最終更新: 2023年3月22日

The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)はアメリカ、ロングアイランド出身のバロック・ポップバンド。

エルトン・ジョンやThe Zombiesを始め、数々の大物ミュージシャンから絶賛される天才兄弟だ。どうしてThe Lemon Twigsは天才と呼ばれるのだろうか。

そこで彼らの3つの特徴と共に、代表作『Do Hollywood』と最新作『Songs For The General Public』について掘り下げていく。

The Lemon Twigsとは

The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)
The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)はアメリカのニューヨーク州ロングアイランド出身のバロック・ポップバンド。

メンバーはブライアンとマイケルのダダリオ兄弟により構成され、彼らが高校生の時に結成された。

ブライアンとマイケルは共にマルチプレイヤーであることに加え、基本的には自分たちでプロデュースからミックスまでを行っている。

2015年にはイギリスの名門インディーレーベルの4ADと契約し、2016年にファーストアルバム『Do Hollywood』でデビュー。

2017年にはEP『Brothers of Destruction』をリリースし、フジロックで来日を果たす。

翌年2018年にはセカンドアルバム『Go To School』を発売し、来日公演を成功させる。

2019年にサマーソニックへ出演。そして2020年にサードアルバム『Songs for the General Public』をリリースした。

The Lemon Twigsの3つの特徴

The Lemon Twigs
The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)が天才と呼ばれるのにはいくつかの理由がある。

  • クラシックとロックをモダンに昇華させたバロック・ポップ。
  • 兄弟揃って複数の楽器を演奏できるマルチプレイヤーであること。
  • 音楽の歴史を今に伝承する音楽性。

以上3つの特徴に焦点を絞り、なぜThe Lemon Twigsが天才と呼ばれているのか紐解いていきたい。

バロック・ポップという音楽性

The Lemon Twigsを象徴する音楽ジャンルと言えばバロック・ポップだ。

バロック・ポップとは、60年代頃に広まった、クラシックのエッセンスをロックに落とし込んだ音楽ジャンルである。

まるで演劇のような目まぐるしい曲展開や、おとぎ話の世界に迷い込んだかのような世界観がクラシック要素と結びついている。

実は幼少期に、兄のブライアンはブロードウェイ、弟のマイケルはテレビや映画出演の経験がある。

人前で表現する、という経験が物心つく前から自然と身についていたことが音楽性に影響を与えてきたはずだ。

バロック・ポップの持つ高貴なクラシック要素、そしてグラムロックの濃いメイクや奇抜なルックス。

この2つの対極にあるイメージが折り重なることにより、多様化した現在の音楽シーンでも通用する、The Lemon Twigsオリジナルのバロック・ポップが確立したのではないだろうか。

マルチプレイヤーであること

The Lemon Twigsの音楽性において、高度な演奏テクニックは必要不可欠である。

ダダリオ兄弟は、二人ともが多様な楽器を演奏できるマルチプレイヤーなのだ。

ダダリオ兄弟の父親であるロニー・ダダリオもミュージシャンであったことから、二人は幼い頃から楽器に触れる機会が多かった。

ボーカル、ギター、ベース、ドラム、ピアノの基本的なバンドアンサンブルを始め、バイオリンやオーケストラ、さらにミックスやプロデュースなど幅広い才能に愛された天才兄弟なのである。

ギターとピアノで作曲

アーティストは自分の主要楽器で作曲するのが一般的だ。

ギターをメインに作曲する場合と、ピアノをメインに作曲する場合とでは大きな違いがある。

ギターでは指の届かない音を組み合わせた和音やコードの構築など、物理的に難しいことをピアノではアプローチできる。

ギターソロなどのギター特有の利点もあるが、双方からのアプローチと高度なテクニックにより、先ほど紹介したバロック・ポップの世界観がより深く創り上げられるのだ。

歴史を伝承する音楽

The Lemon Twigsの音楽を聴いて、The Beatles、The Beach Boys、Queen、Todd Rundgrenなど、いわゆるレジェンド・アーティストを思い浮かべた人は少なくないはずだ。

誰もが知る歴代アーティストからインスパイアされると、盗作と非難されたり、自分自身のカラーが綺麗に発色されないケースが多い。

ではどうして、The Lemon Twigsはそのような批判無しに、自身のアイデンティティーを築き上げ、世界で評価されたのか。

それは、The Lemon Twigsは曲中でリスナーに聴かせるポイントを各所に作り、そこでレジェンドたちの特色を程よく馴染ませる、そのバランス感覚に優れた才能があるからだ。

そのため二番煎じではなく、幅広い年齢層のファンを獲得することに繋がったのではないだろうか。

歴史の継承と発展を一身に担う若き才能こそがThe Lemon Twigsである。

代表作『Do Hollywood』

The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)のデビューアルバム『Do Hollywood』。

このアルバムは、アメリカのインディーロック・バンド、Foxygenのジョナサン・ラドがプロデュースを担当した。

シングル曲である「I Wanna Prove to You」や「These Words」を初めて聴いた瞬間、The Beatles、The Beach BoysやQueenなどの往年のレジェンドバンドたちの強みを全て受け継いだバンドなのだ、と確信したのを覚えている。

遊び心のある転調やウィットに富んだアレンジ。それに相反するキャッチーなメロディーと多彩なハーモニー。

王道と奇抜さを一つに集約し、The Lemon Twigsカラーに染め上げた作品こそが『Do Hollywood』である。

最新作『Songs For The General Public』

The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)の最新アルバム『Songs For The General Public』。

元々は2020年5月1日に発売予定だったが、新型コロナウイルスの影響で8月21日へと発売が延期となった。

『Songs For The General Public』は、ダダリオ兄弟が住むニューヨーク州ロングアイランドの自宅にあるSonora Studioと、

Jimi Hendrixが建てたことで知られるElecrtic Lady Studioにてレコーディングされ、プロデュースもダダリオ兄弟が担当している。

そんな『Songs For The General Public』は、The Lemon Twigsのバラエティーに富んだ顔を覗かせる。

パワフルなコーラス隊、クラシックな70sポップスにグラムロック。

Ariel Pinkにも通ずる、奇抜ながらに人懐っこいポップソングの「Only A Fool」や、遊園地やオルゴールを想起させる子供のファンタジーワールドを展開する「Why Do Lovers Own Each Other?」。

一枚のアルバムでこれほどまでに曲ごとのテーマの振り幅が広いアルバムはなかなか無いが、その多様性を画一化できる才能が散りばめられている。

そこで、どの要素がこのアルバムを画一化しているのかと言うと、それは“ポップの要素”ではないだろうか。

アルバムタイトル『Songs For The General Public』、すなわち、“一般市民のための歌”。

The Lemon Twigs目線から見える一般市民が、歴史を受け継いだ普遍的なポップによって表現された一枚である。

天才ダダリオ兄弟

The Lemon Twigs(2020)
バロック・ポップを現代に昇華する若き天才兄弟、The Lemon Twigs(ザ・レモン・ツイッグス)。

彼らはまるで、ページをめくる度に全く新しい世界を見せてくれるカラフルな絵本のようなバンドだ。

それは曲展開にも当てはまるが、曲単位やアルバム単位でも七変化し、常にリスナーをワクワクさせてくれる。

さらに話を広げると、音楽の歴史としても過去の音楽を踏襲し、組み合わせ、新たなページを刻んでいる。

The Lemon Twigsが2000年代を代表するアーティストの一つとして、後世に名を残す日が来るのが非常に楽しみであると同時に、彼らが年齢を重ねてどのような音楽を創作していくのか末恐ろしい。

Everything Harmony

The Lemon Twigs『Everything Harmony』
The Lemon Twigsが、Captured Tracksより4枚目のスタジオアルバム『Everything Harmony』を2023年5月5日にリリースすることを発表した。

本作は、サイモン&ガーファンクルやアーサー・ラッセルから影響を受けたアコースティック主体の作品に仕上がっている。

本作の聞き所はブライアンとマイケルのダダリオ兄弟の美しいハーモニーと巧みなソングライティングにある。

アルバムの収録曲は全てThe Lemon Twigs自身によって書かれ、マンハッタン、ブルックリン、サンフランシスコのスタジオでダダリオ兄弟が自らレコーディング、プロデュース、エンジニアリングを手掛けた。

現在、アルバムより、先行シングルの3曲(「Corner Of My Eye」、「Any Time Of Day」、「In My Head」)のMVが公開されている。

また、The Lemon Twigsは「In My Head」について、“自分の内面と認識されている自分との間の断絶について歌っている”と語っている。(2023年3月22日 BELONG編集部追記)

The Lemon Twigs – In My Head (Official Video)

The Lemon Twigs – Any Time Of Day (Official Video)

The Lemon Twigs – Corner Of My Eye (Official Video)

リリース

4thアルバム『Everything Harmony』

The Lemon Twigs『Everything Harmony』
発売日: 2023年5月5日
フォーマット:Mp3
収録曲:
1.When Winter Comes Around
2.In My Head
3.Corner Of My Eye
4.Any Time Of Day
5.What You Were Doing
6.I Don’t Belong To Me
7.Every Day Is The Worst Day Of My Life
8.What Happens To A Heart
9.Still It’s Not Enough
10.Born To Be Lonely
11.Ghost Run Free
12.Everything Harmony
13.New To Me
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3rdアルバム『Songs for the General Public』

発売日: 2020年8月21日
ジャンル: バロック・ポップ
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
収録曲:
01. Hell On Wheels
02. Live In Favor Of Tomorrow
03. No One Holds You (Closer Than The One You Haven’t Met)
04. Fight
05. Somebody Loving You
06. Moon
07. The One
08. Only A Fool
09. Hog
10. Why Do Lovers Own Each Other?
11. Leather Together
12. Ashamed
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2ndアルバム『Go to School』

ジャンル: バロック・ポップ
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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1stアルバム『Do Hollywood』

ジャンル: バロック・ポップ
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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プロフィール

The Lemon Twigs(2020)

“並外れた才能を持つ2人がザ・レモン・ツイッグスとして初登場したのは、2016年。ロック史に残る素晴らしいメロディーの数々が散りばめられた デビューアルバム『Do Hollywood 』 は、 「バロック・ポップの金字塔を打ち立てた」などと各メディアから賞賛され、華々しいデビューを飾った。 その後 2018 年には、人間の男の子として育てられたチンパンジーのシェーンが綴った胸が張り裂けるような成長のストーリーを描いた『Go To School』をリリースし、大胆なコンセプトに沿って壮大な音を作り上げるバンドのサウンドを確立させた。日本では 2017 年にフジロックに出演し2018年には来日ツアーを敢行。 2019年には サマー・ソニックに出演を果たしている。”

引用元:BEATINK

海外メディアの評価

“「The One」には、70年代のロックとサイケポップを完璧に現代化するレモン・ツイッグスの能力が表れている。この曲では、音の勢いが万華鏡のような厚い層を成し、最初のギターリックから火がつき、決して減速することはない”
– Consequence of Sound

“ダダリオ兄弟が70年代中旬の芝居じみた、グラム風パワーポップモードに入っている”
– BrooklynVegan

“ジャラジャラとしたポップ・チューン”
– DIY Magazine”

引用元:BEATINK

The Lemon Twigs代表曲(Youtube)

  • The Lemon Twigs – The One
  • The Lemon Twigs – These Words
  • The Lemon Twigs – I Wanna Prove to You

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ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、インターナショナルビジネスを専攻。兵庫県出身のサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。2017年には全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をインディーズレーベル、Dead Funny Recordsよりリリース。サイケデリック、ドリームポップ、ソウル、ロカビリーやカントリーなどを愛聴。好きなバンドはTemplesとTame Impala。趣味は写真撮影と映画鑑賞。
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