アメリカ出身のアーネスト・グリーンによるプロジェクト、Washed Out(ウォッシュト・アウト)の4枚目となるアルバム『Purple Noon』がリリースされた。

チルウェイブという音楽ジャンルのパイオニアとして、優美なサウンドスケープと地中海の海岸線に感化された光景が重なり、チルウェイブの新境地を切り開いた。

ではWashed Outの『Purple Noon』とは一体どのような作品なのか深く掘り下げていきたい。

Washed Outとは

Washed out
アメリカのアトランタを拠点に活動するアーネスト・グリーンによるプロジェクト、Washed Out(ウォッシュト・アウト)。

2009年にデビューEP『Life of Leisure』をリリースし、海外音楽メディアで大きく評価され、音楽ジャンル、”チルウェイブ”の代表的なアーティストとして知られるようになる。

2011年にアメリカの名門インディーズレーベルであるSub Popから、デビューアルバム『Within and Without』をリリースし、2013年にはセカンドアルバム『Paracosm』を発売。

2017年にはLAを拠点にしたレーベル、Stones Throwへとレーベル移籍し、サードアルバム『Mister Mellow』をリリースする。

そして2020年には4作目となるアルバム『Purple Noon』を再びSub Popからリリースした。

チルウェイブについて

チルウェイブとは、深いエフェクトの掛かったサウンドスケープ、ノスタルジックなメロディー、打ち込みのビートなどが特徴の音楽ジャンルだ。

Washed Out(ウォッシュト・アウト)のデビューEP『Life of Leisure』がチルウェイブの先駆けとなり、2010年あたりからインターネットで広がりを見せてきた。

他に、Toro y MoiやNeon Indianなどがチルウェイブを代表するアーティストとして知られている。

Washed Outの代表作

Washed Out(ウォッシュト・アウト)の代表作と言えば、2011年発売のデビューアルバム『Within and Without』だろう。

デビューEP『Life of Leisure』で確立したチルウェイブの本質はそのままに、艶やかさと透明度のあるサウンドがブラッシュアップされた作品だ。

同じチルウェイブの括りにあるToro y Moiと多少テイストの被るところがあったが、『Within and Without』ではWashed Outとしての滑らかな個性を獲得した。

Billboard 200では26位にチャートインし、アメリカ国内だけで89,000枚を売り上げたマスターピースである。

新作アルバム『Purple Noon』

Washed Out(ウォッシュト・アウト)の4作目となるアルバム『Purple Noon』は、地中海の海岸線に着想を得て制作されたもので、アルバムのジャケットにも表現されている。

アルバム名の『Purple Noon』は、ルネ・クレマンが1960年に発表した同タイトルの映画に由来し、パトリシア・ハイスミスの小説『The Talented Mr. Ripley』基づいており、“現実逃避”が主題となっている。

前作の『Mister Mellow』に比べ、今作『Purple Noon』は曲に対してのアプローチが大きく変化した。いや、”チルウェイブへの原点回帰”と言った方がいいのかもしれない。

『Purple Noon』全曲紹介

そんな『Purple Noon』の幕開けとなる「Too Late」からすでに、今作はボーカルをドッシリと曲の中心で確立させる、という強い意志を感じる。

「Face Up」では、淡くも芯のある、透き通ったサウンドが作品の見せる”地中海の情景”にリスナーを連れていく。

「Time to Walk Away」のエキゾチックなイントロや、打ち込みのビートと生のドラムのコントラストが絶妙なスパイスとなり、アンビエントの音像をタイトに集約させている。

続く「Paralyzed」では、黄昏時に光と影が交錯するかのようなサウンドスケープが身に染み、アルバム内でも目を引く中国の古典音楽のようなイントロから始まる「Reckless Desires」へと続く。

生楽器であるクラシックギターでさえも、チルウェイブと同化させてしまうセンスに脱帽する「Game of Chance」。

地中海からインスパイアされたこともあり、異国情緒と共に非現実的な環境への切望の意が伝わる。

まるで足音かのようなビートが響き渡る「Leave You Behind」。そのビートは、”君を置き去りにする”というタイトルが表す通り、立ち去っていく悲しげな足音にさえ聞こえてくる。

そして「Don’t Go」、すなわち”行かないでくれ”という対照的なタイトル曲へと繋がる。深くリバーブの掛かった音像の波に飲み込まれるが、流れに身を委ねると心地よい。

シルクのように滑らかなシンセサイザーとエレキギターの音色が優しく鼓膜に触れる「Hide」。『Within and Without』で聴くことのできたチルウェイブサウンドがここに復活する。

そしてアルバムの最後を飾る「Haunt」ではダークさとレイドバックしたサウンドスケープが共存する。

それはまるで旅の終わりに感じる、“思い出の回想と現実に戻る寂しさ”という相反する感情を混合させた感覚を聴き手に与えながら、“地中海の旅”は幕を閉じる。

チルウェイブの復活

Washed out
地中海、白を基調とした街並み、パープルに染まった空。

『Purple Noon』のアルバムジャケットから伝わるこれらのイメージが、奥行きと広がりの計算された音像によって繊細に構築され、

曲と情景が頭の中でピッタリと重なった瞬間このアルバムの世界が完成する。

Washed Out(ウォッシュト・アウト)の前作『Mister Mellow』は以前まで所属していたレーベルSub Popではなく、Stones Throwよりリリースされた。

Stones Throwのレーベルカラーに合わせたのか、一曲一曲の尺が短く、ビートやグルーヴを重視する傾向があった。

だが今作『Purple Noon』では音の透明度が飛躍的に上がり、幻想的な空間を演出するだけでなく、歌モノとしてのポテンシャルも秘めたチルウェイブへと発展した。

それは、デビューアルバム 『Within and Without』と同じプロデューサーのベン・アレンともに、Sub Popという古巣に帰ったことも大きな要因の一つであると考えられる。

“チルウェイブ”という音楽ジャンルの進化の軌跡を全感覚で味わえる名作こそが『Purple Noon』である。

リリース

4thアルバム『Purple Noon』

発売日: 2020年8月7日
レーベル: Sub Pop
プロデュース:Washed Out
ミックス:ベン・アレン(ナールズ・バークレー、アニマル・コレクティヴ、ウォーク・ザ・ムーン他)
発売元:ビッグ・ナッシング / ウルトラ・ヴァイヴ
品番:OTCD-6821
その他:世界同時発売、解説/歌詞/対訳付(予定)、日本盤ボーナス・トラック未定
収録曲:
1. Too Late
2. Face Up
3. Time to Walk Away
4. Paralyzed
5. Reckless Desires
6. Game of Chance
7. Leave You Behind
8. Don’t Go
9. Hide
10. Haunt
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3rdアルバム『Mister Mellow』

発売日: 2017/6/29
レーベル: Stones Throw Records

2ndアルバム『Paracosm』

発売日: 2013/8/7
レーベル: よしもとアール・アンド・シー

1stアルバム『Within and Without』

発売日: 2011/7/6
レーベル: Payne City

ライブ情報

Washed Out(ウォッシュト・アウト)“Purple Noon Nights”
Washed Out(ウォッシュト・アウト)が新作アルバム『Purple Noon』の発売週にオンラインライブイベント“Purple Noon Nights”を開催することを発表した。

“Purple Noon Nights”8月6、7、8、9日の4日間に渡って開催される。詳細はSub popのオフィシャルページも併せて確認して欲しい。

  • 8/6(木):『PURPLE NOON(パープル・ヌーン)』、リスニング・パーティー
  • Washed Out’s Purple Noon Listening Party(※日本時間 8月7日 9:30)

  • 8/7(金):フルバンド編成でのライヴ・パフォーマンス。『PURPLE NOON(パープル・ヌーン)』からの選ばれた曲+過去作からの楽曲をプレイ。
  • Washed Out – Full Band Performance(※日本時間 8月8日 9:30)

  • 8/8(土):Q&A(インスタグラム・ライヴ・アカウントを使用 / @realwashedout)
  • https://www.instagram.com/realwashedout/

  • 8/9(日):DJ SET
  • Washed Out’s Magic Hour Mix DJ set(※日本時間 8月10日 9:30)

※リスニング・パーティー、ライヴ・パフォーマンス、DJ SETはWashed OutのYouTube、Facebook、Instagram TV、Twitchからライヴ配信されます。

※このストリーミング配信は無料であり、且つ海外主導で行われる為、国内レーベルを介する問い合わせや配信トラブルに対する保証は行っていないとのこと。

プロフィール

Washed out

“2009年、EP『Life of Leisure』のリリースにより、静かで孤独な暮らしをジョージアで送っていたErnest Greeneは時代の寵児となってしまった。大学を出ても職が見つからずその暇な時間を利用して作られた彼の曲は、瞬く間にインターネットを介して全世界に広まった。その年のイヤーポールを決める投票で、このEPはどの音楽メディアでも高い評価を獲得。ローファイでチルアウトなフィーリングを持った彼の曲はチルウェイヴと呼ばれ、史上初めてネット上で起きたムーヴメントとなり、数々のフォロワーを生んでいった。また同EPに収録された曲「Feel It All Around」に対するリアクションは日に日に大きくなり、Redditによる「ベストサマーソング」投票では1位を獲得した。2011年、Greeneはファースト・アルバム『Within and Without』をSub Popよりリリース。プロデューサー、Ben H. Allen(Walk the Moon、Animal Collective、Gnarls Barkley)とレコーディングされたこのアルバムは、全米チャートで26位のヒットを記録。その後のツアーは2年にも及んだ。2013年、アセンズの郊外へと移ったグリーンは、再びBen H. Allenをプロデューサーに迎えたセカンド・アルバム『Paracosm』をリリース。アルバムは全米チャートの21位を獲得し、前作以上の成功を収めた。Stones Throwへと移籍したグリーンは2017年、サード・アルバム『Mister Mellow』をリリース。4年振りとなったこのアルバムは全曲セルフ・プロデュースで、DVDが付加されたヴィジュアル・アルバムとなり話題を呼んだ。”

引用元:Washed Out(ウォッシュト・アウト)プロフィール(Big Nothing)

Youtube

  • Washed Out – Time to Walk Away [OFFICIAL VIDEO]
  • Washed Out – Too Late [OFFICIAL VIDEO]
  • Washed Out – Paralyzed [OFFICIAL VIDEO]

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チルウェイブ

ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、インターナショナルビジネスを専攻。兵庫県出身のサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。2017年には全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をインディーズレーベル、Dead Funny Recordsよりリリース。サイケデリック、ドリームポップ、ソウル、ロカビリーやカントリーなどを愛聴。好きなバンドはTemplesとTame Impala。趣味は写真撮影と映画鑑賞。
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