最終更新: 2022年5月8日
Sufjan Stevens(スフィアン・スティーヴンス)の最新アルバム『The Ascension』より、シングル「America」がリリースされた。
アメリカの文化やキリスト教への信仰、そして新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックと重なるSufjan Stevensの深い思い。
この記事では、その全てを包括した「America」の歌詞を和訳し、内容について考察していく。
目次
Sufjan Stevensとは
Sufjan Stevensはアメリカのミシガン州出身のフォークロック・アーティスト。
ヴォーカリスト、作曲家、マルチプレイヤーとしての才能を持ち、オスカーやグラミー賞にもノミネートされた経歴を持つ。
1999年から活動を開始し、デビューアルバム『A Sun Came』を同年にリリース。
2005年発売の『Illinois』で世界中の音楽メディアから賞賛され、2015年リリースの『Carrie & Lowell』で世界に名を知らしめた。
Americaとは
Sufjan Stevensの最新曲「America」は、8枚目となる新作アルバム『The Ascension』からの初のシングル曲である。
2015年にリリースされた前作『Carrie & Lowell』の制作時に「America」は書かれたが、アルバムにマッチしなかったため収録されなかった。
そして、この度改めてレコーディングされ、この曲をきっかけに2020年9月にリリースされる新作アルバム『The Ascension』の制作が始まった。
America歌詞和訳
「America」は、Sufjan Stevensによる一部のアメリカ文化へ対するプロテストソング(政治的なメッセージが込められた楽曲)である。
君の追い求めていたものは愛なのかい?
洪水の前触れか、それとも他の災害か
アメリカにした仕打ちを僕にまでしないでくれ
アメリカにしたようなことを僕にまでしないでくれないか
“Is it love you’re after?
A sign of the flood or one more disaster
Don’t do to me what you did to America
Don’t do to me what you did to America”
君を愛していたし、深く悲しんでいた
恥ずかしながらも、もう信じていないということを認めることにしたんだ
君を愛していた、そして受け取った
僕の人生をこの風景画と交換したんだ
アメリカにした仕打ちを僕にまでしないでくれ
アメリカにしたようなことを僕にまでしないでくれないか
“I have loved you, I have grieved
I’m ashamed to admit I no longer believe
I have loved you, I received
I have traded my life
For a picture of the scenery
Don’t do to me what you did to America
Don’t do to me what you did to America”
笑い声と共に僕は全てを諦めた
災害を待ち構えて十字を切った
まるで妄想症のように、鳩が僕に向かって飛んできたんだ
まるで被害妄想を見ているかのように、鳩が僕に向かって飛んできたんだ
“I give it all up in laughter
The sign of the cross awaiting disaster
The dove flew to me like a vision of paranoia
The dove flew to me like a vision of paranoia”
君を愛していた、まるで夢であるかのように
ユダの接吻かのように君の唇にキスをした
神を崇拝していたし、信仰していた
現代の科学技術の進歩を祝福していた
僕がヒステリーを起こしてるフリをしているように見えるかい?
僕はヒステリーを起こしてるフリなんてしていないよ
“I have loved you like a dream
I have kissed your lips like a Judas in heat
I have worshiped, I believed
I have broke your bread for a splendor of machinery
Don’t look at me like I’m acting hysterical
Don’t look at me like I’m acting hysterical”
神を崇拝していた、涙を流した
僕は君の傷口に手を当てた
そして君の血を味わった
水で窒息したけど、洪水の勢いを弱めたんだ
もう精神的にもボロボロだよ、疲れ切っているんだ
でもユダのように、僕も自分の道を探すよ
幸運だし、これで僕は自由だ
僕はまるでアメリカ南中部に射す光のようだ
“I have worshipped, I have cried
I have put my hands in the wounds on your side
I have tasted of your blood
I have choked on the waters, I abated the flood
I am broken, I am beat
But I will find my way like a Judas in heat
I am fortune, I am free
I’m like a fever of light in the land of opportunity”
アメリカにした仕打ちを僕にまでしないでくれ
(君自身にした仕打ちを僕にまでしないでくれ)
アメリカにしたようなことを僕にまでしないでくれ
(君自身にしたようなことを僕にまでしないでくれ)
アメリカにした仕打ちを僕にまでしないでくれ
(君自身にした仕打ちを僕にまでしないでくれ)
アメリカにした仕打ちを僕にまでしないでくれ
アメリカにしたようなことを僕にまでしないでくれないか
“Don’t do to me what you did to America
(Don’t do to me what you do to yourself)
Don’t do to me what you did to America
(Don’t do to me what you do to yourself)
Don’t do to me what you did to America
(Don’t do to me what you do to yourself)
Don’t do to me what you did to America
(Don’t do to me what you do to yourself)Don’t do to me what you did to America
Don’t do to me what you did to America
Don’t do to me what you did to America
Don’t do to me what you did to America”
Americaの真実
12分30秒という長作「America」で語られたのは、Sufjan Stevensのアメリカへの強い思いだった。
「America」がリリースされたのが2020年7月3日。
翌日7月4日はアメリカの独立記念日であるため、そこに合わせてリリースされたと考えられる。
さらにこの時期は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに加え、”Black Lives Matter”の社会運動などがアメリカで巻き起こっていることも、「America」の内容にリンクしている。
「America」の歌詞は知識が無いと深く読み解くことは難しい。
内容はキリスト教についての遠回しな言及が多々見られ、宗教やアメリカの一部の文化に対する不満を深く感じる内容となっている。
例えば、何度もリフレインされる、”アメリカにした仕打ちを僕にまでしないでくれ”という歌詞がある。
そこから読み解けるのは、Sufjan Stevensは神を深く信仰しており、アメリカの現在の状況は神がアメリカを見捨てたのではないかという懸念。
もう一つは、”アメリカになんてことをしてくれたんだ!”と、アメリカの人々へ直接問いかける不満である。
他に細かく見ていくと、歌詞に出てくる”鳩”はキリスト教のテーマの一つであったり、”洪水”は神が道義を守らない人間を洪水によって滅ぼされたという説話からきている。
深い神への信仰とアメリカへの愛があり、アメリカを錯乱させる人々や一部の文化、そして世界的な大混乱にも繋がる大作である。
America作品クレジット
Sufjan Stevensの「America」のクレジットは下記となっている。
プロデューサー:Sufjan Stevens
作詞・作曲:Sufjan Stevens
レーベル:Asthmatic Kitty Records
レコーディング・エンジニア:Casey Foubert & Sufjan Stevens
リリース日:2020年7月3日
Sufjan Stevensリリースアルバム
8thアルバム『The Ascension』
発売日: 2020/9/25
ジャンル: フォークロック
品番:AKR150JCD
発売元:ビッグ・ナッシング / ウルトラ・ヴァイヴ
その他:世界同時発売、日本盤ボーナス・トラック追加(予定)、解説/歌詞/対訳付(予定)
収録曲:
1. Make Me An Offer I Cannot Refuse
2. Run Away With Me
3. Video Game
4. Lamentations
5. Tell Me You Love Me
6. Die Happy
7. Ativan
8. Ursa Major
9. Landslide
10. Gilgamesh
11. Death Star
12. Goodbye To All That
13. Sugar
14. The Ascension
15. America
購入はこちら
7thアルバム『Carrie & Lowell』
発売日: 2015/3/31
ジャンル: フォークロック
6thアルバム『The Age of Adz』
発売日: 2010/10/11
ジャンル: フォークロック
5thアルバム『Illinois』
発売日: 2005/7/5
ジャンル: フォークロック
4thアルバム『Seven Swans』
発売日: 2004/3/15
ジャンル: フォークロック
3rdアルバム『Michigan』
発売日: 2003/6/30
ジャンル: フォークロック
2ndアルバム『Enjoy Your Rabbit』
発売日: 2001/9/16
ジャンル: フォークロック
1stアルバム『A Sun Came』
発売日: 1999/6/13
ジャンル: フォークロック
Sufjan Stevensプロフィール
“ミシガン州出身ニューヨーク在住のシンガー・ソングライター兼マルチ・インストゥルメンタリスト。『ミシガン』(2003年)と『セヴン・スワンズ』(2004年)で注目を集め、続く『イリノイ』(2005年)がRolling StoneやNPR等有力メディアから絶賛を浴び、ビルボードの”Heatseekers Albums”第一位を獲得、世界的な大成功を収めた。2008年には初来日単独ツアーも行っている。2015年、5年ぶりとなる待望の新作アルバム「Carrie & Lowell」を発表。”
Youtube
- Sufjan Stevens, “Fourth Of July” (Official Audio)
- Sufjan Stevens – Chicago [The Politician Soundtrack Theme Song — OFFICIAL AUDIO]
- Sufjan Stevens – Mystery of Love (From “Call Me By Your Name” Soundtrack)
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
兵庫県出身のサイケデリック・ロックバンド、Daisy JaineのVo./Gt.。アメリカ・ボストンに留学経験があり、BELONGでは翻訳を担当。サイケデリック、オルタナ、60s、ロカビリーやR&Bと幅広く聴きます。趣味はファッション、写真、映画観賞。
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Twitter:@rio_daisyjaine