最終更新: 2022年5月15日
セイント・ヴィンセント(St.Vincent)の6作目となるアルバム『Daddy’s Home』のリリースが発表され、先行シングル「Pay Your Way In Pain」がリリースされた。
そこでこの記事では、「Pay Your Way In Pain」の歌詞を和訳し、内容について考察している。
女性が日常生活を送るうえで直面する数々の苦悩。
普通に生きることすら難しくなっているこの世界で、セイント・ヴィンセントが感じたこととは?
目次
セイント・ヴィンセントとは
セイント・ヴィンセント(St.Vincent)とはニューヨークを拠点に活動している女性シンガーソングライターである。
アニー・クラーク(Annie Clark)がセイント・ヴィンセントと名乗り活動している。
かつては、アメリカ人SSWのスフィアン・スティーヴンス(Sufjan Stevens)のサポートメンバーとして活動していた経歴を持つ。
2007年にファーストアルバム『Marry Me』をリリースし、『Actor』を始め、第61回グラミー賞でベスト・ロック・ソングなどを受賞した『Masseduction』などを含む計5作のアルバムを発売。
そして2021年5月14日に6作目となるアルバム『Daddy’s Home』をリリースする。
Pay Your Way In Painについて
セイント・ヴィンセント(St.Vincent)の6枚目となるアルバム『Daddy’s Home』に収録され、先行リリースされた新曲「Pay Your Way In Pain」について。
セイント・ヴィンセントはNMEのインタビューにて、“「Pay Your Way In Pain」の一部は2021年ならではのブルースなの。”と答えている。
『The Nowhere Inn』の映画監督であるビル・ベンズによって撮影されたMVは、1970年代のニューヨークの世界観を表現している。
セイント・ヴィンセント(St.Vincent) – Pay Your Way In Pain (Official Video)
Pay Your Way In Pain和訳
苦しくても経済的に自立しないといけないという意味を持つ、セイント・ヴィンセント(St.Vincent)の新曲「Pay Your Way In Pain」。
日々の暮らしで直面する苦しみとは一体何なのか、歌詞を和訳して内容を掘り下げていく。
苦しくても経済的に自立しないといけないの
どれだけ恥ずべきことでも、自分の道を祈り続けなさい(そうよね)
“You got to pay your way in pain
You got to pray your way in shame (Yeah, ow)”引用元:セイント・ヴィンセント(St.Vincent)「Pay Your Way In Pain」歌詞(Genius Lyrics)
買い物に出かけたの、お腹がちょっと空いてて
でもお金がないうえに、お店の棚は全て空っぽ
だから銀行へ行って貯金残高を確認した
銀行員は私を見て、“あなたの記録はございません。”と言った
そんな・・・、私たちの存在は忘れ去られたの?
ショーはまだ始まったばかり
道は穴でデコボコ
落ち着いて、持ちこたえて、頭を下げて、両手を挙げて、そして・・・
“I went to the store, I was feelin’ kinda hungry
But I didn’t have the money and the shelves were all empty
So I went to the bank to ch-ch-ch-check my checking
The man looked at my face, said, “We don’t have a record”
Oh no, you thought we had forgotten?
The show is only gettin’ started
The road is feelin’ like a pothole
Sit down, stand up, head down, hands up, and”引用元:セイント・ヴィンセント(St.Vincent)「Pay Your Way In Pain」歌詞(Genius Lyrics)
経済的に自立するのは苦しいわ
どれだけ恥ずべきことでも、自分の道を祈り続けなさい(そうね)
“Pay your way in pain
You got to pray your way in shame (Uh-huh)”引用元:セイント・ヴィンセント(St.Vincent)「Pay Your Way In Pain」歌詞(Genius Lyrics)
私のことを忘れたの?(何が欲しいの?望みは何?)
私が何を欲しいか知ってるでしょ(何が欲しいの?望みは何?)
私が何を欲しいか知ってるでしょ(何が欲しいの?望みは何?)
他に何もいらないわ、ベイビー
ただ愛して欲しいの
支払いと苦しみ
祈りと羞恥心
“Do you not remember me? (What do you want? What do you want?)
Do you know what I want? (What do you want? What do you want?)
You know what I want (What do you want? What do you want?)
Keep the rest, baby, ah, ah
I wanna be loved
Pay, pain
Pray, shame”引用元:セイント・ヴィンセント(St.Vincent)「Pay Your Way In Pain」歌詞(Genius Lyrics)
子ども達を見ようと公園へ行ったの
その母親たちは私のヒール姿を見て、“こっちへ来ないで”と言い放った
そして家へ帰ったけど、なんだか吐き気がする
家の鍵が全て取り替えられていて、我が子の顔を拝むことさえできないなんて
なんでなの、あなた通報したのね
ストーブはどんどん温度を上げていく
太陽が溶かしていく
持ちこたえて、落ち着いて、両手を上げて、そして崩壊していくの
“So I went to the park just to watch the little children
The mothers saw my heels and they said I wasn’t welcome
So I, I went back home, I was feelin’ kinda queasy
But all the locks were changed, my baby wouldn’t see me
Oh no, you’ve put your finger on it
The stove is only gettin’ hotter
The sun, it’s gotta, gotta melt it
Stand up, sit down, hands up, break down”引用元:セイント・ヴィンセント(St.Vincent)「Pay Your Way In Pain」歌詞(Genius Lyrics)
(何が欲しいの?望みは何?)
私が何を欲しいか知ってるでしょ(何が欲しいの?望みは何?)
愛して欲しいの(何が欲しいの?望みは何?支払いと苦しみ)
ただ愛されたいの(何が欲しいの?望みは何?祈りと羞恥心)
“(What do you want? What do you want?)
You know what I want (What do you want? What do you want?)
I wanna be loved (What do you want? What do you want? Pay, pain)
I wanna be loved (What do you want? What you do want? Pray, shame)”引用元:セイント・ヴィンセント(St.Vincent)「Pay Your Way In Pain」歌詞(Genius Lyrics)
Pay Your Way In Painで描かれた苦悩
セイント・ヴィンセント(St.Vincent)の新曲「Pay Your Way In Pain」は、日常生活を送るうえでの苦悩について描かれている。
“買い物に出かけたの、お腹がちょっと空いてて
でもお金がないうえに、お店の棚は全て空っぽ
だから銀行へ行って貯金残高を確認した
銀行員は私を見て、“あなたの記録はございません。”と言った
そんな・・・、私たちの存在は忘れ去られたの?”
この歌詞では、女性が経済的な問題から社会生活を送ることがいかに難しいのか、そして自分の存在は社会で認められないのか、という苦悩について示唆している。
“子ども達を見ようと公園へ行ったの
その母親たちは私のヒール姿を見て、‘こっちへ来ないで’と言い放った”
そしてこの一文では、ヒールを履いた自分が売春婦だと勘違いされ、社会の隅へと追いやられていく悲しみを表現しており、
自分の社会的地位への認識、そして真っ当に生きることがいかに大変なのかを痛感する様子が読み解ける。
どのエピソードも生々しく描かれているが、このような生活に潜む“苦悩”こそが重要なテーマである。
セイント・ヴィンセントはNMEのインタビューにて、“この世界では、生き延びることと尊厳のどちらかを選べと問い詰められているように感じるの。”と言っている。
生活するうえで苦難から逃れることはできない。だが、その苦難を乗り越えるからこそ素晴らしい未来が待っているという“希望”こそが、セイント・ヴィンセントが「Pay Your Way In Pain」で伝えたかったことではないだろうか。
セイント・ヴィンセントが新曲「Pay Your Way in Pain」について語ったNMEのインタビューはこちら
Pay Your Way In Pain作品クレジット
セイント・ヴィンセント(St.Vincent)の「Pay Your Way In Pain」のクレジットは下記となっている。
プロデューサー:St. Vincent & Jack Antonoff
作詞・作曲:St. Vincent & Jack Antonoff
レコーディング・エンジニア:Laura Sisk
リリース日:2021年3月4日
セイント・ヴィンセントアルバムリリース
Daddy’s Home(2021)
発売日: 2021/5/14
収録曲:
1. Pay Your Way In Pain
2. Down And Out Downtown
3. Daddy’s Home
4. Live In the Dream
5. The Melting Of The Sun
6. The Laughing Man
7. Down
8. Somebody Like Me
9. My Baby Wants A Baby
10. …At The Holiday Party
11. Candy Darling
フォーマット:Mp3
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Masseduction(2017)
発売日: 2017/10/13
ジャンル: オルタナティヴ・ロック
フォーマット:Mp3、CD
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St. Vincent(2015)
発売日: 2015/2/6
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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Strange Mercy(2011)
発売日: 2011/9/12
フォーマット:CD、アナログ
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Actor(2009)
発売日: 2009/5/4
フォーマット:CD、アナログ
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Marry Me(2007)
発売日: 2007/7/10
フォーマット:CD、アナログ
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セイント・ヴィンセント プロフィール
“米女性シンガーソングライター/ギタリスト。 ポリフォニック・スプリーやスフィアン・スティーヴンスのツアーメンバーとして活動後、ソロ活動を開始。2014年にリリースしたアルバム『セイント・ヴィンセント』が絶賛され、第57回グラミー賞「最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム」を受賞、US チャート12 位を獲得し多くのメディアで年間ベスト・チャート上位にランクイン、国際的に注目を集めた。 2017年10月に5枚目となるアルバム『マスセダクション』(「New York」のオリジナルヴァージョン収録)をリリース。第61回グラミー賞では、「最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム」にノミネートされ、「最優秀録音パッケージ」と収録曲「Masseduction」が「最優秀ロック・ソング」を受賞した。初来日は2012年、2017年Hostess Club All-Nighterにヘッドライナーとして出演、2018年8月にはサマーソニックで再来日を果たし日本の観客を魅了した。21世紀のインディー・ロックの女王として確固たる地位を確立。”
セイント・ヴィンセントの評価
“St. VincentことAnnie Clarkは、2007年『Marry Me』でデビューし、その後『Actor』(2009年)、『Strange Mercy』(2011年)を発表し、4作目となるセルフタイトル・アルバム『St. Vincent』(2014年)では、第57 回グラミー賞「最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム」を受賞し、同部門で受賞した女性アーティストとしては史上2人目となった。ソロ活動の他にも、St. Vincentはこれまでに数々の著名人とも共演を果たしており、Talking Headsの活動でも知られるDavid Byrneとのアルバム『Love This Giant』(2012年)をはじめ、2014年の「ロックの殿堂」ではNirvanaのシンガー兼リード・ギタリストとして出演しパフォーマンスを披露し、2019年の第61回グラミー賞授賞式ではDua Lipaとデュエットを披露している。”
セイント・ヴィンセント代表曲(Youtube)
- セイント・ヴィンセント(St.Vincent) – The Melting Of The Sun (Official Video)
- セイント・ヴィンセント(St.Vincent) – “Los Ageless” (Official Video)
- セイント・ヴィンセント(St.Vincent) – Marrow (Official Video)
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
BELONG Mediaのライター/翻訳。
高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。
13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。
関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。
2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。
2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。
普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。
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