4ADからデビューアルバム『New Long Leg』をリリースするサウスロンドンのポスト・パンクバンド、Dry Cleaning(ドライ・クリーニング)。

フローレンス・ショウ(Vo.)の詩を朗読するかのようなボーカルと、トリッキーな歌詞をポスト・パンクサウンドにのせているのが魅力だ。

今回のインタビューから見えてきたのは、Dry Cleaningの独特なスタイルは決して奇をてらった訳ではなく、自然と形成されたものだとわかった。

デビューアルバム『New Long Leg』とともに、屈託のないDry Cleaningの人間性が見えるインタビューを楽しんで欲しい。

Dry Cleaningインタビュー

Dry Cleaning(ドライ・クリーニング)
アーティスト:フローレンス・ショウ(Vo.)トム・ダウズ(Gt.)ニック・バクストン(Dr.) インタビュアー:矢部友宏 通訳:原口美穂

-フローレンスの歌うのではなく、詩を読むような歌唱スタイルになったのが面白いと思います。こういったスタイルはDry Cleaning(ドライ・クリーニング)の活動の中でどのようにしてできあがっていったのでしょうか。
フローレンス・ショウ:私にとっては、それがすごく自然なことなの。私は元々おしゃべりが好きだし、あと大学でレクチャーをやってアートを教えていたから、大勢の前に立って彼らに向かって話すというのが日常だったのよね。仕事でそれをたくさん経験していた。だから、あのスタイルは私にとって全くの新しい挑戦ではなかったし、大勢の前で話しても私は緊張しないのよ。歌を歌うということのほうが、私にとってはよほど怖い(笑)。最初、どうやったら怖気づかずに歌えるかなと考えたんだけど、その結果、あれが一番自分にとってナチュラルなアプローチだった。そして実際やってみたら、全員が納得するくらい上手く行ったの。皆がそれを聴いていてしっくりきたし、バンドメンバー全員が表現したい文脈にもぴったりだった。もちろん当時から練習もたくさんしたし、経験もたくさんしたし、もっと色々考えたりもしたから、前に比べると進化はしてる。でもこのスタイルは、出来上がったというよりは、最初からいきなりこのスタイルが始まったのよ。

-普通に歌うことを考えたことはありますか?
フローレンス:メロディで歌ったり、コーラスで歌ったり、フックの部分だけ歌ってる曲は数曲ある。それも私にとっては自然だからやったんだけど、私にとって”自然に歌う”ということは、説明するなら、シャワーで歌うような感じなの。それってあまりスポークン・ワードと変わらないと思うのよね。スポークン・ワードの中でもメロディックなものもあるから。話言葉にもアップダウンがあるし、リズムがあるでしょ。だから、私が普通に歌っている部分は、どちらかといえばそれの延長線上にあるもの。私にとっては同じなのよね。

New Long Leg

-デビューアルバム『New Long Leg』は4ADからリリースされるそうですね。私は社長のサイモン・ハリデーが来日した際にインタビューしたことがあるのですが、アーティストの意思を尊重する姿勢が素晴らしいと思いました。Dry Cleaningはどうして4ADからリリースしようと思ったのでしょうか。
フローレンス:まさに彼(サイモン・ハリデー)が話したその姿勢。彼が話したことは本当よ。業界の中には、口ではそう言っても実際はそうでないところも沢山ある(笑)。でも4ADは実際にアーティストの意思を尊重してくれるの。
ニック・バクストン:本当は、彼のその姿勢こそがレーベル界でノーマルになるべきなんだけどね。それを本当に実現している4ADで、僕らはハッピーだよ。あと4ADにしたもう一つの理由は、彼らが僕たちにとっての憧れのレーベルだったから。どのレーベルとも話してない頃から、そのレーベルからリリースできたら最高だなって思えるレーベルだった。
トム・ダウズ:それに、4ADはすごく強いアイデンティティを持ったレーベルだしね。最初の頃はCocteau TwinsやDead Can Danceみたいなゴスロックやニューウェイブのバンドもいたし、PixiesやThe Breedersなんかもいる。DeerhunterやGrimesもそうだし、沢山の存在感が強いアーティストが4ADから作品をリリースしているし、そういったバンドは皆、ダークな部分がありながらもユーモアのセンスがあるバンドだと思うんだ。そういう部分で、僕たちも4ADがホームのように感じる。自然にそこにフィットしているような気がするんだ。

「Strong Feelings」の歌詞

Dry Cleaning「Strong Feelings」MVサムネイル
-「Strong Feelings」の歌詞には“It’s Europe”というフレーズがあり、とても印象的です。この歌詞にはどのようなメッセージが込められているのでしょうか。
フローレンス:あれはメッセージではないの。私が好むのは、意識的にメッセージを込めることよりも、色々なテーマに対する皆の関心を引くこと。私は個人的に、ブレグジットを恋愛の問題として捉えたのよね。別れとか、それによってカップルが傷つくとか。そしてそれが人間関係にどう影響するのかに興味があった。イギリスには、どこに住んだらいいか心配している人たちが沢山いたの。ルールがどう変わるのかわからず、これからどうなるかを心配している人たち。私の周りには、それで悩んでいるカップルが沢山いたのよね。自分のパートナーが果たしてイギリスに残れるのかとか、結婚したらどうなるのかとか。あともう一つは、政治的、国際的なスケールと同時に、家庭内のより小さなスケールでブレグジットがどう影響するのかにも興味があった。人々の感情にどう影響するか、とか。それを表現したものがあの歌詞になったの。でも、よし!ブレグジットのこういう面についての歌詞を書こう!とか決めて書いたわけじゃなくて、たまたまその時自分がよく考えていたのがそれだったから、自然と言葉に出て来たというだけ。私の場合、頭の中にあるものを何も意識せずそのまま文字にして、それを書いたあと読んで、なるほど、これはあのことに関して書いてるのかって気づくことが多いの(笑)。今回もそんな感じだった。

-『New Long Leg』の歌詞はAIが無作為に抽出した言葉をまとめたかのような不思議な内容になっていると思います。まるで目に止まったものを口に出しているかのようでもありますが、どうしてこのような歌詞になったのでしょうか。
フローレンス:アルバムの歌詞は、様々な物事のコンビネーション。無意識に書く時もあるし、自分自身に課題を与えてそれに基づくものを誘発させようとする時もある。何かを見てそれを書き留める時もあるし、バスで人の会話が聞こえてきて、それを書き留めることも。自分自身のフィーリングについて書く、すごくパーソナルな書き方をする時もあるし、歌詞の書き方が沢山あって、それをミックスしたものが歌詞になるの。今でも色々な書き方を自分でも探っているところ。まだ歌詞というものを書くようになって間もないから、これというものを見つけ出せていないのよね。でも今のところは、さっき話した全てのプロセスが私の歌詞の書き方。頭の中にあるものが混ざり合ったものが歌詞になっているの。

『New Long Leg』の意味

-どうして『New Long Leg』というアルバムタイトルにしたのでしょうか。
フローレンス:あのタイトルは、元々はある曲を書いている時にその曲に適当につけた名前だった。でも、それがそのまま曲のタイトルになったの。前は“Long Leg”って呼んでたんだけど、その新しいバージョンを作ったから”New”をつけて“New Long Leg”になった。そしたらそのうち、そのフレーズが自分たちにとってすごくキャッチーになっていったのよね。あの言葉の頭韻法が好きだったし、サウンドが好きだったから。それに、テーマとして面白い部分もあった。新しい長い足って生物学的ホラーでもあるし、朝起きたら自分がゴキブリになってたっていうフランツ・カフカのストーリーみたいでしょ。
ニック:「変身」だね。
フローレンス:そう。朝起きたら新しい身体のパーツがついてる、みたいな(笑)。動揺を感じさせたりやショッキングな何かを思わせるアイディアでもあるし、同時にばかばかしくて面白いアイディアでもある。それに面白いと思ったのは、足ってありふれた言葉なのに、人口装具の足かもしれないし、テーブルの脚かもしれないし、一つの何かに断定できない言葉でもあるわよね。あのタイトルのそういう部分が気に入ったの。
ニック:僕が個人的にいいなと思ったのは、なんだかマーベルのヒーローの体が進化する、そんなイメージが想像できたから。必要な時に身体能力がアップグレードされて強くなるみたいに、ファーストアルバムを作って自分たちがバンドとしてアップグレードされた、みたいなさ(笑)。
フローレンス:それいいわね!(笑)。
ニック:あと、タイトルトラックの「New Long Leg」はアルバムの真ん中に収録されているんだけど、僕は、あの曲は中心となってレコードを支えているアルバムのカギとなるトラックだと思ってるんだ。

-なぜそのトラックがアルバムの中心となるトラックだと思うのでしょうか?
ニック:まず、メンバー全員が大好きな曲であるということ。バンドで音楽を作ると、曲によってそれぞれのパートの貢献具合が違ってくる。それは自然なことだし、悪いことでは決してない。でもあの曲では、皆が平等に貢献しているんだ。皆が同じ力の加減でパフォーマンスしているし、それがすごく面白いものを生み出していると思う。4人全体を上手く披露できているトラックなんだよ。
トム:あのトラックでは、短い時間で本当に沢山のことが起こっている。ポップソングを作る上で、それはすごく難しいことなんだ。作品の中で色々な事が起こる、旅ができるポップ・ソングを作るというのは、僕たちにとってやりがいのある挑戦だった。それに、あの曲が持っている楽しい雰囲気も魅力なんじゃないかな。

-『New Long Leg』をどんな人に聴いて欲しいと思いますか?
フローレンス:少し孤独を感じている人たちかな。それか、世間から少し距離を感じている人たちが作品を聴いて楽しんでくれたらすごく嬉しい。そういう音楽に出会えた時って、すごく満足感を得ることができるのよね。私自身が好きなバンドも、そういう気持ちにしてくれる音楽を作るバンドなの。親近感を覚える音楽。その内容がリアルなのか空想なのかは関係なく、聴いていて心が落ち着く音楽。皆が私たちのアルバムを聴いて、それを感じてくれたらすごくクールね。それが私の一番の願い。
トム:僕も同じ。僕たち自身が、孤独を感じたり、馴染みを感じられないことがある。僕の場合は、Radioheadを聴いた時に初めて、自分のための音楽があるんだ!と思った。僕は男子校に通ってたんだけど、いわゆる男らしい男ではなかった。繊細でアート系だったんだ(笑)。そういう人たちが僕らの音楽を聴いて、同じ気持ちになってくれたら最高だな。そういう世界が作れるように僕たちも頑張ったから、皆がその世界に居場所を見つけて、僕らギャングの一員になってくれたら嬉しい。
ニック:考えたことなかったな。音楽を作ってると、自分の小さな世界に閉じこもってしまうことがある。他の人も自分と同じように感じると思っちゃうんだよね(笑)自分と同じように誰もがこの曲を好きなはずって(笑)僕はただ、オーディエンスがいてくれるだけで嬉しいよ。誰かが僕らの聴いてくれるということ自体が素晴らしいことだから。

以上です。回答いただきありがとうございました!まだいつになるかはわかりませんが、日本でライブされる日を楽しみにしています。
Dry Cleaning:ありがとう!自分たちも日本に行ってショーができるのを楽しみにしているよ。

リリース

1stアルバム『New Long Leg』

発売日: 2021/4/2
ジャンル: ポストパンク
収録曲:
01. Scratchcard Lanyard
02. Unsmart Lady
03. Strong Feelings
04. Leafy
05. Her Hippo
06. New Long Leg
07. John Wick
08. More Big Birds
09. A.L.C
10. Every Day Carry
11. Tony Speaks! *Bonus Track for Japan
12. Bugg Eggs *Bonus Track for Japan
フォーマット:CD
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Dry Cleaningプロフィール

Dry Cleaning(ドライ・クリーニング)

“ドライ・クリーニングはニック・バクストン(ドラム)、トム・ダウズ(ギター)、ルイス・メイナード(ベース)、フローレンス・ショウ(ヴォーカル)の4人からなるバンドで、2017年に行われたカラオケ・パーティーでの共演をきっかけに結成。当初インスト・バンドとして作曲をスタートし、半年後には当時大学の講師を務め、絵画の研究をしていた音楽キャリアが全くないフローレンス・ショウがヴォーカルとして加入することで現在の編成となった。

2019年にはリハーサル・スタジオを兼ねた小さなガレージで制作が行われた2枚のEP「Boundary Road Snacks and Drinks」と「Sweet Princess」を発表。R.E.M.と並んでUSインディー黎明期を牽引したザ・フィーリーズ、アーサー・ラッセルも在籍したアーニー・ブルックスが率いる伝説のバンド、ザ・ネセサリーズ、そしてトーキング・ヘッズやディーヴォと共にニュー・ウェイヴを代表するB52sやパイロンなど80年代のアメリカで活躍したバンドからの影響をルーツにしたシンプルながらも一筋縄ではいかないサウンドはサウス・ロンドンのシーンで瞬く間に注目を集め、イギー・ポップが賛辞を送り、ブラック・ミディやフォンテインズD.C.とともにStereogum誌の「Best New Bands Of 2019」に選出された。”

引用元:Dry Cleaning(ドライ・クリーニング)プロフィール(Beatink)

Dry Cleaning代表曲(Youtube)

  • Dry Cleaning – Scratchcard Lanyard (Official Video)
  • Dry Cleaning – Unsmart Lady (Official Video)
  • Dry Cleaning – Strong Feelings (Official Video)

ライター:矢部友宏

BELONG Mediaの編集長。これまでに音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻し、10年以上日本・海外の音楽の記事を執筆。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@boriboriyabori

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