最終更新: 2023年7月8日
先日話題となったコーチェラのバッド・バニーとBLACKPINKといったヘッドライナー、そしてロザリアを中心としたその他ラインナップから象徴されるようにK-POPやレゲトン、ラテンミュージック、フラメンコなど、近年のポップミュージックシーンは、すでに北米中心ではなく、さらには非英語圏の音楽の影響力が拡大したものとなっている。
コーチェラのみならず、これまでロックフェスティバルとして謳われた世界各国の野外フェスでもその流れは反映され、日本を代表する音楽フェスSUMMER SONICでも韓国の新人ガールズグループNewJeansの出演がアナウンスされた直後にチケットの売れ行きが一気に伸びたという。
話が逸れてしまったが、非英語圏の音楽がグローバルチャートを賑わすここ数年。インディーロック、インディーポップバンドにおける環境は逆にフラットになったのではないかと考える。
先日YOASOBIの「アイドル」が米ビルボード・グローバル・チャート“Global Excl. U.S.”で首位を獲得した2023年だ。特にアジアのインディーミュージックシーンに関してはチャンスと言っていいだろう。
世界的なトレンドがフラットになった今、目を向けるべきは局地的なものではないか―――。
そこで2023年度、注目の新人バンド20選をBELONG編集部で厳選し、ピックアップした。
この記事ではそんな2023年、注目の新人バンドをおすすめ曲のプレイリストとともに紹介していきたい。(2023年7月7日 滝田優樹追記)
目次
2023年、新人バンドのおすすめ曲プレイリスト
この記事では国内・海外を問わず、良質な新人バンド15選を取り上げており、併せて2023年度の新人バンドおすすめ曲のプレイリストを作成した。
下記のバンド紹介を読みながら、彼らの音楽も一緒に楽しんで欲しい。
2023年 新人バンド20選
New Dad
アイルランドのゴールウェイ出身の4人組のインディーロックバンドNew Dad。90年代のグランジ、シューゲイザーを影響下に青々しいとするギターポップやネオアコも奏でる新鋭だ。
2020年に自主レーベルからデビューを果たして、2021年にデビューEP 『Waves』をリリースして以来、通算2枚のEPをリリースしている。今年に入ってからも2曲のシングル曲を発表しているが、アルバムのリリースはまだ。タイミング的にはそろそろアルバムのリリースも期待され、同郷のJust Mustardに次ぐ、注目株である。(滝田優樹)
Crawlers
リバプールで結成されたCrawlersは、Pale Wavesのヘザーも最近のフェイバリットに挙げる4人組ロックバンドだ。
2021年にリリースされた「Come Over (Again)」がTikTokでヒットして、注目の仕方も現代的で、2枚目のEP『Loud Without Noise』は全英ロックおよびメタル・アルバム・チャートで初登場1位を記録し、昨年の単独イギリス・ツアーではソールドアウト。
地元ではすでに人気のCrawlers だが、MVやライブパフォーマンスを見てみても、音楽性とキャラクター共にWet Legと引けを取らない。(滝田優樹)
https://twitter.com/CrawlersHQ/
Softswitch
カナダはウィニペグを拠点とするポストパンクバンド、Softswitch。
Sonic Youthを彷彿とさせる不協和音とインダストリアルなアプローチと、4つ打ちや変拍子など多彩なビートを引用するテクニカルさ。
まさにポストパンクの精神性と肉体感を、正当に継承したバンドだといえよう。
まだまだ楽曲や情報も少ないSoftswitch であるが、FONTAINES D.C.やIDLESが好きなリスナーはぜひ一聴を。(滝田優樹)
https://www.instagram.com/softswitchband/
xiexie
xiexieは、2020年に結成の4人組オルタナティブバンド。
昨年の“FUJI ROCK FESTIVAL’22”のROOKIE A GO GOステージにも出演したxiexieのシグネイチャーは、アンニュイと甘美の狭間をいくヴォーカルとチルウェイブ~サイケを横断するインディー・ポップサウンドだろう。
the brilliant greenやMy Little Loverらに通ずる90年代ジャパニーズポップスのニュアンスとUSインディー的なサウンドとの邂逅は、日本のバンドの特権であり、彼女らがその土壌を作り、広げていくことへの期待。そして、その第一人者として、日本のインディーシーンに新たなる可能性を感じさせる期待のバンドだ。(滝田優樹)
https://twitter.com/xiexiemusic
yardlands
2022年に初の全国流通盤ミニアルバム『NPMP』をリリースし、今年も活躍が期待される4人組バンドyardlands。
D.A.N.のようなポスト・ダブステップなサウンドを鳴らしたかと思えば、Spangle call Lilli lineを彷彿とする瑞々しいポスト・ロック~インディーポップを鳴らす。
総じてミニマルなバンド・アンサンブルでサウンドを奏でるが、メロディーラインも横断的でドリーミーとポップネスのコントラストも魅力である。
作品毎に異なるセンスを発揮するyardlandsが今後どんな音楽を聴かせてくれるのか楽しみである。(滝田優樹)
BROTHER SUN SISTER MOON
BROTHER SUN SISTER MOON(ブラザー・サン シスター・ムーン)は元Orca Shoreのボーカルであった惠翔兵(Gt./Vo.)を中心に大阪で結成。
3人編成でメンバーには惠の妹である惠愛由(Ba./Vo.)も在籍しており、これまでに2枚のEP(『Some Same Soul』、『Homesick』)をリリースしている。
音楽性は風景が浮かんでくるようなサウンドスケープを重視しながら、惠兄弟のボーカルが光るドリームポップとなっており、
Beach HouseやTame Impalaが好きなリスナーにはもってこいの音楽である。
BROTHER SUN SISTER MOON Twitter
Sisters In The Velvet
Sisters In The Velvet(シスターズ・イン・ザ・ベルベット)は2019年末に結成し、東京を拠点に活動する3人組のロックバンド。
これまでに1枚のEP『Five Foot Daydream』をリリースしている。
音楽性は本人たちがNirvanaから影響を受けていると言っているとおり、グランジロックならではの骨太な演奏とタイムレスなメロディーを堪能できる。
現行の音楽シーンでは、DIIVやCloud Nothingsなどのファンに聴いて欲しい音楽だ。
WYCH ELM
WYCH ELM(ウィッチ・エルム)はイギリス・ブリストルを拠点に活動する4人組グランジ・ロックバンドである。これまでに1枚のEP『rat blanket』をリリースしており、2021年9月24日に2枚目のEP『Rabbit Wench』をリリースする。
イギリスの新世代グランジロックバンドといえばWolf Aliceであるが、彼らの場合はよりダークかつヘビーなサウンドを楽しむことができる。
WYCH ELMは2022年に本国イギリスで新作アルバムがUKチャート1位を獲得したIDLESの前座を務めることも決定しており、翌年はより大きな飛躍をすること間違いなしだ。
Pip Blom
Pip Blom(ピップ・ブロム)はオランダ・アムステルダムのインディーロック・バンド。
TemplesやWorking Men’s Club、日本のCHAIなど、多くのバンドを輩出してきたHeavenly Recordingsからデビューアルバム『Boat』をリリースしている。
待望のセカンド・アルバム『Welcome Break』は2021年10月8日にリリースされる。
Pip Blomのサウンドは跳ねるようなビートが特徴的なガレージロックを演奏しており、AlvvaysやSunflowerbeanが好きなリスナーにおすすめしたい。
Daisy Jaine
Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)は兵庫県出身の3人組サイケデリック・ロックバンドである。
これまでにデビューEP『Under the Sun』をリリースしており、2021年11月には2枚目のEP『Banksia』をリリースする。
Daisy Jaineの特徴はフロントマンのRio(Vo./Gt.)の自宅がスタジオであり、新曲「Banksia」のミックスとマスタリングをSuchmosの「STAY TUNE」を手掛けた藤井亮佑が担当している所にある。
音楽性は自身も敬愛するTemplesを彷彿とさせる壮大なスケールのあるサウンドスケープであり、Tame impalaなどのサイケデリック・ロックが好きなリスナーに刺さること間違いない。
また、Daisy Jaineはフジロック2023のルーキーステージに登場することも決定している!(2023年7月7日追記)
Penelope Isles
Penelope Isles(ペネロペ・アイルズ)はイギリス・ブライトンのサイケデリック・ポップバンドである。
メンバーはLily Wolter, Jack Wolter兄弟と、Becky Redford, Jack Sowtonの4人組。
これまでにデビューアルバム『Until the Tide Creeps In』をリリースしている。
2021年11月にはセカンドアルバム『Which Way To Happy』をリリースし、ミックスにはMGMTやTame Impala、The Flaming Lipsなど、錚々たるサイケデリックバンドを手掛けたデイヴ・フリッドマンが担当している。
上記に挙げたサイケデリックバンドが好きなリスナーには間違いなくハマるバンドである。
TAMIW
TAMIW(タミュー)は2018年に大阪で結成された4人組バンドである。
これまでに2枚のアルバムをリリースしており、2021年のフジロック“ROOKIE A GO-GO”出演前に最新曲「PurePsychoGirl」をリリースしている。
活動形態は極めてユニークで、2019年にDIYでアメリカツアーを敢行しており、2020年からは寺の中に制作したスタジオでバンドの音楽を制作。
メンバーにスタジオエンジニアもいることから、一度制作した音楽を解体し、再度組み上げる手法で制作したポスト・ダブステップを経由した音楽はyahyelを彷彿とさせる。
ジェイムス・ブレイクを始め、現行のUKダンスミュージックシーンが好きなリスナーにおすすめしたい。
orange flavored cigarettes
orange flavored cigarettes(オレンジ・フレーバード。シガレッツ)は韓国の4人組インディー・ポップバンドである。
まず、彼らに関する情報はほとんどなく現在分かっていることは下記のとおりである。
・2021年8月19日にデビューシングル「orange flavored cigarettes」リリースと共に活動開始。
・メンバーはVox by dani(Vo.)、gurl(Gt.)、2chang1(Ba.)、gokoooo(Dr.)の4人組。
・Lulileelaを輩出した韓国のインディー・レーベルPoclanosからリリースされている。
チル・ウェイブともシティ・ポップともとれる気だるい音楽は一聴すると韓国のアーティストとはとても思えない出来ばえ。
サウンドのクオリティも高く、orange flavored cigarettesはこれからますます注目を集めるに違いない。
orange flavored cigarettes instagram
The Lounge Society
The Lounge Society(ザ・ラウンジ・ソサエティー)はイギリス・カルダー・バレー出身の4人組ロックバンドである。
メンバーはCameron Davey(Vo./Ba.)、Herbie May(Gt.)、Hani Paskin-Hussain(Gt.)、Archie Dewis(Dr.)の4人組。
2021年6月にはデビューEP『Silk For The Starving』をリリースしており、本作はFontaines DC、Squid、Dry Cleaningなどイギリスの新人バンドをUKチャート上位にランクインさせた名匠ダン・キャリーがプロデュースしている。
The Lounge Societyの音楽はThe LibertinesやCatfish and the Bottlemen、DYGLなどのロックバンドを挙げたくなるくらい、彼らの音楽はいわゆる“ロックの魔法”を現代に蘇らせてくれる稀有な存在である。
上記のバンドを含め、ガレージロックが好きなリスナーには是非聴いて欲しい。
Pablo Haiku
Pablo Haiku(パブロ・ハイク)は東京で2020年に結成された3人組バンドである。
デビューシングル「park」は2021年6月、続いてセカンドシングル「rest」を8月にリリースしたばかり。
わずか2曲しかリリースしていないが、音楽性はユニークで新曲「rest」は2010年代のヒップホップのトレンドである“エモラップ”と、
90年代のイギリスで勃興した“マッドチェスター”を組み合わせるセンスはあたかもThe 1975のようにジャンルを超えた面白さがある。
それもそのはずでメンバーの中にはあのミレニアムパレードを率いる常田大希の母校、東京藝術大学出身のメンバーもおり、音楽には深い造詣があるのだ。
セカンドシングル「rest」では日本だけでなく、イギリスでもデジタルリリースを行うことも発表され国内だけでなく、海外でも活躍の幅を広げていくに違いない。
Tō Yō
Tō Yō(東洋)は20022年、The Cabinsが改名したサイケデリックロックバンドである。
メンバーはMasami(Vo./Gt.)、seven(Gt.)、Vincent(Ba.)、Hibiki(Dr.)の4人組。
音楽面ではJ. A. SeazerやFlower Travellin’ Band、Jimi Hendrixなど、オリエンタルなサイケデリックサウンドを指向。
彼らはデビューアルバム『Stray Birds From the Far East』を、2023年8月18日にKing Volume Recordsからリリースすることを発表し、2023年のフジロックでは“ROOKIE A GO-GO”に出演することも決定している。
Barrie
Barrie(バリー)はニューヨーク・ブルックリンで結成したドリームポップバンドである。
これまでにデビューアルバム『Happy to Be Here』をリリースしており、新曲「Dig」は2021年9月14日にリリースされたばかりだ。
デビューアルバムリリース時は5人組のバンドであったものの、最新シングルリリース時はボーカルのバリー・リンジィのソロプロジェクトとして再出発している。
バンド編成時は洗練を極めたシンプルなインディーポップを鳴らしていたBarrieであったが、ソロに移行したことでより民族音楽に近いアプローチを行っており、これからどんな音楽を作っていくのか期待が高まる。
The Parrots
The Parrots(ザ・パロッツ)は2014年に活動を開始したスペインのロックバンドである。
もともとトリオ編成であったが、現在のメンバーはディエゴ・ガルシア(Vo./Gt.)、アレックス・デ・ルーカス(Ba./Vo.)の二人組である。
これまでにデビュー・アルバム『Los Niños Sin Miedo』をリリースしており、2021年10月29日にはTemplesを輩出したHeavenly Recordingsからセカンド・アルバム『Dos』をリリースする。
また、新作アルバム『Dos』はThe Horrorsのトム・ファースがプロデュースしており、ジャンルの振れ幅が格段に広くなっただけでなく、スペイン語の歌詞も相まって今までに聴いたことのないユニークな音楽になっている。
Bachelor
Bachelor(バチェラー)はJay SomとPalehoundによるアメリカのオルタナティブ・ロックデュオである。2021年から活動をスタートさせており、これまでにデビューEP『Doomin’ Sun』をリリースし、最新シングル「I See It Now」を2021年9月1日にリリースしている。
90年代初頭のオルタナティブ・ロックをベースに自分たちのやりたいよう作ったBachelorの音楽は現代の音楽とは言い難いものの、往年のオルタナファンの心に刺さりまくる出来ばえである。
Dansa med dig
Dansa med dig(ダンサ・メッド・ディグ)は仙台を拠点に活動するエレクトロポップデュオである。
メンバーは五十嵐(Vo./Gt.)と小平(Gt./Syn.)の二人組。
これまでにデビューEP『Startrail』を2021年9月15日にリリースしており、同作のマスタリングは、GorillazやThe XXの作品を手掛けたメトロポリス・スタジオの名匠であるJOHN DAVISが担当している。
水滴の音を曲のイントロ・アウトロを入れていたり、音の配置が計算されていたりとサウンドは申し分がない。
2023年度新人バンドまとめ
この記事では2023年度、注目の新人バンドとして20組を取り上げた。
これらの新人バンドはまだ氷山の一角に過ぎず、欧米やアジア、日本国内に目を見張るようなバンドはまだ続々といる。
特にここ近年、関西のインディーロック・バンドの層が厚くなってきており、注目のシーンを形成していることも見逃せない。(2021年8月15日 BELONG編集部)
新人バンド関連記事
新人バンドの関連記事について、BELONGではこれまでにBROTHER SUN SISTER MOON、WYCH ELM、Pip Blom、Daisy Jaine、Penelope Isles、TAMIW、Pablo Haiku、Bachelorのリリース記事を取り上げている。
ライター:滝田優樹
1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。
そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。
その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。
退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。
それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。
猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。
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ライター:yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻
これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。
過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。
それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。
現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。
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Twitter:@boriboriyabori
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