるで宇宙のように無限大だ。
そんな宇宙に広がる星々の静寂と壮大感を表現した“iPad Pro”のCMにフィットする音楽、それがAlabama Shakes(アラバマ・シェイクス)の「Sound & Color」である。
アメリカはアラバマ州出身のAlabama Shakesはグラミー賞を受賞した経歴を持つバンドで、CMで起用された「Sound & Color」はセカンドアルバム『Sound & Color』に収録されている一曲。
今までで一番大きな“iPad”として発売され、まるで宇宙が“iPad Pro”に集約されたようなビッグスケールをイメージに売り出された。
宇宙と聞くと、シンセサイザーを多用してビッグスケールを表現しているバンドを起用しがちだが、「Sound & Color」は”音数が少なければ少ないほどダイナミックさが生まれる”ことを証明した一曲で、Appleの高い理想を見事にクリアしている名曲ではないだろうか。
この名曲を生み出すフロントウーマンのBrittany Howard(ブリタニー・ハワード)はソロでも活動をしており、Robert GlasperやNorah Jonesなど豪華面々とコラボをしているので、そちらも合わせてチェックしていただきたい。
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CM曲収録作品
発売日: 2015/4/20
“iPhone 8 Plus”のCM曲で起用された、The Shacks
- アーティスト・曲: The Shacks「This Strange Effect」
- 起用CM:“iPhone 8 Plus”
NY出身の男女サイケポップ・デュオ、The Shacks(ザ・シャックス)の「This Strange Effect」は“iPhone 8 Plus”のCM曲で起用された。
The Shacksは60年代のようなサイケデリックかつレトロなサウンドが特徴で、若さの割にとても渋い所を突いてくるバンド。
The Shacksのフロントウーマン、シャノン・ワイズがCMに出演しており、バズカットのシャノンが通りを歩き、そこで撮ったポートレート写真に様々な加工を施すという内容のCM。
シャノンのウィスパー混じりの歌声とバズカットのヘアスタイル、彼女の持つ魅力全てをポートレートに写し込んでいる。
「This Strange Effect」の60年代のような時代錯誤感が、最新の“iPhone 8 Plus”を古臭く感じさせてしまうのではないかと思うが、むしろ製品の魅力を高めているのはThe Shacksがタイムレスに、いつの時代でも新鮮に感じてしまう性質を持っているからだろう。
この普遍性は、サイケデリックがどのジャンルにも馴染む柔軟性と関連している。こちらの記事でサイケデリックについても考察しているので合わせて一読していただきたい。
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CM曲収録作品
発売日: 2016/10/28
iPad ProのCM曲で起用された、Anna of the North
- アーティスト・曲:Anna of the North「Dream Girl」
- 起用CM:iPad Pro — Float
Anna of the North(アナ・オブ・ザ・ノース)は、ノルウェー人シンガーのアナ・ロッテルードと、ニュージーランド人プロデューサーのブレイディ・ダニエル – スミスによるドリームポップ・デュオ。
iPad ProのCM曲として起用された「Dream Girl」は、2019年にリリースされたセカンドアルバム『Dream Girl』の収録曲。
北欧特有の透明度の高いサウンド、そしてアナの持つピュアな歌声がAppleの誠実さと信頼感へと結びつく。
静寂から始まり、小鳥と共に高く飛翔したくなるような高揚感へ。
このように、短いCMの中でも「Dream Girl」の持つ起承転結が活かされたCM構成が秀逸なのだ。
無駄を削ぎ落とし、洗練された印象を与えるAnna of the Northのカラーが光るCMである。
CM曲収録作品
発売日: 2020/10/25
Behind the MacのCM曲で起用された、James Blake
- アーティスト・曲:James Blake「Are You Even Real?」
- 起用CM:Behind the Mac
グラミー賞受賞経験を持つ、イギリスはロンドン出身のSSW兼音楽プロデューサーのJames Blake(ジェイムス・ブレイク)。
James Blake(ジェイムス・ブレイク)はイギリス・ロンドン出身のSSW兼音楽プロデューサーで、グラミー賞受賞アーティストだ。
ロサンゼルスにある自宅スタジオで、新曲「Are You Even Real?」の制作風景が垣間見れるCM。
若くして独自の革新的なポップ・ミュージックを切り開いた才人だけに、制作風景がどのようなものか気になるところである。
自宅スタジオにリモートカメラをいくつか設置し、24時間以上回し続けて撮影されたことにより、ドキュメンタリーチックなCMに仕上がっている。
James Blakeの醸し出す独創性とミステリアスな制作時の裏側の世界が、アーティストと常に共にあり続けるAppleと共鳴する美しいCMだ。
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CM曲収録作品
発売日: 2020/07/08
AppleのCM曲は一歩先を行く
常に時代の一歩先を行く製品を世に送り出し続けているApple。
CMのコンセプトはいつも洗練され、それを生かす音楽を世界中から厳選するセンスにはいつも驚かされる。
今回改めてCM曲にフォーカルを当ててみると、CMで聴く曲はそのCMのテーマや演出によって、普段聴いている時とはまた違う一面が垣間見ることができる、ということを認識するができたのではないだろうか。
“サウンドトラックが良い映画には良質な映画が多い”という筆者の持論があるのだが、これはCMにも当てはまると思う。
良い音楽というのは記憶に残るCMの一つの要因ではないかと考えている。もちろん、良い音楽とはCMのイメージにマッチしているのが前提である。
もしあなたがApple製品を使っているのなら、一度自分の製品のCMとその曲を改めて調べてみるのも面白いかと思う。
AppleのCM曲に選出された曲(Youtube)
- Gorillaz – Feel Good Inc. (Official Video)
- VULFPECK /// Back Pocket (Music Video)
- Childish Gambino – Redbone (Official Audio)
- Alabama Shakes – Sound & Color (Official Video)
- The Shacks – This Strange Effect (Official Music Video)
- Anna Of The North – Dream Girl
- James Blake – Are You Even Real? (Official Visualizer)
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
BELONG Mediaのライター/翻訳。
高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。
13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。
関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。
2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。
2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。
普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。
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